成金社長がヒーローになる話   作:低次元領域

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『Kick away the ladder!』

『Millionaire is 1 percent fortune and 99 percent property.』
──梯子を蹴っ飛ばせ
大富豪は1%の幸運(生まれついての財)と99%の財産で出来ている


M1『Aiとクソカネモチなカメンは敵?味方?』

 男は力に憧れていた。

 弱き者の為に振るわれる、理不尽を打ち倒す力を欲していた。

 

 けれど、液晶の前に映る英雄たちはどうしても社会的、或いは生物的な悩みを抱えているのが嫌いだった。

 英雄が仕事をすることも出来ず、正体も明かせずに悩んでいく。時には自分の大事な人と民衆を選ばなければならない。民衆が正体に気が付いて状況に好転した例はとても少ない。

 

 ノブレスオブリュージュ。

 地位と名誉と力を持った者は恵まれているはずなのに、どうして雁字搦めにしか見えなかった

 

 この力は人のために使う。

 呪いの言葉の様に唱えるヒーローがどうしても歪に見えた。力を振るえば解決したであろう日常の問題さえも素通りしていく。

 人はそれをリアリティと語る。けれど男にとっては耐えがたいものであった。

 知っている。知識を付ければつけれるほど、英雄として動きながら優雅な暮らしをするのがどれほど面倒なことかを。

 

 だが男は決めたのだ。

 世界を揺り動かすほどの力を手に入れて、その大いなる責任とやらは無視してしまおうと。

 

 自分の為の、

 金という社会的な力、英雄という根源的な力、この二つを併せ持つ英雄になろうと。

 

 ワインの海に溺れ、贅を尽くした食事を飽きる程し、その日の思い付きで旅行にだって行く。

 使えど使えど尽きることのない財を築く。

 その為にはより多くの者から金を集める必要があった。

 例えその過程で人を養分とする、液晶越しで打ち倒されていた悪と同じような存在になっても。

 

 気まぐれで誰かを救い、神の様に崇められ断罪をする。邪魔立てする者などほんのスパイス程度の強大さ。

 振るえど振るえど尽きることのない力をつける。

 その為には当時の科学力を越える知識を身に着ける必要があった。

 たとえその力が、人間には早すぎるただろう物でも止まる理由にはなりえない。

 

 男は、欲に塗れていた。

 

 

 

 

 

「まずは、悪の組織に改造されに……いや古代遺跡を巡り発掘……」 

 

 あとバカだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 男は──ベリルは戦っていた。

 瓦礫や炎上する車、なぎ倒された街路樹。人の恐れ戦くき逃げ泣く声が合わさなで深緑色の光がきらめく。

 周囲には既に火花を散らし動かなくなった多くの機械人形たちの部品が転がり、僅かに「ゼツメツ」と繰り返すだけのオルゴールと化していた。

 

 金属音が三度なり、ベリルが大きく後退しそれを踏み潰す。小さな爆発と共に砕け散る。

 気にも留めず、緑の戦士は拳を構え前を見た。

 

「……主犯格はどうみてもコイツか」

『そのようですね。先日遊園地を襲ったとされる「カマキリモドキ(クジベローサ)」、と同じ昆虫種。また飛電本社を襲った爬虫類の「マントトカゲ(クエネエスクース)」。「肉食カンガルー(エカルタデタ)」と哺乳類の力を象ったマギアの映像とも共通点が多くみられます』

 

 宝石の照り返しを至近距離で受けるのは、巨大な昆虫の顎を鳴らす怪人。

 二つの足と四つの腕。そして背中に生えた金色の翼から思い浮かぶ印象は……羽アリだ。

 だがベリルよりも頭一つ分大きいと感じさせる圧力は決して単なるアリのソレではない。

 

『人類は……ゼツメ、ツ……それが私の仕事……邪魔をスルナ!』

 

 中段の二本腕を振り廻し威嚇する。そのひと振りでも人間にとっては必死の一撃だ。

 断じて、運転手だったはずのヒューマギアには備わるはずのない力。

 

『解析……暴走ヒューマギアの力は腰部に付属する「ゼツメライズキー*1」またキーを挿入、破壊しているベルトアイテム、「ゼツメライザー」を確認。

間違いなく、()()()()()()()たちが暴走させたヒューマギアでしょう』

「まったく……人の車と運転手を駄目にしてくれるとは、随分とご機嫌なご挨拶だ」

 

 目の前にいるは機械人形であり……正式名称はタイタノミルママギア。

 かつてタイタンとすら称されるほどの巨大なアリ。その力を元に本来の用途からかけ離れた姿へと変貌し、暴走してしまっているヒューマギアである。

 また彼の周りには未だ数体、銃や刃物を手にし「ゼツメツ」と繰り返す機械人形たちがいた。

 

『飛電の発表では特にありませんでしたが……先ほど、逃げ遅れたヒューマギアに対しコードが意思を持ち伸ばされ差さり、遊園地で大量確認された「三葉虫(トリロバイト)」のマギアに変貌するところを確認。

