RE:fate/V   作:夜廻

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ほひぃ~。



一章四節「これから」

目を覚ます。先ほどとは異なる感覚に違和感と腹部の嬲る様な痛みに耐えながらコフィンから出る。辺りを見渡し、少ない職員たちが意識の失ったマシュと藤丸を担架に運ぶ様子を見て取れた。職員たちを指揮していたロマニがこちらに気付き駆け寄ってくる。

 

「V君! よかった、間に合ったみたいで」

 

「案外ギリギリだ。・・・オルガのことは聞かないのか?」

 

「・・・君たちが特異点にいる間、僕たちも微力ながら管制室爆破について調べていた。それで爆心地がAチームコフィンの前、所長が指揮を執っていたところの真下だって判明したんだ」

 

「成程、それでラプラスのログを調べたと」

 

「かなり手間取ったけどね。そして彼女が思念体としてレイシフトしたことが判明した」

「爆発の位置も相まって所長の死亡も明白だった」

「・・・彼女たちには酷なことをさせてしまったと思ってる」

 

悲しそうな表情で藤丸たちを見る。今のコイツの思っていることは手に取るようにわかる。どうせほぼ一般人と変わらない藤丸やデミ・サーヴァントとして目覚めてしまったマシュたちのことを憂いているのだろう。だがどう思った所でまともに動けるのは俺と彼女たちしかいない。始まってしまったことを悔やんでも仕方ない。

 

「ロマニ、俺達にはやるべきことが山ほどある。今それを悔やんでも仕方がない」

 

「そうだね。君の怪我も、あの特異点で何があったのかも。それを知らなきゃ僕たちがこれから何をすればいいかわからない」

 

「とりあえず俺はダヴィンチの工房に行ってくる。お前は後処理を終えたら来い」

 

「分かった。じゃあ三時間後、彼の工房で」

 

「ああ」

 

ロマニと別れダヴィンチの工房へ向かう。そして管制室を出るとき、何気なしにコフィンの方を振り向く。あれだけあったコフィンも、今ではたった三つだけ。そのことに少し寂しさを覚えながらも俺は管制室を後にした。

 

 

 

 

カルデア内の通路を歩く。歩くたびに足音と杖を突く音が嫌に響く。いつもならばこの廊下は人の通りが必ずある所だ。だが、今はそれがない。恐らく、レフが爆破の際に職員を集めていたのだろう。一度の爆破で一網打尽にするべく。ロマニにもレフから管制室に来るよう連絡が入っていた。

 

「・・・珍しいな。お前が工房から出るとは」

 

「こんな状況さ、私も引きこもっている場合じゃなくなってしまったからね」

 

対面の通路から歩いてきたのは誰もが振り向く絶世の美女だった。ロングヘアーに端麗な顔立ち、まさに黄金比といえる完璧な肉体。彼を知らぬ人間ならば、彼女に一目惚れしても何ら不思議ではない。だが悲しいかな、中身は男の残念人だ。

 

レオナルド・ダヴィンチ。誰もが知るあの『モナ・リザ』を描いた画家であり、発明家。幾つもの絵画と発明を残した彼を後世の人々は『万能の人』と呼ぶ。実際彼自身は二つ名の通り、ほぼなんでもできる。

 

「それで、キミは見たところ怪我をしてるようだけど医務室に行かなくていいのかい?」

 

「俺がソコに行かないことは知ってる筈だ。それに、怪我をしているときはいつもお前の工房でどうにかしているだろう」

 

「聞いてみただけさ、私はしばらく戻れないから机の引き出しにある鎮痛剤を使うといい。待ってる間、紅茶を飲んで待っているといいさ」

 

「助かる」

 

ダヴィンチと別れ管制室につながる廊下を後にする。

 

ダヴィンチの工房に着き、中へ入る。そして彼がいつも使っている机から鎮痛剤を取りだす。そして二錠ほど薬を取り出し、コップに注いでおいた水と一緒にあおる。

 

「・・・ハァ」

 

