もう1つの戦車道 作:T-26
「でも、資金とかは...募金を募る程度じゃ...」
「集まるとは思えないね。でも、身内の会社なら何とかなるかも。」
と、五十鈴華が言う。
「華さん、身内って...」
「花園さん。」
「えっ!?うそ...」
この花園というのは、華が言うことには、1つの造園会社である。その会社を経営するのは
「華さん、すごい...」
「べっ、別に私がすごいわけじゃ...」
話しているうちに講義の時間は終わってしまった。
今日はもう授業がない。そこで華、優花里、沙織と徹底した話し合いを行い、作戦を練った。
その帰り、みほは心配で、華に聞いた。
「華さんの家系って、戦車...」
「大丈夫よ。花園さんはいい人だから、きっと分かってくれる。」
その翌日、みほたち4人は花園家へと向かう。
「お嬢様!お待ちしておりました!」
花園家の敷地に入るとすぐに声をかけれれた。
そのまま社員らしき男性に客室に案内された。中からは何とも言えないよい匂いが漂っている。
「花園様、本日はお招きに預かりまして、大変光栄でございます。本日はよろしくお願い致します。」
華の口から聞いたこともない言葉が出てくる。
「それで華さん、話とは...」
「大学戦車道のお話でございます。」
華は前日に徹夜して作成した資料を見せた。
そこには具体的な予算案や経費などが綴られていた。
「華さん...」
「花園様...」
「こんな大金どうやって用意しろと言うのですか?」
確かにそうだ。戦車は高額でとてもじゃないけど手に入る代物ではない。
「いいですわよ。華さん、私も華道を始める前は戦車道をやっていましたの。まずは5両ほど買いましょうか。」
「花園様...!」
こうして、『鮟鱇大学へ寄付』という名目で戦車を購入することになった。
「これで、戦車道ができますね。」
「花園様、ありがとうございます!」
購入した5両は、旧ソ連の戦車であった。
次は人集めだ。鮟鱇大学のサークルを作る。
『あんこう大学戦車サークル Panzer vor!』という非公認サークルとなった。
まるで大洗女子学園のバレー部だ。
しかしあの勝利の翌年からバレー部の部員数が爆発的に増えたのだ。今では1軍と2軍があるとかないとか言われている。
そのような大成功を収めたきっかけが戦車道だったのだ。思えば大洗女子学園は戦車道に助けられていた。卒業式という名の退船式を終えたのちの虚無感。やはり戦車がなきゃ。
みほたち4人の愛車はこの日からKV-1となった。
「まずは整備をしましょう。ええっと、戦車整備規則は...。」
「これですね。」
「優花里さん、読んでもらってもいい?」
「わかりました!」
とりあえず規則通りに整備を行う。とりあえず今日は洗車と砲身の掃除を行い、カーボンは業者に依頼した。
「久しぶりに戦車の整備したね。」
「はいっ!」
「とっても疲れてしまいましたわ...。」
「私なんてたぶん2キロは痩せたよー」
「あはは...。」
帰り道の道中、沙織が喫茶店を見つけた。
「みぽりん、あの喫茶店、寄っていこうよー」
「うん、いいけど、みんなはどうする?」
「みほさんが行くなら...」
「西住殿とならどこへだって!」
「それじゃあ決まりね!行こう。」
戦車喫茶 レオパルド
「戦車喫茶...ってどこかで聞いたことある名前ですね...」
「ルクレールの兄弟店って書いてあるよ。」
「あっ、本当だ。」
中に入り、思い思いの品を注文して退店した。
「麻子はどうしてるんだろう...」
ふと沙織が呟く。確かに麻子とは卒業後1度も会っていない。風の噂では、祖母を連れて静岡へ行ったとか。
しばらく歩くと、どこからか電話がかかってきた。
「あっ、河嶋先輩からだ。」
『西住、お前...』
「河嶋先輩...。どうやって情報を入手したのですか?」
『私たちを...助けて...くれるのか...?』
「はい!」
『ありがとう...』
電話からは、桃のすすり泣く声が聞こえた。彼女としては、戦車道を続けていきたい。そういう思いが感じ取れた。
『あれから射撃も練習したんだ。それで選抜一の砲手の称号を手に入れたんだ。』
「そう...だったんですね...。」
『それじゃあ、お前たちも頑張れよ。』
「はいっ」
ここで通話が終了した。
「西住殿、誰でした?今の電話。」
「河嶋先輩、泣いてた。」
「河嶋先輩、涙もろいですからねー」
今日はそのまま解散した。
「華さん、話があるので一緒に行きましょう。」
「はい、いいですよ。」
みほと華は、今後の方針を練ることにした。
「まずは部員集めです。」
「何人くらいればいいでしょうか。」
2人は、購入した車両を見た。
KV-1 T-34/76 T-34/85 IS-1 IS-3
部員は、最低でも15人は欲しいところだ。
