とりあえず職員室まで来たが……。
「ねぇねぇ、白金君はどうして佐枝ちゃんに呼び出されたの?ねぇねぇ?」
職員室に入るなりBクラスの担任の星之宮知恵(ほしのみやちえ)先生に数分間ずっと絡まれている。何故だ……。
「そこまでにしろ星之宮」
「ちぇっ!今有名な白金君とも話をしたかったのにな~」
(やはり僕は職員室内でも有名なんだな。まぁ仕方がない事ではあるが……。もう僕の平凡な学校生活は存在しないのか……?)
いや、そもそもこの学校に入った時点でそれは無理難題なのかもしれない。だが僕は諦めない。2000万プライベートポイントを貯めて好きなクラスに移動させてもらうぞ……!
「星之宮先生、生徒会の件で少しお時間よろしいでしょうか?」
「一之瀬さん!」
(Bクラス代表の一之瀬帆波(いちのせほなみ)か……。Bクラスの奴の話によると団結力がとにかく高く、人を乗せるのが上手いタイプの人物だったな。確かに人当たりが良さそうだ)
間違いなく坂柳にはないものを持っているな。
「ほら、おまえにも客だ。さっさと行け」
「ぶ~!はーい!」
茶柱先生と星之宮先生は過去に何かあったのか……?必須情報ではないだろうが、その辺りの事もBクラスの奴に聞いてみるか。
(丁度今日は集まりの日だしな……)
「済まないな白金。指導室まで案内する」
茶柱先生の案内の下指導室まで来た。既に綾小路が待機しているようだが……。
「それで用件はなんでしょうか?俺達が呼ばれる理由がわからないんですが……」
切り出したのは綾小路か。呼ばれた理由は大体予測出来るが、確実性のある解答がほしい。
「それなんだが……。私が良いと言うまでここで待っていろ。物音1つ立てる事を許さん」
(横暴かよ……)
「もしも破ったら?」
「おまえ達を退学にする」
横暴かよ!
「失礼します」
職員室に入ってきたのは堀北だった。
「まぁ入ってくれ。……それで私に話とはなんだ?」
(堀北が茶柱先生に話があるのか……。Sシステムについてか?それともDクラスの今後について先生に相談に来たのか……?)
だがこの学校のシステム的に相談に答えてくれるとは思えんが……。
「……率直にお聞きします。何故私がDクラスに配属されたのでしょうか?」
「……本当に率直だな」
(なんだ……?自分がDクラスに配属された事に納得いかないのか?)
だとしたら相当な自信過剰だな。まるで小学生時代の自分を見ているようだ。
「先生は優秀な人間から順にAクラスに選ばれたと仰っていました。そしてDクラスは落ちこぼれが集まる最後の砦だと……」
確かに言っていたな。まぁクラスメイトの過半数はそれに相応しい奴等だし、落ちこぼれた結果があの体たらくだ。
「……どうやらおまえは自分が優秀な生徒だと思っているようだな」
「入学試験も殆んど解けましたし、面接でも大きなミスをした記憶がありません。少なくともDクラスになるとは思えません」
(それだけでDクラス行きを回避出来るのなら僕もDクラスにいない。それなら堀北の内面や協調性等がDクラス配属の理由だろうな)
「……殆んど解けた……か」
茶柱先生は溜め息混じりで紙を数枚取り出した。あれは……答案用紙か?
「偶然ここにおまえの答案用紙がある」
「……随分と用意周到ですね」
本当にな。しかし堀北の態度だとまるで……。
「おまえの入試結果は4位だった。1~3位とも僅差、更に面接試験でも問題はなく、寧ろ好印象だったと思われる」
「……ありがとうございます。では何故?」
「その前に……おまえはどうしてDクラスである事が不服なんだ?」
「正当に評価されていない状況を喜ぶ者などいません」
堀北がDクラスである事に不満があるように聞こえるな。
「正当な評価?おまえは随分と自己評価が高いんだな。だが学力に優れた者が優秀なクラスに入れると誰が決めた?仮に学力だけで優劣を決めるのなら須藤達が入学出来たと思うのか?」
「っ……!」
確かにな。その制度だと僕は余裕でAクラス入りだ。少なくとも今までに対面した奴等の中で僕よりも格上なのは坂柳、綾小路、高円寺の3人とあとは中学が一緒だった不気味な女くらいだ。
「……それに中には正当に評価されたくない奴もいるぞ?」
「…………」
恐らくその人物は僕の隣にいる綾小路だろうな。あいつは僕以上に目立つのを嫌う。だから手抜きをしているのだろう。
(最もそれだけではなさそうだが……)
その辺りも色々調べてみる必要があるな。まぁそれは今じゃなくても問題ない。
「……冗談でしょう?」
「Dクラスにもいると思うがな。現状を喜んでいる変わり者が」
「……説明になっていません」
「まぁおまえはなるべくしてDクラスになったという事だ」
「……そうですか。改めて学校側に聞く事にします」
(聞いても無駄だと思うがな。クラス決めでそのクラスに配属された時点で覆しのない事だろう)
「……ああそうだった。あと2人指導室に呼んでいたんだった。おまえにも関係のある人物だぞ」
……やはり入試関係か?
