【キサラ架空デュエル】休園中の海馬ランドをポルナレフランドが乗っ取るんだ!! 作:生徒会副長
『スピードデュエル!!』
キサラLP4000(先行)
≪VS≫
ポルナレフLP4000(後攻)
「俺は、デュエル開始時に効果発動! 『バランス』のスキルだ!」
「えぇ!? いきなり!?」
まだデッキからカードを引いてすらいないのに、とキサラは驚く。初期手札4枚に、ある程度の操作を加えるスキルらしい。スキルとデュエルディスクの自動シャッフルで決められたデッキトップがポルナレフの初期手札に、キサラはごく普通に初期手札をドローしたところでデュエルが開始した。
「私の先行! ポルナレフランドに対する上書きです! フィールド魔法『光の霊堂』を発動!」
夜のポルナレフランドの中心、2人デュエルフィールドが、白亜の壁によって隔てられ、冬の月光は暖かな陽光に置き換わる。現代で一般的なファンタジーを元に脚色はされているが、これこそキサラの故郷をモチーフにした新しいカード群の1つだ。
建物だけでなく、当然そこで暮らしていた人々もカードで再現されている。
「『青き眼の賢士』を通常召喚! 召喚成功時の効果で、レベル1光属性のチューナーをデッキからサーチします! 『青き眼の乙女』をサーチし、そのまま『光の霊堂』の効果で追加召喚!」
青き眼の賢士/攻800(通常召喚)
青き眼の乙女/攻0(デッキ→手札→場)
キサラ/手札3枚→2枚
かつてキサラが生まれ育った町で特に賢く勇敢だった青年を模したモンスターが霊堂の右手に、キサラ自身の夢想を具現化したモンスターが霊堂の左手に集う。人が揃ったところで、ついに龍の神への祈りが始まる。
「『光の霊堂』の更なる効果を、『青き眼の乙女』を対象にして発動です! デッキから通常モンスターを1体埋葬し、そのレベルに比例して自分フィールドのモンスターを強化します。 しかし! 『青き眼の乙女』には、効果対象になったときに発動する誘発効果があります! これにより出でよ! 『青眼の白龍』!!」
青眼の白龍/攻3000(デッキ→場)
青き眼の乙女/攻0→800
青眼の白龍(デッキ→墓地)
青き眼の2人の祈りに挟まれて、霊堂の中心に白き龍が降臨する。
遥か往古、青き眼の一族が信仰した伝説はここで終わりだ。しかし、次元を超えて未来を生きるキサラは、伝説の続きを紡ぐ。
「レベル8の『青眼の白龍』に、レベル1の『青き眼の賢士』をチューニング!」
2枚のカードから解き放たれた9つの星が、新たなドラゴンを生み出す。ただでさえ高次元の存在である『青眼の白龍』よりも高い次元の力を宿した其れの身体は、光を透過し、自らも光を放つ。土の魔力すら金の棘として取り込んだその龍の名は──。
「天地を司る精霊の力を、青き眼に宿せ! シンクロ召喚、『青眼の精霊龍』!!
そして、カードを1枚伏せて、ターンエンドです!」
キサラLP4000/手札1枚/伏せ1枚
青き眼の乙女/攻0(光の霊堂の効果終了)
青眼の精霊龍/守3000
白き霊堂(フィールド魔法)
このターンにキサラが使用したカードは、『この世界においては』海馬瀬人やキサラの関係者しか知らない、最新かつ希少なカードばかりだった。しかしポルナレフはさほどの驚きや感動や恐怖を覚えていないようだった。ポルナレフの世界とはカードの価値が違うのか、それともポルナレフランドの主になったときに得たデュエルの知識を基準にすると、大して珍しいカード群でもないのだろうか。それとも──。
「あ……ありのまま 今起こった事を話すぜ!
