※話の展開的に無理がある所があるかもしれません、ご容赦を
目を覚ます。無機質な白色の天井を暫く見つめた後、工房へ向かうための身支度をする。ダヴィンチの工房でロマニ達と別れてから約六時間が経過した。恐らくロマニや他の職員は起床しているだろう。
足早に廊下を進み工房の扉前に来る。そして自動の扉が開き中へ足を踏み入れる。
「おはよう、よく眠れたかい?」
待ち構えていたように出迎えるダヴィンチ。隣には昨日のようにロマニはいない。
「ロマニは仕事か」
「寝坊したとか言ってさっき出て行ったよ。まったく、4時間ほどしか寝てないのに寝坊とは。先が思いやられるよ」
「頃合いを見計らって休ませてやれ。アレは一見飄々としているが人一倍責任感が強い」
「キミも手伝っておくれよ、私より君の言葉の方が彼に効く」
軽く雑談をしながら席に着く。そしてテーブルに昨日渡された呼符を置く。
「召喚かい? 少しくらいゆっくりしていけばいいのに」
「“物事を成し遂げる秘訣は、行動することだ”。さっさと説明してくれ」
ダヴィンチの提案を一蹴し説明を催促する。
「ダンテかい? 好きだねぇ、ソレ。まあいいさ、移動しながら説明と行こうじゃないか」
「・・・」
道中ダヴィンチの説明を受けながら召喚室へ向かう。そして召喚室に着いた折、改めて注意を受ける。
「いいかい。しつこく言うようだけど今は何が召喚されてもおかしくはない。こっちがヤバいと思ったら直ぐに退去させるからね」
「留意しておく」
ダヴィンチが召喚陣の書かれた部屋から退出し、制御室に待機する。呼符を陣の中央に置きダヴィンチに合図を送る。
『マテリアを確認、守護英霊召喚システムフェイト...起動!』
眩い光が室内を満たし、陣に光の輪が形成される。それはやがて金の光を帯び、それが別れ三本の輪が広がる。
『召喚されるよ! 何が来るか解らない、身構えておいてくれたまえ!』
三本の輪が収束し、それが莫大な光量を齎す。そして光が収まった直後、俺の首筋には...黒の剣が当てられていた。禍々しい甲冑に目元を隠すバイザー。そして病的にまで白い肌と白き頭髪。
後ろでダヴィンチが動こうとするのがわかる。制止の意味を込め腕を上げる。
「ほう」
目の前の剣士が初めてその声を発する。透き通るその声には全てを踏み潰す様な威厳が込められており、彼女が生前、人の上に立つ存在であったことを窺わせた。
「この状況で冷静を保っていられるとは。その胆力、見事なものだな」
「お褒め預かり光栄だ。名も知らぬ王よ」
バイザーの隙間から金色の瞳がこちらを覗く。その視線は、幾度となく見てきたこちらを値踏みするような視線だった。
「フッ、ククク、ハハハハハハハッ!」
思わず笑ってしまう。その様子に訝しげに此方を見るセイバー。そしてそれに構わず俺は高笑いをする。
「貴様、私を愚弄する気か」
刃が首に食い込み始める。だが可笑しくて仕方がない。ダヴィンチに召喚について説明された道中俺はいくつかサーヴァントを説得させるための言葉を考えていた。だが、
とても簡単なことだったのだ。そしてこの手合いは腐るほど相対してきた。
単純明快。俺はとても運が良い。そして気分は最高だ。
「失礼、気に障ったのならば謝罪しよう。詫びとしてデートと洒落込もうか?」
瞬間、魔力を纏わせた杖で剣を弾く。セイバーはこちらに追撃をしようとしたが不意に動きを止めこちらを睨む。
「・・・貴様、ただの道化とは違うな?」
「俺が道化だと? 目がよく見えていないようだな。その目を隠している
カラン、と地面にバイザーが落ちる。セイバーが投げ捨てたものだ。そして露わになった金色の双眸が此方を射抜く。
「フン、ついて来い。相応しいデート場に案内してやる」
踵を返し召喚室から出る。制御室から出てきたダヴィンチが不服とばかりに俺を非難する。
「V。少し煽りすぎだ。それに今のやり取りを見ていた私の身にもなっておくれ」
「それはすまなかった。それよりダヴィンチ、トレーニングルームは空いているな?」
ダヴィンチの言葉を意に通さず、要件を伝える。その様子にダヴィンチは呆れため息をつく。
「・・・ハァ。言っても無駄か。Level5を使っておくれ、被害を出されたらたまったもんじゃない」
