黒の剣士と茶の銃士   作:正直者ライアー

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BoB3

 サトライザーの銃声が死闘の火蓋を切った。俺は見切って避けながら、奴と距離を詰めつつ銃を撃つ。奴のハンドガンは単発なのに対して俺のM93Rは三点バーストでさらに二丁。有利なのは間違いなく俺だ。弾幕で牽制しながら接近してナイフを抜いた。奴のナイフと俺のナイフがぶつかる。火花が散った。圧倒的な膂力に負けないように押し返しながら片手でハンドガンを抜いて発砲した。銃弾が奴の身体を掠る。ダメージを受けて引こうとした奴の足を払って倒れさせ。俺は馬乗りになってナイフを突き立てる。奴はナイフを上手く避けると俺を弾き飛ばした。受け身を取って隙を減らして、もう一度サトライザーと向き合う。お互いに構えて睨み合いながら近づいていく。

 突きを横に避けて奴の腕を掴んだ。掴んだまま柄頭で三度頭を殴って離す。怯んだサトライザーに振り下ろしたナイフが奴の肩を掠る。奴が次の行動に移る前に全力で攻撃を畳みかけていく。ナイフでのがむしゃらな斬り合いでお互いに傷が増えていく。もはやどれだけ沢山ナイフを当てられるかの勝負になりかけた時、奴の腰元にスタングレネードが見えた。俺はすぐにそれを取ってピンを抜いて、宙に投げた。それは空中で破裂した。前にも一度味わった耳鳴りがして真っ白な世界に乱れる呼吸。俺は深呼吸をして落ち着いた。見えない目で感覚を頼りにして、銃をホルスターから抜いた。そして目の前にある物に突き付ける。俺は躊躇いなく引き金を引いた。弾が切れて銃が動かなくなるまで引き金を引き続けるとだんだんと視力が戻ってきた。まだ明瞭としない世界の中止にあるのは真っ赤なDiedの文字。

 勝ったらしい。試合を始めてから3分30秒経過していた。俺はシノンの援護をしようと引き返した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 急に力が入らなくなって私は崩れ落ちるように倒れた。腹部に感覚を感じて目を向けてみるとそこには電気を帯びた針が刺さっていた。身体を動かそうとするけど力が入らなかった。私の脳裏に先程のペイルライダーの様子が浮かんだ。胸を押さえて苦しむ姿。絶対にそうなりたくない。しかし身体は動かなくてどうしようも無かった。悶える私を黒い影が覆った。

 見上げるとそこに奴はいた。黒いボロ切れのようなマントに無機質なガイコツのマスク。そして燦々と光る赤い目。シューッと煙のような息を吐いて奴はハンドガンを出した。私は胸を貫かれて脳を揺さぶられたような気分になった。奴の持つ銃、黒星54式、あの時、小学生の時、私か銀行強盗を射殺したときの銃。呼吸が整わなくなった。私にあの時の頭から血を流す強盗が浮かび、目を瞑った。助けて。フーガ。雅。

 その時、デスガンの身体がよろめいた。瞑った目を開くとデスガンの肩を銃弾が掠った痕が有った。続く二発目がデスガンが銃を持つ腕に直撃した。デスガンは危険を察知して遮蔽物に隠れてライフルをコッキングした。銃撃戦か始まるのかと思いきや、私の目の前にグレネードが転がった。デスガンは焦ったように逃げる。私は爆発に備えて目を瞑ったがグレネードが爆発することはなく、代わりに白煙をばら撒いた。

 白煙の中、足音が近づき私は担ぎ上げられた。

 

「無事でよかった」

 

「フーガ、大丈夫か!?」

 

「ああ。行くぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 シノンを担ぎ、キリトと走る。暫く走ったところにバギーが有った。シノンを後部座席に丁寧に触らせて俺はWA2000の弾丸を込めてリロードした。運転はキリトに任せて、俺はシノンに話しかける。

 

「シノン、あの馬を撃ってみろ」

 

「ええ、分かったわ」

 

シノンはスナイパーライフルでバギーの隣にある馬型のロボットを狙った。そして引き金を引こうとしたが指は動いていない。

 

「なんで!?トリガーが引けない!!」

 

「落ち着け。深く息を吸え、、、よし吐け。もう一回だ」

 

シノンは俺の言う通りに深呼吸をしてもう一度狙ったが指か動くことは無かった。

 

「なんで!!なんでよ!?」

 

そうしている内にデスガンが見えた。

 

「キリト、まずい。出せ」

 

「ああ」

 

キリトのバギーが走り出した。シノンは溜息を吐いて目を瞑った。

 

「安心するにはまだ早ぇぞ。来る」

 

俺達の後を追うように馬型ロボットに乗ったデスガンが走ってくる。

 

「フーガ!助けて」

 

シノンが俺にしがみついた。俺はライフルで馬を狙って撃つ。当たらなくても妨害にはなるはずだ。

 

「キリト!もっと飛ばせねぇのか!?」

 

「捕まってろ!!」

 

デスガンも片手でハンドガンを抜いて俺達を狙った。

 

「シノン!お前の狙撃か必要だ!!」

 

そういうとシノンもスナイパーライフルを構えたが先程と同様指が動かない。

 

「駄目!撃てない!!」 

 

絞り出したような声でシノンは言った。

 

「飛ぶぞ!!掴まれ!!」

 

