ラグナロク未クリアの方はクリアしてから読む事を強くお勧めします。
「ふむ、つまりは君の統括する北部で不審な動きをしている貴族達がいると」
「は、このタイミングでの蠢動。直接かあるいは間接か、そのどちらかは不明ですが十中八九ルーファス卿を殺した者達の関与がある事は明白かと」
平民の希望の星
「君をこちらの援軍に来させない為の仕込みだろうね。未だに正体が掴めていない辺りかなり周到に準備して来たんだろう。そして使徒の中では最弱のルーファスを最初に狙って諸々試して、事後についても抜かりなしと来たものだ。やれやれイザナも言っていたが今回の敵はつくづく優秀なようだ」
ともすると傲慢にも見えるスメラギの態度だがその実油断や慢心とは無縁だ。何故ならば彼こそ神祖の中でも究極のたたき上げ。神祖四人の中で最年少で在り、一度は全てを投げ出した挫折の経験がある。ならばこそ今この時も愚直に、真面目に、どこまでも油断なく疑い続けて考え続けているのだ。
「いっその事リスクを覚悟で北部を
「ふむ……」
20年以上の付き合いとなる
「いや、君はそのままでいてくれ。今回の敵はかなり周到に準備してきている、アンタルヤとアドラーのどちらか、あるいはその双方かな。まず間違いなく後ろ盾に付いていると見て良いだろう。となれば現状潜伏している神殺し達はあくまで先遣隊に過ぎず、本格的な援軍が後から送り込まれてくる可能性は高い。正面の相手に注力しているところを横から思いっきり殴りつけられるというのは御免だからね。君には予備戦力としていざという時に備えておいてもらいたい」
そのうえで神祖スメラギが下した判断、それは時期尚早というものであった。敵の思惑に乗らないようにする事は戦いの鉄則だ。しかし同時に常に予備戦力を用意しておくのもまた同様に戦いの鉄則なのだ。それは遠い昔神祖スメラギがまだ駆け出しの単なる超常の力を
「単純な戦力という点であればこちらには君の弟とグレンが居るし、遠からずアメノクラトの量産も叶うからね。ならば無理をして君を戦線に投入するよりは想定外に備えて貰う方が良い」
「御心のままに」
かつてであれば心に荒波を巻き起こした戦闘力に於いて自分が弟の後塵を拝しているという言葉、それを受けてももはやアルフレッドの心には小波も巻き起こらず。粛々と主君の命令を受け止める。
「うんうん、君も成長したものだ。かつてであればこんな事を言われればわかりやすいほどに顔に出ていたというのに」
「これも偏に猊下のおかげです。未熟者を根気強くここまで導いて頂いた事、誠に感謝の念が堪えません」
「何、教え子が優秀だったからね。僕としても大分やりやすかったよーーーなんにせよそちらは任せたよ、アルフレッド。あるいはこちらからの指示が途絶える可能性もあるが、その時は君が最善と思う決断をしてくれればいい」
アルフレッド・ベルグシュラインが歴代最優と評されるのはその総合値の高さ故だ。ならばこそ神祖スメラギは信じる、自らが手塩にかけて育て上げた
「御心のままに」
そしてそんな主君から寄せられる
無論アルフレッドの中に存在するのはそうした
・・・
「そう、その位置だーーー
結論から言おう。結果として神祖スメラギの備えは無駄に終わった。人の持つ優しさによって牙を抜かれた
「君と巡り会えた事、それこそが私の人生における救いだマヤ」
それは自らに愛を教えてくれた最愛の妻に他ならない。何故ならば彼は現実と折り合いをつけて完全なる主君の道具となる道を選ばなかった人間だから。神祖へ捧げる忠義に嘘などない。だがそれでも彼の中にある一番強い想いは家族への愛情に他ならない。そしてそれは妻であるマヤ・キリガクレも同じ事。神祖への畏敬の念は存在する。しかしそれでも彼女の中にある一番の想いは夫と我が子ーーーすなわち家族への愛情に他ならない。ならばこそアルフレッド・ベルグシュラインとマヤ・キリガクレが導き出す勝利の答えは極めて平凡なものとなる。すなわちそれは
