【キサラ架空デュエル】休園中の海馬ランドをポルナレフランドが乗っ取るんだ!! 作:生徒会副長
・クロスオーバー要素があります。苦手な人は回れ右
・架空スピードデュエル作品です。2020年3月1日のカードプールと効果処理に準じているつもりです(たぶん2020年5月でも大きくは変わっていないはず)。
・時系列的には瀬人VSキサラから数か月後であり、キサラVSドッペルゲンガーよりは前にあたりますが、先にキサラVSドッペルゲンガーを読んだほうが分かりやすいと思います。
「海馬コーポレーション社長の海馬瀬人と、その弟で副社長の海馬モクバ氏が、新型ウイルスに感染していたことが判明しました。これを受けて、同社が経営する遊園地『海馬ランド』は、明日から1週間の休園となり、海馬コーポレーションの従業員は8割がテレワークに切り替わるとのことです」
そんなニュースが流れてから、もう3日が経ったか。少し長くなった日が沈んだ暗い残寒の中、海馬コーポレーション共済病院では優秀な医療スタッフが、ウイルス感染症を患った海馬兄弟に献身的な治療と看護を捧げていた。
そんな状況下、海馬コーポレーションの舵取りを一時的に任されているのが、今の瀬人の電話相手──キサラだ。
『すみませんね。まだまだ分からないことだらけなので、昨日も今日も何度も連絡することになりまして。磯野さんにも頼りっぱなしですし。感染リスクがない身体なのに看病に関われないのも歯痒いです……』
「ふぅん……。ゴホッ……。まあお前の出自と身体構造を世間にバラす訳にはいかんしな。モクバと……ゴホッ……俺の両方が物理的に社会と隔たれた状態で、間違いなく信頼できる人間が出社しているのは心強い……。ゴホッ」
『あぁ瀬人様。どうか無理をなさらないで。まあ8割の社員がテレワークに切り替わってるので、出勤している人数は少ないですけどね』
ちなみに、瀬人もモクバも若いだけあって症状としては軽い風邪程度であり、パソコンを使えばある程度の仕事はこなせる。また、瀬人とモクバの名誉の為に解説するなら、普段の二人、それもウイルスカードを嬉々として使う海馬瀬人が、ウイルスなんぞの餌食になるのはあり得ない。新型ウイルスが大流行したアジア某国から風邪気味で帰ってきたクセに、マスクをしていなかった阿呆の他社営業マンから感染(うつ)されたのである。
そしてキサラに感染のリスクがないのは、彼女の正体が『4枚目のブルーアイズ』だということに由来する。獣の病を人が患うことが滅多にないように、人の病を龍が患うことなど滅多にない。ましてやキサラは莫大な魔力による防御と恒常性維持に普段以上の注意と能力を割いているのだ。
さて、今後のことについて更に細かく瀬人がキサラと話していると、電話の向こうのKC社長室のドアが突然開かれた音が聴こえた。
『キサラ様! 一大事でございます!!』
『何でしょう磯野さん。あと、様付けしなくていいってお伝えしませんでしたっけ? まだ私は半人前ですし。あと、瀬人様と電話中だったのはむしろ好都合だったと考えるべきですかね』
瀬人がキサラの正体を伝える程に信頼し、多くの社員がテレワークに切り替えている中で本社勤務に励む程に優秀な社員、磯野が慌てている様子が窺えた。
『休園中の童実野町海馬ランドが、何者かに内装を書き換えられてしまっています!』
『書き、換え……? 占拠や乗っ取りではなく……?』
『はい! 建物は外装から位置関係まで別のモノに! 数々のアトラクションもデュエルモンスターズと無関係な……ロボットのような……何か別のキャラクターのモノになってしまっており! 海馬コーポレーションとは関係のない、客ともスタッフともつかない無秩序な色や服装の者達が跋扈し! もはや海馬ランドとは別のモノになってしまっております! ソリッドヴィジョンシステムに異常は見られず、人影と機械の数の割に、熱源反応が殆んどありません!』
「っ! ゴホッ! キサラッ! 磯野ッ!」