「部員、増えますかね...。」
「とりあえず、宣伝してみましう。」
今は宣伝をする事に決め、早速学内に掲示するポスターの制作を始めた。
「刑事の許可は、学生課でしたっけ。」
「うん。」
「ここの色はこれがいいと思いますよ。RGBを弄って...」
「ありがとう華さん。」
明後日の大学で学生課と話をする予定だ。
次の日、どこからか電話が来た。
「もしもし、どなたですか?」
『麻子だ。』
「麻子さん!久しぶり。どうしたの?」
『今から静岡へ来れないか?』
「何かあったの?」
『エリカと一緒にハンバーグを食べようと思ってる。』
「ハンバーグ...、ですか?」
『炭焼きレストラン しずおか で待ってる。』
電話が切れた。別に行く気はなかったが、静岡で待っている麻子のためにも行くことにした。
今日は皆バイトで都合がつく人は優花里だけだった。
「西住殿!これから冷泉殿に会いに、どこへ行かれるのですか?」
「静岡だよ。」
「また御殿場ですか?」
「ううん、静岡。」
勝田駅で特急ひたちに乗り、まずは東京駅を目指した。
「特急って聞くと、ワクワクしますね!」
「そうだね、でも大人しくしてないと駄目だよ。」
発車してしばらくすると、車内検札が来た。
「切符を拝見...。はい、ありがとうございます。」
列車は水戸に到着。水戸駅からは、2人の大洗女子学園の生徒が乗車してきた。彼女らは、偶然にもみほたちの前の席に座った。
「大洗女子学園...、懐かしいですねぇ。」
「そういえば優花里さんのご両親は...。」
「学園艦で床屋をやってますよ。」
水戸駅を発車すると、上野まで停車しない。発車してから、友部あたりで、前の学生たちがこちらをチラチラ見ていることに気づいた。
「あのっ...、どうしたんですか?」
「ああーーーーーっ!」
「本物だあーーーっ!」
みほはホンモノとは何がホンモノなのかさっぱりわからなかった。
「大洗女子学園の西住みほさんですよね!」
「はい、そうですが...。」
聞けば彼女ら、今年大洗女子学園に入学してきたのだという。
「あっ、すみません、私、
「私は、
今ホンモノの意味を悟った。つまり大洗女子学園を廃校の危機から救った張本人であるということか。
まもなく、上野です。
「それじゃあね。」
「西住殿もお元気で。」
そしてひたちは東京へ向かう。
東京駅で、みほと優花里は新幹線に乗り換え、静岡へ向かう。
「のぞみは止まらないから...ひかりかこだまだね。」
「この時間のひかりは静岡に止まらないみたいですよ。」
「じゃあこだまで行こう。」
新幹線に乗り込み、静岡を目指す。
「静岡は夏の戦車道で来ましたねー」
「決勝戦はここでやるからねー。」
新横浜、小田原、熱海...と、東海道をひたすら進む。
新丹那トンネルを超え、函南、三島と進んでいく。列車はまもなく新富士に到着。新富士駅からは富士山が見える。新富士を出発し、次は目的地の静岡。麻子とは新静岡セルバで待ち合わせている。
『まもなく、静岡です...。』
静岡に到着した。現在の時刻は10時45分だ。予約した時間には充分間に合う。みほたちはとりあえずセルバへ向かう。
休日ということもあり、かなり混雑していたが、待ち合わせには間に合った。
「麻子さん、久しぶりです!」
「おおっ...。」
しかしそこには、麻子のほかに、銀髪の女性がいた。
黒森峰女学園卒のエリカだ。
「エリカ殿!大変ご無沙汰しております!」
優花里は飛び出していった。
「ゆ、優花里さん...。」
聞けばエリカは黒森峰を卒業した後に、麻子と同じ駿府大学へ入学したとか。
駿府大学にも非公認の戦車道サークルがあり、麻子もこの計画に参加したいと直接申し出をしてきたのだ。
「ここで話すのも難なので、中に入りましょう。」
みほに促され入店した。
「どれにしますか?」
「あっ、じゃあこの 鉄板ハンバーグで」
「私も鉄板にする。エリカは?」
(ハンバーグ! ハンバーグ!)
「エリカさん!」
「はっ!? えっとじゃあ...私も鉄板にするわ。」
ハンバーグが届き、例の儀式もみなし終えてここからが本題である。
「いただきまーす。」
「美味しい!」
話を聞いたところによると、駿府大学の戦車は文科省が貸与しているという。
「この法律に突破口が示されている。しっかりと読んでおけ。」
「うん、ありがとう麻子さん。」
(うまうま...、ハンバーグ!)
*
「今日はありがとう。もう帰るね。」
「たまには連絡よこせ。」
「うん。」
新幹線のホームまで見送りに来てくれた麻子とエリカに別れを告げ、茨城県へと向かった。
東京駅へ戻ると、時計はもう3時を示していた。帰りはときわでゆっくりと帰った。明日、学生課を通じて文科省スポーツ庁戦車道課に連絡してみようと思う。