「まさか兄さ……」
「出て来い綾小路、白金」
このタイミングで僕達を呼ぶのか。っていうか堀北は兄である生徒会長がいると思っていたのか?
「出て来ないと退学にするぞ」
横暴かよ!?とりあえず綾小路に続いて出る事に……。
「……いつまで待たせれば気が済むんすかね」
「茶柱先生、そろそろ自分達を呼んだ理由を教えてもらっても良いですか?」
なんせずっと待機していたし……。
「綾小路君、それに白金君……。私の話を聞いていたの?」
「壁が厚いのか聞こえなかった」
(結構壁薄いと思うが……)
「そんな事はないぞ。おまえ達がいた給湯室からは指導室の声がよく通る」
実際ガンガン聞こえてたしな。
「さて、おまえ達を呼んだ理由を話そう。これは堀北にも関係があるかもしれないぞ?なんせAクラスになる為の近道になるだろうからな」
それなら高円寺とかも呼んだ方が……いや、あいつの自由奔放だからそれは難しいか……。
「……手短にお願いします」
「まずは綾小路。……おまえは面白い生徒だな。入学試験の5教科全て50点、おまけに今回の小テストでも50点……。これが何を意味するのかわかるか?」
「……偶然って怖いすね」
(嘘吐け。チラッと解答を見たが、最後の3問全部正解してるだろうが……!)
「どうしてこんな訳のわからない事をしたの?」
「だから偶然だって……」
まだ偶然で通そうとしているのか……?
「どうだかな……。もしかしたら堀北よりも頭脳明晰かもしれんぞ?」
実際綾小路の実力は計り知れない。もしかしたらこの学校で1番の強敵かもしれないな……。
「更に白金の答案がこれだ」
「嘘……!」
僕の成績を見て堀北が驚愕している。もしかして入学試験での僕の成績を知らなかったのか?坂柳は知っていたのに……。
「白金は入学試験も今回の小テストも全て満点だ。その白金がDクラスにいる……」
この時点でいくら頑固な堀北でもDクラス配属で文句を言う事もなくなっただろう。
「更に……白金、お前のプライベートポイントを提示しろ」
マジかよ……。僕にプライバシーはないのか!?
「……はい」
僕がプライベートポイントを表示すると堀北も綾小路も目を見開いていた。まぁ今僕が持っているポイントは200万を越えているからな……。
「白金は入学式の時点でこの学校の監視カメラを全て確認していたし、そこから対策を練ってプライベートポイントを増やしていた……。更におまえの兄である生徒会長とも接点を持っている」
そこまでバレているのか……。教師陣の情報網は恐ろしい。
「白金は学力も学年トップ、プライベートポイントの対策もバッチリと練っていて、それ等を他の生徒に悟られず、様々な人間ともコンタクトを取っている……。完全におまえよりも数段上回っているなぁ堀北?」
「……っ!」
「まぁともあれ綾小路も白金も底が知れない。Aクラスに上がる際には2人の存在は使えるかもしれないぞ」
そう言いながら茶柱先生は立ち上がる。漸く話が終わったか。目的は堀北を焚き付ける為といったところか?
「……話が終わったのなら失礼します。これから用事がありますので」
坂柳達には長くなりそうだとは伝えたいるが、なるべく急いだ方が良いだろう。
職員室を出ると堀北が呼び止める。大体用件はわかるし、先に言わせてもらおう。
「言っておくがポイントの出所は教えないし、おまえに力を貸すつもりもない。僕は僕でAクラスを目指す」
まぁAクラスには大して興味はないがな……。
「……貴方1人でAクラスに行けるとでも言うの?」
「不可能ではない。なんせこの学校はポイントで買えないものはないからな。僕はそれを利用するだけだ。ポイントもその為に貯めている訳だしな」
堀北は信じられないものを見る目で僕を見る。そこまでの事を言った覚えはないぞ?
「……とはいえDクラスにいる以上最低限の協力はする。学校行事とかな。それ以外はおまえ達で勝手にやってくれ」
僕はそう言って歩きだした。後ろから呼び止める声がするが、2度も時間を割く必要はない。坂柳達を待たせているし、とりあえずこの場は綾小路に任せるとしよう。