この素晴らしい世界でエリス様ルートを   作:エリス様はメインヒロイン

21 / 36
ベルディアさん現る


この首なし騎士と対面を

 俺達が正門に集まるとその先の平原にそいつはいた。

 

 デュラハン。首なしの騎士。

 西洋風の黒い鎧を全身に纏い、特大剣とでも呼べばいいのか、人間が扱うことなど不可能に思われる剣を担いでいる。

 そして首。伝承で語り継がれるものと同じくその首はついていない。頭は彼の左手に収まっており紅い瞳をこちらに向けていた。

 

 リッチー、ヴァンパイアに次ぐ上位のアンデッド。

 そのデュラハンが俺達の前に立っている。

 そして、

 

「毎日、毎日、毎日、毎日、うちの城に爆裂魔法を撃ってくる大馬鹿は、どこのどいつだぁあああああ!!!」

 

 とっても怒っていた。

 

 

 俺達冒険者は始めこそ呆気にとられていたが、デュラハンの爆裂魔法という言葉に反応して1人の少女に首を向けた。まあ言わずもがなめぐみんなんだが。

 というかデュラハンが言ううちの城ってもしかしなくてもあの廃城のことだよな。やけに壊れにくいなとは思ってたけど。今なら視線はめぐみんに集中している。責任を追及される前にここを離れようかな。

 

「ねえ君達何やったの」

 

 そんなことを考えていると隣のクリスが小声で呼び止めてきた。いつもみたいにバーサークしてくれればこの場を逃げれたのに。俺も小声でクリスにいきさつを答えた。

 

「めぐみんが毎日あのデュラハンの城に爆裂魔法を打ち込んでたんだよ。だが聞いてくれ。俺はめぐみんに無理矢理連れてかれてただけなんだ。撃ったのはめぐみんだし俺は悪くない」

 

「聞こえてますよカズマ。途中からカズマも調子にのってあの1番高い塔を狙えとか言ってきたじゃないですか。私はカズマの指示に従っただけです」

 

 おのれめぐみん。俺を巻き込むな。

 

「お前達は私がいない間本当に何をやっていたんだ。冒険者の間であの古城は幹部がいる可能性が高いと言われていただろう」

 

 ダクネスがいない間は毎日飲んだくれてたので忘れてました。

 

「責任のなすりつけ合いは後にして。あのデュラハンは魔王軍幹部なんだよ。もっと緊張感持っていこう」

 

 そんな俺達に対してクリスは注意してくる。相手が魔王軍幹部だからこそいつもより冷静なのかもしれない。そうして俺達4人はデュラハンの前に立った。

 

「お前達がそうか。そうか、お前達が…お前達が毎日あんなものを撃ち込んできた首謀者かーー!」

 

 魔王軍の幹部に首謀者って言われると俺達が魔王軍以上の悪みたいに感じるな。そんな事を考えているとめぐみんが一歩前に出た。

 

「我が名はめぐみん! アークウィザードを生業とし、爆裂魔法を操るもの! ふ、のこのこと現れましたね魔王軍の幹部よ。大人しく城で震えていたのなら我が爆裂魔法で城ごと消し飛ばしてあげたのに」

 

 そう高らかに名乗りを上げる。それを聞いて俺達は、

 

「いや城で震えてて一緒に吹っ飛ばされるとかただの馬鹿だろ」

 

「というかめぐみんはあの城にデュラハンがいることを知らなかったのではないのか」

 

「一応真面目な状況なんだけどその名乗りっているのかな」

 

 とりあえず思ったことを素直に言ってみた。

 

「外野は黙っててください! 後クリス、紅魔族にとって名乗りは重要な行為です。むしろ真面目な時こそちゃんとやるべきなんです」

 

 後ろから茶々を入れる俺達にめぐみんはご立腹のようだ。

 そんな俺達を見ていたデュラハンはというと、

 

「そのふざけた名前は紅魔族か? お前達には毎度手を焼かされているがこんな攻め方をされたのは初めてだ。…いや本当に予想外だったよ! なんだよ人が駆け出しの街だと思って見逃してやってたらさ、好き放題撃ちまくりやがって! 俺の城をなんだと思ってるわけ! お前は気付いてないかもしれないけどな、毎日壊される度に俺の部下が少しずつ外壁を直してるんだよ。それなのにお前が毎回吹き飛ばすから部下の奴らもやる気がなくなってどんどんボロボロになっていってんだよ! それに加えて毎日毎日爆音が城中に響くんだぞ! さすがのアンデッドでもノイローゼになるわ!」

