この素晴らしい世界でエリス様ルートを 作:エリス様はメインヒロイン
パーティーを組んでから数日後、俺たちは今ギルドの酒場で反省会をしていた。店の隅にある机を囲む俺たちの空気は夢見がちな新人のパーティーというにはあまりに重かった。
「まただぞ」
俺の言葉に3人がビクッと反応した。
「またこれっぽっちの報酬しか残らなかった」
机の上に金を置いた。その額は数万エリス、4人パーティーで分けるには少額すぎる報酬だ。
「どうしてこうなったか説明してくれませんかね、お2人さん?」
俺はめぐみんとダクネスに対して静かに聞いた。
「私が我慢できずに爆裂魔法を放ち余計な被害を出したからです」
「わ、罠を仕掛けた後に我慢できずにその罠にわざと掛かりモンスターにいろいろされようと…」
「はい正解! 2人には0点をくれてやろう!」
そうなのだ。パーティーを組んだ俺たちは今までより少し上の難易度のクエストを受けているのだが、どれもこれも散々な結果で終わっているのだ。
「しょうがないじゃないですか。モンスターの群れを目の前にして爆裂衝動が抑えられる人がいると思ってるのですか」
「そ、そうだぞ。目の前にご褒美があったら誰だって飛び込まずにはいられないだろう」
「そんな考えするのはお前たちだけだよ!」
俺がポンコツ2人に文句を言ってるとクリスが申し訳なさそうに謝ってきた。
「ごめんね。あたしが2人を止められなかったせいで」
「いいんだクリス、お前は謝らなくて。お前はホントーーーによく頑張ってくれてるから」
クリスは爆裂魔法でぶっ倒れためぐみんを回収したり、罠を設置してモンスターをおびき寄せたりと多方面に活躍してくれている。彼女の爪の垢を煎じて2人に飲ませてやりたいくらいだ。
「そうだクリス。俺と一緒に別のパーティーを探しに行かないか」
「本人達の前でそれを言うのはどうかと思うよ」
俺の提案に困ったように頬をかきながら残り2人の方を見ている。俺もそちらを向くと納得がいかないといった表情が見える。
「カズマだって大した活躍してないじゃないですか」
「ぐぅ、痛いとこを突いてくるなこのロリっ子め」
俺の職業は冒険者。あらゆるスキルを取ることができるとはいえ現状はクリスのスキルに毛が生えた程度しか扱えない。役割を分担していると言えば聞こえはよいが、その気になればクリス一人で事足りるのである。まあクエストに被害を及ぼす前2人よりはマシだという自負はあるが。
「新しいスキル探さねーとな。お前ら2人が別のスキル覚えてくれたらこんな苦労しなくてすむんだが」
「それはできない」「それはできません」
「そういう所は息ピッタリなんだ…」
俺とクリスで溜息を吐く。常識人枠として彼女がいてくれるのは精神衛生上とても心強い。
…と、その時。
『緊急クエスト! 緊急クエストです! 冒険者の皆さんは至急冒険者ギルドまで集まってください。他の住人の皆さんは窓を閉め家の中に避難してください』
何か魔法を使っているのか街中にアナウンスが響いてきた。緊急とは何やらただならぬ様子だ。だがこういうイベントがあるのは実に冒険者らしい。
「よしっ、お前ら。普段は失敗ばかりだが今回こそクエストを成功させるぞ!」
ーーーーーーーー
外に出た俺が見た物はこの世のものとは思えないものだった。
どこまでも青く広がる空を覆い尽くさんとする緑のカーテンがそこにはあった。目を凝らすと緑の塊がそれこそ無数に空を飛び回っている。それは画面の向こうでしか見たことのない蝗害を彷彿させるものだった。しかし目の前にいる物は飢餓をもたらすものではない。天の恵みとも呼べるものだ。
冒険者達は奮い立った。その恵みを我がものにせんと剣を振るう。己が肉体が傷つこうとその手が止まることはない。全てを刈り取らんとするその強欲さは冒険者と呼ぶにふさわしい様だった。まあ、
キャベキャベ~~
「なあクリス。あの飛んでるのなんだ」
「何ってキャベツだよ」
その相手が野菜じゃなかったらの話なんですがね。
俺が呆然とその光景を見ていると受付のお姉さんが冒険者達に大声で説明を始めた。
「皆さん、今年もキャベツの収穫時期がやってまいりました。今年のキャベツは出来が良く一玉1万エリスで買い取らせてもらいます。出来るだけ多くのキャベツを捕まえ、ここに納めてください」
かなり儲けの良いクエストだからか戦っていた冒険者達から歓声があがる。まあ戦ってるのキャベツなんですけどね。冒険者ってなんだろう。
「なんでキャベツが空飛んでんだよ」