以前の瀬人なら、この不可解で不愉快な異常現象に対し、怒りや疑問をぶつけることが最優先だっただろう。そしてあくまで科学の力だけで処置しようとしただろう。だが今の瀬人は違う。やるべきことがある。出来ることがある。電話口から命じた。
「磯野は動ける社員と私兵団を動員し、情報規制とSNSの監視と……ゴホッ……マスコミ対策に当たれ! キサラはすぐに、『どんな手を使ってでも』……ゴホッ……海馬ランドへ飛び……ゴホッ……俺達の夢を──取り返して来い!!」
『ハッ! 直ちに!』
『はい! すぐ征きます!』
──瀬人との通話を切ってから、今の海馬コーポレーションの双翼代理はすぐに走り出した。
「キサラさん。いや、敢えて『ブルーアイズ様』とお呼びしましょうか? 書き換えられた海馬ランドでは、何が起こるか分かりません。御武運を!」
「ありがとうございます! 磯野さんも、会社のことをよろしくお願いします! すぐ戻ります!」
エレベーターで二人は別れる。磯野は社員が残る部屋を目指して下へと。キサラは屋上ヘリポートを目指して上へと。
屋上ヘリポートに着いたキサラはふと思い出す。今の、生まれ変わった自分の人生はここから始まったことを。
(あの時の私は、瀬人様を未来と命を消し去る為に、海馬コーポレーションを滅ぼす為にここに立った……)
(でも今は違う! 瀬人様の未来と夢を守り抜く為に、海馬コーポレーションを救う為にここを発つ……!)
ヘリポートの中心に立った彼女は、身体に魔力を張り巡らせ、デッキから3枚の『青眼の白龍』と、1枚の白紙のカードを取り出して呪文を唱える。それは、『破り捨てられた4枚目』から生まれ変わった、自分自身の召喚呪文だ。
「究極の二択の果て、第三の決断に救われた、第四の光! それが我が身、我が真名!」
全身が白く光輝く彼女の背中から、力強い翼が広がる。かつてのモノクロの翼ではない。魔力が青き光の筋となって走る、白き翼だ。その持ち主こそが──。
「ブルーアイズッ!オルタナティブ・ホワイト・ドラゴン──!!」
原形を顕した彼女は、ソリッドヴィジョンのフリをして、闇夜に紛れて、人目につかぬ遥か上空を翔んでいく。
目指すは当然、何かに蝕まれ、何かに書き換えられたという、海馬ランドだった──。
──※──
J・ピエール・ポルナレフは、芸術の国フランスが誇る漫画家である。子どもの頃からの夢を叶え、●ィズニーより売れっ子の漫画家になった、空に伸びる銀髪と筋肉質な身体つきが特徴の、20代のナイスガイだ。
──というポルナレフのプロフィールは、殆んどカメオという人物がポルナレフの願いを叶えることで付与されたデタラメである。
本来なら、カメオにはこれほどの願いを叶える力などない。土や石を、本人が欲しかった財宝や会いたかった人に見せかける程度のことだ。
しかしどういう偶然か、「どんな願いも叶えることができ、宇宙の誕生を担った」という、デュエルモンスターズ界のとある伝説のカードとカメオの力が合わさり、時空を超えた瀬人やキサラが住まう世界で、ポルナレフは自分の世界と漫画をモチーフにしたテーマパークを、海馬ランドに上書きする形で造り始めてしまったのである。
ロボットの硬さと筋肉のしなやかさが同居したキャラクターが独特のカラーリングの乗り物になっており、スタッフはイタリア人ややらナチス科学兵やら改造制服を着た日本の男子高校生やら。銅像としては、198cmのイギリス人やら、腹に銃機関砲を備えたドイツ軍人やら、道端にへばりつく牛のクソのような髪型の高校生やらが並んでいて……。
見る人が見れば『ジョジョランド』と呼ぶべきテーマパークなのだが、あいにくとそうは呼ばない。
「おっしゃあ~! スタッフどもぉ、俺の漫画のテーマパークを造るため、キリキリ働けよぉ~! ポルナレフランドをおっ立てるんだ!!」
自分を売れっ子漫画家だと信じて止まないポルナレフが、天空に向けて夢を叫ぶ。だが生憎と、此の地に夢を描く者としては先約が居る。土地の持ち主が居る。其れが黙っているはずもなく──天空から隕石のごとく強襲してきた。
