この素晴らしい世界でエリス様ルートを   作:エリス様はメインヒロイン

14 / 36
さらばホースト


この上位悪魔と決着を♯2

 夜が明けた。

 俺は部屋で自分の装備と作戦の最終確認していた。どんな不確定要素があるのかわからない。はっきり言って不安だ。そんな俺の不安を知ってか知らずか、エリスが話しかけてきた。

 

「大丈夫ですよ。きっと上手くいきますから。これはそのためのおまじないです。あなたに祝福を『ブレッシング』」

 

「ありがとうございます。さらにやる気が出ましたよ」

 

 安心させるように微笑みながら運を上げる魔法をかけてくれる。

 そうだ。やれることはやった。後はこの人が信じてくれる俺を信じるだけだ。

 

  ーーーーーーーー

 

 めぐみんとゆんゆんの2人がちょむすけを持って平原で待っている。2人ともどこか緊張した表情だ。最初はあの黒猫を作戦に使うのに反対していたが悪魔の油断を誘うためだと説得したら渋々了解してくれた。

 

 そうして数分程待っていると何処からか悪魔ホーストが飛んできた。

 

「素直にウォルバク様を渡してくれて助かるぜ。どうもこの辺に厄介なやつが現れてな」

 

 そう喋りながら近づいてくる。2人が取引に応じたと油断しているようだ。まだだ落ち着け。スキルの射程内に入ってくるまで後数歩。

 3、2、1…、

 

「いまだっ!『バインド』っ!」

 

「了解っ『スキル・バインド』っ!」

 

「何っ?!」

 

 俺とクリスは同時に拘束魔法と相手のスキルを封印する魔法を放った。唐突に現れた俺たちに相手は驚いている。

 

 俺の作戦は至極単純だ。

 悪魔を誘き出し潜伏で隠れていた俺とクリスが拘束及びスキルを封じる。縄は丈夫なものを用意したがあの悪魔ならいずれ引きちぎるだろう。だが時間稼ぎができれば十分だ。

 

「頼んだぞ。ゆんゆん!」

 

 俺たちは敵から距離を取り、ゆんゆんは昨日店主さんからもらったポーションを飲んでいる。そして、

 

「いきますっ! 『パラライズ』っ!」

 

 相手を麻痺させる魔法を使った。本来魔法抵抗力の高い悪魔には効かないそうだがポーションで一時的に能力が上昇している今なら効果があるかもしれない。果たして結果は。

 

「な、何だそのポーション。この俺様に効くってどんな強力なポーションだ」

 

 どうやら効果があったようだ。その成果に俺は目が釘付けになる。

 

「よしっ! 締めだ、めぐみん! いっちょ派手なのぶちかましてやれ!」

 

 俺は油断なく敵を見ながらめぐみんにとどめを刺すよう言った。

 

「あ、あのカズマ」

 

「カ、カズマくん」

 

「……」

 

 3人の様子がおかしい。だが俺は敵から目を晒すなんて愚かな真似はできない。

 いやおかしいな。別にちょっとくらい目を離しても大丈夫だと思うのだがさっきから俺の首がそっちに回らない。というか全身が痺れていうことを聞かないのだが。

 

「ご、ごめんなさい。ポーションを飲んで魔法を使ったら…どうしてか私の周囲にまで効果が広がってて…」

 

 ゆんゆんは消え入りそうな声で謝ってきた。

 

 

「なんてもの渡してきてんだあの店主はーーーーーーー!?」

 

 

 俺は心の底から叫んだ。どうやらあのポーションは効果範囲も広げて俺たち4人ともまとめて麻痺させられたようだ。

 涙目ですみませんすみませんと謝る店主さんを幻視した気がする。

 

 

「はっはっは! 一時はどうなるかと思ったが本当にお前たち紅魔族は笑わせてくれる!」

 

「めぐみん!どうしようめぐみん!」

 

「落ち着くのですゆんゆん。今に私が前世の破壊神の力に目覚めて全てを蹂躙する時が…」

 

「ねえこの子目が死んでるんだけど! 現実から目を背けようとしてるんだけど!」

 

 状況は混沌を極めていた。高笑いする悪魔。焦る紅魔族1号。現実逃避する紅魔族2号。どうにか落ち着かせようとする盗賊兼女神様。そして冒険者俺。

 

