この素晴らしい世界でエリス様ルートを 作:エリス様はメインヒロイン
クエスト失敗の翌日。俺とクリスはとある店に来ていた。
「ねえカズマ君。この店って」
「ああ、お前の想像通りの店だ」
看板にはウィズ魔道具店と書いてある。そうリッチーことウィズが経営している店だ。
「昨日見逃すって言ったばかりだ。なら翌日すぐに来ればクリスも気まずくて斬りかからないと思ってな」
「ねえ、君の中のイメージどうなってるの。あたしはそんな物騒な人間じゃないよ」
「自覚は無いのかもしれないがアンデッドや悪魔を前にしたお前はかなりアレだ。子供が泣いて逃げ出すレベルだと思った方がいい」
「そんなことないと思うけどなぁ」
とりあえず中に入らなければ話が始まらない。俺は店のドアを開けた。
「いらっしゃいませー。あ、カズマさんと…えっと、昨日の…」
「はあ…あたしはクリス。職業は盗賊、以上」
明らかにクリスを見て怯えている。アンデッドの王とはなんだったのだろうか。それに対してクリスは溜息を吐きつつも一応自己紹介をした。この様子なら修羅場になる事はないだろう。
「ようウィズ。昨日ぶりだな」
「えっと今日はどういったご用件ですか?」
「俺たち昨日のクエストは失敗扱いになってな。それで報酬の代わりにお願いがあって…」
「わ、私のお店は今月も赤字なのでお金を用意する事はできません!」
ウィズは必死な顔をして断ってきた。まだ話は終わってないのだが。というかホーストと戦う為に割と高価なものを買ったのだがその金はすでに無くなったのだろうか。
「いや金じゃなくてな、せっかくだからリッチーのスキルを教えてもらおうと思って来たんだ」
「ええっ?!」
クリスは会話に参加する気がなかったのか店の商品を物色していたが、驚きの声を上げて詰め寄ってきた。
「リッチーのスキルを教わるなんて何考えてるの! アンデッドはこの世の理に背いてて存在してちゃいけない物なんだよ。その上リッチーなんて自分勝手にアンデッドになった愚かな魔道士の成れの果てなの。そんな馬鹿な人達のスキルなんて覚えちゃ駄目だよ!」
「うう、馬鹿なリッチーでごめんなさい」
クリスの口撃がウィズの心に突き刺さったようだ。
「まあ待て、俺の職業は冒険者なんだ。普通にやってたら強くなれるのはずっと先だ。なら希少なリッチーのスキルを覚えて普通じゃない方向性に進まないとやってられないだろ」
「むう…それは確かにそうだけどさ」
クリスは納得がいかないという顔だったが俺の説得により了承してくれた。
「それでウィズ。勝手に話を進めたけど構わないか?」
「はい、大丈夫ですよ。そうですね、私のおすすめだとドレンインタッチなんてどうでしょうか?」
ウィズの説明によると使用した相手から魔力や体力を吸い取ったり逆に相手に分け与えたりすることができるスキルだそうだ。魔力量が少ない俺にはうってつけのスキルかもしれない。
「それでスキルを使うには相手が必要なんですけど、あの…クリスさん、お願いしてもよろしいですか?」
「えっ、あたし?…しょうがないな」
ウィズのお願いに渋々従ったクリスは、ウィズに左手を差し出して右手は腰のダガーに…。
「クリス、ダガーから手を離してくれ。ウィズが怯えてるだろ」
「あ、ごめん。なんか今からアンデッドに触られると思うとつい手がそっちにいっちゃって」
生理的に受け付けないといった所だろうか。右手を離すとウィズは恐る恐るクリスの手に触れた。
「じゃあいきますよ。『ドレインタッチ』…ってあれ?」
「お、ちゃんとカードに表示されてるな。サンキューなウィズ」
「…じゃあもういいね」
どうやら上手くいったようだ。クリスはウィズが手を離すと汚れを落とすかのようにゴシゴシと自分の服で手を拭っている。本人の前でやってやるな、明らかに傷ついてるぞ。
「まったく何で2日も続けてアンデッドに会わなきゃいけないんだろ」
ウィズの店を出てからクリスはそうぼやいていた。昨日に引き続きあまり機嫌はよろしくないようだ。
「昨日の帰り際にあたしも連れて行ってと言ったのはクリスだろ」
「それはそうだけどさー」
もしも何かあったらと考えての発言だったのだろう。へんに心配をさせてしまったようだ。
「じゃあ今からギルドに行ってパーッと飲もうぜ。今日はもうクエストなんて行かないし昼間っから飲んでも誰も文句言わないだろ」
「君はあたしにはお酒飲ましとけば機嫌が直る、とか思ってるでしょ」
「正直思ってる」
「そんな簡単な女じゃないよあたしは。でもカズマくんが奢ってくれるって言うなら、ご機嫌になってあげようかなー」
まったく調子のいい事だ。彼女が不機嫌だとこっちの調子も狂う。これも必要な出費だろう。
「わかったよ。でも報酬はまだ入ってないんだ。加減してくれよ」
