RE:fate/V   作:夜廻

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Q:何故投稿を?

A:SEが発表されたからだよッ!!(歓喜)


二章「己の証明」
二章一節「森」


 

 

 

遍く全てが靉靆たる荒廃とした大地に、一人の男が佇んでいた。

 

男の風貌は凡そ普通とは言い難く、背中に五対の翼を有している。

 

「・・・漸く動き出したか」

 

男はそう呟くと、閉じていた目を開く。彼の目の前には炎が揺らめく穴が七つ。

 

「お前は、乗り越えられるか・・・?」

 

譫言のように男はつぶやく。そしてその言葉に応える者が一人。

 

「悟られるぞ、口を慎め」

 

厳格に、それでいて諭すように男に注意する。この男もまた風体が変わっている。逞しい肉体に煌びやかな長髪の金髪。目元まで被った黒衣のコート。そして極めつけは、男の背中に生える鋼鉄の一対の翼。

 

「これは奴からの直々の命だ。それを指揮する貴様がそれでいてどうする」

 

「・・・その時はその時だ」

 

男は何でもないように言ってのける。だが、黒衣の男は僅かに覗かせるその目を険しくする。

 

「今の奴はおいそれと倒せる相手ではない。それに奴は“力”を手にした。余と貴様が二人掛かりで挑んだとしても倒せるかどうかすら────」

 

「弁えているつもりだ。だからこうして手を打っている」

 

「・・・覆滅した奴に乗り越えられるか甚だ疑問だがな」

 

「乗り越えてもらわなければ、困る。だがあいつは彼の息子だ。無理難題ではない」

 

「元悪魔が邪魔しなければの話だがな」

 

「ゲーティアといったか」

 

男は七つの穴に目を向ける。

 

「七十二体の悪魔から名前を奪った獣、だったか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最近、夢を見ることが多い。とても懐かしく、それでいて切なくなるような夢だ。夢とは過去の出来事や情報を整理するための生理現象の中で起こる幻覚であるとされている。

 

俺の記憶には、最近見てきた夢の内容に心当たりがない。強いて言うならば夢に出てくる少女に見覚えがある程度だ。

 

最初は気にも留めなかった。だが、気にしないようにするほど、気になって仕方がない。忘れようとすればするほど、それが俺にとって何よりも大事な物のような気がして、俺の思考を邪魔する。

 

「・・・・Vちゃん、どうしたよ。何か悩みゴトか?」

 

グリフォンの一声で現実に戻される。そういえば管制室に向かってる所だったな。セイバーはメディカルチェックでダヴィンチの所にいる。

 

「・・・いいや、なんでもない」

 

これからレイシフトだ。気を引き締めなければ。マシュや藤丸はまだ目覚めていない。彼女たちがレイシフトしてくるまでに全容を把握出来れば、それでいいが。いや、全てを終わらせる。

 

そうこうしているうちに管制室に辿り着く。ロマニからの連絡でレイシフトの準備は出来てるとのこと、あとはブリーフィングのみ。

 

「来たね、待ってたよ」

 

管制室中央に立つロマニが振り返る。目の下には隈が出来ている。

 

「ロマニ、休めと言った筈だ。そんなに迷惑を掛けたいのか?」

 

「まさか。出来ることをしているだけだよ。それにこうでもしないと回らないからね」

 

「・・・チッ」

 

改めて周りを見渡す。管制室の様子は最盛期とは程遠く人が疎らだ。恐らくこれでギリギリ、一人でも欠けたら破綻する。かといってこの状況では休むこともままならない。

 

「待たせたね。もう始まってるかい?」

 

「今からだ。さっさと終わらせてレイシフトするぞ」

 

管制室からダヴィンチとセイバーが入ってくる。本当はメディカルチェックなど必要は無かった。だがカルデアとのパスが切れ、尚且つ受肉を果たした故にメディカルチェックの義務が発生した。

 

セイバーに不調などあるわけがない。俺が生きてさえいればセイバーは十全に活動が出来る。それにセイバーの状態は常に把握している。

 

「今戻った」

 

「問題は無いな?」

 

「無論だ。戦闘に支障は無い」

 

形式上の確認を終えロマニに視線を送る。それを確認したロマニは作戦の概要を話出した。

 

「年代は1431年、場所はフランスだ。他の観測できなかった七つの領域の中で比較的に人理基礎値が低い特異点だ。そしてこの年代で起こっていた歴史は、百年戦争。恐らく、その最中で“何か”が起きたと推測される。そして君たちのミッションはこの特異点の解決、破壊。なるべく藤丸君たちが目覚める前に原因の解明をしてほしい」

 

ロマニは一拍置くと説明を終える。そして改めて口を開く。

 

