場所は変わってALO内。程よく豪華な部屋の中にホログラムのモニターとそれを囲むリーファ、シリカ、リズベット、アスナとアスナの肩にユイの5人。
「お兄ちゃん、中々映らないわね」
「キリトさんならてっきり最初から飛ばしまくると思ってたのに。ってあれ!フーガさんじゃないですか!?」
シリカが指差すモニターに映るのは茂みに引き込んだプレイヤーをナイフで瞬殺して画面の向こうに裏ピースを向けるフーガ。
「ほんとだ!久しぶりに見たわね。ナイフ使ってイスラム系の格好してる辺りSAO意識してるのかしらね」
「SAOでも対人専門って言われてただけあるわ。引き込んでから止め刺すまでが速いし無音、、。相当慣れてるわ」
「えっと、フーガ?さん?ってお兄ちゃんの友達なんですか?」
「はい。キリトさんと私達の友達、、、でした。まだVRMMO辞めていないならALOに来て欲しいなぁ。キリトさん誘ってくれないかな」
「フーガのやつ、俺たちの前に出てこれねぇんじゃねーか?」
彼女らの後方にあるバーからクラインは酒を飲みながらそう言った。
「出てこれないってどういうことよ?」
「いやな、キリトとエギルはこの間ダイシー・カフェでフーガと話したらしくてな、相当思い詰めた様子らしいぜ。汚れ役させたのは俺たちなのによ」
場所は戻ってGGO、BoB。フーガの声が響く。
「シノン!やれ!」
数秒後、シノンの対物ライフルから大きな銃声が響いて銃弾が発射された。銃弾は赤目の頭目掛けて一直線に進んだが、赤目はそれを容易く避けた。
「あいつ、私に気付いてた」
「まさか」
「どこかで私を目視してシステムに認識されていたのよ」
シノンが次弾を装填している最中に赤目はハンドガンをペイルライダーに撃った。当然ハンドガン1発でHPが無くなるわけはない。ペイルライダーはスタンバレットの効果で暫く動かなかったが効果が切れた途端に飛び上がって赤目の顔にショットガンを向けた。そしてそのまま撃つのかと思いきや、力が抜けたように銃を落として胸を押さえて苦しそうに倒れた。数回もがくように動いたがやがて消えて、そこにはDISCONNECTION の文字だけが残っていた。
相当おかしな現象だ。それにデスガンの噂と一致する。あとは定番の決め台詞が有れば完璧だ。デスガンのハンドガンで撃たれたプレイヤーが胸を押さえて苦しそうに倒れ込んで接続切れとなった。まさにその通りだ。ペイルライダーが消えた後、赤目はハンドガンをカメラに向けた。そして何かを言っている。
最初はシノンにも協力してもらおうかと思っていたが駄目だ。あまりにも危険すぎる。端末のマップに映っていないということは武装解除して水中にでもいるんだろう。消すチャンスだ。
「キリト、やるぞ」
「ああ。行こう」
「私も!い」
「駄目だ。危険すぎる。詩乃は巻き込めない」
「それはあんたも同じよ!あんたが一人でSAO行っちゃったの時みたいな思いするのはもう嫌なのよ。それに、信じたくない。あれがPKじゃなくて、人殺しだって」
「それでもいるんだ。あのボロマント、デスガンは昔俺のいたVRMMOで多くの人を殺した。相手が本当に死ぬのを分かっていて剣を振り下ろしたんだ」
キリトの言葉が胸に突き刺さって激痛が走った。
「本当にそんな奴が、、」
シノンの表情が歪む。呼吸が乱れ、目が泳いで、手足が震えている。
「キリト、すまん行っててくれ」
キリトを一度離れさせて詩乃に呼びかけた。
「シノン!シノン!詩乃!!」
「っ!!ごめん」
「大丈夫だ。詩乃、SAOの時よりは待たせないから。な?」
「嫌!私も怖いの。雅が強いのも知ってる。だけどもし帰って来なかったらって考えちゃう。傍にいたい」
詩乃の目が怯えていた。こんな詩乃の目を見るのは小学生の時のあの事件以来だ。俺にはこんな目で見られても尚断る勇気は無かった。SAOにいた時もこんな顔をさせていたのかと思うと申し訳なかった。
「あー、、くそ。絶対俺から離れるなよ」
「ええ」
シノンと話しているとキリトの声が聞こえた。敵が来たらしい。ハンドガンのマガジンを交換しながら俺は歩いていく。
「フーガ!仕切ってくれ!」
「シノンはバックアップ!キリトは右から攻めろ。俺が囮になるから殺れ!」
「了解!」
キリトより先に突っ切って敵の注意を引く俺と援護射撃をするシノン。最後にキリトの剣が敵を斬った。理想的なチームだ。BoBは個人戦だが。
「デスガンは北側に向かった。これ以上被害者は出したくない。アイデアが欲しい。シノン」
「そうね。いくら超人的な力があるとはいえデスガンは基本的にスナイパーだわ。それならオープンスペースでの戦闘は望まないはずだからあの都市の廃墟に向かったと思うわ」
シノンが指を指した方に廃れた都市が見えた。俺達は街に向かって走り出した。
やがて街に近づいてきたがデスガンとは出会わなかった。
「ねぇ、追い抜かしちゃったってことはないかしら?」
「それはねぇな。索敵しながら走っていた」
だとすればデスガンはもう街の中か。初出場のプレイヤーで俺とシノンが知らないのはペイルライダーと銃士XというプレイヤーとSterben。そのうちペイルライダーはデスガンではないと分かったから、あとはその二人のどちらかだ。まぁどの道どちらとも相手をすることになるんだからどちらもやれば良い話だ。
「あのさ、今思ったんだけど銃士Xをひっくり返して士銃X。しじゅうを死銃にしてデスガンっていうのは考えすぎかしら。Xもデスガンの十字を切るジェスチャー。まぁ流石に安易すぎかしらね」
「うーん、まぁキャラネームなんて基本安易だと思うけど。俺は本名のもじりだし。フーガと君は?」
「私ももじりね」
「俺もだな」
マップが使える時間になり、三人でホログラムのマップを囲む。プレイヤーをタップしてプレイヤー名を表示させていくと近くに銃士Xがいた。そしてその近くにプレイヤーが一人。このプレイヤーが射程に入る前に銃士Xを殺す。
「このプレイヤーが銃士Xと接敵する前にやるぞ。シノン、索敵を頼む」
シノンが辺りを見回し、俺は警戒をする。
「いた。銃身が見えてるわ」
「今のうちに後ろからアタックしよう。シノンはスタジアム手前のビルで狙撃体制に入ってくれ。フーガは遊撃でいいか?」
「分かったわ」
「了解」
「三分後に戦闘を開始しよう!」
三人で散開して各々走り出した。俺は自分のできることをするべく移動を始めた時、約5m先にそいつは立っていた。日本人離れした体格に防具すら身につけず武器はハンドガンとナイフ一つずつ。
「Hi.」
俺は口角が上がり気持ちが昂るのを感じた。
「三分で終わらすぞ」
俺は銃を抜いた。
読んで頂きありがとうございました!
フーガというキャラネームは作曲形式のfugaも由来になっていて、fugaという言葉はラテン語で逃げるという意味を指すfugeraが語源になっています。追っ手から逃げるような曲調なのでとても合っていますよね。
さてフーガくんは何かから逃げているのか、それとも誰も俺を捕まえられないというメッセージなのか?