この素晴らしい世界でエリス様ルートを   作:エリス様はメインヒロイン

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原作一巻だいたい終わり


この月夜に密会を

 魔王軍幹部との戦いは俺がとどめを刺すことで幕を閉じた。

 街を襲った脅威は去り、冒険者達は死の呪いから解放された。街の被害は正門付近の街並みが爆裂魔法で吹き飛んでしまったが言ってしまえばそれだけだ。負傷者こそ多少はいるものの誰も死なずにすんだ。駆け出しの街というのを加味しなくてもそれは奇跡とも呼べる結果だった。

 

 その日の夜、冒険者ギルドにて。

 

「「「「かんぱーーーーーいっ!!!!」」」」

 

 魔王軍幹部討伐を祝してギルド主催の宴会が開かれていた。そこには当然俺の飲み仲間や知っている奴らも混じっている。みんな一様に俺や俺のパーティの奴らに感謝の言葉を述べていった。

 宴会の半ば頃、俺とミツルギは疲れたから静かに飲みたいと適当に理由を付けて端の方の席で二人で飲んでいた。

 

 

「あいつら昼間はもうどうしようもない、みたいな顔してたくせにどんだけ騒ぐんだよ。随分とまあ調子がいいことで」

 

「魔王軍幹部相手に誰も死なずに勝つなんて王都でも聞いたことがないほどの快挙だからね。君が成し遂げたからこそ彼らも今のように笑っていられるんだ」

 

 目の前にいる体中包帯まみれのミツルギが笑いながら言ってくる。ベルディアの最後の一撃で鎧は壊れたとのことだ。おそらく今回の戦いで一番大怪我をしたのはこいつだろう。

 ちなみにウチのクルセイダーは回復魔法をかけてやったとはいえほぼほぼ全快している。あいつ普段から鉄でも食ってんのかな。

 

「けど本当にすまなかった。僕があそこでとどめを刺せていればよかったんだけどね。僕と魔剣グラムなら間違いなく斬り伏せれると思っていたんだが」

 

 ミツルギは悔しそうに謝罪してきた。その自己評価の高さはどうにかならないのだろうか。

 

「またその話か。最終的に勝ったから気にしなくていいって言ってるだろ。お前は一人で幹部と戦ったんだ。文句言う奴なんていねえよ」

 

「…ありがとう。君は優しいんだな」

 

「…おいやめろ。男のデレなんて見せられてもこれっぽっちも嬉しくない。気にしてないとは言ったが、もしあれのせいで負けてたらあの世に行っても恨んでたからな」

 

「…僕もそれぐらい言われる覚悟はあったけど。なんだろうなこの納得いかない感じは」

 

 そんな話をしているとミツルギのパーティーの二人組が近づいてきた。

 

「キョウヤ、もう宿に帰ろう。まだ怪我痛むんでしょ?」

 

「そうだね。二人共気遣ってくれてありがとう」

 

 その二人はミツルギの言葉に少し顔を赤くしている。何を見せられてるんだ俺は。

 そうしてミツルギが帰ろうとすると二人はこちらに礼を言ってきた。

 

「あの、キョウヤを助けてくれてありがとうございました」

 

「私達は恐くて近づけなかったから…本当にありがとうございます」

 

 今日何度目かの感謝を言われた。それに対して俺は適当に相槌をうってかえした。

 

「それじゃあ佐藤カズマ、また今度」

 

 そう言ってミツルギ達はギルドを出て行った。

 一人になり特にすることもないので、ウチのパーティーの様子を見た。冒険者達の中心でいつも通り騒がしくしている。そこに混ざる気になれずに酒で火照った体を覚ますためにギルドを出た。

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 私とダクネス、めぐみんは冒険者達の中心で宴会に参加していた。周りの冒険者達からは感謝や私達の活躍に対する称賛の言葉が送られてくる。だけどそんな周りの声など気にせずにめぐみんは騒いでいる。

 

「私があのアンデッドの軍団を全滅させたんですよ! それなのにあなた達三人は私を置いて他の冒険者と魔王軍幹部を倒した? なんですか、私はいらない子ですか! そんな見せ場持っていかれたら私の活躍が霞むじゃないですか!」

