この素晴らしい世界でエリス様ルートを   作:エリス様はメインヒロイン

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野生のめぐみんがあらわれた。
  撫でる
  餌を与える
  スティールする
ニア 爆裂魔法ってネタ魔法だよね


名物娘と駆け出し男 森の悪魔を添えて♯1

 爆裂魔法というスキルがある。

 それは圧倒的な暴力、比類なき力、人類最強の攻撃魔法、神殺し、魔王を滅ぼせる力。

 言葉にすればいくらでも出てくるのだろう。

 そんなのは全部まやかしだ。

 本物はそんな言葉などという陳腐なものには縛られない。

 俺の目の前で起きたことを正しく言葉で表すのは世界中の作家、詩人が寄せ集まったとしても筆を投げたに違いない。

 

 俺の語彙ではただただ最強としかいい表せないその魔法を撃った少女は、

 

「はっはっは! どーですか! 我が扱いし究極の魔法の威力は! どうやら、驚きすぎて声すらでないようですね! その驚愕した表情、最高の気分です!!! 今の状況を忘れてしまうほどに! じゃあ正気に戻ったら助けてくださいねー。ハプッ」

 

 カエルになった。

 

「めぐみーーーーーーーーん⁉︎」

 

「喰われてんじゃねーーーーー!」

 

 

  ーーーーーーーー

 

 俺が冒険者になって一週間がたった。

 最初こそ元々の引きこもり気質のせいで毎日筋肉痛に悩まされていたが、慣れとレベルの上昇により駆け出しとはいえ一端の冒険者と言えるようになっていた。

 

「いやー頑張ったねー。まだ一週間だけど初めの頃に比べて見違えるようだよ」

 

 そう言ってクリスは向かいでニコニコと笑っていた。

 

 この一週間、新たに加わったダクネスをパーティーに入れてクエストに行っていた。クエストは例のカエルに加え森周辺の簡単なクエストを中心に受けている。

 だいたいが硬さだけは一品のダクネスが敵の中心で楽しんでそれを俺とクリスが叩くと言った感じだった。クリスも俺のレベルが上がりやすいように加減していたので、俺が敵を倒すことが多かった。

 そんなこんなで俺のレベルは10まで上がっている。

 

「クリスに教えてもらった潜伏や敵感知、バインドのスキルも取ったし、俺も立派な冒険者だな。まだスキルポイントが余ってるんだがなんかいいスキルないかな」

 

「千里眼とかどうかな。遠くが見えたり、暗闇の中でも目が効いたりするんだ。盗賊をやってる身としてはあのスキルはすごく羨ましいんだよ」

 

「すまない、待たせたな」

 

 そんなことを2人で相談しているとダクネスがやってきた。

 

「カズマのスキルの話か? 私としてはバインドのような拘束スキル系や威力が高くて気持ちいいスキルがいいと思うぞ」

 

 そんな自分の欲望がだだ漏れなことを言ってくる。

 

「例えそれを取ったとしてもお前には使ってやらない。ダクネスが両手剣用のスキルを取るなら考えてやらんでもないが」

 

「くぅ、それは厳しい選択だ。だが私が攻撃系のスキルを取ると普通に強くなってしまうのだ。それだけは……できない!」

 

「強くなるってすごくいいことだと思うんだけどなぁ」

 

 クリスと2人で溜息をつく。こればっかりは昔から言っても聞いてくれないそうだ。まあパーティーもまだ増えるかもしれないし、その時になってからでも遅くないだろう。

 

 

 そんなことを話しているとギルド職員のお姉さんから冒険者に連絡があった。

 

「最近森で悪魔に関する報告が多数ありましたが、ギルドでもそのことを確認し、これに懸賞金をかけることが決定しました。冒険者のみなさんはくれぐれも注意して自信のない方は森に近づかないようお願いします」

 

 俺にはあまり関係のないことだな。まあ森のクエストは今後控えよう。

 

「ヘェー、悪魔が出たんだ」

 

 

 目の前のクリスから今まで聞いたことがないほどドスの効いた声が聞こえた。

 

「噂では知ってたけど、どうせ下級悪魔だろうと見逃してあげてたのに、懸賞金がかけられる程暴れてるんだ」

 

「ク、クリスさん?」

 

 表情は普通なのに目が笑ってないですよ。

 

「悪魔の分際で随分好き勝手やってるみたいだねぇ。いこっかダクネス」

 

