RE:fate/V   作:夜廻

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うえーい。


一章三節「もしも」

10分前

 

致命傷を与えたサーヴァント達が光の粒子へと変わっていく。その様子をつまらなそうに見つめながらVは腹部を抑えていた。

 

「グリフォン、見つけた民家に案内しろ」

 

空を飛んでいるグリフォンに案内の催促する。だが、何かを見つけたようでその翼を煩わしくはためかせながら何かを報告してきた。

 

「オ、オイV! 上から見てたんだけどよ。アッチの山の方、スンゲェ光ってるぜ!?」

 

グリフォンの指し示すほうに視線を向ける。そしてそこには禍々しい魔力の極光が目に飛び込む。

 

「次から次へと...おい、急いであそこに向かうぞ。俺達以外の生存者がいるのかもしれん」

 

「オーケイ! 特急便のお通りだぜ!」

 

グリフォンに掴まり、空を飛ぶ。シャドウで行くこともできるが今は時間が惜しい。何よりも、裏切り者に生存者を始末されるのは避けたい。

 

極光の発生していた洞窟は先ほどとは打って変わってがらんとしており、洞窟の奥から流れてくる魔力に危機感を覚えていた。

 

「おいV。これはサイアクの事態を想定しなきゃダメかもダゼ」

 

「・・・ああ。わかってる」

 

シャドウに速度を上げてもらい洞窟を駆け抜ける。そして最奥に辿り着いた瞬間、状況を理解した。真っ赤なカルデアスを背に巨大な魔力炉の縁に立ち腕を掲げるレフ。そしてその腕の先にいるのはオルガマリーとキリエライト、そして藤丸立香の三名があのカルデアスに引き寄せられているところだった。

 

レフは本当に勝ちを確信しているようだった。表情も行動も傲慢に満ち満ちている。恐らくいつもの奴であれば洞窟の入り口に罠を仕掛けていても何ら不思議では無い。普通ならば捕捉されていてもおかしくない。だがそれを奴はしなかった。奴が油断しているのは自明だった。

 

グリフォンに指示を出し、こちらに気付かれないように隠蔽の魔術を施したグリフォンをレフの上空に待機させる。そして肩に堕天の王を顕現させ、引き抜いた剣を投げつける。投げつけた剣を投げた別方向に転移させ撹乱させる。

 

「────騙しの手品だ」

 

案の定弾かれた剣を見届けた後グリフォンに合図を送り落雷を起こさせる。転落したレフを見届け、挑発する。

 

「“私は見た、道の片面に、他の創造物よりも高貴に創造された者を。その者は、天国から地獄へと電光石火のごとく落下した”。────見事な転落劇だったぞ。レフ・ライノール」

 

「プッ! ククク、アッーーーハハハハハハハッ!!! マァ、見事な転げ落ち方ダゼ! あの有名なイケダヤかよっ! 名演技だったぜェ? レフちゃんよぉ!!」

 

「Vさん!」

 

駆け寄ろうとするマシュを制し、前を見据える。マシュや藤丸たちの顔は土埃だらけで大分難しい局面に立たせられていたのは明白だった。

 

「お前たちは休んでいろ。ここから先は、俺の仕事だ」

 

レフはボロボロになりながらも立ち上がり、Vを睨みつける。

 

「き、貴様ァ...! 何故生きているっ! あの傷、しかもお前には三体のサーヴァントを送りつけた筈だっ」

 

「まさか本当にあの程度で俺を殺せるとでも思っていたのか? だとしたらお前は本当に節穴だな」

 

Vの言葉と同時にシャドウが飛び出し、レフを切りつける。レフは寸でのところで避け、魔法陣から光弾を放つ。この対応力、流石は天才と謳われるだけのことはある。

 

「ハハァア!! 勝負は速攻てか!? イイねぇ! 付き合ってやんよ!」

 

レフの光弾はグリフォンの雷によって相殺され、火花が散る。レフはその光景を見て額に青筋を張る。

 

「マシュ」

 

「は、はい!」

 

Vはマシュに声をかけ指示を出す。

 

「流れ弾の危険がある。後ろの二人を頼んだぞ」

 

「────はい!」

 