 

 めぐみんが言うには紅魔族的においしい所を持っていかれたのが許せないらしい。なんとも理不尽な文句だ。

 

「ま、まあ落ち着けめぐみん。あの爆裂魔法がなかったら街はもっとひどい被害を受けていたのは間違いない。みんなそれは分かってるよ」

 

「ほらこれ食べて落ち着いて。まだまだ料理は来るから」

 

 めぐみんの口の中に唐揚げを押し込む。この手の手合いはまず口を塞ぐのが有効だとアクア先輩から学んだ。

 

「ゴクン、この程度の贄で我が怒りを封じられると思うてか」

 

 一瞬で唐揚げが消え失せた。どうやら彼女には私の経験は通用しないらしい。

 

「じゃあどうしたら機嫌直してくれるのさ?」

 

「そうですね。ではクリスが飲んでいるシュワシュワを一杯ください。私もすでに立派な冒険者。大人の味と言うものを知りたいのです」

 

「そんなのでいいの? じゃあ新しいのを…」

 

「いや、まだめぐみんに酒は早い。若いうちから飲んでいると頭がパーになるぞ」

 

 私が注文しようとすると、ダクネスがそんな固いことを言ったきた。私としては別にいいと思うのだが。

 

「いいじゃないですか。クリスだって飲んでいるのです。私達は年齢的な差はほとんどありませんよ」

 

「クリスはもう手遅れだから仕方ないんだ。私が昔から止めても聞かず、今ではこんな酒呑み盗賊になってしまった。めぐみんまでそっちの道に行かせるわけにはいかない」

 

「ねえそんな事思ってたの。別にあたしだって毎日飲んでるわけじゃないよ」

 

 私はちゃんと節度を持って、クエストやバイトが終わった後、それと暇な日しか飲んでいない。…あれ?

 

「それに酒の飲み過ぎは体の成長にも影響があるんだ。めぐみんはまだ子供、今のうちから飲んでいると大きくならないぞ」

 

「胸が大きくならないとは随分なことを言ってくれますね! 自分が大きいからって余裕のつもりですか!」

 

 めぐみんがダクネスに襲いかかりその胸を鷲掴んだ。その胸が形を変える様に周りの男冒険者達から色めき立つ声が上がる。

 

「や、止めてくれめぐみん! 他の冒険者もいるんだ! 彼らが獣欲を瞳に宿し私の身体を好き放題する事を妄想し、隙あらば手を出そうなどと考えながら私を見ている!」

 

 ダクネスは頬を染めながら胸をもみくちゃにされている。私の親友はお酒を飲まなくても頭がパーになるようだ。昔の純情な彼女はどこに行ったのだろうか。

 後これからはお酒を少しだけ控えるようにしよう。目の前で形を変える親友の胸を見ながら小さく決意した。別に胸の成長を気にしているわけではない。

 

「あれ、カズマ君どうしたんだろ?」

 

 そろそろ彼を呼ばないと事態が収まりそうにない。そう思いギルドの中を探すとギルドを出て行く姿が見えた。少し気になったので後を追いかけることにした。

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 今夜は月が綺麗だな。

 俺は街の中を流れる川辺に腰掛けながら、そんな面白みのない感想を抱いていた。ここの川辺は風通しがよく火照った体にはちょうどいい。人通りも少ないのでぼんやりと空を眺めていた。雲一つない空に浮かぶ月は白く淡い光を放っている。空から街を一人で照らすその姿は綺麗だけどどこか寂しそうにも見えた。

 

 

「今日の主役がこんな所で何やってるの」

 

 後ろから声をかけられる。こっそりと抜け出したのだが見られていたらしい。

 

「別に大したことじゃないよ。飲み過ぎたから身体冷ましにきただけだ」

 

 クリスはそうなんだと相槌を打ちながら隣に座った。何か用事でもあるのだろうか。そう考えていると彼女から話し始めた。

 

「今日はいろいろあって大変だったね」

 