「ああ」

 

 クリスほどではないにしろ、こちらもなかなか極まった目をしている。

 

「君はまだステータスが足りなくて危ないからついて来ちゃダメだよ」

 

 少しだけいつものクリスに戻ったがすぐに真顔になり2人はギルドを出て行った。

 

「悪魔滅ぶべし!」

「ぶっ殺してやる!」

 

 ‥‥どうして2人してあんなに殺気だっているのかわからないがあまり首を突っ込まない方がいいだろう。というか関わりたくない。

 からかいながらも面倒見がよいクリスや、抱擁力のあるエリスをいつも見てきたカズマにとってあれは劇薬に等しかった。

 

 

  ーーーーーーーー

 

 しかし2人して悪魔を倒しに行ったせいでクエストに行くことができなくなってしまった。

 

(誰か他の冒険者と組んでみるのもありか?)

 

 現状のパーティーだと火力か回復が心許ない。誰かいい人材がいないか探しておくのはありだろう。

 そう思いギルドの中を見回していると1人目につく子がいた。自分の右斜め前の隅っこの席につくその少女はこの間ギルドで騒ぎになっていたのとは違う紅魔族の少女だった。どうしてその子が目についたのかと言うと、

 

(トランプタワー、だと)

 

 それはもう見事な高さのトランプタワーを建てていたのだ。逆になんで今まで気付かなかったのかと思うほどその少女は景色に溶け込んでいた。

 

(暇そうだしあの子をさそうか? いや、)

 

 ここで話しかければ彼女のアートが崩れてしまう。せめてそれが終わるまでは見守ろう。完成見てみたいし。

 

 そこから10分ほど彼女の作業を見守っていた。

 

 どうやらタワーは全部で10段のようで今8段目が終わったところだ。彼女も終わりが見えてきたからか安堵の表情を浮かべている。

 

(まだだ、まだ終わっちゃあいない。そこで油断したらダメだ!)

 

 しかし、いつだって終わりは唐突に現れる。

 

 すっかりその作業に見入っていたカズマとその少女は外敵が近づいてきていることに気付くのが遅れた。そこに現れたもう1人の少女はいつのまに机のそばに来ていたのかトランプタワーを一瞥、何を考えているのか机の上に黒猫をけしかけたのだった。

 

(おい、お前は何をしている。やめろ、やめてくれ。それには彼女の夢が詰まってるんだ)

 

 少年の思いは届かない。机に解き放たれた漆黒の魔獣は本能の赴くまま前に進み、

 

(やめろーーーーーーー!!!)

 

  バサァ

 

 トランプタワーを崩した。

 

「ああああああああーーーー!」

 

「うわぁあああああーーーー!」

 

 2人の少年少女の慟哭がギルド内で響きあった。

 

  ーーーーーーーー

sideめぐみん

 

 つい破壊衝動に目覚めた主人と同じ気持ちだった使い魔を褒めていると、友人とよく見る冒険者が突っかかって来た。

 

「なんてことするのよーーー!」

 

「お前の血は何色だーーーー!」

 

 待って欲しい。ゆんゆんはともかくどうしてこの人まで怒っているのだろうか。というかゆんゆんも少し引いている。

 

「あなたはよく見かける変なエリス教徒の人じゃないですか。何の用ですか?」

 

「エリス教徒? なんのことだ? いや今はそんなこと関係なくて」

 

 あれだけ女神エリスの名前を叫んでいたのにエリス教徒ではないと。

 

「何をしたか分かってんのかお前は! 今お前が崩したものにはな、彼女の夢が詰まってたんだ。どうしてそんなに軽々しく壊せるんだ。人の夢を壊す権利なんて誰も持っちゃいねえんだよ!」

 

 そう言いながらゆんゆんを指差す。

 そんな、私はなんてことを。

 

「すみませんゆんゆん。ボッチを拗らせすぎてそんなにこの遊びにハマっていたんですね。大丈夫です。たとえゆんゆんがどんな夢を持とうと私は応援しますから」

 

「ねえめぐみん、悪ノリはやめて」

 

 まあここらがやめ時でしょう。

 とりあえず冷静になって話をしよう。 

 

  

 

「いや俺もなんか熱くなってた。悪い」

 

 恥ずかしいのか少し顔が赤かった。

 彼はゆんゆんが遊び終わるのを待っていてその後冒険にさそう予定だったそうだ。それにしてはやけに熱く語っていたが。

 