『銀髪美女の髪と指芸に見惚れていたら、いつの間にか妨害能力と回避能力を持つ守備力3000のドラゴンと、ちょっかいを出すと攻撃力3000のドラゴンを喚び出す美少女がフィールドに並んでいた』
な……何を言っているのか分からねーと思うが、おれも何をされたのか分からなかった……。頭がどうにかなりそうだった……。アニメオリカだとか、レギュレーション違反だとか、そんなチャチなもんじゃあ断じてねえ。もっと恐ろしいインフレリンクスの片鱗を味わったぜ……」
……ただの女好きという可能性も、一応残ってるだろうか。
「……サレンダーして立ち退いてくれるなら、それはそれで良いのですが?」
「ハハッ、冗談冗談!」
と、言いつつポルナレフはサッとカードをドローする。先ほどの動揺はただの芝居か、はたまた創造神(運営)サマに対する愚痴か。
「でもこのターンじゃどうしようもねーのは事実だな! とりあえず『剣闘獣ベストロウリィ』を通常召喚して……」
「一応使っておきますか。『底なし落とし穴』!」
剣闘獣ベストロウリィ/攻1500→/守800(裏側)
鳥類の頭蓋を持つ緑の戦士のヴィジョンが一瞬だけ現れたが、すぐにカードで蓋をされて消えてしまった。場に残ったのは裏側守備表示モンスター1体だ。
「ホント容赦ねーなー。手札を3枚伏せてターンエンドっと」
ポルナレフLP4000/手札1枚/伏せ3枚
剣闘獣ベストロウリィ/守800(裏側)
ポルナレフのターンが守備固めで終わったところで、キサラのターンに移る。
「私のターン、ドロー! 再び『光の霊堂』と『青き眼の乙女』のコンボを使います! 3枚目の『青眼の白龍』をデッキから埋葬し、1枚目の『青眼の白龍』を墓地から復活させます!」
青き眼の乙女/攻0→800
青眼の白龍/攻3000(墓地→場)
青眼の白龍(デッキ→墓地)
神聖な霊堂が敬虔な乙女に授ける光と、乙女自身の祈りが放つ光が、激しくフィールドを包む。だがスピードデュエルのフィールドは狭く、もうこれ以上の光を収容出来そうにない。フィールドを空けつつ攻防の力を高めるため、キサラは更なるシンクロ召喚を行うことにした。
「レベル8の『青眼の白龍』に、レベル1の『青き眼の乙女』をチューニング! 蒼穹を臨む銀嶺が如く、此処にそびえ立て!」
これは新しく開発したカードではないが、希少性は非常に高い。かつてキサラの身から零れ落ちた守護の光がカード化したもの。逞しい脚で力強く大地を揺らして現れたその龍こそ、″この時空世界において″最初に召喚されたシンクロモンスター。
「シンクロ召喚、『蒼眼の銀龍』!! 特殊召喚に成功した場合、誘発効果『ホワイトフレア・サンクチュアリ』が発動! 2回目のエンドフェイズを迎えるまで、自分フィールドのドラゴン族に効果対象耐性と効果破壊耐性を付与です!」
蒼眼の銀龍/攻2500(シンクロ召喚)
脚と翼と、尾と声で、『蒼眼の銀龍』が大地と空気を揺らすと、白い炎が雪のように降り始める。その焔は『蒼眼の銀龍』と『青眼の精霊龍』を守る力として2体を囲った。
「空いたフィールドに『青き眼の祭司』を召喚し、召喚成功時の効果で墓地から『青き眼の賢士』を回収します。そのまま『青き眼の賢士』の効果を発動! 手札の自身とフィールドの効果モンスターの魂を捧げて、青き眼の龍族をデッキから喚び出します!」
手札と墓地をシャトルランする『青き眼の賢士』は、キサラと里と龍神の為なら、喜んでその力を貸してくれる。コストとして手札から墓地に捨てられた『青き眼の賢士』の秘術の後に続いて、『青き眼の祭司』もその老体を光の渦に捧げる。秘術によって開かれた門から、新たなドラゴンが現れる。
「出でよ、聖なる影!『白き霊龍』!」
白き霊龍/攻2500(デッキ→場)
″影″と呼ばれるだけあって、身体は透けており、″実体″である『青眼の白龍』に比べて鋭さで一歩譲るドラゴンだ。しかし″影″だからこそ『見えるけど見えないもの』を制することが出来る強さも持っている。
