Tales of the Force -lyrical Crisis- 作:天羽々矢
エスコバル臨海空港で持っていた車、69年式トリノGTをヴァイスに売ったレクサスは受け取った34000ドル分の小切手を銀行にて換金した後、オーシャンハイツに戻る。
そろそろシュテルとユーリから何か進展を聞けるかもしれない。
「ただいま」
「あ、レクおかえり~!」
オーシャンハイツのガレージに戻ってすぐにレヴィから返事が来るも、ガレージ内にいるディアーチェがすぐさま詰め寄ってくる。
「貴様ぁ!我に断りも無く外出とはどういう
「どうどう、落ち着いて。俺も理由無しに出歩いてた訳じゃないから」
「ほう?では出歩いていた訳とは何だ?」
ご立腹のディアーチェを何とか宥め、レクサスがジャケットの内ポケットから小切手を換金して作った34000ドルを取り出す。
「これが理由。勝手に増える倉庫の中身を片付けに行ってたんだよ」
レクサスが理由を述べながらトリノを売って作った札束を見せる。
それに対しディアーチェは面白くなさそうにフンッと鼻を鳴らすと、レクサスの右手の中にある札束から20000ドルをひったくった。
「ちょっ、おい!?」
「我に断りを入れず出て行った罰だ、たわけめ」
不機嫌さを隠さずディアーチェはそう言い、レクサスからひったくった20000ドルをブレザージャケットの内ポケットにしまい込む。
それを見たレクサスは溜息をつきながら後頭部を軽く
レクサスとレヴィが持ち帰ったシェルビー・コブラはシュテルとユーリ、2人の
「あ、レクサスお帰りなさい!」
作業中のユーリが戻ってきたレクサスに気づき顔を向ける。コブラを挟んで反対側にいたシュテルもユーリの言葉を聞き作業中の手を一旦止めてレクサスに向けお辞儀した。
「何か進展あった?」
レクサスが2人に聞くと、シュテルがボックス状の機械を持ってレクサスのもとに持ってくる。
睨んだ通り、ミッドチルダ製の最新のカーナビゲーションシステムだ。
「こんな最新のハイテク機材を積んでるくらいなんだ、何かあるはず……」
シュテルからカーナビを受け取り、何か怪しい所が無いか確かめる。
そして機材の背中側をチェックしてみると……
機材に差し込まれているメモリーチップを発見した。
「見つけた」
『??』
レクサスの呟きにシュテルとユーリは揃って首を傾げるが、レクサスは機材からチップを抜き取ってそれを2人に見せる。
「どう見る?」
「恐らく個人用のメモリーチップですね」
レクサスの質問にユーリが答え、それを確かめるべく、アリシア、レヴィ、ディアーチェを自分のもとに集める。
時は少し
ヴァイスが69年式トリノGTを譲ってもらったという青年を確かめるべく、空港の管理室にはフェイトを始めとした面々がいる。
フェイトはもちろん、栗色のサイドテールの女性“高町なのは”、一見すると小学生程に見える赤い三つ編みヘアを持つ茶色の制服を纏った少女“ヴィータ”、ピンクの長い髪をポニーテールに纏めている凛々しい風貌でヴィータ、なのは、フェイトと同じ茶色の制服を纏った女性“シグナム”、
ボーイッシュな雰囲気を纏った青いショートヘアの少女“スバル・ナカジマ”、
オレンジのツインテールで何処か鋭そうな雰囲気を持つ少女“ティアナ・ランスター”、
そしてエリオとキャロの計8人だ。
中でもティアナは空港に向かう道中でフェイトが言っていた内容を思い返していた。
【名前は“ディーノ・サイラス”。ミッド南西部を拠点にしていた麻薬密売組織の首領だったんだけど、2年くらい前に死亡が確認された。心臓部分に鋭い刃物で突き刺された痕跡があった事から地元地上部隊は組織内部の誰かがサイラスを殺害したって思ってたみたいなんだけど、私は外部の何者かが殺したんじゃないかって思ってた。それで後から調べてサイラスを取り巻いていた重要幹部も全員同じように殺されていた事が分かったから、地元部隊も外部の犯行と見て捜査を始めたけど2年経った今でも犯人に繋がる証拠は見つからず事実上の迷宮入り……】
組織の首領を殺した誰か、それに対しティアナは過去に自分の兄が追っていた違法魔導士追跡事件を思い出していた。
あの時ティアナの兄は違法魔導士に攻撃され瀕死の重傷を負ったが、交戦時に割り込んだ何者かにより助けられ2年ほど昏睡状態に陥った物の何とかを取り留める事が出来た。しかし生き残った代償と言わんばかりに魔導士の生命線と言っても過言ではないリンカーコアが収縮してしまい以前のように航空魔導士としての活動が出来なくなってしまったらしい。
今でこそ復帰を果たし別の部署で奮闘しているが、兄が諦めてしまった夢を成し遂げるべく無謀とも言える訓練や戦術を使いなのはに叩きのめされたのは記憶に新しい。
「ヴァイス君、クルマを売ってくれた人に会ったのはいつ?」
「えっと……割と直ぐに話がまとまったから帰る道のりも考えれば20分か30分くらい前ッスかね?」
ティアナがフェイトの言葉を思い返している中、なのはがヴァイスに取引した時間を聞きその時間帯の駐車場の監視カメラが記録した映像を警備員がコンソールを操作してモニターに表示する。
その時の駐車場は自動車オークションの会場となっており多数の参加者でごった返していた。この中で特定の1人を探すのは難しいかに思えたが……
「あ、いました、10番カメラ!」
背丈の都合上前列にいたエリオが駐車場出入口付近を監視する10番カメラの記録映像にヴァイスの姿を確認した。
時刻はヴァイスの言った通り今から20分程前の午前10時20分。69年式トリノGTを磨き終え受付に向かおうとした1人の長髪の男にヴァイスが話しかけた所だ。
ヴァイスが話しかけた事で青年がヴァイスの方に顔を向ける。すなわちカメラに青年の顔が映る……。
『……ッ!?』
青年の顔が映像に映った瞬間、なのは、フェイト、ヴィータ、シグナムの4人は思わず言葉を無くした。
カメラに映った青年の顔が、8年前に死んだ仲間だった少年の表情と重なって見えたのだ……。
『なのはさん(フェイトさん)……?』
その様子にスバル達が戸惑い心配そうな声をかけるが、それに気付いたなのは達はハッとなり両手で顔を挟むように叩き目を覚ます。
記録映像の方では青年が商談を進めヴァイスと青年が握手した所だ。
「とりあえず、ここで止めてください」
「はい」
フェイトの指示で警備員が映像を一時停止。そこで待機中のバルディッシュを取り出し映像に映るヴァイスと握手した青年の顔を記録させる。
残りの調査は今の拠点であるハイマン コンドミニアムに戻り隊舎側に確認を取ってみなければ進められない。
そう思い至りなのは達は管理室を後にするが、帰りの道中でのなのは、フェイト、ヴィータ、シグナムの心中は混乱していた。
“彼”は死んで、もういるはずがないのだから……
ED:DREAMCATCHER/ナノ