備えつけられたソファに寝転がる。

こうして寝転がると疲れがどっと襲ってくる。今の今まで緊張が続いていた。誤魔化しが効かなくなってきたらしい。眠気も出てきた。少し寝るとしよう。ロマニと別れてからまだ30分程だ。

 

「・・・・」

 

静かに目を閉じる。そしてあっという間に俺の意識は夢の中へと落ちていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ロマニ」

 

管制室に着いた折にロマニへと声をかけるダヴィンチ。端末を操作していたロマニはその手を止め、ダヴィンチへと振り返る。

 

「来たね、早速だけど問題が発生してね。見てくれるかい?」

 

ロマニはダヴィンチをVが使用していたコフィンへと案内する。そしてコフィンの扉が開くとそこには誰かの片腕が落ちていた。

 

「ロマニ、これは?」

 

「恐らくV君がレイシフトするときにもって来たものだ。まだ誰のものかわからないけど襟の部分からして恐らくレフ教授のものだ」

 

「確かレフ教授は爆発のあと行方不明の筈だったかな?」

 

「ああ、でもラプラスのログにはレフがレイシフトした記録はなかった。V君はちゃんと記録あったけど」

 

レイシフトでは主に二つの技術が使われている。未来観測やレイシフトを管制するカルデアの心臓部ともいえるトリスメギストス。そしてレイシフトの際にマスターを保護する役割を持つラプラス。ラプラスは過去の記録を集計する使い魔であり、そのラプラスが記録をミスするということはあり得ないことだった。

 

「・・・ということは爆発の主犯はレフだと?」

 

「確証はない。けど一番可能性があるのは確かだ」

 

「まぁ、一番なのはV君かマシュたちに聞くのが最善だけどね」

 

「とりあえずV君に聞くのが速そうだ。来てもらって悪いけどコレを持って工房に戻ってもらえるかい?」

 

「おや、キミにとってはこの腕は学友の物のはずだ。そんなぞんざいな扱いをして良いのかい?」

 

「“いつでも最悪の事態を想像しろ”。僕がいつもV君からこう言われていることを知っているだろう?」

 

ロマニは軽く笑って腕をダヴィンチに渡す。その様子にダヴィンチは呆れながらも受け取り、二人は管制室を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

誰かの泣く声が聞こえる。そしてそれを慰める言葉も。

 

『...ひっぐ....ひっぐ.....』

 

『・・・困ったな。こうも泣かれたらこっちまで悲しくなるよ』

 

『だって...だって』

 

『・・・●▼▽●」

 

『・・・これって』

 

『コレを君に渡す。ほら、少し色は違うけど、一緒だろう?』

 

『・・・うん』

 

『・・・あっちに行って、もし寂しくなったり、悲しいことがあったら、コレを見て俺を思いだしてくれ』

 

『・・・うん』

 

『“不幸に屈してはならない。むしろ大胆に不幸に立ち向かえ”。●▼▽▼、立ち向かうんだ。君の嫌いなソレに。そうすれば、少しはマシになる」

 

『・・・ねぇ、▽●▼▽。もし、星の巡り合わせでまた会うことが出来たら、その時は私と一緒にいてくれる?』

 

『ああ、約束する。その時は、君の傍にいる」

 

そうして二人は別れていく。

 

そして少年に一人の女性が近付いていく────

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・」

 

「おや、お目覚めかい」

 

謎の疲労感と共に目が覚める。そしてテーブルの方に目を向けると管制室から戻ってきたのかダヴィンチとロマニが二人揃ってお茶をしていた。

彼らを尻目に時計を確認する。・・・どうやら四時間ほど眠っていたようだ。

 

「・・・逆に待たせてしまったようだな」

 

「構わないよ、特異点のことやその傷で大分疲弊していたようだし。待つくらいどうって事ないさ」

 

ソファから体を起こしテーブルへ座る。

 

「後処理は終わったのか?」

 

「職員が疲労困憊でね、細かいことは明日ということになった。まぁ、大体は終わらせたけど」

 