「本当だよ。急に魔王軍幹部が来たと思ったらそのまま戦いが始まって、どうにか倒したと思ったらガッツ発動してもうワンラウンドとか。駆け出しの街が相手するような奴じゃなかったよ」

 

「途中からは追いかけっこなんかしてたけどね」

 

 隣でクスクスと笑っている。一応あれでも真面目に戦ってたんだけどな。まあ自分で思い返してみてもあれはどうかと思う。

 

「そういえばあのデュラハン死際にえらく楽しそうに喋ってたけどあれ何だったんだろうな」

 

「…デュラハンはね、不当に処刑された騎士がその怨嗟に呑まれてアンデッド化するモンスターなんだ。その時点で生前どんなに高潔な騎士だったとしても人の理から外れた存在になる。その最期に救いが訪れることはほとんどないの」

 

 あのデュラハンが高潔な騎士か。まったくそんな気配は感じなかったな。俺が頭の隅でそんなことを考えていることなど知りもせずクリスは続ける。

 

「そんな最期があんなに騒がしい終わり方だったんだもの。あの人も楽しかったんじゃないかな。それで最期に君にその感謝として激励を飛ばしたんだと思うよ」

 

 まあ結局は本人じゃないとわかんないけどね、と付け加えながらクリスは語り終えた。

 楽しかったか。アンデッドのくせに妙に人間臭かったあいつはそんなことを思っていたのか。まあそれならあの戦いが笑い話みたいだったのはむしろらしいのかもしれないな。

 

 

「だからね、君が気に病むことはないんだよ」

 

「…ん? 何の話だ?」

 

 俺はクリスの言葉に疑問符を浮かべる。いったい何の事を言っているのだろうか。俺の反応にクリスも少し驚いた顔をした。

 

「え? 君があのデュラハンに止めを刺す時に少し辛そうな顔してたから気にしてると思ってたんだけど…」

 

「ああ、確かに多少は罪悪感みたいなものはあったけど、結局はモンスターだったって事にして割り切ってたぞ。ゴブリンみたいな人型のモンスターも討伐してるんだ。そこら辺の住み分けはできてるよ」

 

 この世界はモンスターと言えども言葉を喋る種族もいるのだ。ある程度割り切っていかないと、とても冒険者なんてやってられない。

 

「じゃあなんで今日はみんなを避けるように飲んでたの?」

 

「そ、それは…」

 

 さすがにバレていたか。まああからさまではあったからな。

 

「やっぱり何かあるんでしょ。あたしでよければ相談に乗るよ。一人で抱え込むのはよくないからね」

 

 クリスが心配そうな目で見てくる。こんなに真剣な目で見られるとはぐらかすのも悪い気がする。けど本当に大したことじゃないんだけどな。

 

「…笑わないか?」

 

「笑わないよ」.

 

 仕方ない、彼女の言葉を信じよう。そうして俺はその重い口を開いた。

 

「俺が…他の奴らを避けてたのは…」

 

 

 

 

 

 

 

 

「…あれだけ沢山の奴に礼を言われたのが初めてで、その…照れくさくって…避けてました。はい」

 

 

 俺の言葉にクリスはキョトンとした顔を向けてくる。頼むからそんな顔しないでくれ。

 

「………それだけ?」

「………それだけ」

 

「「………」」

 

 沈黙が空気を支配する。だが俺には見えている。クリスの肩が小さく震えてているのが。大丈夫、まだ笑ってはいない。約束は守ってくれている。

 

「…ク、ク…フハッ」

 

 俺は寛大な男だ。少し声が漏れた程度なら見逃してやろう。だが次はない。

 

「ク…アハっ、アハハハハハハハッ!」

 

 クリスが腹を抱えて笑い出した。

 OK戦争だ。先に条約破ったのはそっちだからな!