「やったー! じゃあ早く行こう」
彼女は楽しそうに先を歩く。この姿を見て正体が女神様だと誰が気づくだろうか。そんな奔放な彼女を見て俺は小さく笑った。
ーーーーーーーー
キャベツ収穫から数日後。
討伐人数の多さやキャベツの質の選別などもあり時間がかかったが、本日ようやく報酬が支払われた。
「わかってはいたけど報酬の額、凄かったね」
俺はクリスとギルドの酒場で話をしていた。
俺たちパーティーの報酬は全員でだいたい250万エリス。他のパーティーがどれだけ稼いだかは知らないがおそらくトップの額だろう。今までのクエストはなんだったのかと言いたくなるほど今回のクエストは稼げた。キャベツのくせに。
めぐみんとダクネスは報酬を渡すと何か買って来たいものがあるのかギルドを出て行った。俺も以前教えてもらった狙撃スキルを活かす為に弓と矢を新調した。狙撃スキルは幸運値によって命中率が上がるスキルで俺にはうってつけのスキルだ。
回復魔法、ドレインタッチ、さらに狙撃とようやく冒険者を活かしたスキル構成になってきた。
しかし装備やスキルが充実してきても、どうにも日本にいた頃のニート気質が抜けない。金に余裕ができてくると働きたくなくなってくるな。
「これだけあれば当分の間クエストなんて行かなくていいんじゃないか?」
「クエスト行かないって君の仕事はなんだと思ってるの」
それからしばらくして、めぐみんとダクネスが合流してきた。
「見てくれ2人共。鎧を修理して強化してみたんだがどう思う」
ダクネスが嬉々として鎧を見せてくる。
「うん、似合ってるよダクネス」
「…なあ、お前硬いんだから鎧いらなくないか」
俺の発言に2人から冷ややかな視線が飛んでくる。俺は素直な感想を言っただけだ。
「クリスはありがとう、嬉しいよ。そしてカズマ、私も素直に褒めて欲しい時もあるんだぞ。後鎧を着ないのは私の信条に反するのでしない」
「そんなキツい事ばっかり言ってると女の子にモテないよ」
普段からアレな発言が多いダクネスも悪いと思うのだが。
「それで、横にいるロリっ子はどうした。何か様子がおかしいぞ」
「ああ、これは…」
ダクネスが説明する前にめぐみんの小さな独り言が聞こえてきた。
「ウヘヘ、この純度の高いマナタイトの色艶…最高です。この杖を使えば我が爆裂魔法の威力は跳ね上がり全てを灰塵に帰すことができるでしょう。これを使って我が魔法を馬鹿にしてくる愚か者共に目に物見せてくれます。そうですね、まずはカズマから我が力を見せつけて…」
「『スティール』」
何か物騒な事を呟いていたので杖を取り上げた。
「ああっ?! か、返してください、それは私のものですよ。あ、ちょっ、そんな高く掲げたら届かないじゃないですか」
「ふ、ロリっ子ごときがこの高さに届くと思うなよ。…おい届かないからってボディを狙い出すのはやめろ。」
俺とめぐみんが格闘を続けているとクリスが仲裁してきた。
「これからクエストなんだから変なことに体力を使わないでよ。2人とも新しい装備を試したいんでしょ」
「しょうがない。めぐみん、俺に対しては撃つなよ」
「何を心配しているのかはわかりませんが、私が人に対して撃つことなんてほとんどあり得ませんよ」
「少しでも可能性残ってたら駄目じゃないかな」
そうして俺たちはクエストを受ける為に掲示板の前に来たのだが、
「なんだこれ?」
掲示板は高難易度を除くほとんどクエストが貼られてなかった。さすがにおかしいと思い受付のお姉さんにたずねてみたところ、
「現在魔王軍の幹部らしき人が街の近くの古城に住み着いてまして。その影響か街の付近の弱いモンスターは隠れてしまって、仕事が激減しています。来月には王都から騎士団が派遣されてきますのでそれまではこういった状況が続くと思われます」
そう申し訳なさそうに説明してきた。
魔王軍幹部か。まあ俺みたいな駆け出しがどうこうできる相手ではないよな。大人しく騎士団とやらが来るのを待つか。
「なら我のこの溢れんばかりの爆裂衝動はどうすればいいのですか」
今は魔王軍幹部よりも隣にいるいつ爆発するかわからない爆弾の方が怖い。
ーーーーーーーー
クエストが受けられないので俺たちパーティーは思い思いの事をすることにした。クリスはクエストがなくて暇なのでバイトをするらしい。ダクネスは筋トレで自分を痛めつけたいと実家に帰った。
そんな中、俺とめぐみんはというと、
「何で俺が付き合わなきゃいけないんだ」
「そうしないと私が帰れないじゃないですか」
「じゃあ我慢しろよ」
「無理ですね」
街の外に爆裂魔法を撃ちに来ていた。確かにキャベツの報酬のおかげで金に関しては当面は問題ないからと暇を持て余してはいたが。
