茶柱先生は毎月1日にポイントが振り込まれると言っていた。今日は5月1日だ。昨日までの僕のプライベートポイントは2136980……。そしてポイントが振り込まれると言われている1日の朝になってもポイントは増えていなかった。たった1ポイントもだ……。
(一体何をしたらこんな結果になる……?授業態度も悪かったどころかまともに授業を受けている奴は数人程度だが、果たしてそれだけか?そういえば遅刻欠席の数も少なくなかった……。それ等が積み重なってこの体たらくか!?)
僕は急いで連絡帳を開き、坂柳に電話をする。
『もしもし、どうかしましたか白金君?』
「坂柳に聞きたい事がある。おまえのところにプライベートポイントは幾ら振り込まれた?」
『94000ポイントですね』
(マジか。失点を最小限に抑えるとは……。流石Aクラスの最強格だな。Sシステムをしっかりと理解している)
『そちらはどうですか?聞くところによりますとDクラスの評判は過去最低と聞いていますが……』
「……0だよ」
『0ですか……。普通にしていればある程度は振り込まれていると思いますが……』
「……そんな事、僕が聞きたいくらいだ。済まなかったな坂柳。朝早くから電話して」
『気にしなくても良いですよ。私は白金君と話をするのは嫌ではありませんから』
……これは僕をからかっているんだよな?
~そして~
教室に入るなり池と山内がこっちに詰め寄ってくる。
「あっ、プラチナ!おまえにはポイントが振り込まれていたか?」
「……いや、振り込まれていない」
「プラチナもか~。これだけポイントを貰ってない奴がいるって事は学校のミスか~」
そう言って2人は席に戻る。
(おめでたい奴等め……。ポイントが振り込まれていないのは学校のミスではなく、おまえ達の怠慢が招いた結果だ)
僕は呆れながら席に着く。チャイムが鳴り、茶柱先生が教室に入ってくる。そして……。
「……おまえ達は本当に愚かだな」
僕達に吐き捨てた。正直僕も同感だ。
「佐枝ちゃん先生……?」
「座れ本堂。2度は言わない」
その時の茶柱先生は冷徹という言葉がピッタリ当てはまるだろうな。正直この体たらくだと茶柱先生も失望しても仕方あるまい。
「ハッキリと言ってやろう。ポイントは確実に振り込まれた。それは事実であり、このクラスだけ忘れられた等という幻想や可能性は皆無だ。わかったか?」
茶柱先生の発言に対して不満を挙げる声が多数から聞こえた。僕からすれば全ておまえ達の自業自得だがな。
「はっはっはっ!成程ねティーチャー。私は理解出来たよ。この謎解きがね」
このDクラスでも異端児である高円寺が声高らかに笑う。どうやら彼はこの現状に理解を示したようだ。
「私達のクラスには1ポイントも至急されなかった。そういう事だよ」
「はぁ!?なんでだよ?毎月10万ポイント振り込まれる筈だろ?」
そんな訳がないだろう。本当に毎月10万ポイントが振り込まれるなら、多数の監視カメラなんて存在しない。
「私はそう聞いた覚えはないがね。そうだろう?プラチナボーイ」
プラチナボーイって……。もしかして僕の事か?確かに呼び名に困ったらそう呼ぶ様に言ったが……まぁ良いか。
「……茶柱先生は毎月1日にポイントを振り込まれるとは言っていたが、10万ポイントが振り込まれるとは一言も言っていない。この結果になったのは僕達Dクラスが何かをやらかした事によって0ポイントになった……という事で良いですか?」
茶柱先生に確認する様に言う。僕だって全てを把握している訳ではない。寧ろこの体たらくは視野に入れていなかった。
「そうだ。白金が言ったやらかした何かについて説明しよう。遅刻と欠席が合わせて98回、授業中の私語や携帯を触った回数が391回……。一月でまさかこれ程やらかしてくれるとはな……」
溜め息を吐きながら茶柱先生は続ける。
「この学校ではクラスの成績がポイントに反映される。その結果おまえ達に振り込まれる筈だった10万ポイントを全て吐き出した……。それだけの事だ。入学式の時に説明したぞ?この学校はおまえ達の実力を測ると、そしておまえ達は今月の評価が0だっただけに過ぎない」