「『白き霊龍』が召喚・特殊召喚に成功した時の効果、発動です! 相手の魔法・罠を1枚除外出来ます! 中央のカードを消し去ります!」
「クソったれ! 『銀の鏡壁』が除外されたか!」
あらゆる光と攻撃を反射・半減するはずの『銀幕の鏡壁』ではあるが、『白き霊龍』が放つ神々しく淡い光は、鏡ではなく容れ物であるカードの方を風化させた。
「よし! いいカードを除外出来ましたね! 手札を1枚伏せて──バトルです!」
まだ伏せカードは2枚残っているが、攻撃力2500のドラゴン3体による蹂躙が始まる。ベストロウリィで1発防いでも、残り2発がポルナレフに直撃すればゲームエンドだ。しかも3体中2体は白い炎で守られている。
「『蒼眼の銀龍』で、裏側守備になっているベストロウリィに攻撃です! ブレスを吐くまでもないですね!」
地を蹴る脚力と、天を駆る翼の揚力を活かし、『蒼眼の銀龍』が牙と爪を裏側守備表示のカードに突き立てようとした──その時だった。
「あいにくと! その攻撃の軌道はわかっていた! 軌道がよめれば、切るのは……たやすい! 罠カード『分断の壁』発動!」
相手が攻撃宣言したとき、相手モンスター1体につき、相手の攻撃表示モンスターの攻撃力を800ダウンさせるカードである。
「く……チェーン発動!『青眼の精霊龍』! 自身をリリースして、疑似シンクロ召喚です!」
いま攻撃宣言していたのは『蒼眼の銀龍』なので、このサクリファイス・エスケープ能力は、本当は今使わずにもう少し温存するのも手ではある。しかし、キサラの知識と直感がそうさせた。『青眼の精霊龍』が昇天することで生まれた光の球体の中から、2体目の『蒼眼の銀龍』が守備表示で特殊召喚される。先ほど同様に効果破壊耐性と効果対象耐性も付与されるが、『分断の壁』の効果は防げない。
「モンスターの数と、攻撃してきたモンスターに変化はねーぜ! 800×3の2400ポイントッ! ドラゴン2体の攻撃力を切断し、攻撃を弾き返すッ!」
青眼の精霊龍(リリース)
蒼眼の銀龍/守3000(EXデッキ→場)
蒼眼の銀龍/攻2500→/攻100
白き霊龍/攻2500→/攻100
剣闘獣ベストロウリィ/守800
≪VS≫
蒼眼の銀龍/攻100
『分断の壁』のカードから『銀の戦車』が飛び出す。そして急所を避けるように、『蒼眼の銀龍』と『白き霊龍』の牙と爪と翼を目にも止まらぬ早業で切り捨てた。満身創痍になった『蒼眼の銀龍』の突撃は、表側になった『剣闘獣ベストロウリィ』が起こす突風で弾き飛ばされる。
「くっ……!」
キサラLP4000→3300
巨龍2体が墜落した衝撃波で、キサラのライフが僅かに削られる。
──いや、僅かと言っていいのだろうか? 攻撃力たった100ポイントのモンスター2体が棒立ちで残ってしまった。しかも初期ライフがLP4000ポイントスタートのルールなので、既に無駄な攻撃を受け流す余裕がない。
「『剣闘獣』が戦闘を行ったことで効果発動だぜ! スタンドを引っ込めて新たなスタンドをデッキから特殊召喚し直す! 来いっ、『剣闘獣ウェスパシアス』!」
剣闘獣ベストロウリィ(場→デッキ)
剣闘獣ウェスパシアス/攻2300→2800(デッキ→場)
青い甲冑の海竜剣士が、ポルナレフのデッキから飛び出す。そしてフィールドに降り立つと同時に、足元から起こした水流を自らの剣に纏わせる。
「ウェスパシアスが剣闘獣の効果で特殊召喚された場合、自身を含めたフィールドの剣闘獣全ての攻撃力を500アップさせる。 次のターン、俺が攻撃力200以上のモンスターを出せば勝負は決まるッ!」
「……ターン、エンドです……」
キサラLP3300/手札なし/伏せ1枚
蒼眼の銀龍/守3000
蒼眼の銀龍/攻100
白き霊龍/攻100
「俺のターン、ドロー!」
ポルナレフが引いたのは罠カードだった。だが、別に彼は「攻撃力200以上のモンスターを引けば」とは言っていない。「出せば」とは言ったが。
「カードを1枚伏せ。勝ったッ! 攻撃力1500の、『剣闘獣ベストロウリィ』を通常召喚!」