「カズマにはまだ爆裂魔法がネタ魔法だという事を撤回してもらっていませんからね。いい機会です。クエストが受けれない間は私に付き合ってもらいますよ」
昔の俺はどうしてこいつの地雷を踏み抜いてしまったのか。
そうしてしばらく散歩していると遠く離れた丘の上に古びた城があった。おそらく廃城なのか遠目でもわかるほどに朽ちている。
「あの大きさを一撃で全部壊すのは無理ですね。何日かかければ更地にできるでしょうが。爆裂魔法にすら耐える魔城、それに対して日に日に強さを増していく我が力。そうして遂には我が爆裂魔法が城を蹂躙し尽くす。ああ、素晴らしいシチュエーションじゃないですか!」
何かがめぐみんの琴線に触れたのか、爆裂魔法の被害者はあの城に決まったらしい。ご愁傷様。
そうしてのどかな雰囲気をぶち壊すように爆音が鳴り響いた。
その後めぐみんと街まで戻った。ドレインタッチで体力を分け与えて自分で歩けと言っても、めんどくさいですとその場を微動だにしなかったので仕方なく俺が背負うことになる。
街に帰ったものの特に用事もなく2人してギルドに足を運ぶと、
「いらっしゃいませー。あ、2人共おかえり。どうかなこの制服、似合ってる?」
ウェイトレス姿をしたクリスが迎えてきた。何してんだろこの女神様。
「私は似合ってると思いますよ」
「まあいいんじゃないか。バイト先ってここだったんだな」
「ふふ、2人共ありがと。ここのバイトはお給料以外にも、まかないが出るからね。それに仕事が終わってすぐにシュワシュワを飲めるから最高の職場だよ」
仕事終わりの一杯を楽しみにするとはなんとも俗な女神様だ。
「じゃあ注文決まったらまた呼んでねー」
そう言うとまた仕事に戻っていった。
俺たちは席につくとクリスの仕事ぶりを眺めていた。冒険者の知り合いも多いのだろう、いろんな奴にからかわれていたが楽しそうに接客している。
「クリスは働き者ですね。それに比べてカズマときたら」
「爆裂魔法しか頭にないお前には言われたくないよ」
それにしてもクリスのウェイトレス姿は新鮮だな。
普段より露出が控えめになっているが別に多い方が良いというわけではない。ようはバランスである。特筆すべきはやはりスカートだろうか。普段のボーイッシュなパンツルックも悪くないがスカートはどこか女の子らしさを感じさせる。営業スマイルではなく楽しそうに笑ってるのもまた良きかな。
「女性をそんな目線で追うのはどうかと思いますよ。変態に見えます」
めぐみんが俺のことを冷めた目で見てくる。何か勘違いしているようだから言ってやった。
「安心しろ。お前をそう言った目で見ることはないからな」
「ブッコロ」
なぜか切れためぐみんが襲いかかってきた。
「注文取りに来たんだけど君たちは何やってるのさ」
格闘の末、店員であるクリスに注意され両成敗で幕を閉じた。
それからの毎日は、起きる、めぐみんに連れられて爆裂魔法を放つ、酒場でだらける、寝るといったスケジュールを過ごした。
そんな日々を続けることにより俺はその日の爆裂魔法の良し悪しが分かるようになり、ギルドでの飲み仲間を増やすことに成功した。クリスに『そんな生活してると駄目人間になるよ』と言われたが、クエストが無いのだしょうがない。俺は悪くない、世間が悪いのだ。
そんな毎日を続けること一週間。朝から街中に緊急アナウンスが鳴り響いた。
『緊急事態です! 冒険者の方々は武装して、至急正門に集まってください! 近くの住民の方は正門から離れた場所に避難してください! 魔王軍幹部と思われるデュラハンが現れました! 繰り返します!…』
そんな物騒な内容が街中に告げられた。
二巻の部分が長くなりそうなのと他諸々の理由により、さっさとドレインタッチは覚えさしました。
スキルポイント足りなくね?と思う方もいるかもしれませんがスルーの方向でお願いします。一応原作より冒険を始めたのが早かったりするのでそれで納得してください。
せっかくなのでクリスにもバイトしてもらいました。このすばのアプリでもメイドやってたし働き者ですね。あ、作者は爆死しました。
現在のカズマさんが取得してるスキル
窃盗、敵感知、潜伏、バインド、初級剣術、千里眼、狙撃、初級魔法、ドレインタッチ、弓
弓スキルは原作読み返してる時に見つけました。狙撃とセットみたいなもんなので教えてもらっていたということにしといてください。
おまけ
筋トレお嬢様
「はあ、筋トレはいいな。筋肉が痛めつけられる感覚はモンスターに殴られるのとはまた違うからな。惜しむらくはあまりやり過ぎると強くなってしまうことか」
「お嬢様、あまり無理をなさると腹筋が割れて殿方に見せられなくなりますよ。お嬢様の取り柄はそのいやらしい身体なんですからご自愛ください」
「ハーゲン、そこに直れ」
読んでくださったみなさんに深く感謝わ。