 

 ものすごく鬱憤がたまっていたのだろう。それはもう凄まじい勢いでデュラハンは語り出した。魔王軍幹部の威厳など微塵も感じられない。そんなデュラハンの怒りの言葉を聞いて俺達は、

 

「いや部下がサボるのはリーダーとしての能力が足りてないからじゃないのか」

 

「私は毎日爆裂魔法を撃っていますがノイローゼになんてなりませんよ」

 

「そもそもあの城は領主の物であってお前の城ではないぞ」

 

「アンデッドの文句なんて正直どうでもいいよ」

 

 やっぱり思ったことを素直に言った。俺達は正直者のパーティーだからな。

 

 

 

「おい、余り舐めた口をきくんじゃないぞ。お前達のような駆け出しの集まりなぞ俺の気分次第で簡単に殺せるんだからな」

 

 先程までとはうって変わって凄みのある声でデュラハンは警告した。

 さっきまでの情けなさを感じる発言で勘違いしていたが、こいつは魔王軍幹部だ。俺達が束になっても敵わないだろう。

 デュラハンは俺達が押し黙るのを見て満足そうに笑った。

 

「俺の任務はただの調査だ。貴様らから関わってこない限り攻め入ることはしないと約束してやろう。特にそこの紅魔の娘よ。今後はあのふざけた魔法を撃ってくるなよ」

 

「ふざけた魔法じゃありません。最高最強の爆裂魔法です。そして今後も日課をやめるつもりはありませんので」

 

 めぐみんは物怖じせずに返した。どうしてこの子は耐えるということを覚えないのだろうか。

 

「なっ?! 人が見逃してやると言っているのにまだ迷惑行為を続ける気かっ!」

 

「こっちだってあなたが街の近くに来たせいで迷惑してるんですよ。クエストがろくに受けられず爆裂衝動を持て余しているんです!」

 

 俺はデュラハンと言い争っているめぐみんを止めた。

 

「お前はどうしてそう喧嘩腰なんだ! 穏便にすみそうなんだから黙っててくれ! もし戦闘になったらどうするつもりだ!」

 

「大丈夫ですよカズマ。あんなデュラハン如き爆裂魔法で一発です」

 

「そうだったな、お前はそれしか出来なかったな!」

 

 めぐみんをどうにか黙らせようとしていると、横にいたクリスとダクネスもやる気になったようだ。

 

「ダメだよカズマ君。相手はアンデッド、おまけに魔王軍なんだよ。そんな約束守るなんて思えない」

 

「そうだ。この街を守る騎士としてみすみすこいつを逃す気はない」

 

 2人の言葉に後ろにいた奴らの目の色が変わっていった。駆け出しとはいえ彼らも冒険者。敵を前にして逃げるのはいやなのだろう。俺はさっさと逃げたいんだけどね。

 俺の気持ちなど知ったことかと後ろの冒険者達からも声が上がってくる。

 

「お前がいるせいでクエスト行けないから借金が返せないんだよ!」

 

「そーよ、街の男どもはみんな草食系だからクエストが無いと暇なのよ!」

 

「ただダラダラ酒を飲むのも悪くない、けどやっぱり仕事終わりのシュワシュワが至高なんだ!」

 

「見ろあの紅い目を、あのいやらしく光った目を。魔王軍の幹部ということは、捕まれば情報のためにと適当な理由をつけて、自分の欲望を叶えるために拷問をしてくるに違いない!」

 

「魔王軍には悪逆非道な変態が多いって噂は本当だったのね」

 

 この街の冒険者はもう駄目かもしれない。主に頭が。隣で自分の願望だだ漏れなことを言っている変態に関しては真剣にパーティー解散を視野に入れなければ。

 

「な、なんなんだお前らはっ?! 俺は魔王軍幹部のベルディアだぞ! もっとこう恐れたり逃げ出したりするべきだろっ! そして俺は変態行為などしていない! してないからなっ!」

 