 

「てめークリス、お前笑わないって言ったよな! なのになんだその様は! 普段はウチのパーティーで一番の常識人だから頼りにしてるが今はそんなの関係ねー! 人を笑ったんだ! ならお前も笑い者になる覚悟はあるんだろうなー!」

 

「だ、だって、あんな思いつめたような表情してたくせに照れくさいから避けてたって! アハっアハハハハハっ!」

 

「だから言いたくなかったんだよ! なのに相談に乗るから、とか言って無理矢理言わせたくせにこのやろーっ! よしいいだろう! 反省の色が見えないクリスには俺と同じく辱めの刑に処してやる!」

 

「別に無理矢理には聞いてないんだけどね。フフっ、それで刑って何するの?」

 

 クリスはまだ笑いが収まらないのか息を整えながら聞いてきた。これにはきついお灸が必要なようだ。

 

「クリスのパンツをギルドで配り歩く」

 

「え」

 

 俺の話にクリスの笑い声が止まる。

 

「俺は二回ほどパンツを奪ったからな。それがどんなものだったかは目に焼き付けてある。それと同じ物を探しこれはクリスが履いているのと同じ物だと言って男冒険者に売りつける」

 

「そ、そんなのあたしのだって信じる人いないよ」

 

「果たしてそうかな? 俺がお前のパンツを奪ったのはすでに周知の事実だ。その俺が保証するんだぞ。さらにその中に本物が混じっているかもしれないと吹聴すれば男どもはこぞって買いに来る事だろう。そうして自分が買った物がクリスが履いていた物だと妄想しながら…」

 

「や、やめてー! 謝る! 謝るからそんなことしないでっ!」

 

 クリスが半泣きで謝ってきた。やはり正義は勝つのだ。

 

 

 

「たくっ、いいか、他の奴らには絶対言うなよ」

 

「言わないよ。言ったら君が何しでかすかわかったもんじゃないしね」

 

 少し時間が経ちさすがに二人とも落ち着いてきた。クリスには釘を刺しとけば変に広めたりすることはないだろう。

 

 

 

「けどカズマ君はお礼を言われると照れちゃうんだね」

 

 クリスはニマニマとからかうような目で俺を見てくる。その緩んだ頬引っ張ってやろうか。

 

「大勢に言われ慣れてなかっただけだ。普通に礼を言われる分にはなんともないよ」

 

「じゃあ、あたしが今からお礼を言ってみるからそれで勝負してみようよ。君が照れたらあたしの勝ちだよ」

 

 クリスはそんなよくわからない勝負を仕掛けてきた。

 

「いいぜ。やれるもんならやってみろ」

 

 

 それじゃあいくよ。そう言うとクリスはこっちには顔を向けずに前を見ながら、

 

「今日はありがとうね」

 

 そう穏やかな口調で感謝を告げてきた。

 

「君はもう知ってるけど、あたしっていろいろ隠し事が多くてね。今まで大抵のことは一人でこなしてきたんだ。そうするしかなかったからね」

 

「だからね、君が手を差し出してくれた時あたしは嬉しかったんだ。一人じゃなくて一緒に頑張ってくれる人がいることが」

 

「…そんな大層なことはしてないよ。途中で諦めそうにもなったしな」

 

「でも君はあたしの手を取ってくれたよ。あたしのお願いを聞いてくれた」

 

「だから、ありがとう。カズマ」

 

 

 

 

「あたしの勝ちみたいだねカズマ君。じゃあみんな待ってるから早く帰ってきなよ」

 

 クリスはばっと立ち上がるとさっさとギルドへ帰っていった。

 俺はその場を動かずにただ座っていた。

 

「…いや、引き分けだろ…」

 

 クリスの横顔を思い出しながらそう呟いた。

 

 酒の火照りを冷ましにここに来たのだがもう少し時間がかかりそうだ。もう一度空に浮かぶ月を見た。先程は酔っていて気づかなかったのか月の隣に小さく光る星が見える。月と比べると当たり前だが随分と小さな星だ。そんな些細な違いだが、さっき見た月よりこっちの方がなんか好きだ。

 俺は顔の熱が覚めるまでずっとそれを眺めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 




作者の作風が安定しないのはいつものことです。
とりあえず思いついたものを書いてみた。
最後の方の二人は照れてるだけです。
表現って難しいなと思う今日この頃。


読んでくださった皆様に深く感謝を。
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