「今は味が濃縮してきて収穫の時期だからね。キャベツも食われてたまるかって飛んで逃げるんだよ。そのまま大陸を渡って海を越えて、人知れぬ秘境の奥で最後を迎えるんだ」
俺の疑問にクリスが当たり前の事のように説明してきた。どうやら天は俺から世界観だけでなく常識人枠まで奪い取るつもりらしい。
さてこのキャベツだが意外と強かったりする。飛んでいるので攻撃が当たりにくい。味が締まっているからか体当たりも見た目以上の重みがある。極め付けはその圧倒的な物量である。他の冒険者達も苦戦しているようだ。
そんな中俺たちのパーティーはというと。
「ああ、いいぞ! もっとだ! もっとその重みを感じさせてくれ!」
「いいよーダクネス。その調子で頑張ってー」
「きつくなったら言えよー」
ダクネスの『デコイ』を使いモンスターが集まってきた所を俺とクリスが潜伏からのスティールコンボで回収していた。ダクネスの鎧がかなり凹んできているが本人はいつも通りドMなので心配いらないだろう。
めぐみんには爆裂魔法を使うと他の冒険者に迷惑だからと一応言ってはいるが、
「『エクスプロージョン』っっ!!」
知ってた。離れた所から聞き慣れた爆音が響いてくる。
「あいつは我慢するということを覚えないのか」
「それより見て、もうこんなにいっぱい取れたんだよ。ふふ、こんなに大量なら今日一日はキャベツ盗賊団を名乗るのもやぶさかじゃないかもね」
クリスもこの成果にはご満悦な様子だ。嬉しそうなのはいいのだがどこか遠くの世界に行ってしまったように感じる。
ーーーーーーーー
「なんでただのキャベツ炒めがこんなに旨いんだ。納得いかねえ」
ギルドで注文したキャベツ炒めを食べながら俺はそうこぼした。無事キャベツ狩りが終わった街では様々なキャベツ料理が振る舞われていた。
「新鮮なキャベツには経験値がたっぷり詰まってるからね。そのおかげじゃない?」
クリスは塩キャベツを食べている。お酒と一緒に食べるとやみつきになるそうだ。
「いや経験値と味の良さに関係性はないと思うぞ。ドラゴンの肉は経験値は豊富だが味は最悪だからな」
ダクネスはロールキャベツを食べている。肉をキャベツで包んだその料理を食べる姿はどこか上品さを感じさせ、先程までの変態とは別人に見える。
「随分詳しいですね。ダクネスはそれを食べたことがあるのですか?」
めぐみんはキャベツ太郎を食べている。サクサクとしたそのスナックは俺の故郷のことを思い浮かばせ懐かし気持ちに…いやちょっと待て。
「なあめぐみん。それはなんだ」
「キャベツ次郎のことですか? これは100分の1玉の確率で現れる突然変異のキャベツです。普通のキャベツと味はだいぶ違いますが美味しいですよ」
そりゃあ味違うだろうね。だってそれ原料とうもろこしだもの。100分の1の確率で空飛ぶキャベツ太郎のパチモンがいるとかこの世界はどうなっているのだろうか。
そんなただでさえ納得できないことが多い中、
「それにしても今回のクエストは上手くいってよかったねカズマくん」
「ああ。2人のキャベツ捌きには近くで見ていた私も驚かされてばかりだった」
「私は大量のキャベツを吹き飛ばしたことによりレベルが上がったので満足ですよ」
そう1番納得できないのはこのクエストが、俺たちがパーティーを結成して初めて成功と言える結果になったことだ。悪いことではないむしろ良いことなのだ。パーティーがそれぞれの個性を活かしてクエストを達成する。言葉にすれば感慨深いものである。まあ相手がキャベツなんですがね。
「それじゃあクエスト大成功を祝してカンパーイ!」
「俺が想像してた冒険者生活と違う」
クリスの音頭に俺は1人小声で呟いた。俺たちの冒険は始まったばかりのはずなんだが。
キャベキャベ〜(挨拶)
スキルの説明とかはもうやっているので原作一巻の部分は内容薄味になりそうな気がする今日このごろ。どこら辺で一話くぎるか悩む。
クリスさんは今いる世界の管理者なのでカズマさんがどうして驚いているのかよくわかってません。
キャベツ次郎とは? スナック菓子があの袋のまま飛んでるとかシュール。キャベツも大概か。
おまけ
価値観の違い
「日本のキャベツは飛ばないんだよ」
「カズマくんの世界のキャベツって大丈夫? それ腐ってたりしてない?」
「カズマの国はそんな痩せた土地だったんですね。ほらここのキャベツは美味しいですよ」
「カズマの国がキャベツ達が飛んで行きつく場所なのかもしれないな」
「そもそもキャベツが飛んでることがおかしいんだよ!」
キャベキャベ〜(圧倒的感謝)