「恩に着る」
Vは機嫌がよさそうに召喚室を後にする。そしてそのあとを鬼の形相のセイバーが後に続く。両者が去った後ダヴィンチは独り言ちる。
「全く、変な時にご機嫌だな。V君は」
ダヴィンチはそう言い残し、管制室へと向かった。
蒼い空に白き雲、そしてその下に広がる広大な平原。吹き付けるような突風が芝生を薙ぐように吹き荒れる。
そしてその平原に剣をこれ見よがしに突き立てるセイバー。
「ここがデート場とやらか? それにしては些か殺風景すぎる。選んだ男の底が知れるな」
「じゃじゃ馬のお前には平原がお似合いだ。それともショッピングモールでも期待したか? 案外女らしいところもあるんだな」
軽口を叩けば黒の濁流がVを襲う。だが、次の瞬間にはセイバーの後ろへと転移を終えている。
「そう急くな。ここに来た時点でお前も
「黙れ。気まぐれで召喚に応じたが只逃げるだけの輩に使われる気は毛頭ない。今私が此処にいるのは私を愚弄した貴様を殺すためだ。貴様を殺すまでは座に還らん」
セイバーは剣を構える。だが相対するVは自然体、その様を嘲笑いながらセイバーは踏み込もうとする。
「・・・やはりな」
だがVの先ほどとはまるで違う雰囲気に足を止める。
「やはり単純だ。貴様も、奴らも」
「なに?」
「俺は貴様のような手合いには腐るほど出会ってきた。そして総じて皆最後には『力』に平伏する」
「サーヴァントと契約する時には二つのパターンがある。双方の同意のもと契約を結ぶか、力でねじ伏せるかだ」
「・・・成程。今までは演じていたというわけか」
「隠していたわけではない。少し気分が良かった、それだけだ」
「ならば話が早い。私の上に立つ資格があるかどうか、試させて貰うぞ」
改めてセイバーは剣を構え直す。そしてそれに応じてVの杖に魔力が帯び始める。
「俺の力かお前の覇道。どっちが上に立つか、見物だな?」
セイバーは目を見開き吼える。
「ほう、ならばその力。私に示すがいい!」
土が爆ぜる。弾丸のように飛び出したセイバーにVはルシフェルを投げつける。だがセイバーは羽虫を払うようにそれを弾き、勢いは止まらない。すぐそこまでセイバーが近付く。セイバーが剣を横に一閃しVはそれを杖で受け流す。
「ほう、丈夫な杖だな」
セイバーは受け流されそうになった剣を縦に構え直しVを突き飛ばす。その際に片手でVの杖を掴みこちら側へ引っ張る。杖を掴んでいたVの腕を切り落とそうとするが直前でVは飛び退く。
「・・・チッ」
「卑怯と罵るか?」
煽るように言葉を向ける。だが返ってきの赤い剣だった。奪った杖でソレを弾く、そして二刀流に持ち替えたセイバーはもう一押しとVに踏み込んでいった。
────流石はセイバーといった所か。
最優のクラスとだけあって力も速さも以前戦ったサーヴァントととは大違いだ。それにあの剣、黒化しているが聖剣で間違いないだろう。聖剣使いのセイバーともなれば出し惜しみしている場合ではないだろう。
『アッタリ前だ! なにナメプしてんだよ!? さっさと出しやがれ!』
それもそうだな。だがお前は後だ。
『まーたネコチャンかよ』
騒がしいお前よりかは断然マシだ。仕事だ、シャドウ。
不思議なこともあるものだ。人理が焼却された影響か先の特異点での記憶が保持されている。
そして何か気になる感覚を感じて召喚に応じてみれば、この有様。召喚したマスターがあの藤丸とやらであればまた結果も違ったであろう。
最初に奴に抱いた印象は、親近感だった。気になる感覚というものを初めてそこで理解した。だが、奴と私とでは共通点など皆無に等しい。強いて言うならば黒を基調としている事か。
故にソレを確かめる為に、少し試した。剣を首筋に当て、奴の出方を窺う。だが、奴は顔色一つ変えずにこちらを見つめる。その冷静さには確かな根拠と自信が見て取れた。そしてすぐに訪れたのは狂気的な高笑いだった。
何が可笑しい? そう問いかける。だが奴はその軽薄な態度を改めない。むしろそれは度を増して蔑みへと変化していく。
興が覚めた。奴の言葉で興味が失せた私はその煩わしい口を黙らせるために剣を振るう。だが力を籠める直前、奴の杖が剣を弾く。
────この程度ッ!