その言葉にクラスの殆んどは絶句する。僕も絶句しているよ。まさかこれ程までに遅刻欠席や授業中の私語をしているとは思わなかったからな……。どういった基準でポイントが減らされているかはまだわからないが、これじゃあ来月もクラスポイントが0の可能がある……。
「茶柱先生、僕達はそんな説明を受けた覚えはありません」
Dクラスのリーダーである平田が抗議する。
「なんだ?おまえ達は説明されなければ理解出来ないのか?」
しかし茶柱先生はそれを一蹴した。
「当たり前です。説明さえしてくれれば、皆は遅刻欠席や私語等はしなかった筈です」
おいおい、まさか平田がそのような文句を言ってくるとは思わなかったぞ……。この学校……というか高校は義務教育じゃないし、遅刻欠席や授業中の私語はしてはいけないなんて小中校で教わる筈だぞ……?茶柱先生も同じ事を平田に言ってるし……。
「確かに平田や白金、高円寺を含めて少数だが、真面目に授業を受けている者もいた。だがそんな当たり前の事を当たり前にこなしていたら少なくともポイントが0になる事はなかった……。これは全ておまえ達の責任だ」
全くだ。寧ろポイントを0にする方が難しいぞ……。しかしこの制度は真面目にやっている生徒からすればとばっちりも良いところだ。個人的に救済措置が欲しい。
更に茶柱先生は追い討ちをかける。
「そんなおまえ達に1つ良い事を教えてやろう。遅刻や欠席等のマイナスを0に抑えたとしてもポイントが減らないし、増える事もない。つまりおまえ達の来月のポイントは0……という訳だ」
最悪だ……。これはこのクラスに対して早々に見切りを付けた方が良いんじゃないか……?
そう思っているとチャイムが鳴った。
「……無駄話が過ぎたな。本題に入ろう」
そう言って茶柱先生は大きめの紙を取り出して、黒板に貼る。そこにはA~Dクラスの横に数字が書かれていた。
(Dクラスが0、Cクラスが490、Bクラスが650、そしてAクラスが940……。つまりクラスポイント1につきプライベートポイントが100入るシステムか)
「……何故ここまでクラスのポイントに差があるんですか?」
平田を皮切りに次々とクラスメイトの顔色が絶望に染まった。
「段々理解してきたか?おまえ達が何故Dクラスに選ばれたのかを……」
「そんなの適当じゃないんですか?」
「違うな。この学校では優秀な生徒達の順にクラス分けがされる様になっている。最も優秀な生徒はAクラスに、その逆はDクラスに配属される。つまりおまえ達は最悪の不良品という事だ」
まぁ大方そんな理由だろうな。しかも厄介な事に単純な成績で決めた訳じゃないという……。
「そしておまえ達には更に残念な知らせがある」
(まだあるのかよ。勘弁してくれ……)
黒板に新しい紙が追加される。そこにはDクラスの生徒全員の名前とその横に数字が記載されている。まさかこれって……。
「この数字が何かは不良品のおまえ達でもわかるだろう?これ等は先日やった小テストの結果だ。中学で何を勉強してきたんだおまえ達は?」
思った通りこの数字は先日の小テストの結果だった。しかし酷いな……。点数は上位の数人を除いて60点前後、酷い奴は30点を下回っている。
(最後の3問以外は滅茶苦茶簡単な問題だったぞ?普通に勉強していたら70点以上は取れる筈だが……)
それが出来ないのがこのDクラスなのか?
「良かったな。これが本番なら7人も退学になっていたぞ」
「た、退学!?どういう事ですか!?」
「なんだ説明していなかったか?この学校では中間テストと期末テストで1教科でも赤点を取ったら即退学だ」
その言葉に赤点組……池、山内、須藤の3人は特に動揺していた。
(……まぁ実力主義の学校と言われているくらいだ。不出来な連中はこうして切り捨てられるという訳だろう)
これに関しては勉強をしていれば乗り越えるのは容易だがな。
そしてその後も好きな所に就職出来るのはAクラスだけだの、中間テストまであと3週間だの言われてDクラスの生徒達はお通夜の如く真っ暗な空気だった。
まぁ僕には全く関係ない。退学になるのはそいつ等の実力不足なんだからな。