目を開けると、視界には黒い空間が広がっていた。そして、黒い地面はなくなり下に落ちた。
痛いと思いながら、目を開けると視界にフローリングが広がっていた。ここは家か。そう思いながら、体を起こすとここは何処かの家だった。後ろから足音がした。振り返ると、セーラー服を着た、茶髪の少女が立っていた。その少女の表情は泣きそうになっていた。
僕は立ち上がり少女を見つめた。
「お母さん、今日ね、私...数学のテストで100点だったのよ。」
そう言い少女はテストをポケットから取り出し、見せてきた。すると、背後から足音が聞こえてきた。振り返ると、そこには降霊三春がいた。やっと気が付いた。ここは、陽毬の記憶の中なんだと。僕は部屋の隅に置いてある椅子に座った。
「そんな事、どうでもいい。さっさと家事しなさい。それがあんたの家庭での役割なんだから。」
「中学生になって初めて、数学のテストで満点取ったの!」
テストを三春に渡すが、三春はテストをゴミみたいに扱い丸めてゴミ箱へ捨ててしまった。流石に、それはないんじゃないか。陽毬はきっと母親に褒めてもらいたくて、見せたのにその態度はないんじゃないか。
「何で...そんな事するの?!」
「だから、お前はこんな点を取っただけで余裕ぶってんじゃない!!家事をしなさい!こんな事を言うために、私に話しかけてるなら勉強しなさい!!時間は有効に使いなさい!!」
そして三春は陽毬の頬を叩いていた。
「いたっ...。」
叩かれた陽毬の頬は、赤く染まっていた。
例え、娘の事が嫌いだったとしても中学生の娘にこんな仕打ちはないんじゃないか。
「今言った事が伝わったなら、さっさと自分の部屋に行って勉強でもしてなさい!!」
「...。」
「返事は?」
「...私は、お母さんとお話しする権利もないのね。」
そう言い残し陽毬は何処かへ行ってしまった。陽毬を追いかけるために、椅子から立ち上がり走った。
「陽毬!!」
陽毬は玄関のドアの向こうの黒い世界の中へと消えていった。その時、風景が急にパリンッとヒビが入り、粉々に割れた。そして、気が付けば既にさっきまでいた黒い世界に戻っていた。陽毬を見失ってしまった。早く、陽毬を助け出さないとなんて思いながら、永遠に続く黒い道を歩いていた。すると、誰かが浮かんでいた。茶色の長い髪に、赤いワンピースを着て、茶色のコートを着ているように見えた。それが本物の陽毬だと確信した。陽毬はまるで安らかに眠っているようだった。