「いやマジでどうしたらいいんだよ!」

 

 悪態が出るのも仕方ないだろう。途中までは順調だったのに最後の最後で梯子を外されたのだ。正直もう作戦と呼べるものはなかった。

 

 

「カズマくん。任せたからね」

 

 そんな中、急にクリスが声をかけてきた。顔は見えないがどんな表情かなんとなくわかる。おそらく昨日の夜に言ってきたことだろう。他の2人を連れて逃げてくれ、後はわたしがどうにかするからと。 

 

「……いやだね」

 

 俺は小声でそう返した。そんなの認められるか。

 パラライズの魔法が解けるまで数分。考える時間はある。何かこの状況を打開する策はないのか?

 

(何かないか。何か方法は)

 

 他の3人は俺を置いて悪魔と言い争っている。

 周りの声なんて気にするな。俺の勝利条件を考えろ。エリス様が正体を現さずに勝つ。それにはどうにか爆裂魔法を当てる。当てるには動きを止める必要がある。じゃあどうやって止める?

 俺は貧弱な冒険者。ゆんゆんやクリスもそういったスキルは持っていないだろう。目眩しの魔道具も奴には効果がない。

 

(……目眩し?)

 

 昨日の夜のことを思い出す。そこに打開策はあった。

 

 この作戦は賭けだ。だけど不安はない。

 なんたって今日の俺の運は女神様のおかげで絶好調なんだからな。

 

 

 

「カ、カズマ、どうしますか?!」

 

 気がつくとめぐみんが必死になって俺に聞いてきていた。どうやらもうすぐ麻痺が解けるようだ。

 

「どうするってそりゃあお前、こんな状況になったら後は“神“頼みしかないだろ」

 

 それに対し俺は小さく笑いながら返答した。その様子に3人はキョトンとした顔をしていることだろう。

 

「天におわします“エリス様"。どうぞ我々をお助けくださいってな」

 

 この言葉の真の意味がわかるのは1人だけ。

 

「クリス、麻痺が解けたらあの悪魔の足止めを頼む」

 

「で、でもっ」

 

 俺が何かやろうしてるのには気づいたようだが、まだ他の2人がいるからか俺の案に乗るのを躊躇っている。

 

「心配すんな。カズマさんに任せろ」

 

「……分かった。信じてるからね」

 

 それでも彼女は俺の賭けに乗ってくれた。一度失敗した俺を彼女はまだ信じてくれるようだ。その思いには答えなければならない。

 

 

 そうして全員の麻痺が解かれた。俺は素早く懐の冒険者カードを取り出し「千里眼」を習得した。そうして昨日もらった魔道具、周囲を暗闇にする魔導具に手をかけた。

 

「頼んだぞクリス!」

 

 

 瞬間、世界は闇に呑まれる。

 

「え、え?」 「な、何をしてるんですかカズマ?」

 

 俺が魔道具を使ったことにより周囲が暗闇になりめぐみんとゆんゆんは混乱している。

 

「はっ!悪魔にこんな方法は、…な、なんでてめえがこんな所に?!」

 

 悪魔は始めはどこか余裕そうだった。確かに悪魔にこの策は有効ではない。だけどこの暗闇の中で目が効くのは奴だけではない。俺と後もう1人。

 

「頼まれたよ、カズマ君!」

 

 女神のエリス様だ。

 

 

 

 クリスがエリス様の姿になって悪魔に向かっていく。完全に不意をつかれた悪魔はエリスに翼をやられていた。

 

(やっぱりエリス様の闘い方って怖いな)

 

 このままでもおそらく勝つのだろうがそれでは意味がない。とどめはあいつに刺してもらわないと。俺は暗視を使いめぐみんの所へ向かった。

 

「おいめぐみん」

 

「ひゃっ! なんですかカズマ。何処にいるんですか」

 

 そう、めぐみんが決めてくれないとエリスの存在が周囲に知られる恐れがある。たとえバレなくても違和感が残るはずだ。

 

「爆裂魔法の詠唱を始めてくれ。この暗闇で混乱している悪魔にぶっ放す」

 

 本当は敵も見えているのだがあえて言う必要はない。

 

「ですがこうも暗いと狙いが付けられませんよ」

 

 当然のことを言ってくる。だがそれをどうにかするために俺はここに来たのだ。

 