「こぉーーらぁーーーー!!」
ドン☆と鳴り響くは、顔と胴体だけ人間態に戻したキサラの龍爪が、地面を抉った音だった。ポルナレフは素早く飛び退いて、その一撃を避けていた。
「この海馬ランドは! 瀬人様とモクバ君が、大人の陰謀や社会の闇と闘い抜いた末に、愛と希望を抱いて創りあげた夢の国! ポルナレフランドなるものを創るなら他所で勝手にやってください! 即刻立ち退かないと、バーストストリームで消し炭にしますよ!!」
魔力を感じ取ったので、キサラは正体を隠す気もなくいきなり本気で脅しにかかった。
怒りと愛に燃える切れ長の青い眼。ハリのある白い肌。鍛えられた刀のような銀の鱗で覆われた、龍の尾と四肢と翼。瑞々しい女体と強靭な龍の力の、両方と調和するストレートの銀髪。そんな彼女は、とても──。
「ふつくしい……! ブラボー! おお……ブラボー!!」
「海馬ランドだけじゃなく台詞までパクる気ですか? 本当に消し炭になりたいようですね……」
残念ながら瀬人以外に美しさを称えられても、キサラの機嫌は良くならない。だがポルナレフに恐れはなさそうだ。
「フッ……。天界から舞い降りた戦女神と見間違える程のお嬢さん。貴女のドラゴンの力と──!」
ポルナレフの傍に立つ者が現れる。鎧を着た、細身の中世騎士のようなそれは、軽く十発程の突きを肩慣らしに空撃ちして見せた。
「このJ・ピエール・ポルナレフの『銀の戦車』で、死闘に興じるのもアリだとは思うぜ? だがそれをすれば! アンタの柔肌はタダじゃあすまないッ! そいつはプレイボーイで紳士な俺としては実に避けたい!」
その分析にはキサラも頷ける。『銀の戦車』と呼ばれた霊的な何かの刺突の素振りは実に素早く、負ける気はしないものの無傷で済まないのは覚悟していた。
「そこでぇ! ここは平和的に、デュエルで決着をつけようじゃないか! 俺が勝てばここはポルナレフランド! あんた……えぇっと……」
「名乗らせて頂きましょう。キサラと申します」
「キサラさん! あんたが勝てばここは海馬ランドに戻る! 簡単だろ?」
「良いでしょう。デュエルで道が開けるのなら、望むところです!」
元が攻撃力3000の通常モンスターだっただけあって、キサラの考えはそれだけシンプルだった。白龍態を解き、デュエルディスクを構えて、二つ返事でデュエルを受ける。ただし。
「ただし、だ! 今ここはポルナレフランドになっている! デュエルのルールは、ポルナレフランドのルール──『スピードデュエル』で受けてもらうぜッ!」
「スピードデュエル……!?」
ポルナレフ曰く。スタート時はライフ4000、手札4枚。使用出来るカードとレギュレーションは独自のもの。メインフェイズ2とモンスターゾーン両端と魔法罠ゾーン両端がなく、デュエル中に条件を満たすと『スキル』というカードとは別の効果を使うことが出来るデュエル──。それがスピードデュエルだという。
本来なら普通にデュエルすれば済むため、この要求をキサラが飲む道理はない。しかし、使用出来るカードのリストを見て気が変わった。
キサラがKCの研究開発部門で働く中で発見・開発した最新カードが、使用可能なレギュレーションになっていたのである。使いたいカードが使えるなら、通常のデュエルでもスピードデュエルでも問題ないと思えた。
「良いでしょう。そのスピードデュエル、お受け致します!」
早速キサラは、スピードデュエル用にデッキを一部組み換える。持ち合わせていなかったカードはポルナレフが用意したカードも採用した。そんなことをしている間に物理的に襲ってくるのではないか、用意されたカードに何か仕込まれているのではないかとキサラは警戒したが、そんな様子は見られなかった。そんな真面目さがあるなら、最初から海馬ランドをポルナレフランドに上書きなどしないで欲しかったのだが。
デッキが組み終わったところで、いざ尋常に──。
『スピードデュエル!!』
キサラLP4000(先行)
≪VS≫
ポルナレフLP4000(後攻)