この素晴らしい世界でエリス様ルートを 作:エリス様はメインヒロイン
「待たせたな2人とも。それで話しとは……おい、カズマ。クリスはどこに行ったんだ」
悪魔の討伐クエストの翌日、クリスに宿に来るようお願いされたダクネスは険しい顔で聞いてきた。今この部屋にはクリスはいない。俺1人でダクネスを待っていたのだ。
「私もアレとは長い付き合いだ。クリスの様子がおかしかったのは分かっている。隠し事が多いことも。……1人で悪魔の所に行ったのか?」
「……」
昨日の夜。
エリスは俺に頼みごとをしてきた。
『カズマさん一つお願いをしてもいいですか』
どこか決意を感じさせる表情で告げてきた。
『お願い?』
一体なんだろうか。表情から読み取る限りかなり本気のようだ。
『明日ここに呼んだダクネスをどうにか引き止めて置いてくれませんか。あの子は放っておくと森の悪魔の所に向かいそうなので』
『その間エリス様はどうするんですか?』
『私は悪魔を倒してきます』
何を言ってるんだこの人は?この間ボロボロになって帰って来たのに。1人でいく?
『エリス様が行かなくても、あの魔剣の勇者が回復するとか、他の手段を探した方が…』
『カズマさんが心配してくれているのは分かっています。ですが今回は女神としての力を使います。だから大丈夫ですよ』
頑として聞かないエリスに俺はそのお願いを聞くしかなかった。
『ダクネスには絶対に来させないようにしてください』
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「おおかたクリスに私をここに引き止めてくれと頼まれたのだろう。全く、何を考えているんだあいつは」
普段は変態的な言動が目立つが友人のためならまともになるらしい。
「カズマには悪いが私はいかせてもらう」
「『バインド』」
「な、何をする! はっ、まさか2人きりなのを良いことに私を縛り上げてクリスを助けに行きたくば俺の言うことを聞けと脅しをかけるつもりか! く、仕方がない。これもクリスのためだ。だが私は心までは屈しないぞ!」
さっきの俺の評価を返してほしい。縛り上げただけで一瞬で豹変したよこの変態は。俺は縄で縛られて転がっているダクネスに言った。
「まあ待て。俺が頼まれたのはお前を来させないようにしてくれってことだけだ。なら別に俺が後をつけていくのは構わないってことだ」
「さ、さすがにそれは屁理屈がすぎないか?」
うっさい。
「屁理屈でもなんでもいいんだよ。だからお前は大人しくしててくれ。クリスが危なそうだったら引きずってでも連れ戻すから」
「カズマ…わかった、クリスを頼んだ」
「任されたよ」
俺だって心配なんだ。
「ところで私の今の状況は縛り上げられた上にご褒美をお預けにされた、いわゆる放置プレイなのではないだろうか」
雰囲気台無しだよ!
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そうして俺はクリスを追って森に入った。
モンスターはより強大な存在を恐れてそこから離れる習性があるらしい。ならモンスターが逃げて来たその先におそらくあの悪魔がいる。逃げて来たモンスターも潜伏で対処できる。
後はクリスが無事かどうかだ。昨日のエリスの話しを聞く限り自信はあるようだったが。
そうして森の中を進んでいるとカズマの進む先の森に火の手が上がった。悪魔とエリスの場所の見当がついたカズマは急いでその場へ向かい驚きの光景を目にすることとなった。
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森の中の少し開けた空間。そこで神と悪魔は対峙していた。かたや国教となるまで信仰された女神エリス。かたや邪神の右腕の上位悪魔ホースト。両者緊張の中、先に動いたのは女神エリスだった。
「『セイクリッド・ハイネス・エクソシズム』っ!」
エリスが両の腕を前に突き出しその手から白い光の魔法を放つ。それは女神が使う強力な破魔魔法。並の悪魔なら容易に滅せられ、上位悪魔のホーストといえどもまともに食らえば致命傷になりかねない。
「くそがっ、『インフェルノ』っ!」
それに対してホーストはその巨大な体躯からは予想できないスピードでその魔法を躱し、お返しとばかりに炎の上級魔法をエリスに向けて放った。
「くっ、魔法の打ち合いは分が悪そうですね、なら!」
広域を燃やしつくす炎の上級魔法を受けたエリスだが何らかの支援魔法をかけていたのかほとんど無傷でそこに立っていた。破魔魔法は躱されるならばと女神エリスは悪魔に接近戦を持ち込んだ。
「殴り合いか、上等だ!」
エリスとホースト。両者の体格差を比べる必要などないだろう。かたや15歳程の少女の体格のエリス。かたや牛を軽く引きちぎれそうな程の巨躯を持ったホースト。それだけを見れば勝敗は火を見るより明らかだ。しかし、
「はっっ!!」
「ぐおっ!?」
