この素晴らしい世界でエリス様ルートを 作:エリス様はメインヒロイン
俺がこの世界の残念さに嘆いていると1人の男が話しかけてきた。
「やあ、君が佐藤カズマだね」
そこには青く輝く鎧を着込んで腰に剣を下げた茶髪のいかにも勇者といった風貌のイケメンがいた。イケメンなぞ滅んでしまえ。
「確かにそうだけど、何の用だ。俺はあんたみたいな知り合いはいないんだが」
「まずは初めましてと言った所かな。僕の名前は御剣キョウヤ。ここでは魔剣の勇者と呼ばれているよ」
男の名前には聞き覚えがある。魔剣の勇者ミツルギ、この街で1番強いと言われている男だったはずだ。そしてその名前はどう考えても日本人。
「同郷のよしみで君と話してみたくてね」
どうやら俺の予想は正しかったようだ。なら少しくらいは話を聞いてやろうじゃないか。
俺とミツルギはクリス達から離れた席に2人だけで陣取った。この世界にとって日本は異世界だ。あまり大きな声でする話ではないだろう。
「まさかこっちの世界に来て日本人に会うとは思わなかったよ」
「ここは駆け出しの街だからね。特典持ちの日本人はすぐに稼ぎがいい他の街に行くんだ。王都に行けば日本人もそれなりにいるよ」
俺はこの街のクエストですら苦戦しているのに羨ましいことだ。まあ特典を女神様にした自業自得ではあるのだが。
「それで結局の所俺に何か用事があるのか? 同郷トークがしたいならまあ少しは付き合ってやらんでもないが」
「そのことなんだが、まず始めに君に礼を言いたい。あの悪魔を倒したのは君のパーティーと聞いたからね」
「悪魔? ああホーストのことか」
そういえばあの悪魔の討伐クエストの時に先頭にいた魔剣の勇者が負傷したなんて話を聞いたな。
「そうだ。僕も不意を突かれなければ負けなかったと思っているが、そんな言葉は討伐された今になって言った所でしょうがない。僕が討伐し損ねた相手を倒してくれて感謝してる」
なんだろうか。言葉の節々に感じる自信というかナルシストっぷりにイラッとするなこいつ。まあ感謝されているようではあるから大目に見るか。
「感謝してるって言うなら酒でも奢ってくれ。後はそうだな、ちょうどこの世界について文句を言いたい気分だったんだ。日本人のお前なら少しは共感してくれると思うんだが」
「ああ、その程度なら構わないよ。好きな物を頼むといい」
そうして俺はこの男と酒を共にすることにした。
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「行ってしまいました。今日はクエスト初達成の祝いの席なのに空気を読めない人ですね」
「まあいいじゃないか。故郷を同じとする者だ。積もる話もあるだろう」
「あれが魔剣の勇者の人ねー」
カズマ君を連れて行った人を見る。その通り名とそれが発する強い力から察するにあの腰に下げた剣が魔剣グラムだろう。見た所純粋に強くなるためだけの剣のようなので悪用されることはないと思う。
「どうしたクリス、そんなにじっと見て。何かあの男に用があるのか?」
「カズマ君が変なことしないか見張ってるだけだよ」
実際は別のことを気にしていたのだけど。ただあの人は日本人、転生の事情を知っている人だ。カズマ君がつい口を滑らせないか見ておいた方がいいだろう。
そんな私にめぐみんは何となしに聞いてきた。
「そういえばどうしてクリスは『カズマ君』なんて呼ぶのですか?」
「え? うーん、特に理由はないんだけどなぁ」
「私やめぐみんは『カズマ』と呼んでいるんだ。今から呼び方を変えてみたらどうだ」
「ダクネスは簡単そうに言うね。急に呼び方変えるの恥ずかしいんだよ」
想像してほんの少し顔が熱くなる。今の呼び方で慣れているので無理に変える気はない。
「そうだねー。あたしが呼びたくなったらそうするよ」
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カズマとミツルギは始めの剣呑な空気はどこへやら、酒が入ったことも後押しして日本人トークに花を咲かせていた。
「なんでこの世界のキャベツは空を飛ぶんだよ! ファンタジーな世界観をもっと大事にするべきだろ!」
「君もまだ甘いな。キャベツだけじゃなくてほかの野菜も動き出すぞ。ちなみにサンマも野菜扱いなのか畑で取れるらしい」
「お前馬鹿なの? サンマなんだから海から取れるに決まってんだろ」
「僕も最初はそう思っていた。この目で見るまではね」
「やっぱりこの世界おかしいよ」
「この世界に似てるゲームってなんだろうな。ドラクエ? FF?」
「すまない。僕はあまりゲームをやったことがなくてね。やったことがあるのはスーパーマリオブラザーズくらいだよ」
「俺マリオの名前フルで言うやつ初めてみたよ」
「それでお前はどういった理由で死んだんだ? 死因は?」
「道に飛び出した少女がトラックに轢かれそうになっているのを助けようとしてね。ギリギリ間に合うと思ってたんだけどあっけなく死んでしまったよ。その子を助けれたのだけは唯一の救いだけどね」
「ふ、ふーんそうなんだー。俺もそんな感じだったよー」
この男はやはり同郷なだけあって話がわかる。俺の愚痴にも理解を示してくれるし日本の話題にもついてこれる。所々ナルシストを感じるがまあそこに目を瞑ればこいつはいいやつなんだろう。
そんなことを考えているとふと横に置いてある剣が目についた。
「その剣がお前の特典なのか?」
「ああ。僕が女神アクア様より賜った魔剣グラムさ。僕専用になっていてね、使うと膂力が上がり凄まじい切れ味を発揮する剣だよ。この間はドラゴンも両断できた」
やっぱりチート過ぎませんかね。なんでこんなの持ってる奴がいるのに人類は魔王を倒せてないのだろうか。
「君もアクア様から何か頂いているだろう? せっかくだ、教えてくれないか」
男の言葉に離れた所にいるクリスを見る。時折チラチラとこっちを見ているのは自分の事を話さないか心配なのだろう。別に口が軽いわけではないのだが。
「悪いな、俺の特典は知られるとまずい者でな。企業秘密だ」
そういえば先程から女神アクアと言っているが誰のことだろうか?