 しかし、

 

「じゃあゆんゆんだっけか。変な渾名だけどよろしくな」

 

「ほ、本名なんだけど……い、いえ不束者ですがよろしくお願いします」

 

 ライバルとして彼女に先を越されるわけにはいかない。

 

「おっと、ならば私も連れて行ってもらおうじゃないか。そこの中級魔法しか使えない紅魔族と違い、我が操るは人類の切り札、爆裂魔法です。どちらが優秀なアークウィザードかは比べてもらえば一目瞭然です」

 

「ちょっとめぐみん⁉︎ 私がパーティーに誘われたんだからね! 邪魔しないで!」

 

 とりあえず足を引っ張るくらいはしておこう。そんなことを考えているとその男は、

 

「いや、いいよ」

 

「……今、なんと言いましたか?」

 

 そこから男はとんでもないことを語り出した。

 

「いやお前って最近噂の頭のおかしい紅魔族だろ。爆裂魔法しか使えない。噂だと一発撃ったら動けなくなってお荷物になるわ、無駄に威力が高すぎて需要がないとか、範囲が広すぎて仲間を巻き込みかねないとか。しかもちょっと撃ちたい気分だとか言って急にぶっ放すらしいし」

 

 どうやら私の悪評はすっかりギルドに浸透しているようだ。しかし、

 

「見たことはないが爆裂魔法ってネタ魔法なんだろ」

 

 その言葉は許せない。

 

「何をーーーーーーーー!!? 一発しか撃てない? 無駄に威力が高い? あなたは爆裂魔法のロマンをまるで分かっていませんね! 今までパーティーを組んでいた人でも、もうちょっとオブラートに言ってきたのに、見てもいない人にそこまで言われるとは思いもしませんでした!」

 

 ゆんゆんが私を止めようとおろおろしているがこのことに関しては譲れないのだ。

 

「いいでしょう! あなたがネタ魔法と称するものがどれほどのものか直に見せてあげましょう!」

 

 

  ーーーーーーーー

 

 もうお決まりになったカエルを討伐するため3人は平原に集まった。

 

「そう言えばまだ名乗っていませんでしたね。ほらゆんゆん、やりますよ」

 

「ううー」

 

 そう言って2人はポーズを決めながら名乗りを上げた。

 

 

「我が名はめぐみん! アークウィザードを生業とし、爆裂魔法を操る者!」

 

「わ、我が名はゆんゆん! アークウィザードを生業とし、いずれ紅魔族の長となる者!」

 

 

「‥‥馬鹿にしてんの?」

 

「違わい!」「違います!」

 

 2人の反応を見るに真面目なようだ。それにしても面倒なことになった。

 

「俺の名前はサトウカズマ。職業は冒険者だ。とりあえずさっさと一発撃って帰ろうぜ。俺も暇じゃないんだよ」

 

「ゆんゆんの1人遊びに見入っていた人が何を言っているのですか」

 

 ぐうの音も出ない。

 

「カズマと言いましたか。爆裂魔法は人類が扱える中で最も強大な力。その圧倒的な光景を目に焼き付けてもらいましょうか。そして先程のネタ魔法の件は撤回してもらいます」

 

 あれが良さそうですねと他と比べると更に一回り大きいカエルに目をつけたようだ。

 

 そうしてめぐみんは魔法の詠唱を始めた。

 この世界に来て日が浅い俺には魔法なんてまだ理解できていないがこれが尋常のものでないことはわかる。大気が震えるとでも言えばよいのか、彼女の周りの空気が変わっていく。ゆんゆんも固唾を呑んで見守っていた。

 

「しっかりと見ていてください。あなたがネタ魔法と称した物の本当の姿を!」

 

 目を真紅に輝かせためぐみんが興奮したように言ってくる。

 

 そうしてその魔法は放たれた。

 杖の先から光がカエルに向かって飛んで行く。それが着弾した瞬間。世界は白に染まった。

 

 ドガァアアアアアアアアン

 

 音は一拍遅れて俺たちの元へ届いた。土煙が晴れた先には大きなクレーターができており、そこにあった命は跡形もなく吹き飛ばされていた。

 

(…すげぇ)

 

 そんな言葉しか出ない程衝撃的だった。何か敵感知に反応が現れたがそれに気付がないほどに。

 

「ふう、やはり爆裂魔法は最高ですね。ん、なんだか地面が揺れているような、てちょっ」

 