 さすがの敵もこの反応は予想外だったのだろう。先程までの余裕のある雰囲気はなくなり、素が出ている。そんな言葉ではこちらの勢いは止まることなどなかった。

 

 

「幹部といっても所詮は1人なんだ。俺たちで持ち堪えてあの人が帰って来るのを待とうぜ!」

 

 その冒険者の言葉に対しベルディアはどうしてか落ち着きを取り戻し、クツクツと笑い出した。

 

「ほう! お前達には俺が1人に見えるのか。そうだな、ならば紹介しよう、俺の軍勢を! 来い、アンデッドナイト達よ!」

 

 ベルディアがその手を振るうと地面に黒い魔法陣が浮かび上がる。その呼び声に応じるように地面からわらわらと骸骨の騎士、アンデッドナイトが召喚された。その数はこちらの冒険者の数と同じかそれ以上にも見える。

 

「さて、俺に対してふざけた態度をとる貴様らはどうやら死がお望みらしい。駆け出しの分際で俺の軍勢にどこまで持ち堪えられるか見ものだな」

 

 そうしてただ一声、その死の軍勢に命令した。

 

「では我が配下の者達よ、冒険者達を皆殺しにしろ」

 

 

 

 状況は一変した。唐突に戦力差をひっくり返された冒険者達は明らかに動揺している。そんなことはお構いなしにアンデッドナイト達は向かってくる。

 

「『ワイヤートラップ』っ! みんな! 門の中に敵を入れないように何でもいいからスキルを使って!」

 

 街に侵入しようと正門へ行進する軍勢を止めるために、クリスはワイヤーを張り巡らせながら冒険者達に指示した。その言葉に他の冒険者も我に帰り、魔法で土壁を生成したり、近くに置いてある物を使い簡易的なバリケードを作った。

 

「あの数だ、すぐにこのバリケードは破られるぞ! 今の内に装備を整えろ! それと教会からありったけの聖水も持ってこさせてくれ!」

 

 先程までとはうってかわったダクネスが指揮をとっている。その指示に従い冒険者達もそれぞれ行動を始めた。

 

「お、おい。時間があるんだったらさっさと逃げた方が良くないか? あの数を見ただろ」

 

「冒険者だけならともかく全員が避難するのは無理だ。ここら一帯の住人はすでに逃げているが、街の住人全員となると時間が足りなすぎる。子供や老人だっているんだ」

 

「あたしもこの街に暮らして長いからね。アンデッドなんかに好き放題されるのは我慢ならないんだ」

 

 俺の言葉に対して2人はテコでも動かないといった様子だ。

 敵のアンデッドナイトはゾンビの上位種。鎧を着込んだそいつらは駆け出しにとって十分な脅威となりうる。それに数の差もよくて互角といった所か。シミュレーションゲームなら戦う前から勝敗が見えている。それでもこいつらには関係ないのだろう。普段からそういう格好いい姿を見せて欲しいんだけどな。

 

「カズマは無理をしなくても…」

 

「……あーー! たくっ、しょうがねえな!」

 

「カズマ君?」

 

 ダクネスの言葉を遮る。

 本当はさっさと逃げたい。でも俺だってまだ住んで短いがこの街が気に入ってるんだ。周りにはこの数週間で知り合った冒険者達がいる。この2人やあいつらを置いて逃げるのはなんか違う。それに元はと言えばうちのパーティーがまいた種だ。なら俺もどうにか頑張らないといけないのだろう。

 覚悟を決めて俺は冒険者達に向かって大声で叫んだ。

 

「おい、お前ら! 俺にいい作戦があるんだが! どうだ一つ乗ってみないか!」

 

 

 

 バリケードが破られる。そこからアンデッドナイト達が街になだれ込んできた。冒険者達を1人残らず殺すために。

 

「ふん、こんなその場凌ぎで作った物など大した時間稼ぎにもならん。では貴様らには死んで…いや、なんだそれは?」

 

 門を抜けて街に入ってきたベルディアは驚くべき物を見た。

 

「こ、ここは私が相手になろう! さあかかってきょい!」

 

 そこに居たのは、縄で縛られて興奮した女騎士だった。

 

「いや頭おかしいんじゃないか、この変態がーー!」

 

 魔王軍幹部は至極真っ当なツッコミをした。

 

