正直、廊下を歩くのだけでもとてつもなく怖い。妹に会わないか。すれ違った人に陰口を言われないか。学校にも帰る家にも私の居場所は何処にもない。
本当に勉強だけで、学生生活を通せるのか。私の心は不安だらけだ。きっと、あの時、廊下の壁に貼られていたテスト結果見た時にいた2人組に嫌われたに違いない。
私がこんな性格なのは全て、母と妹のせいだ。
***
「俯いて何があった?」
下を向き、廊下を歩いていたら誰かに声をかけられた。見上げると、そこには狐のお面を被った人がいた。性別は多分男。
「誰?!ここは学校ですよ!生徒でも教師でも用務員でもなくて学校の関係者じゃないならすぐに出て行ってください!!」
「俯いてる女の子を放っては置けないよ。しかも顔見れば君が何かに不安になってることくらいわかる。僕なら君の力になれるよ。」
「...。」
男の言葉に少し、信じてもいいのかなと緋桐は落ち着きを取り戻した。
「君のその心の不安。取り除くことができる。」
「...本当ですか?」
「本当だよ。」
***
2人は場所を移動し、学校近くにある公園の椅子に座った。
「私、妹がいるんです。父は単身赴任で今はいません。母は、妹ばっかり可愛がっていて妹を溺愛してるんです。母は妹の事しか考えておらず、家事とか面倒くさい事は全て私に押し付けてくるんです。父も連絡も何もくれないんです。私はこの家族に生まれてきてはいけない存在なんだと思ったんです。しかも、私友達が1人もいないんです。自分から話しかけないのがいけないんですが...1人だけでも心から信頼できる友達が欲しかったんです。」
緋桐は、男に対して悲痛な気持ちを語った。男は空を見上げていたが、緋桐を見た。
「大丈夫。君にはもうすぐ本当の友達と呼べる存在ができるから。君はもうすぐ1人じゃなくなるんだ。」
「どうして、そんな未来のことわかるんですか?!」
「勘だよ。君は押し付けられた家事をしたり、優しい気持ちの持ち主だから。君には友達が出来ないわけない。」
「いつできるんですか?!」
「正確にはわからないけど、年内に出来るよ。」
「年内...。」
「大丈夫。年内と言っても、そう遠くはないから。君は君らしく生きていればいいんだ。」
「...ですよね。でも、この不安な気持ちはどうしようもないです。不安は消えないんです。」
緋桐の手はとても震えていた。そんな緋桐を見た男は、ポケットから小さいカプセルを取り出した。
「これで、君の不安な気持ちは消える。でもその代わりに、君は自分を失ってしまう。」
「これは?」
「これで不安が消えるよ。」
緋桐は唾を飲み込む。
「...じゃあ、お願いします。」
「本当にいい?」
緋桐が頷くと、男はカプセルを開けた。すると、カプセルの中から黒いモヤモヤした物体が勢いよく飛び出し、緋桐の体に入っていった。
すると、黒いモヤモヤが入った部分は黒い光を発した。それと共に緋桐は悲鳴をあげた。
「あーーーーーーーーー!!!!」
緋桐の目に光はなくなりその場に倒れた。