元から手札にあったカードを、さも今引き当てたかのように召喚する。
「2枚目のベストロウリィですか……!」
「1枚目を引き直した可能性もあるだろ?」
「どちらにせよ、こちらも2枚目のこのカードを発動します!『底なし落とし穴』!」
剣闘獣ベストロウリィ/攻1500→/守800(裏側)
一見前のターンと全く同じ攻防に見えるが、実際は違う。今度のベストロウリィは、落とし穴に嵌まっても止まらない。
「このターンでは倒せねーか! だったら融合召喚だ! ベストロウリィとウェスパシアスを素材としてデッキに戻し──『剣闘獣ガイザレス』!!」
裏側になっているはずのカードからベストロウリィが飛び出し、ラクエルは蒼のオーラになった後、ベストロウリィ──いや、『剣闘獣ガイザレス』の鎧になった。
剣闘獣ベストロウリィ(場→デッキ)
剣闘獣ラクエル(場→デッキ)
剣闘獣ガイザレス/攻2400(融合召喚)
「ガイザレスが特殊召喚に成功したとき、フィールドのカードを2枚まで選択して破壊できるッ! モンスターは『蒼眼の銀龍』の効果で守られているんだったな? ならば俺は、そこ以外を切り刻む!」
ガイザレスの翼から風の刃が放たれると、『白き霊堂』の柱に、壁に、窓に──いや、空間そのものに亀裂が走る。
バリン!と、白光で満たされた神聖な空間が砕け散ると、其処は夜闇にゴゴゴゴ……とした圧力の影が潜む遊園地、ポルナレフランドに戻ってしまった。
「ガイザレスで、攻撃力100の『蒼眼の銀龍』を攻撃!」
ガイザレスの翼が、今度はそれ自体が刃として使われ、満身創痍で無抵抗の『蒼眼の銀龍』を、魚を捌くかのように容易く斬り捨てた。
剣闘獣ガイザレス/攻2400
≪VS≫
蒼眼の銀龍/攻100(戦闘破壊)
キサラLP3300→1000
「くっ……!」
「バトル終了後、ガイザレスは2体の剣闘獣に分離するッ! デッキから来い、『剣闘獣ラクエル』と、『剣闘獣ウェスパシアス』!」
再びウェスパシアスが現れると同時に、新たに赤い甲冑を身につけた猛虎『剣闘獣ラクエル』も特殊召喚される。だがその赤い防具の一部がすぐ炸裂し、代わりに焔の大車輪がラクエルの周囲を廻る。
「ラクエルは、剣闘獣モンスターの効果で特殊召喚した場合、甲冑の一部を脱ぎ捨てて身軽になる。攻撃力は1800から上昇して2100! ウェスパシアスの効果も合わされば、攻撃力2600! これでターンエンドだ!」
ウェスパシアスが起こした水流と、ラクエルの火炎が交り合い、高エネルギーの二重螺旋になる。
剣闘獣ガイザレス(場→EXデッキ)
ポルナレフLP4000/手札なし/伏せ2枚
剣闘獣ウェスパシアス/攻2300→2800
(デッキ→場)
剣闘獣ラクエル/攻1800→2100→2600
(デッキ→場)
「私のターン! スタンバイフェイズに、生き残った方の『蒼眼の銀龍』の効果発動です!」
キサラのライフは少なく、ポルナレフは2体のモンスターを従えているが、その攻撃力は『青眼の白龍』より低い。ここで蘇生させれば十分すぎる戦力になる──が。
「させるかっ! 行け、『剣闘獣の戦車(チャリオッツ)』!!」
再び、中世騎士風のスタンド『銀の戦車』が、今度は『剣闘獣の戦車』のカードから飛び出す。そして効果を発動しようとする『蒼眼の銀龍』の前に立ち塞がった。
「切り刻んでやるぜ! 大根をおろすように! ホラホラホラホラァ!!」
ブルーアイズの進化の1つが、守護の光の象徴が、大根おろしなぞに例えられてバラバラにされるのは耐え難い屈辱だ。しかしそれがデュエルのルールであり現実であり、その強さ誉れ高い『剣闘獣の戦車』の効果だった。
「くっ……!」
キサラに残されたのは、攻撃力100で翼すら失った『白き霊龍』と、たった1000のライフだけ……に見える。しかし、追い詰められればこそ使える力もある。
「私のライフが2000未満になっているので、スキル『光射す!』を発動です! 光属性モンスターを強化するフィールド魔法を展開します!