 

 

「ダクネス、しっかり敵を引き付けろよ!」

 

「ああ、任せてくれ『デコイ』っ!」

 

 俺は他の冒険者と一緒にダクネスに繋がったロープを持っていた。

 ダクネスを縛っているのには理由がある。ダクネスいわく囮スキルは相手の嗜虐心を煽るスキルだ。ならスキルだけでなく見た目からそういった格好をすればより効果が現れるそうだ。

 

『ああ、これは作戦のため。そう仕方ないことなんだ。だから思いっきりキツく私を縛ってくれ。遠慮はいらないからな!』

 

 すごく嬉しそうな顔をしていたけどあれは気のせいだった。自分の性癖を優先していた訳ではないはずだ。

 横で詠唱しているめぐみんを見る。どうやら間に合いそうだ。

 

『めぐみん、合図したら撃てるように準備しといてくれ』

 

『で、ですが街中ですよ。間違いなく周囲の建物を巻き込みます』

 

『このタイミングしかないんだよ。周りに被害が出るのは仕方ない』

 

 そう、門からなだれ込んできてダクネスのスキルに全員が入る今しかタイミングはないのだ。この辺りの住人はすでに避難済み。人が巻き込まれることはない。

 

 

 

「おい、お前達! 正気に戻れ! 俺の言うことが聞こえないのかっ!」

 

 見ると作戦通りにダクネスの周囲にアンデッドナイトが集まってきている。あの中にダクネスはいるのだろう。

 

「ああ、縄で縛られたままいたぶられるなんて! だがこれも作戦のため。もっと私に集まって来い!」

 

 喜びの声が聞こえる。ダクネスの硬さを信じての作戦だったが少し後悔してきた。

 そうしてダクネスを中心にアンデッドが全員集まるのを見計らって、

 

「今だっ! お前ら思いっきり縄を引っ張れーーー!!」

 

 俺の掛け声と共にダクネスに繋がったロープを冒険者達が引っ張る。ダクネス一本釣りと言ったところか。アンデッドの海から興奮した女騎士を釣り上げた。

 

「いけるな、めぐみん!」

 

「ハッハッハ! 有象無象よ、我が爆裂魔法を受けてみるがいい!『エクスプロージョン』っっ!!」

 

 俺の合図によりめぐみんは爆裂魔法を放つ。ダクネスに群がっていたアンデッド達は1人残らずその魔法によって消し飛ばされた。その光景を見た冒険者達から歓声が上がる。

 

「うおおおお! やるじゃねえか嬢ちゃん!」

 

「アンデッドが全員消したんだわよ!」

 

「ふ、あれだけの数に向かって撃ったのは初めてです」

 

「お疲れ様、ナイス爆裂だったよ」

 

 爆裂魔法を撃ってフラフラになっためぐみんをクリスが受け止める。今回はクリスの出番はなかった。けれど今からが本番かもしれない。

 

「クリス。一旦めぐみんを安全な所まで連れて行ってくれ」

 

「うん。分かった」

 

 めぐみんを担いでクリスは駆けて行った。

 俺の作戦だとそいつも一緒に吹き飛ばす予定だった。だけど知能が低いアンデッドナイトと違ってそいつはダクネスの囮スキルの影響を受けなかったようだ。

 

 デュラハンのベルディアは自分の部下が消し飛ばされた後を眺めている。自分の軍勢が一発でいなくなったのだ。このまま大人しく撤退してほしいのだが。

 

「ククク、ハッハッハッハッ!」

 

 そいつは高笑いを始めた。気が触れたなんてことはありえないだろう。

 

「まさか俺の配下が一撃の下に全滅させられるとはな。駆け出しの街だと侮っていたよ。さて、それでは…」

 

 右手に大剣、左手に首を持って堂々と進んでくるそいつは、

 

「次は俺自らが相手になってやろう!」

 

 そう俺達に死刑宣告を告げてきた。

 

 

 




VSベルディアです。
死の宣告もらって逃げられたら色々まずいので初手討伐です。
湖の浄化はできないのでカットします。仕方ないね。

次の投稿はベルディア戦を一気に書きたいので少し時間が空くと思います。まあ気長に待っててください。

読んでくださったみなさんに深く感謝を。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。