気合の入った掛け声と共に放たれたその拳はホーストの体を押し返した。ここは異世界、勝負の鍵となるのはステータスだ。女神は通常の人間に比べて圧倒的にステータスが高くその上に筋力強化などの支援魔法がかかっている。見た目は少女の拳から放たれる一撃はホーストをも凌駕する。
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いやおかしい。
なんかもういろんなことがおかしい。
2人の戦闘をカズマは隠れて見ていた。火の手が上がりエリスの無事を心配してきてみればこの光景である。
え、普通に押してるんですけど。確かに少し自信はある感じだったけども。というかあの体格差でどうやって戦ってるんだよ。エリス様はバトル漫画の住人だったのか。つーか女神がステゴロってどうなのそれ。あ、また吹っ飛ばした。エリス様こわい。
さすがは上位悪魔といったところかホーストはどうにかエリスの猛攻をしのいでいた。しかしどう見てもジリ貧。致命傷を貰うのも時間の問題である。
「やってられるか、こんなもん!」
「あっ!!」
これ以上は勝ち目がないと判断したホーストはその背に生えた翼を羽ばたかせ空に逃げた。
「逃げるんですか!」
「お前なんかに構ってたら残機がいくつあっても足らねえよ。腹立たしいが逃げさしてもらう」
そう言って悪魔はどこかへと飛び去っていった。エリスはその姿を悔しそうな顔で眺めていた。
もう大丈夫だろうとカズマは隠れるのをやめた。
「エリス様、お疲れ様です」
「っ?! 誰ですか! ってカズマさんですか、もう驚かさないでください」
「話しかけただけでそんな反応された俺の方が驚いたんですけど」
急に話しかけたせいか酷く驚いた反応をしたが俺だと分かるとすみませんと先程までの険しかった顔をやめて笑いながら謝ってきた。
「ダクネスはどうしたんですか?」
「縛って置いてきました」
俺の言葉にそうですかとどこか安堵した表情を見せる。
「エリス様があんなに強いなんて知りませんでしたよ。あの悪魔がかわいそうと思えるくらいに」
「悪魔に対してかわいそうなんて感情は要りませんよ」
「……はい」
さっきの戦いを見た分いつもより恐ろしさを感じる言葉だった。
「だけど悪魔が街に来ても大丈夫ですね。なんたってこっちには女神様がいるんですから」
エリスの無事を安堵し俺がそうちゃかすと、
「いいえ、…それはできません」
エリスは辛そうな顔をして答えた。
「カズマさんにはまだちゃんと話していませんでしたね。私が女神である正体を隠している理由を」
「騒ぎになるからじゃないんですか」
「それもあります。けれどもそれ以外に天界の規定によって神の介入は制限されているんです。それこそ人類が滅びるような敵でも来ない限り力をふるってはいけないのです」
女神として天界の規定は守らなければならないもの。
「もし私が女神の力で街を守ったとします。そうするとそれを知った方たちはどうなると思いますか? 祈っていれば女神様が助けてくれる、そんな考えが広がってしまうのです。全ての人がそうだとは限りません。ですが人は何かにすがろうとするもの」
だけどエリスは吐き出すように言葉を紡いでいる。
「神は人の困難を解決する者ではありません。その背中を押してあげる者です。努力して困難に立ち向かうそれを見守るものです。人は、祈るために生きているんじゃないんです」
それは天界の規定なんて関係ない、エリスとしての願いのように聞こえた。
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本当にこの人はわかりやすいな。
いつも表情がコロコロ変わって素直な感情を見せてくれる。
楽しい時も、嬉しい時も、そして怖い時も。
目の前の人を見捨てるのなんて嫌なくせに他の人達のことを想って我慢している。
誰かを助けることで親友に自分の本当の姿がバレるのを怖がっている。
彼女はそんないろんな葛藤の中にいる。
女神として人々の幸せを願うエリスと、
少女として友人との日々を楽しむクリス。
優しくてどこか臆病な女神様。
そんな彼女の苦しそうな顔は見たくない。
彼女は笑っている姿が1番かわいい。
だから俺は……
「エリス様」
「あの悪魔のこと、俺に任せてくれませんか」
彼女の力になりたいのだ。
うちのエリス様はたぶんゴッドブロー使えます。
ノリでバトル展開書いてみたけどあそこなかったら今回かなり短くなってたから正直助かった。
ホーストさん一応アクアの破魔魔法受けて生きてたから結構強いんじゃね?と思って書いてます。
タイトル通りカズマさんの思いです。
エリス様は女神として世界みんなのことも目の前にいる人もどっちも助けたいのです。それは難しい話だしそうすることによってダクネスや他の友人に正体がバレることを怖がっています。
そんな風に悩んでいるエリス様をカズマは放っておけないんです。
読んでくださった皆様に深く感謝を