そして『青き眼の祭司』をデッキに戻し、『白き霊龍』を対象に効果発動です! 霊龍よ──惨めなその姿を晒すなら、長老の秘術で以て、我が半身復活の礎になりなさい!」
キサラの影がポルナレフの方へと伸びるほどの、強烈な光が射す。その光に照らされて、聖なる影である『白き霊龍』と、影として浮き上がった『青き眼の祭司』が光の粒子となって消えていく。その光の粒子が蘇らせた輪郭は、まさしく瀬人とキサラの魂のカード。このランドで、真に讃えられるべき偶像。
「蘇生召喚、『青眼の白龍』! 攻撃力3500です!」
シャインスパーク(スキルで発動)
白き霊龍(場→墓地)
青き眼の祭司(墓地→デッキ)
青眼の白龍/攻3000→3500(墓地→場)
翼を光輝かせて現れた白き龍。剣闘獣を圧倒する攻撃力の前に敵は無い。
「バトルフェイズ! 『剣闘獣ラクエル』に、滅びの爆裂疾風弾!!」
フィールドに光が満ちていることにより、破壊エネルギーの充填が、より早く、より強く、より大きく行われる。しかしそれを発射するより早く。
「ダメージステップに、伏せていた速攻魔法発動! 『星遺物を巡る戦い─スターダスト・クルセイダース─』! 返り討ちだッ!!」
剣闘獣ウェスパシアス/攻2800→/攻2300
(一時的に除外)
剣闘獣ラクエル/攻2600→/攻2100
青眼の白龍/攻3500→/攻1200
『剣闘獣ウェスパシアス』が、自身の身体を霧散させながらその剣をブルーアイズの顎に投擲する。剣はブルーアイズの脳幹を貫き、発射直前に妨害を受けた爆裂疾風弾は風船が割れるように暴発した。
その隙に、ラクエルの紅い鉤爪が、空と空の間に炎を取り込んだ斬撃を幾重にも繰り出す。
「ホラホラホラホラァーーッ!!」
青眼の白龍/攻1200(戦闘破壊)
≪VS≫
剣闘獣ラクエル/攻2100
「くっ……ううううっ!!」
ソリッドヴィジョンとはいえ、無惨に散りゆく自分のドラゴンの破片飛沫を、当たる面積を最小にして防御する暇もなく、モロに喰らってしまう。
キサラLP1000→100
「やった!勝った!仕留めた!海馬ランド完! ポルナレフランドの完成だ!」
「ふっ……ふふふ……」
笑顔を浮かべたのは、もはや勝ちが見えたポルナレフ1人だけではなかった。キサラもまた不敵に嗤う。
「ねぇ……。ポルナレフさん? 貴方……。深く、心から、真に、神に誓って、どんな罪を背負ってでも……。ポルナレフランドを創りたいんですか……?」
「あぁん? そんな大それたもんじゃあねーぜ? 紅海の無人島の砂浜で錆びたランプを拾ってよー。そこから出てきたランプの魔神が『願い事を言え』っていうから、試しに到底叶いそうもない願い事を言ってみたのさ」
「そうですか……」
万にひとつ。キサラは、ポルナレフの夢と執念がとてつもなく強いものだったなら(当然私や瀬人様やモクバ君程じゃないでしょうけどねという確固たる自信の気持ちはありますけどね)、業務提携ぐらい考えてもいいかと思っていた。
しかし、実際はただの、万能の願望器の性能テスト、ただの思いつきだとハッキリした。ならば──。
「ならば私は! この程度で負ける訳にはいきませんね!!」
キサラが、最後に残された手札を天に掲げる。母なる海のように、深い深い蒼のカードだった。
「私は違う。私は、あの人の為なら何だって出来る。何処へでもいける。何者にだってなれる。何度でも立ち上がれる!