「V君。君の特異点での行動と藤丸君とマシュ、そして所長に何が起こったのか教えて欲しい」

 

「・・・茶でも飲みながら、話そう」

 

菓子とお茶を貰いながら特異点での経緯を二人に話した。とはいっても、特異点の解決をしたのは彼女たちであって俺ではない。故に俺自身に起こった出来事を二人に語った。

 

「成程、通りで傷の化膿がひどい訳だ。もう少し放置してたら危ないところだった」

 

腹部を確認し包帯が巻かれていることを確認する。ロマニの言った通り傷は治療され痛みは和らいでいた。

 

「詳しい話は彼女たちに聞くとして、問題は“これから”だね」

 

「人理焼却。Vから聞いたときは半信半疑だったけど、よく考えてみたら外のスタッフと連絡が取れないことにも合点がいくし、存在しないはずの特異点がいくつも見つかったことにも納得できる」

 

「・・・どういうことだ?」

 

幾つも。その言葉に違和感を覚える。特異点はアレの他に幾つも発見されているということか?

 

「ああ、これはまだダヴィンチにしか伝えてなかったんだけどね。シバが時間の揺らぎを七つ観測した。恐らく人理焼却の原因はコレだと考えられる」

 

七つ。あれと似たようなものが後七つ。特異点とは本来発生すること自体稀だ。それこそ過去に何者かが介入があったということがあれば話は別だが。だが現実的に考えれば人間には不可能だ。

 

「相手は人間じゃないと・・?」

 

「考えられるのはそれだね。カルデアの支援なしにこんな時間旅行紛いなことをできるのは」

 

心当たりはある。時間逆行というこの世界で魔法とされる方法を可能とする存在を。だがあれは封印された筈だ。封印に綻びがあったとしても、この世界にここまで干渉できるほどの力は持てないはずだ。・・・考えても仕方ない。

 

「どのみち特異点のどこかにいるであろうレフに吐かせれば自ずと解る。明日にでも修正に乗り出す」

 

「待ちたまえ、焦る気持ちはわかるが準備というものは必要だろう」

 

ダヴィンチは懐から金の札を五枚取り出す。その札には見覚えがあった。

 

「英霊召喚は知っているね? 今日はもう遅いから明日これで戦力を増強してくれたまえ」

 

英霊召喚システムフェイト。マリスビリーが開発した発明の一つ。これによりカルデアのマスターはサーヴァントを通常よりも手軽に召喚できる。普段は魔術協会や他の機関に許可されて初めて使用できる代物だ。だが人理焼却であらゆるものが消え去った今、許可など求める必要性など皆無に等しい。

 

そしてダヴィンチの持つ金の符。これは本来触媒を必要とする召喚において触媒の代替となるものだ。だがその性質上、呼ばれるサーヴァントはランダム。くじ引きのような要素を孕んでいる。因みに技術局員はこれを呼符と呼んでいる。

 

「キミも治癒力が少し高いとはいえ、少し休んだほうが良い。後のことは明日話そう」

 

「・・・わかった。では明日」

 

ダヴィンチから触媒を受け取り工房を後にする。そして工房から出るときに後ろに振り返りロマニに釘を刺す。

 

「お前も休め。実質的におまえがカルデアのトップなんだ。倒れてもらっては困る」

 

「ハハハ...。善処するよ」

 

「フン」

 

自室に戻るため廊下を歩く。やはり人はおらず伽藍としている。

 

『ヘェー、召喚だってよ。オヤジが出てきたらドオするよ!? そしたらトんだ笑い話ダゼ!』

 

「冗談でもそれは言うな。それにスパーダが此処に召喚されることは天地がひっくり返ろうとも絶対に無い」

 

『マァ、それもそうか。となりゃあ誰が来るかねぇ、先輩としてキョウイクする準備をしておかなぇとナァ!』

 

「・・・程々にしておけ。仮にも相手は一騎当千の英雄サマだ」

 

V達の会話は誰に聞かれる事なく消えていき、再び静寂が廊下を支配した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




のんびりやってます。
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