「この特異点は他の特異点と比べて揺らぎが一番低い。でもだからと言って油断しないでくれ、V」

 

油断、か。

 

「・・・誰にモノを言っている。俺が誰よりもソレに程遠いのはお前自身解っているだろう」

 

コフィンに向け歩き出す。油断、慢心、傲慢。していても碌なことは無い。全てを掛けた戦いにソレを持ちこむのは愚か者のすることだ。慢心は捨てろ、気を引き締めていけ。己の後ろには奈落が手を伸ばしている。

 

コフィンに入り、蓋が閉まる。

 

さっさと終わらせてパフェでも食べるとしよう。

 

『レイシフト開始!』

 

視界が光に包まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コフィンに向かうVの後ろ姿を眺める。

僕にとってVとは何かと自分を心配してくれる普通の友人だ。言葉には少し棘があるけどソレは彼なりの優しさだと僕は感じている。・・・きっと彼は否定するだろうけどね。

これから迎える数々の苦難を間接的にしかサポートできないことを歯痒いと思う。彼自身、あの爆発で唯一生還したマスターにしてAチームの所属。僕自身が思わなくてもきっと彼にはほかの生き残った職員から多大な期待を寄せられている事だろう。

 

前々からそうだが、Vはいざというとき全て一人でこなそうと単独で行動する癖が見受けられる。彼の戦闘スタイルを見れば彼単独で戦闘をした方がことを上手く運べる。だが組織としてはVの単独行動を度々注意してきた。

恐らくだが、藤丸君達が目覚めないのも彼の仕業だと推測される。彼は不器用だからこれは彼なりの優しさなんだろうけど、きっと彼女たちはこのことを知ったら怒るだろう。証拠がないから彼ははぐらかすだろうけど。

 

『レイシフト、開始!』

 

彼らが特異点へと送られた。

彼のサーヴァントが今現在特殊な状況に置かれているのはメディカルチェック前からV自身から聞かされた。確かな肉体はあるがその存在は夢のような物であると。検査の結果は至って普通の少女の身体だった。Vの言う『夢のような』という言葉の真意は解らなかったけどソレは恐らくレイシフト先で示してくれると思う。

多分肉体を得ただけでサーヴァントと差異はあまりないと思うのだけれど。

 

・・・アレ? おかしいな。もうレイシフト先に着いてこちらに連絡を入れてくれてもおかしくない筈なんだけど。彼の通信機に信号を送る。だが彼は出ない。レイシフト前に通信に出るようダヴィンチに言われていたんだけどなぁ。

 

「君、V君の信号を確認できるかい? 一度確認してみてくれ」

 

職員に確認を取らせる。恐らく特異点にレイシフトは出来てる筈だ。彼のシグナルが確認できれば通信障害で原因が断定できる。

 

「ドクター! V氏のシグナルが確認できません!」

 

管制室に戦慄が走った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

視界が開ける。どうやらレイシフトが完了したようだ。だが、これは────。

 

「濃いな。この“森”は」

 

傍に控えていたセイバーがそう呟く。セイバーの言う通り、神秘が薄れた時代にはあり得ないほどの魔力がこの森には渦巻いていた。生い茂る木々と植物。

 

そしてこの嗅ぎ慣れた臭いと慣れ親しんだこの感覚。

 

「イヒヒヒヒ・・・! 見ろよV!」

 

勝手に表に出ていたグリフォンが大木の根元に飛んでいく。グリフォンの飛んだ先には、凡そ植物とは言い難い大きさが不揃いの卵のような物体が根元に植え付けられていた。

 

「こりゃあエキドナの卵だぜ・・・! アア! アア! ソリャアこの状況にも納得だ!」

 

くつくつと笑いながら卵を砕くグリフォン。中身は空だったのか外皮の破片が飛び散る。

 

思わずため息を着く。此処は確かに1431年のフランスなのだろう。それは今俺がこの場に存在出来ていることがその証明となっている。だがフランスには樹齢が1000年を超えているような大木がそこらかしこに生えている森など存在しない。ましてや戦争中だ。あったとしても資材として切り倒されている事だろう。

 

恐らくこの辺りに地獄門が存在している。本来ならばそれはあり得ない事なのだが、この不自然な森林化とグリフォンの言葉。それを判断するには十分すぎる材料だ。

 

「少し歩くぞ」

 

セイバー達を連れ歩き出す。此処に地獄門があることを確信する為に。

 

 

 

森の末端に到着し、眼前の景色には草むらが広がっている。そしていざ森を出ようと足を進めると。赤い靄のかかった半透明の壁に阻まれ外に出ることが叶わない。

 

「これは・・・」

 

「────チッ」

 