このドラゴンは、自分のブルーアイズモンスターが戦闘か相手の効果で破壊されたとき、手札から特殊召喚出来ます!」
白い身体に青い瞳の龍。それだけなら『ブルーアイズ』の進化形の一種に見えるだろう。
だが実際には、これは『ブルーアイズ』ではない。これは彼女が、彼の為なら、『キサラ』では無くなろうとも、『青眼の白龍』では無くなろうとも構わないという、深く重過ぎる愛の具現。
「罪深き過去と真実の未来──。時空を越え、神をも超えて、蒼き我が心の深淵に宿した白き愛よ、ここに翼広げよ!」
人の世の、罪と真実を嘲笑う巨龍『Sinトゥルース・ドラゴン』が遺した因子から生まれた龍──。
「ディープアイズ・ホワイト・ドラゴン!!」
暁の陽光のような5枚の優雅な翼。その翼と背びれには、巫女の鈴や魔除けのピアスや貴婦人のネックレスを思わせる輪状の羽根が連なる。龍でありながら、その腰回りは人間世界の女神像のような悩ましい曲線を描く。
人の常識、龍の限界、世の条理を超越した愛の力が、そこにはあった。
「ディープアイズは、墓地のドラゴンの力を使って敵を斃します! 自身の効果で特殊召喚した時、墓地のドラゴン族1種類につき、相手に600のダメージを与えます! また、このカードの元々の攻撃力は不定ですが、フィールドに降臨した場合に、墓地のドラゴン族1体と同じ攻撃力を得ます!」
「て、ことは……」
「効果ダメージは2400! 攻撃力は『シャインスパーク』と合わせて3500! ラクエルを盾にしても、3800のダメージを受けて貰います!」
墓地から輪郭だけの姿で『青眼の白龍』『白き霊龍』『青眼の精霊龍』『蒼眼の銀龍』が出現して、刺すように細いレーザー状の光線でポルナレフを焼く。
「ぐぅぅ……!」
本丸であるディープアイズは5つの翼の生え際になっている円輪から、圧し潰すような極太の光線を放った。
「ぐぉおおおおーーッ!?」
ディープアイズ・ホワイト・ドラゴン
効果ダメージ/600×4=2400
ディープアイズ・ホワイト・ドラゴン
/攻3500
≪VS≫
剣闘獣ラクエル/攻2100(戦闘破壊)
ポルナレフLP4000→1600→200
「私のターンは終了です!」
「ぐ……。ターン終了時に、除外していた『剣闘獣ウェスパシアス』が帰ってくるぜ……!」
キサラLP100/手札なし/伏せなし
シャインスパーク(フィールド魔法)
ディープアイズ・ホワイト・ドラゴン/攻3500
「そして俺のターン!……Yeah!!」
キサラの思わぬ反撃と自分のライフ激減に狼狽していたポルナレフだったが、引きの良さで威勢を取り戻した。浮き沈みの激しい男である。
「『剣闘獣ベストロウリィ』を裏側守備表示で出して……2体融合! 再びガイザレスだッ! あんたのフィールド魔法とディープアイズを破壊するッ!!」
動作と処理が、滑らかで無駄がない。裏側守備カードから出たベストロウリィの、ガイザレスへの進化。そのガイザレスが羽ばたくことで生まれた風の刃。その鋭さが切り刻む光のフィールド魔法と光の龍。
速い。実に速い。
……キサラのライフを削りきる深淵には程遠いが。
「一見正しいように見えた今の攻撃……。けれど、それだけでは届かない深淵に溺れてもらいましょう!