「ああ、いいとも。それがお前たちの思い描いた勝利だというのならば俺は当然祝福しよう。アルフレッド、これまでご苦労だった。一足先に
かつてその剣となる事を夢見た絶対神からの寿ぎ、それを受けてアルフレッド・ベルグシュラインは
「諦められるか。それでも僕はッ―――!」
忠義を捧げた主君が交わした約束を支えに最期の突撃を敢行する時に力になる事もなく
「……無念だ。初めて口惜しい」
幼き日に共に助け合うと誓った弟の最期に居合わせる事もなく
「邂逅せよ、まだ見ぬ運命。汝ら衆生が欲する明日を比翼連理とするが良い」
今の幸福な世界の存続を願うが故に絶対神の宿敵足る人奏者を否定する事もなく
「はは、久しぶりだなお前たち……見ているか?ようやく俺はここまで来れたよ。無様なほどもがいて、足掻いて、おまえ達との出会いと別れを糧にして」
今を生きる人間であるが故にかつての主君の窮地に駆けつける忠臣の列に加わる事もなく
「御意ーーー我が刃、どうか存分にお振るい下さい。それを以て、俺は邪竜に一矢報いたとしましょう」
最期の最期まで主君の力となり続けた万象断ち切る
ならばこそその身はフルンティング。どれほど名剣と謳われていても真なる強敵との戦いに役立つ事は無かったコケ脅し。役立たずのフルンティングなのだ。
役立たずというよりは蚊帳の外のフルンティングじゃないかって?それだとどういう結末になるのかタイトルでわかっちゃうし……
道具で在り続けたが故に最期まで主君にとっての理想の剣であった弟
道具ではなく人間となったが故にそれまで幾多の敵を斬りさき名剣と謳われたが肝心の大一番で役に立つことはなかった兄
ベルグシュライン兄弟はそんなどこまでも対照的な存在。
ちなみに当作はミサキルート想定なので流石にこいつ騙す自信はないと判断したシュウさんとリナさんが真相打ち明けながら協力を求めて「まあ肝心なところで役立たずだった自分が今さら敵討ちどうこう言える筋合いでもないか……仮にそんな事しても単なる内乱になってアドラーやアンタルヤに付け込まれるだけだしな」と現実と折り合いをつけられる大人なアルフレッド卿は姪であるリナさんとその夫であるシュウ君の補佐として総代聖騎士代行みたいな立場になって神祖が消えて大混乱となったカンタベリーを支える想定。
セシルルートだとアドラーが本格介入してくるタイミングで「やはり来たか!」とばかりにそれを阻止すべく動くわけだけど当然アドラーも兄上が使徒である事は知っているのでチトセネキが原作よりも一足早く出陣して兄上率いる第二軍団とチトセネキ率いる天秤が激突。単純なスペックでは凌駕しているチトセネキだが兄上の不死を突破できない為膠着状態に。互いに部隊を率いて激戦を繰り広げるけどスメラギ君が死んだことで兄上が使徒ではなくなり、動揺したところをチトセネキに突かれて死亡。「所詮私はウィリアムに遠く及ばぬナマクラか……申し訳ございません猊下……」みたいな事を最期に言い残して後は原作通り(主君であるスメラギ君に殉じはしたが負けているのでやっぱり肝心なところで役に立たない役立たずのフルンティング)
アンジェリカルートでは死んだ神祖があんまり関わりなかったイザナで恩義あるスメラギ君とグレンファルトが行方をくらますので、声をかけられず置いてかれた事にショックを受けながらも、家族が居るのでそれらを放り捨てて付いて行く事も出来ずアンジェリカ達を筆頭とする諸勢力と交渉等の結果アマツの人間をトップに据えた上で自分がそれの補佐役として事実上カンタベリーの纏め役になるみたいな想定(果たしてスメラギ君がアルフレッド卿を連れて行かなかったのは役に立たないと思ったからだったのかそれとも……)