「ん...?」
目を開けると、視界には黒い世界が広がっていた。ここはどこ?さっきまで、自室にいたはずなのに。
「ここは不安の世界よ」
「へ?」
後ろから足音と声が同時に聞こえ、振り返るとそこには自分がいた。
「あ、貴方は!?」
「私は貴方、井村菫の負の姿。つまり、影の貴方よ。」
もう1人の私はニヤッと笑った。
「影の私?」
「もう、貴方はこの世界から出られない。だって、貴方は紫の水晶を持っていないんだから。戦う事もできない。」
私はズボンのポケットに手を突っ込み、紫の水晶を探そうとしたがネソに紫の水晶を渡したままだと言う事を思い出した。
「そんなぁ...。戻らせてよ!下の世界に!」
「元の世界に戻っても、良いことはない。元の世界に戻ったら、お母さんの浮気を見る事になるのよ?しかも、降霊陽毬を傷つけたのよ?」
「違う、あれは...陽毬さんに迷惑をかけたくなかっただけで」
「なら、まだこの世界に閉じ籠ってる方が良いわよ。あんな嫌な思いしなくて済むのだから。」
すると、もう1人の自分は近づいてきて私の頭に手を当てた。
「...そんなの...は、絶対...い...ゃ」
何だか眠くなってきたような。
自分の感覚がなくなってくような。
何かを忘れて行くような...
『菫ちゃん!!』
『井村さん!!』
『井村さん!』
陽毬さんと水鳥さんとネソさんの声が聞こえ私は我に返った。もう1人の自分を突き飛ばすと、もう1人の自分は尻餅をついた。
「ぐっ!!」
「私がいる場所はここじゃないから!!例え、嫌な事や辛い事があっても自分の本当の世界で暮らしたいの!!こんな黒い世界に閉じ籠められるなんてまっぴらごめんよ!!」
「でも、嫌な事や辛いことは耐えれないじゃない?だから、ここの世界にいる方が自分の為よ。」
「例え、嫌な事や辛い事があったとしてもいつかは晴れるから!!私はそう信じてるんだから!!」
私はこの世界から出る為、勢いよくもう1人の自分まで走りもう1人の自分にパンチをした。もう1人の自分は腕で私のパンチを受け止めた。
「ふん、紫の水晶なくても自力で戦えるのね。」
腕を掴まれ、遠くに投げ飛ばされた。そして、地面に落ちた。痛みが体を走る。
「い...たっ」
もう1人の自分は腕を組んで、仁王立ちで私を見下ろした。
「この世界は私が仕切ってるの。だから、私を殺さなければ貴方はここから出ることは不可能。残念だったわね、井村菫」
体に痛みが走るが何とか、両手を床につきながら立ち上がる。
「そんなことないっ...。別の方法でこの世界から出れる気がする。貴方を倒さなくても、鍵がどこかにあるはず。」
黒い世界を見渡した。すると、上の方に黒くて丸い水晶が浮かんでるのが見えた。きっと、あれを壊せばこの世界から出れる気がした。