剣士でもない只の魔術師に、只の杖如きに我が剣を弾かれ怒りに任せ追撃をしようとするが全身に痺れが走り身体が硬直する。奴を睨みつけるがその軽薄な笑みは崩されていない。どうやら只の道化ではないらしい。
ついて来いと奴は踵を返し背を向ける。だが斬り込むことはしない。大人しく後ろについて行く。今度は奴が私のマスターに値するかどうかを見極めるために。
戦う直前、漸く奴はその本性を見せる。先ほどの道化ぶりはどこへやら、その眼は歴戦の戦士のソレ。そして冷徹な表情は鋭い刃を連想させる。
途中奴は気になることを呟いていた。だが、もはや言葉は意味を為さない。力を示してもらおう。私を使うに値するかどうか。
────この程度か。
奴から奪った杖を使い、斬り掛かりながらも落胆する。刃、ではなく杖と交わしたのはたった一回。それだけで奴の状況は絶望的。得物の剣もこの間合いでは使うだけ無意味だ。少し、期待し過ぎたか。
やがて聖剣が奴に届く直前、状況が急変する。漆黒の靄が奴を覆い、鋭い棘を突き出して来る。直感で身をひねりながら避け、切り傷をを負いながらも距離を置く。だが次の瞬間、靄は豹へと形を成し、体から棘を突き出しながら迫ってくる。
「獣風情が、図に乗るな!」
魔力を放出し、後ろの奴もろとも飲み込む。だが手ごたえは無い。気配を察知し、剣を後ろに振りぬく。だが鋭い刃に変形した腕に受け流され、その拍子で持っていた杖を弾き飛ばされてしまう。それは弧を描きやがて奴の手にすっぽりと収まった。
「卑怯と言うか?」
趣返しのつもりかそう問いかけてくる。まさか、戦いに卑怯も糞もない。
だが、英霊である私の身体に傷が付いた。あの時は直感で避けたが、格の差に高を括って受けていたらやられていただろう。
本来ならば只の魔術師がサーヴァントに傷を負わせる事など不可能に等しい。神秘性は高ければ高いほど絶対性を持つ。同じ神秘から攻撃されても存在の格や神秘性が劣れば傷一つ付けられない。だが、人間である魔術師でも宝具であれば話は変わってくる。奴が使役しているのも宝具の一種だと予測できる。鎧にもかすり傷がついている。神秘性は少なくともランクB以上。少し、警戒が必要か。
大抵の奴はアレで一網打尽なのだが、決定打にはならなかったらしい。傷を負わせたと言ってもかすり傷程度、そろそろ本腰を入れねば。
『アレを避けるってどんな直感してんダヨ・・・普通ムリだぜ、アレ』
それ程高位な英霊なのだろう。とはいえ、アレで仕留めきれなかったのは大きい。次はどうするか。
『ナイトメアは此処じゃ呼べネェだろ、ダヴィンチから被害を出すなって言われてるし』
大規模な破壊活動は行えない。その点でいえばナイトメアは足枷となる。だがそれは十全にナイトメアの性能を発揮しようとすればの話だ。
『・・・アア、成程』
そういうことだ。方法は決まった。後は機会を窺い、ソレを叩き込むのみ。
『イッパツぶち込んでヤレ! 驚かせるのは得意だからナ!』
セイバーの攻め方が変わった。先ほどの猛攻とは打って変わって今度は堅実に踏み込み過ぎず、確実に相手を削っていく戦い。それが王の戦い方かと問いたくなるものだが、これは戦い。四の五の言ってられる状況ではない。
『メンドクセェな!? ドォすんだコレ!?』
機を待つしかあるまい。とはいえ、ジリ貧なのは確かだ。先ほどからこちらのスタミナを削るようにヒットアンドアウェイを繰り返している。スタミナに関しては相手はほぼ無限に対してこちらは有限。恐らく集中を切らしたところを狙っているのだろう。
『・・・攻めるカ? ネコチャンだけじゃ攻めきれてネェ、ここは守りを捨ててオレも攻撃に加わった方がイイと思うが・・・どうする?』
・・・そうだな、先ほどから俺が投げた剣を投げ返して攻撃してくるようになった。その折にグリフォンに落としてもらっていたが・・・。そろそろ潮時だ。こちらから仕掛けて宝具を誘ってもいいだろう。
『オーケー。オレが行くと寂しくなると思うが泣くなよ!』
雷を纏いながら前線に加わっていく。その折にルシフェルの剣が飛んでくるがソレを杖で弾いておく。
(・・・布石は打った。もう少しで罹るだろう)
戦況は変わりつつあった。
奴の使い魔が一匹増えた。それは主の守護に徹していたがあの男もこの状況に痺れを切らしたのか鷹のような使い魔もこちらに移し攻勢を強めてきた。
確認の意味を込め、拾った剣を奴に投擲する。今度は使い魔では防がず奴自身で防いだ。これで奴に使い魔はいないと証明された。奴自身私の投擲を防ぐ力はあるが、最初と比べ疲労の色がみて取れる。この攻勢は勝負を決めに来ていると捉えていいだろう。
故にこちらも攻勢に転じる。今まで回りくどい手をとっていたのは奴の守備を薄くする為。先ほどのような攻撃を封じるため、使い魔を叩く。そして奴単体となった時に宝具を放つ。
それで終わりだ。
あ、ここで切るね。じゃあまた次で。