「まぁ、解ってたコトだったけど。で? どおするよVチャン。封印結界を張られてちゃあここから出るなんざ夢のまた夢だけド」

 

封印結界とは主に下級悪魔共が徒党を組んで狩りを行う時に張る結界の事だ。大抵は雑魚共を一掃すれば結界は直ぐに解ける。だがこの規模の結界はどれだけ雑魚を倒しても意味がない。この環境を変えている元凶を倒さねば八方塞がりだ。

 

カルデアとの通信も魔力濃度の影響で繋がらず、こちらの状況を伝達できているかさえも怪しい。このままでは、特異点の調査はおろか被害の拡大の恐れがある。

 

まずは元凶を潰し地獄門を破壊する。そして次に特異点だ。

 

「急いでエキドナを潰すぞ。特異点よりこちらの方が問題だ」

 

森の中心へと向かい、歩を進める。

 

 

 

 

 

 

Vの消息が絶たれた。その事実が管制室によくない雰囲気をもたらす。

 

「・・・ロマニ、どうするつもりだい?」

 

ダヴィンチが深刻な顔で訴えかけてくる。恐らく、彼女はやるべきことを解っている筈だ。

・・・今の所長は僕だ。組織の長である以上、残酷な判断だってしなくちゃいけない。

 

「・・・藤丸君達を投入するしかない。彼女たちには酷いことをしてしまうけれど、V君の消息が確認できない今、悠長なことを言ってられない」

 

彼女たちは今現在医療室のベットで寝ている。最初のレイシフトから今まで忙しく、点滴ぐらいしか処置が出来ていなかったけど。どうにかして彼女たちを起こすしかなくなってしまった。

 

“いつでも最悪の事態を想像しろ”。まさかこんなに早く事態が悪化するとは思わなかった。最悪の結果は想定しおくけど。無事でいてくれよ、V君!

 

 

 

 

 

 

森を駆ける。エキドナの魔力の残滓を頼りに、時々進路上に出てくる雑魚共を蹴散らしながら、駆ける。

 

「止まれ」

 

凡そ森の中央手前辺りに差し掛かった所でセイバー達を止まらせる。大木の群生地を抜け、人口物が目の前に広がる。

 

「カワイソウになあ。地獄門の近くに町があったみたいだぜ」

 

「どうやらそのようだ」

 

セイバー達の会話を聞きながら町の門に手をかける。多くの人の往来があったであろう入り口は、その門に蔦が張り付いており、とても開きそうにない。

 

「マスター、ここが目的地なのか? そうでないならば回り道をした方が賢明だと思うが」

 

「・・・ああ、そうだな」

 

踵を返し別の道に向かおうとした瞬間、重苦しい何かが後ろから此方に向かってくるのに気が付いた。

 

「V! なんかヤベェぞ!」

 

グリフォンの警告を聞きながら杖を投擲する。杖が着地点に着くまでの間にセイバーの腕を掴みグリフォンを強制的に戻す。そして瞬時に杖のもとに転移し門から離れることに成功した。

その直後、その重苦しい音の正体が門を破壊しながら現れた。

 

「Gaaaaaaaaa!!!!!!!!!」

 

ケルベロス。奴の事を説明するならばその一言に尽きる。だが他のケルベロスと違い体毛が黒く、三つの頭は犬の頭。だがそれはいい、一番目を引くのがその背中に生えている一対の翼。

 

「V、ナベリウスだ。多分地獄門の鍵になってるのはアイツだぜ」

 

ナベリウス。グリフォンの言葉が耳に入ったのかナベリウスと呼ばれた悪魔はこちらを見据える。

 

『『『我らに名前など無い。あるのは力、其れのみ!!!』』』

 

咆哮と共にナベリウスは地面を抉り投げる。砲弾と化した土塊が飛来してくるがそれらは全てセイバーが斬り落とした。

 

力のみ。そして名無し。グリフォンは奴をナベリウスと言った。だが奴自身その言葉で否定に等しいことを謳っている。グリフォンはそそっかしいが嘘は付かん。事実として奴はナベリウスなのだろう。

ならばどういう事か。・・・残念ながらまだ結論は付けられない。

 

俺はあの日から記憶の欠如が所々に見られるようになった。以前の俺であれば蓄えた知識も相俟って結論を導き出せただろう。だがその知識が欠落している。父の本があればまた話が変わったのだろうが。

 

「“己の時間は時計で測れるが、賢者は測れない”。今は目の前の障害を打ち払う」

 

ルシフェルを顕現させ、グリフォン達に魔力を送る。

 

「気を引き締めろ。雑魚の様にはいかんぞ」

 

戦いの火蓋は切って落とされた。

 

 

 

 

 




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