アングリフ   作:豆月

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〈第8話〉バイオリンを弾く少女は

四組織中央学園の体育館では、全校生徒が芸術鑑賞会の一環として、ある1人のお嬢様のバイオリン演奏を聴いていた。

演奏が鳴り止むと、体育館は拍手の音に包まれた。

 

『とても、綺麗なバイオリンの演奏でしたね。本日は本当にありがとうございました!』

アナウンスがそう言うと演奏者は、全校生徒に向かって頭を下げ舞台から降りた。

 

 

****

校舎から出るとき、萩と菫はたまたま会った。だから、道が分かれるまでは一緒に帰ることにした。

「あの、バイオリン弾いてた子、すごい綺麗だったよね!やっぱりお嬢様って、皆あんな感じなのかな〜」

「そりゃあ。私達一般庶民にはわからないことだって多いと思うわ。家とかお城みたいな洋館なイメージあるわ〜。」

「羊羹?」

「そうそう。庭はすごくデカくて、庭に噴水があって、どの部屋にもベランダがあって、お風呂はバスタブは広くて、お湯の上には薔薇が浮いていて...。」

「でも、虫に食べられたらやばくない?!」

「む、虫?」

萩と菫はお互いを見て、頭を傾けた。

 

「だって、家がそんな甘いものだったら虫がたかるでしょ?」

「あっ!」

萩はあることに気が付いた。話が合わない原因に。

 

「どうしたの?」

「井村さんが想像してるようかんはお菓子の方のあの甘い羊羹でしょ?!」

「そうだよ?!」

「私が言ってるのは、洋風の家の方の洋館よ!食べる方ではないわ。」

「あー、そっち!?ごめんごめん、ずっと羊羹かと...。」

菫は片手を頭にあて、呆れた表情をして、はあっと1発大きな溜息をついた。

 そんな2人だったが、どこかからか誰かが争う声が駐車場から聞こえ始め、2人は駐車場へいくことにした。

 

駐車場には高級車が停まっていた。高級車の前で誰かと誰かが喧嘩していた。遠くからでも何言ってるか聞こえてしまった。菫と萩は、喧嘩している2人のうち1人が誰かわかってしまった。

「あ、あの子って...。」

「さっきのバイオリン弾いていたお嬢様よ」

 

「水仙!何度言ったらわかるんだ!!」

「だから、私バイオリンが嫌なの!やりたくないのに、将来の為ってやらされて。私がバイオリン大好きって勘違いされてるのかもしれないのよ!嘘ついてるみたいで嫌なの!!」

「水仙はバイオリンしかないんだ!!バイオリン以外にお前に合うものは何もない!!だから、辞めさせない!」

「もう、嫌なの!!嫌々、やってバイオリンが楽しいわけないじゃない!わかって!きゃ!」

父親みたいな男は、少女の頬を叩いた。それをはっきり見てしまった菫と萩は、手を口に当て目を丸くした。

「い、今のって...。」

「エスカレートしたら虐待になるわよ...。」

「あの子をた、助けないと!」

喧嘩している2人組のところに走っていきそうになった菫を萩は止めた。

「干渉するのは辞めといた方がいいわ。しかも、私達は、あの2人と知り合いでもないのよ、他人よ?」

「で、でも!」

「駄目、絶対あの二人のところに行かせないから。」

「でも、もしあれが本当に虐待なら、私達が止めるべきだと思うの。」

「だから、それはわかんないって。虐待じゃなくて、たまたま頭に血が上ってあの子の頬を叩いた可能性だってあるのよ?!」

「でも、あの子の頬を男の人が叩いたのをこの目で見たじゃん!!」

「確かに、そうだけどそれが虐待とは限らないのよ?」

「虐待になる前に止めなきゃ意味がないじゃん!」

萩はため息をついた。

 

「あ!もう!いいわよ!そんなにあの喧嘩を止めたいなら止めればいいじゃん!でも、私は井村さんがどうなっても何もしないからね!」

ぷんぷんと怒り、萩はその場から去っていった。菫はそんな萩を黙って見つめていた。気がつけば、バイオリンを弾いていた少女と何やら言い争っていた男性は車に乗り、駐車場から出ていったみたいだった。

 

 

 

 

 

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