マシュは盾を構え、力強く、頷いた。

 

「────ルシフェル」

 

それと同時にVは肩に触角のような装飾のついた肩当を顕現させる。そして触角の先端から剣を引き抜きそれを投擲する。

 

「チィ!」

 

赤いオーラを纏ったソレは簡単に弾かれ、地面に突き刺さる。だが間髪入れずまた次の剣が投擲される。また同じように弾こうとしたレフだったが、今度はグリフォンたちの追撃が入り回避を余儀なくされる。

 

「目障りな! 使い魔如きが調子に乗るなッ!」

 

「その使い魔にイイようにされてるのはドコのどいつだよ!?」

 

レフはグリフォンに向かって魔術を放つ。だが相手が複数いることを忘れてはいけない。

 

「グッ!?」

 

シャドウによる背後からの斬撃、避け切れずレフは背中に攻撃を喰らう。だが攻撃をしているのはシャドウだけではなく、これを機とばかりにVとグリフォンが追撃を加える。 

 

「油断をしていたな。普段の貴様であればこんな事にならなかっただろうに」 

 

剣が肩に刺さり、グリフォンの突進で吹き飛ばされる。

 

「貴様ァ!」

 

「最早言葉まで失ったか。それともそれしか言えんのか」

 

レフは大きく退き、態勢を崩しながらも両の足で着地する。だが、先ほどのダメージが大きいのか片膝を突き座り込んだ。そして突如としてレフの身体がブレ始める。

 

「本当に癪だが私にはまだやるべきことがある。ここでの目的は果たした。失礼させて頂こう」

 

「無様だな、尻尾巻いて逃げる気か?」

 

「戦略的撤退だよ。どのみちこの特異点が崩れ去れば君たちも死ぬ。万が一逃れたとしても破滅の未来は変わらん!」

 

そう捨てセリフを吐き捨てどこかに転移しようとする。だがこちらも黙ってはいない。レフの身体が消える直前、指を鳴らし奴の方に刺さった剣にサインを送る。

 

パァン! と乾いた音を立てて剣は爆裂し、レフの腕を飛ばす。苦悶の表情を浮かべながらレフは完全に消えていった。

 

「Vさん!」

 

戦闘が終わったと同時にマシュたちが駆け寄ってくる。彼女たちは俺の生存を喜んでいるようだが、オルガマリーの表情は暗い。

 

「どうした、オルガマリー。あのいつもの威勢はどこにいった?」

 

焚きつけるように言葉を向けるが反応は芳しくない。むしろ無視をされたほどだ。いつもと反応が違うオルガマリーに疑問を抱いていると藤丸が話かけてきた。

 

「あ、あの。Vさん。実はお話があるんです」

 

藤丸とマシュの神妙な表情に真剣味を感じた俺は素直に話を聞くことにした。

 

「・・・・」

 

話を全て聞き終えた後、俺は納得した。俺の推測通り爆弾はオルガマリーの足元にあった。そしてそれは確かに爆発し、彼女は爆散した。だがトリスメギスが、彼女を此処に転移させてしまった。

 

オルガマリーの方を見る。相変わらず絶望の表情だ。残念だが、彼女を助ける術は存在しない。肉体があればまた話は変わったかもしれんが状況はやはり絶望的だ。

 

『────ザザッ、やっとつながった! 誰か応答してくれ!』

 

これまたタイミング悪く通信が入ってきた。オルガマリーが応答しようとしないので代わりに俺が出る。

 

「九死に一生だったな、ロマ二。そちらはどうなっている?」

 

『V君!? よかった────って。今はそんな状況じゃない!』

 

ロマニが叫ぶと同時に空間が震えだす。

 

「特異点が崩れ出しています!」

 

キリエライトが叫ぶ。なるほど、元凶が居なくなって文字通り崩壊を始めたと。とうとう時間が無くなってきた。

 

「ロマニ、彼女たちの転移を優先させろ。最悪俺はどうなっても構わん」

 

『・・・わかった。ギリギリになるけど持ちこたえてくれ。まぁ、宇宙空間に放りだされても数十秒は生きていられるから!』

 

「こんな時にふざけないでください! 後でシバきますよ!?」

 