次の瞬間、バギーが浮いた。俺はシノンの手の上からシノンのライフルを握って引き金を引いた。放たれた銃弾はデスガンには当たらずとも、デスガンの隣にある自動車に当たって、自動車は爆発した。

 宙を舞うバギーの上で私は考える。出会った時から雅は強かった。それは今も変わらなかった。雅だって辛いだろうけど私を守ろうと必死に戦っているのに私は、、、。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 デスガンは完全に撒けたようで俺達は砂漠を走っていた。バギーは止まり、俺達は降りて辺りを見渡す。

 

「やれやれ。こうも見晴らしがいいと隠れる場所がな」

 

「そこ、多分洞窟がある」

 

「洞窟なら衛星スキャンは避けられそうだな」 

 

 洞窟に入り、俺は壁により掛かった。隣にシノンが座ってキリトが洞窟の奥側に座る。

 

「なぁ、奴はさっきいきなりシノンの近くに現れた。もしかして自分を透明化出来る能力を持っているのかもしれない」

 

「それはありそうだな」

 

「まぁでもここは地面が粗い砂だから足音はするし足跡もつくからさっきみたいにいきなり現れるのは無理ね」

 

「じゃあ精々耳を澄ませていないとね」

 

俺は目を瞑って息を吐いた。呼吸を整える。デスガンを見るたびに気持ち悪いほどに記憶が戻っていくのだ。信じたくない記憶で頭が埋め尽くされていく。

 

「ねぇ、さっきの爆発でデスガンが死んだってことは」

 

「それはねぇな。爆発の寸前に奴はロボットホースから飛び降りた」

 

「そう。ねぇ、さっきフーガもキリトもなんであんな速く助けに来れたの?」

 

「俺は別れた瞬間にサトライザーに会って戦ったから銃士Xとは対面していないしサトライザーとやり合った場所もそんなに離れていなかったからな」

 

「俺は俺達がデスガンだと踏んだ銃士Xさんがデスガンじゃないのは一眼で分かったからな」

 

「どうして?」

 

「それは女性プレイヤーだったからね」

 

「そっか。フーガはサトライザーに勝ったんだ」

 

シノンはうなだれた。フーガはサトライザーと戦ってキリトも一人で突撃していたのに私は。フーガは察したようで私の頭をぐしゃぐしゃと乱暴に撫でた。

勝ってやると思っていた奴に助けられて、雅には子供みたいに守ってもらって。そして今は慰められて。

 

「じゃあ俺は行くよ」

 

キリトは光剣のバッテリーを確認して立ち上がった。フーガも立ち上がった。私の頭を撫でる温もりが離れていって、私は無意識にフーガの手を掴んでいた。

 

「フーガ、君はそこにいてやれ」

 

「だがお前だけの戦いじゃねぇ。俺が自分の記憶と向き合う戦いでもあるんだ。お前一人にやらすわけにはいかねぇんだ」

 

「分かっている。俺は少し外に出ているだけだから」

 

俺は溜息を吐いて座った。シノンの頭が肩に乗る。

 

「ごめん。ごめんなさい。いつまでも守ってもらって。雅だって辛いはずなのに。ごめん」

 

「そんなの謝る必要はねぇよ。俺は好きでお前を守っているだけ。お前のその発作は無理矢理治そうとして治るもんじゃねぇだろ。時間を掛けていけばいい。俺はそんな詩乃をずっと守るだけだよ。取り敢えずここで待ってろ。俺が強いのは知ってるだろ?」

 

「知ってるけどそれじゃ嫌なの!私も、雅と一緒に戦いたいの」

 

「あのなぁ、キリトは光剣使いだし俺もggoじゃ珍しくナイフ使いだ。だけどシノンはスナイパーだろ?さっきみたいに突然出てこられたら応戦できないだろ?」

 

「でも、嫌なの。もう怯えて生きるのは」

 

シノンが俺の膝の上に寝転がった。詩乃の目から涙が溢れて、詩乃は震えていた。

 

「俺、SAOでの記憶戻ってきてるわ」

 

「そう」

 

「信じたくねぇし出来るなら知りたくもなかった。何も知らない方が多分昔みたいに強くいられたんだ。沢山殺した。多分モンスターよりもプレイヤーを殺した。正義を大義名分を振りかざして。正義の為だとしてもその行いそのものは悪だと知らずに。誰かを守ろうとしたわけじゃないし正当防衛だったわけでもねぇ。依頼を受けて俺が殺した。ただの殺し屋だ」

 

「やっぱり私達は似ているのね」

 

「詩乃は俺とは別だよ。守るために引き金を引いた」

 

「それでもあなたの言う通り人を殺したということには変わりないわ」 

 

詩乃は一度大きく息を吐いて話し始めた。

 

「今までずっと怯えて逃げてきたけど今逃げたらもう勝てなくなっちゃうと思うの。今逃げたらもっともっと弱くなりそうなの。これは雅が大切なものを取り戻す戦いでキリトが過去に向き合う戦いで私が強くなる戦いなの。私の為でもあるの。だからお願い。私も戦わせて」

 

詩乃の強い眼差しが俺の目の玉を射抜いた。膝の上に頭を置いて横になる詩乃の頭を撫でて、彼女の白い頬を伝う涙を拭った。真っ暗だった砂漠を赤い光が照りつけた。

 

 




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