「純希!」
志倉はいつものように、純希に後ろから抱きついた。
「わ!」
純希は、驚いたように声を出した。志倉は純希にそんな驚かなくても良いのに〜と言った。
「邪魔するな。今から颯組織長の部屋に行くから。」
「なら、私も一緒に颯組織長の部屋に行く!」
「大事な用があるんだ。だから、何がどうしても1人で行かせてくれ。」
志倉はある事が気になった。
「純希、貴方...もしかして、颯組織長に裏でやばいことでもやらされてるの?」
志倉がそう言った瞬間、颯は電流が体に流れたようにびくっと震えた。
「そ、そんなことない。颯組織長が僕にそんな事させるわけない。志倉の考えすぎなんだ。」
純希は、何かを上手く誤魔化そうとしているという事に気がついた。
「もう、何やらされてんのよ!!」
「大丈夫。志倉は首を突っ込まない方がいい事。知らない方がいい事だよ。」
「もー、やっぱり!」
「だから、組織長室に行かせてくれ」
志倉は純希を抱きしめたまま離さなかった。
「隠し事教えてくれるまで、離さないから。」
純希はため息をついた。
「はあ。わかったよ。教えれば良いだけだよね?それより、離れてくれないかな」
「えーどうして?」
「それじゃなきゃ、ちゃんと説明出来ない。」
志倉は何も言わずに純希に巻いていた腕を離した。すると、純希はポケットから透明なカプセルを取り出した。
「な、何これ?しかも、中に入ってるの...。黒くて、もじゃもじゃしてて気持ち悪い...。」
志倉は目を細くして、中に入っている黒い物体をジーっと見つめる。
「これを不安な人の心に刺して、黒い動物にしてしまうんだ。で、その黒い動物に紫の水晶を探し出してもらう。それが僕の秘密さ。正直、罪もない人々を巻き込んでしまうのは罪悪感でいっぱいだ。でも、今の僕はそうするしかないんだ。」
その話を聞いた志倉の表情は、固まってしまった。まさか、自分の好きな人がこんな事をやらされてたとは思いもしなかったのだろう。
「...ごめんなさい純希。ちょっと、体調悪くなったから部屋に戻らせてもらうわ。やっぱり、今から貴方の組織長室へ行くのを同行する事なんて、出来なくなったわ。本当に、私から一緒に組織長室に行くって言い出したけれど、ごめんなさい。」
そう言い残すとぼとぼと自分の部屋に戻るため志倉は歩き出した。
純希は、志倉が自分の視界から消え去ってから組織長室へ歩き出した。
「(君は、悪くない。僕が悪いんだ。組織長から命令でこんな事を引き受けた僕が。)」