そうこうしている内にマシュと藤丸の身体が透け始める。そして消える直前、藤丸がオルガマリーに叫ぶ。

 

「マリー所長! 短い間だったけどお世話になりました! 出会いは最悪だったけど...この特異点では大変だったけど、貴方といられて本当に良かった!」

 

弾かれたようにオルガマリーは藤丸を見る。

 

「所長! 貴女が居なければ今のカルデアはありませんでした。誇ってください! 貴女は貴女のやるべきことを全うしていました!」

 

オルガマリーの目尻に涙が溜まる。だが、彼女が何かを言う前に藤丸たちは消えてしまった。

洞窟の内部が崩れ始め、瓦礫が辺りに落ち始める。

 

「・・・貴方は、行かなくていいの?」

 

オルガマリーは涙を拭い、いつもの様子でこちらを見る。

 

「慰めの言葉は、要らないようだな」

 

「なに? それを言う為に残ったの? なら早く行きなさいよ。マシュを残して逝くつもり?」

 

「いいや、コレを回収したくてな」

 

地面に落ちているレフの片腕を拾いあげる。オルガマリーはそれを面白くなさそうに見ながら、やがて興味をなくしたように虚空を見だした。

 

「・・・ねぇ。父さまが死んだ時のこと、覚えてる?」

 

あの時の話は、よく覚えている。マリスビリーが死ぬ前、彼女はマスター候補でもあった。だが、検査の結果、彼女にはレイシフト適性というものが全くなかった。そのことがあった矢先に、マリスビリーが死んだ。立て続けの不幸、そしてキリシュタリアとの比較の日々に彼女はもう限界だった。

 

「“お前はお前の道を進め、他の奴らには勝手なことを言わせておけ”──だったか」

 

「そう。あの時、私はそう貴方に言われた。だけどあの頃の私にとって───誰であろうと敵以外の何者でもなかった」

「だからあなたの言葉の真意もわからず、切り捨てた。だけど今になって見れば、あれが励ましの言葉だったって解るわ」

 

「今考えれば無理もない話だ。気にすることはない」

 

「・・・貴方って変な所で優しいのね。いつもだったら軽口の一つ位飛んできそうなものだけど」

 

軽く笑うオルガマリー。だけどそれは、死する前の諦めの表情には、見えなかった。

 

「私ってみんなに嫌われてばかりで、味方だと思っていたレフにも裏切られて」

「────だけど、最後にああ言ってもらえて。産まれて初めて、生きててよかったって、思えてる」

 

「・・・・」

 

煌めいて、眩しかった。

 

あれだけ卑屈で、暗くて見栄っ張りな彼女が、こんなにも晴れた表情で此処に立っている。

だからこそ、惜しいと思う。ようやくこうして自分の殻を破った“強い人間”が、今ここで命を散らそうとしている事に。

 

身体が光に包まれる。俺自身の転移が始まろうとしていた。

 

「ねぇ、V。あっちに戻ったら、マシュに謝ってもらっていいかしら」

 

何を。そう聞くことは無粋だと思った。故にただ頷く。それを満足そうに見届けた彼女は目尻に涙溜めながら、花のように笑った。

 

「オルガ」

 

消えるまで、もう少し。だがその前に、伝えなければならないことがある。

 

「お前に、最大限の謝罪と賛辞を。お前は立派な『人間』だ。誰がなんと言おうと、俺が保証する」

 

俺の言葉に彼女は、微笑を浮かべた。

 

「ありがとう。言葉だけでも、うれしいわ」

 

意識が飛ぶ。そして同時に身体も転移をしていった。

 

崩れ去る特異点の中、一人佇むオルガマリー。絶対的な死の瞬間がすぐそこまで来ていても、彼女の心は澄んでいた。

 

そして最後の足場が崩れ落ち、オルガマリーは宙を漂う。

 

(もし、もし次に会うことが出来たのなら...)

 

彼女は思いはせる。もしかしたら、IFの出来事を。

 

(次は対等な仲間として、一緒に過ごせたらいいな)

 

オルガマリーは、虚空へとその姿を消していった。

 

 

 

 

 

 

 

 




はぁーい。
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