Tales of the Force -lyrical Crisis- 作:天羽々矢
アリシアから連絡を受け、レクサスはシェベルSSをリトルハバナに向け走らせる。
「いたいた!お~い!」
リトルハバナ、ロビーナ・カフェ前。そこにアリシアの姿はあった。
レクサスはシェベルをカフェのすぐ前に止めアリシアを拾う。
「向かい先は?」
「えっと、確かプローン島!まだ追いつけるよ!」
「OK」
行先が分かり、レクサスはギアを入れ再びシェベルを走らせる。
プローン島はバイスシティ北部、リトルハバナがある本土と東島のちょうど中央に位置する島で。島の北部には既に廃墟となった3棟の大邸宅、南部には映画の撮影スタジオがある。
北部の大邸宅は元々は
ゲートは開いていた為レクサスはシェベルを3邸宅を正面から見て左の邸宅の裏手に留め、カメラを片手にアリシアと共に邸宅の屋上まで上っていく。
「設定は夜間モードでフラッシュをオフ、と・・・」
「フォーチュンドロップ、撮影モードお願いね」
[
カメラの設定をしているレクサスの隣で、アリシアは首にかけている黄緑色の雫形のネックレスに声をかける。するとフォーチュンドロップと呼ばれたネックレスから機械的でありながらも女性の声が聞こえた。
―――ミッドチルダを始めとした管理世界には魔法と呼ばれる現象が存在する。体内に存在するリンカーコアと呼ばれる器官が大気中の魔力素を取り込みそれらをエネルギーとして加工したもの、魔力を放出して発動する一種の超科学のような物。
その魔法を使う者の世間では“魔導士”と呼ばれ、それらの者は魔法使用の補助の為に魔法の杖、“デバイス”を用いる。
アリシアが持つ黄緑色の雫形ネックレス“フォーチュンドロップ”もそのデバイスの一種。中でも人格型AIを搭載した事で自律機能やデバイス単体での魔法発動が可能な“インテリジェントデバイス”と呼ばれる物だ。―――
アリシアがフォーチュンドロップに頼むとアリシアの眼前にスクリーンが映され、そこにはカメラのようなカーソルが表示されている。
レクサスもカメラの設定を終えスタンバイ。
「何か私たち、特ダネを追っかけてる記者みたいだね♪」
「そんな
レクサスが表情を引き締めてそう言うと、ちょうど中央の邸宅のゲート前に黒塗りのベンツのセダン1台が停まった。
すかさずレクサスがカメラを構える。そして停まったベンツから黒いスーツ姿の1人の人間が降りてきた。
体格からして恐らく男性。何処かの会社の上級幹部のような雰囲気だ。
逆立てた金髪で肌の色はアメリカの白人のような白肌だ。
辺りを警戒してか周囲を見渡し、その顔がレクサス達がいる左の邸宅に向いた瞬間、レクサスとアリシアはシャッターを切った。
撮った画像を確認、ばっちりと顔が映っていた。
「さっそく出てきたね、表じゃ相当偉そうな人・・・」
「そうだな。けど待った、あいつどっかで見覚えがあるような・・・?」
「え?」
写真を確認するレクサスが何処か含みのある発言をし、アリシアは思わず首を傾げるが別の車の走行音が聞こえてきたので再び撮影に集中する。
次に正面の邸宅ゲート前に停まったのは艶消しブラックのBMWのF90型M5だ。
「あの黒、純正の黒じゃないよね?結構目立つよ」
「シッ!静かに・・・」
ブツブツと呟くアリシアを静め撮影に意識を向ける。
M5の後部席から降りたのは、なんと女性だ。
首辺りまでと短めのミドルポニーテールに藍色のロングコート、インナーはへそ出しの黒いベアトップ、下はジーパンとかなり動きやすそうな服装。
体系から見てもまだ20代前半か半ば位の年齢だろうか、顔立ちもモデル顔負けの端麗さだ。
「キレイな人、何であんな何もなさそうな・・・」
「待てアリシア、あいつの左腕・・・!」
疑問に思ったアリシアにレクサスが女性の左腕を見ろと促す。
左腕はロングコートの袖に隠れてはいるが、時折チラリの何か黒いものが顔を覗かせていた。
「あれって・・・」
「アリシアは左腕を、顔は俺が押さえる」
レクサスの指示にアリシアは頷き、黒いものを覗かせる女性の左腕を画像に収め、レクサスも女性の顔を押さえる。
だが気のせいか、その時に女性が左の邸宅の屋上を見た気がした。
「マズい、伏せろ・・・!」
レクサスとアリシアは慌てて床に伏せる。が、女性は少し見ただけで何事もなかったかのように正面の邸宅に入っていった。
少し顔を出して女性が行った事を確認するとレクサスとアリシアは安堵の溜息をつき再び撮影の構えを取る。
次にゲート前に停まったのはシルバーメタリックの1965年型ポンティアック・GTO。
それから降りたのは、なんと時空管理局地上本部所属の証である茶色い制服を身にまとった男だ。
厳格そうな顔つきに黒いオールバックのヘアスタイルに口髭という鬼軍曹といったような見た目だがここに来たという事は間違いなくこの一件に絡んでいる。
「うわぁ出たよ、悪徳局員さんが」
「あいつはグレッグ・マルチネスだな。地上本部の1等陸佐だ。地元部隊が動かない訳だな・・・」
今回の件でバイスシティの地元管理局部隊が動かない理由が分かり、思わず呆れの溜息をつくレクサス。
だが仕事は仕事。管理局の男、マルチネスの顔写真も押さえたところでまた別の車が来た。
「ちょっと、一体何人がこの取引に関わってるの・・・?」
「それほどデカいヤマだって事だ。潰せば結構な痛手になるぞ」
隠れつつも話す2人を後目に次にゲート前に停まったのはメタリックグリーンの1972年型のフォード・グラン・トリノ。
その助手席から降りたのはバイスシティの雰囲気によく合う水色のアロハシャツとチノパンという恰好をした少し小柄な丸刈りの男。
顔は少し丸みを帯び白い肌、目元は僅かに吊り上がっている。
「あれはルーフェン系の人間だな」
「ルーフェン系でこんな仕事をする人なんていたっけ・・・?」
「その辺も写真が上がったら調べてみよう」
ルーフェン系の男の顔写真もしっかりと撮影。
なお、ルーフェン系の男が降りたグラン・トリノは男を降ろした後に既に走り去っていた。男の部下かただの雇われかは今は定かではないがあのルーフェン系の男の身元を調べれば分かるだろう。
この後も少し待ち続けたが他に近づく車が無い事から恐らくこれで全員だろうと判断し、屋上から降りて裏手に停めてあるシェベルに乗り込み怪しまれないよう自然に出ていく。
プローン島を出てバイスシティ東島、バイスポイントのWKチャリオットホテルの駐車場にシェベルは停まった。
「ここからは別々で戻った方がいいかもしれないな。俺は追手がいないか確かめた後でタクシーを拾う。車は任せた」
「了~解、気を付けてね」
「アリシアも」
レクサスはシェベルから降り、アリシアが助手席から運転席に移りシェベルを走らせ1人先に戻る。
降りたレクサスはホテルに入り、高層階まで上って窓から追手がいないかを確認する。
そして追手らしき車も人影も確認できなかった事を確認するとホテルを出て、空車のタクシーを拾ってカメラショップで写真の現像を頼んだ後でオーシャンハイツへの帰路に就く。
ED:DREAMCATCHER/ナノ