「なあ、アクアって誰のことだ。俺そんな人会ったことないんだけど」
「君は転生する前に会ったあの女神様を覚えていないのかい?綺麗な青い髪が特徴的な美しい女神様を?」
どこか憐みが混じった表情で俺を見てきた。
「いや俺が会ったのはエリスって人だからな。話を聞く感じだとどうやらお互い違う女神様に転生してもらったらしいな」
「なるほど、それなら知らないのも無理はないか。あの方は女神として魔王討伐を僕に託し魔剣グラムを預けてくれた人だ。その美しさを君が知らない事に同情するよ」
女神アクアね。どこか自分の世界に入っているこの男は放って置いて聞く話によるといい女神様なのだろう。まあ悪い女神なんているわけがないか。
「キョウヤー」
盗賊風の女の子が横の男を呼んでいる。どうやら結構な時間が過ぎたらしい。
「仲間が呼んでいるからそろそろ行くよ。なかなか楽しい時間だった」
「俺も久々に日本人に会えてよかったよ。じゃあまたな」
そうして男は酒場を出て行った。俺も仲間の所に戻るとするか。しかし3人の机に戻ると何故か変な目でこっちを見てきた。
「随分と盛り上がってたね。やっぱり同郷の人といる方が楽しいの?」
「まったくですよ。私達を置いてホイホイ着いていくとは。どれだけ待たされたと思ってるんですか」
「ああ、だが何だろうか、この胸の奥で高まる熱は? これが噂に聞く寝取られというものか?」
どうやら俺があの男と談笑していた事に物申したいらしい。まあ1人はいつも通りだが。
「久しぶりに自分の国のこと話せたんだからしょうがないだろ」
「ふん、私としてはあのスカしたエリートの感じはどうも気に入らないのですが」
めぐみんがそんな理不尽な事を言っている。まあ俺も初見は似たようなこと考えてたけど。
「話してみるといいやつだったぞ。あの…えーっと…確か、そうマツルギは」
そうだ。そんな名前だった筈だ。
「ミツルギだよ」
俺の発言にクリスが指摘してくる。
違うんだ忘れていたわけじゃない。だから3人ともそんな目で見ないでくれ。
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夕食を終えて諸々を済ました後、俺はエリスに回復魔法を教えてもらっていた。これで少しはパーティーとしてのまとまりもできてくるだろう。
「『ヒール』、どうですか。これでスキルの一覧に出たと思うのですが」
「ありがとうございますエリス様」
ちなみに傷は俺の指の先をほんのちょっぴり切って用意した。普通に痛かったが。
「そういえばエリス様は女神アクアって人知ってますか? さっきの話で出てきて気になってたんですけど」
「ええ、よく知ってますよ。私の先輩にあたる方ですから。その方がどうかしましたか?」
なんだろう。口調はあまり変わってないのだが少し疲れた表情が垣間見える。
「いやミツルギがあんまりに絶賛してた物で。エリス様から見てどんな人かなと」
絶賛という言葉に対して何を言っているんだこの人はという顔になった。
「そ、そうですね。自由な方と言いますか自分の芯があると言いますか…」
どうにかうまい言葉を探しているようだが見つからないようだ。そんなにアレな人なのか。
「あ、でもどこか子供のようで可愛らしい人ですよ」
「…いい人そうですね」
先輩に対して子供扱いは褒めていると言えるのだろうか。ただエリスの反応を見ていると少し会ってみたい気もする。
「アクア先輩に転生してもらった方が良かったですか?」
エリスは意地悪く質問してきた。確かにそれもどうなるか気になりはするが少なくとも今は、
「俺はエリス様で良かったと思ってますよ」
彼女と会えた偶然に感謝したい。
メツルギさん登場回でした。
二次創作だとわりといいポジションもらってるイメージがする人。(作者の偏見)
今回はカズマさんがホーストを倒しているかつアクアがいないということで関係は良好です。
モツルギさんの活躍にご期待を。
カズマさんが回復魔法を覚えました。これでパーティーのバランスが良くなる。少しだけ。
最近タイトルを考えるのが面倒になってきた。
おまけ
噂のあの人
天界にて。
「ぶえぇっっくしょぉぉぉーーん。あら、誰かが麗しき水の女神であるこの私、アクア様の事を噂しているのかしら。しょうがないわねー。全国1000万ものアクシズ教徒がいるんですもの。噂ぐらいされるわよねー」
鼻ちょうちんを作りながら麗しき女神様はそんな独り言を呟いていた。
読んでくださった皆様に深く感謝を!