教室に着くと菫は倒れていて、バケツの中にあった水が溢れていて、雑巾は床に落ちていた。ネソと萩はその光景に目を見開く。
「井村さん!!」
萩が菫の肩を揺するが、反応がない。
「やっぱり...遅かったのね...。」
ネソが声のトーンを低くし、そう呟くと萩は諦めて、菫の肩を揺するのを辞めた。
「ごめんなさい...、私がもうちょっと早くネソさんに伝えてれば...こんな事には。」
「いいの。水鳥さんが悪いんじゃないわ。」
暫く、2人は黙っていると菫は、瞼を開けた。萩とネソはそんな菫を見て、表情が少しだけ晴れた。
「..あれ、どうして倒れてたっけ...。ってうわ!」
菫に萩は抱きついていた。
「井村さん!良かった!気が付いたのね!」
「は..え、あれ..水鳥さん...。」
「この間はごめんなさい...。私、あの時感情的になっちゃって...。」
「こ、こっちこそごめんなさい。萩さんの注意をちゃんと聞けばよかっなって...。」
「許してくれる?」
「..こちらこそ、許してくれる?」
萩は菫に抱きついたまま、顔を緩めた。
「勿論」
ネソはそんな2人を笑顔で見守っていた。
「良かったね、井村さんも、水鳥さんも。」
***
「まり..陽毬!」
名前を呼ばれてやっと気がつく。
「あれ、実亜...?」
「良かった...気が付いたみたいで。...床の上に倒れていたのよ!もう、びっくりしたわ。ったく、心配させないでちょうだい。」
「私が、倒れてた?何のこと?」
「とぼけないで。眠くて、ベッドまで行くのめんどくさかったから床で寝てたんでしょ?」
「そんな、まさか...。流石に、めんどくさがり屋の私でもそんな、床の上で寝ることなんてしないわよ!」
陽毬は、上半身を起こした。
「寝るのはベッドの上だけにしなさい。」
「...そう言えば私、さっきお母さんの声が聞こえてぼーっとしてお皿を落としちゃったの。」
急に陽毬は深刻な顔をして、何かを語り始めた。
「母の声?」
「そう。で、その後記憶ないのよ。別に眠かったわけじゃないし。あ、でも少し何かに対して怖かったのは覚えてる。」
***
「純希!」
志倉が呼び止めると、本人はその場に止まった。
「志倉?」
「さっきの叫び声...純希の声に聞こえたのだけれど。」
「そう?そんな声何も聞こえなかったよ。志倉の勘違いじゃないかい?」
「あぁ...。私の勘違いなら、良かったのよ。貴方の叫び声じゃなくて、少し安心した。
志倉は、ほっとため息をついたのだった。