フィールドのディープアイズが効果破壊された場合、相手フィールドのモンスターを全て! 道連れに効果破壊します!!」
「なぁにィィイイイイ!?」
剣闘獣ベストロウリィ(手札→場→デッキ)
剣闘獣ウェスパシアス(場→デッキ)
剣闘獣ガイザレス(融合召喚→破壊)
ディープアイズ・ホワイト・ドラゴン(破壊)
シャインスパーク(破壊)
龍の散り際に残された丸い羽根が一瞬光ったかと思えば、蒼の矢に変化していた。モンスターゾーンに対する無差別な矢の雨を浴び、ガイザレスは破壊された。
キサラとポルナレフ。LP100とLP200。互いに手札もフィールドも殺風景なものになった。
「ふふっ。まるで、ついこの前に観た西部劇のガンマンみたいですね? 『ぬきな! どっちが素早いか試してみようぜ』なんて台詞が、あったような気がしますよ」
引き金の代わりに引くのはデッキ。銃弾の代わりになるのは『攻撃力200以上のモンスター』だが、そこに懸ける誇りと未来には些かの差もない。
「……引けよ。引き金を……!」
ピシュ──と銃声の代わりに響いたのは、キサラのカードが風を切る音。そのカードの正体は──。
「……。『銀龍の轟砲』! いでよブルーアイズ!!」
銃弾ではない。
砲弾でもない。
この決闘を終わらせるのは、爆裂疾風弾。
「滅びの、バーストストリーム!!」
海馬ランドの夢の象徴が、ポルナレフランドの主を吹き飛ばした。
青眼の白龍/攻3000(銀龍の轟砲で蘇生)
≪VS≫
(直接攻撃)
ポルナレフLP200→0
「ぐおおおおぉぉ──ッッ!!」
爆裂する弾丸に撃たれ、ポルナレフは地に伏せることなった。
────
ザッザッと落ち着いた確かな足取りで、キサラは倒れているポルナレフに近づいていく。
「ジャン・ピエール・ポルナレフさん。私と貴方の間に勝敗の境界を引いたのは、きっと懸けた思いの差だと思います」
膝を曲げて、彼女は続けて問う。
「デュエルをすれば、相手の魂の在り方が分かると、よく言われます。貴方はきっと、強く誇り高い魂の持ち主のはずです。そんな魂を、思いを懸けた願いは、本当に『ポルナレフランド』だったんですか? もっと尊い願いや夢や闘いが、貴方にはあったのではないですか?」
ポルナレフはすぐには返せなかった。
当たっている。
彼は妹の仇を討つために十年修行した。妹の仇に近づいたとき、対面したとき、倒した後、共に旅する大切な仲間を得た。
それらに比べればポルナレフランドなど、くだらない小ネタの1つだ。
そんなことの為に、孤立無援となり、見知らぬ土地の淑女に迷惑をかけてしまった。
「……すまなかった。ただの思いつきで、ただならぬことをしまったらしい。詫びらしい詫びも出来ないが、せめて元の旅路と仲間のところへ帰るとするぜ」
にわかに、キサラの髪がなびくほどの風が吹いたかと思うと、ポルナレフランドの、あらゆるアトラクション、あらゆる建物、あらゆる銅像が、砂になって散り始めた。
「帰り道は分かりますか?」
「砂と一緒にクールに去ればいいらしい。何故か分かるんだ。なぜか、な」
ポルナレフが立ち上がる。本当にもう去っていくつもりなのだろう。
「もっと普通の……。敵対せずに済むようなところでお会いしたかったです。あるいは、また会えるんでしょうか?」
「それは分からんが……。また会えたなら、またデュエルしてくれ」
正々堂々とデュエルができたなら、もう恨みっこは無しだ。2人は軽い握手を交わす。握手を解き、ポルナレフが背中を見せると、彼とポルナレフランドは、砂嵐の中に消えていった──。
あとに残ったのは、ブルーアイズジェットコースターに、ブルーアイズキャッスルに、ブルーアイズアーケードに……。
ブルーアイズまみれだがブルーアイズランドという名前ではない。元に戻った海馬ランドの姿が、そこにはあった。
「……ホント私まみれですよね、ここ」
『青眼の白龍』本人としては、心中複雑ではあるのだろう。
だがそれほど悪い気はしない。ここは瀬人が描いた夢の国で、これが瀬人の選んだロードなのだから。
それを取り戻せたことが、キサラにはちょっと誇らしい。
「……さて。帰りますか!」
来たときと同じだ。キサラの身体が光輝いたかと思うと、次の瞬間には『青眼の亜白龍』の姿を顕していた。
青眼の亜白龍が飛び去っていく。自らが守り抜いた海馬ランドを、ゆるりと眼下に見納めながら──。