 俺はそれを撃った少女を改めて振り返る。

 

「真下にカエルがいるとか予想外です。私の口上がまだなのですがまあこのままでいいでしょう」

 

 そこにはカエルに半分喰われた少女がいた。

 

「はっはっは! どーですか! 我が扱いし究極の魔法の威力は! どうやら、驚きすぎて声すらでないようですね! その驚愕した表情、最高の気分です!!! 今の状況を忘れてしまうほどに! じゃあ正気に戻ったら助けてくださいねー。ハプッ」

 

 そう言って男らしいというか大物と呼べばいいのかよくわからない少女はカエルに飲み込まれた。

 

 

  ーーーーーーーー

 

 あの後俺とゆんゆんで集まってきたカエルを倒した。ゆんゆんは流石紅魔族と言ったところかほとんどを1人で倒していた。その後ベトベトになっためぐみんをしょうがなく俺が背負って風呂に入れて、今はギルドで夕食を取っているところだ。

 

「ふっふっふ、どうでしたか? 直で見た人類最強の魔法の感想は。まあ、言葉にせずともあの顔を見れば誰が見ても明白ですが」

 

「悪かったよ。確かにあれはすげぇとしか言いようがなかった」

 

「もう少ししっかりとした感想も聞いてみたいですが、まあこのご飯に免じてこの辺にしてあげましょう」

 

 詫びとして飯を奢ってやるとめぐみんは上機嫌だった。ついでにとゆんゆんにも奢ってやった。

 

「どうしたゆんゆん? 遠慮しなくていいんだぞ」

 

「あ、はい。ありがとうございます」

 

 どこか歯切れの悪い返事が返ってくる。どうしたのかと考えている俺など知ったことかとめぐみんは更に捲し立ててきた。

 

「それであれを見た後でもまだ爆裂魔法をネタ魔法などと言えますかねあなたは。いや言えないでしょうね」

 

 そんな上機嫌な様子だったが、

 

「いや、やっぱりネタ魔法だろう」

 チャリーン

 

「何……ですと?」

 

 俺の言葉に持っていたスプーンを落とした。

 

「いや確かに威力は凄かったしそれは評価できるけど、結局他の悪い点はそのままだし、今日の感じを見ると撃った後に周りのモンスターが集まってくるだろ。凄いんだけど総合的に見るとネタというか」

 

「いいでしょう! カズマには爆裂魔法の素晴らしさが分かるまで毎日付き合ってもらいます。それではまた明日」

 

 残ってた飯をしっかりと食べ終えると少女は先に帰っていった。厄介なやつに絡まれたが現状クリス達がいないことだし少しぐらいなら付き合ってやるか。

 

「じゃあ俺も帰るわ、またなゆんゆん」

 

「…‥…」

 

 何故か無言だった。先程の様子もあり何か悪いことでもしただろうか。そう疑問に思いつつも何か有用なスキルを教えてくれる人はいないか探しに行った。

 

 

  ーーーーーーーー

sideゆんゆん

 

 初めて他の人にクエストに誘われた。

 ちょっと変な人だけどこんな機会次はいつくるかわからない。

 クエスト中はあんまりお話できなかったけど勇気を出して今度こそ自分からパーティーに入れてもらうんだから。

 

 少女は決意を固めた!

 

「あ、あの、わ、私と一緒にパーティーを組んでくれませんか!!」

 

 少し噛んではいたがしっかりと自分の思いを言葉にできた。

 しかし、

 

「え…、あれ? カズマさん?」

 

 彼女が悩んでいる間に彼は帰ってしまい、彼女の言葉は虚空に吸い込まれていくだけだった。

 

 少女の決意はあっけなく崩れさった。

 

 

 彼女の本当の夢が叶う時が来るのかは誰も知らない。

 

 

 

 




今回はクリス成分少なめです。次回もたぶん少なめです。タイトル詐欺ですね。だが謝らない。

2人は紅魔族が登場しましたね。今作はカズクリがゴールだからめぐゆんでも目指してみようか。え、非生産的?せやな。

爆裂魔法の演出に無駄にこだわってしまった。文字数稼ぎじゃないよ。ほんとだよ。

作者は今オリジナルの爆裂魔法の詠唱考えてるからおまけはないよ。めんご。本編にだすか?知らん。


読んでくださった読者の皆様に深く感謝を!

後書きが適当?いっつもこんなもんでしょ。
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