「俺はこの闇の中でも目が見えてる。照準は俺が定める。タイミングも決めてやる。お前はただ真っ正面に撃てばいい」

 

「で、ですが」

 

 俺が手伝うと言ってもめぐみんはどうにも煮えきらない。普段からは考えづらいが逆境に弱いのかもしれない。それなら、

 

「おいゆんゆん。このヘタレ紅魔族になんか言ってやれ! ネタ魔法一つ撃てないこのポンコツに!」

 

「わ、わかりました。え、えっと、めぐみんから爆裂魔法取ったら一体何が残るのよ!この前みたいに格好良くあの悪魔を倒してよ!」

 

「ふ、2人して好き放題言ってくれますね! ならばお望み通り一切合切消し飛ばしてあげますよ!」

 

 ゆんゆんは俺が想定したのとは違う言葉を放った。俺としては煽りを期待していたのだが。

 だけどこれでようやく火が付いた。

 

「クリース! そいつに爆裂魔法を撃つから俺が合図したら避けろよー!それまで足止め任したー!」

 

「ええー?! 無茶苦茶いいますね、あなたは!」

 

 悪魔と戦っているエリスに大声で叫んだ。無茶を言ってるのは俺も承知だがやってもらわなければ。少し口調が戻っていたがまあさすがにバレはしないだろう。

 

「よしじゃあ詠唱始めてくれ」

 

 そう言って後ろから抱きしめるような感じでめぐみんの腕に手を添えた。

 

「あ、あなたはこの暗闇に乗じてどこを触ってるんですか?!」

 

「え、え? 私見えないんだけどカズマさんは一体めぐみんに何をしてるの?!」

 

 非難の声が聞こえてくるがこうした方が狙いやすいのだ。別に他意はない。いやマジで。

 

「こうしないと上手く狙いをつけられないからだよ!いいから詠唱始めろ」

 

 

 

 俺の指示に従い彼女は詠唱を始めた。

 

「黒く、黒く、黒く、禍つ闇よりなお黒く」

 

 言葉とともに周囲の魔力が彼女を中心に変質していく。

 

「我が力は零の果て、原初の起こり、根源渦巻く螺旋なり!」

 

 その杖の先にとてつもない力が収束していく。

 

「無尽の理を覆し極点をもって万象を崩さん!」

 

 それは彼女が唯一使える並び立つものなど存在しない最強の魔法。

 

「いけますよカズマ!」

 

「クリーース!!撃つぞーー!!」

 

「わかりましたっ!」

 

 俺の言葉を聞いてエリスがすぐに悪魔から距離を取る。あれだけ離れたら巻き込まないだろう。なら後は撃つだけだ。

 

「やれっ!めぐみんっ!」

 

「とくと見よっ!我が必殺の魔法を…

『エクスプロージョン』ッッ!!!」

 

 彼女の声と共にその魔法は放たれた。

 瞬間、この暗闇の中でも見えていた俺の視界は白く染められた。  

 

 やがてその白が晴れていく。

 周囲の暗闇はいまだ世界を包んだままだが、俺の目には悪魔が消し飛ばされているのがはっきりと見えていた。

 

 




いろいろ言いたいことがあるのはわかってる。

ホースト戦決着です。
いやーあからさまに怪しい魔道具が一つありましたね。
ただあれがなかったらたぶんホースト戦上手く書けなかったのでしょうがない。
戦いの途中ホーストがエリス様の名前とか女神とか言ったらアウトだった。運がよかったね。

爆裂魔法のオリジナル詠唱です。
作者の中2心ではあれが限界でした。
あまり深く突っ込まないでください。
だが後悔はしてない。

作戦にいろいろ粗があると思いますが、次の回で回収するとこもあるので寛大な目でどうぞよろしく。
作戦の時のカズマさんの口上は結構気にいってる。

暗闇を発生させる魔道具

対ホースト戦切り札
めぐみんとゆんゆんの目を塞ぎエリス様が戦うために作者によって生み出された物。爆風でも闇が晴れないので爆裂後も安心だね。

ウィズの店でギリギリ売ってそうなの考えたけど違和感すごくて読者にこれ使うってモロバレだなーっと思いながら書いてた。


読んでくださったみなさんに深く感謝を。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。