到着時わらわらといたトリロバイトマギア達は目の前のマギアがハッキング、増殖させたものだと推定』

「差し詰め、戦闘員代わりと言ったところか……ヒューマギア感染などたまってものではないぞ?」

『また、トリロバイトマギアは腰部にゼツメライズキー、ゼツメライザーはどちらも確認できていません。ゼツメライザー自体にトリロバイトのデータが組み込まれていると考えべきでしょうか』

 

 腕輪から聞こえてくる声に対し、ベリルは首を傾げる。

 どうにも入手した情報では断定も推定も出来ない。参ったなと言ったところだった。

 

『──世間話をしている場合か!』

『ゼツメメメツツゼ!!』

 

 それがどうも、機械人形たちには気に食わなかったようだ。

 アリの号令と共に、トリロバイトたちが各々の武器を振りかざし距離を詰めるとあっという間に囲み、三角を維持しながらベリルの周りをゆっくりとまわる。

 1対3、数的不利。

 

「……リドル」

『分析完了済みです。はい、「アタッシュランス」の使用が推奨されます』

 

 だがベリルは焦らず、ただ足元に転がっていたアタッシュケースを拾う。

 ……ベルトを仕舞っていたものとはまた別の、深緑のラインが入ったそれ。もちろんただのカバンではない。

 これこそがベリルの、戦士の武器。

 

アタッシュランス──スピアーライズ!】

 

 長方形だったカバンは二つの回転ロックが外され展開、連結され一本の槍へと瞬く間に変形した。

 にじり寄り詰め寄ろうとしていたマギア達との間に、ベリル本人の長さと等しい間合いが誕生する。

 

『展開までの動作に0.7秒の無駄があります。次は短くするように』

「把握した──ハアッ!」 

 

 片手で持って地平に並行して円を描くよう振るう。

 強化された足腰から刻まれた軌跡は、防御の姿勢を取ろうとしたマギアをお構いなしで両断した。

 

『ゼッ!? ツメメメメッ……』

 

 呆気にとられ機能を停止したトリロバイトマギアが爆発する。

 爆炎の中、やはり光に揺られベリルの装甲が光った。

 

「戦闘にはいつだって余裕が必要だ、稼働限界まで熱を溜め込むのは効率的ではない……」

『提案軌道より角度が2度ズレています。粋がらない方がいいですよMr..草分』

「……怒りを溜め込むのも効率的ではないかもしれんな」

『あっ、こら私を槍でつつかないでください。機能を停止させますよ』

 

 要求に応えなければすぐさま指摘してくるAIに声をにじませる。

 こんな性格にしなければよかったとつくづく思うが、これも研究の為だと息抜きで彼は済ませた。

 そもそも意思を持たない、自分で作り上げたAIに怒りの感情を見せている点でひどく器が小さいが、心の中で彼は「なんて自分は寛大なのだろう!」と褒めたたえる。

 

『ちいっ』

 

 そうこうしている内に今度はタイタノミルママギアが仕掛けて……来なかった。

 転がってきたトリロバイトマギアの頭を踏み潰し、怒りをあらわにしたかと思えば、自慢の羽を使いベリルに背を向け飛び始めたではないか。

 

 紛れもない逃走。だがあまりにも稚拙。

 大きな体を飛ばすための羽もまた大きく、擦れ合う度に特有の羽音が届き不快な気分になる。

 この間も近くで多くのトリロバイトマギアとの戦闘を続けていたバッタ仮面さえも気が付き「あっ、逃げる!」と叫べたほどに。

 

『……憐れですね』

「──全くだ」

チャージライズ──Full Charge

 

 であれば、ベリルたちが気が付かないはずがない。

 槍を一度最初の状態に折りたたみ開けば、目に見える程のエネルギーが充填された状態へと移り変わる。

 上手に握っていた槍をした手に持ち換え、肩にかけ……草分は液晶越しに敵を見た。

 

『飛行軌道分析、落下地点予測完了。今度は角度のズレのないように』

「あぁ、分かっている」

 

 すればリドルの演算情報が表示される。だから、迷う必要など何一つなかった。

 確かな震動を伝えてくる槍を持つ左手を引き、右手の掌をなんとなく向ける。

 

 気分は槍投げ選手といったところだろうか。

 

カバン スラスト!】

 

 投擲。

 一筋の流星となって槍は敵目掛けて飛んでいく。

 雲の切れ間から差し込んでいた光、俗にいえば天使の梯子に誘われ飛んでいたマギアに向って。

 

 流星は羽アリを貫いた。

 

『パーフェクトです。お見事』

 

 空気の振動は届かず。リドルの珍しい言葉の方が耳に届く。

 当然だと返した草分に対し、またリドルは小言を始める。

 

 今日一番の爆発が空で起こるのを見て、見上げていたベリルは誰かに向けて口を開いた。

 

「……運転手を暴走させた奴、聞いていたら覚えておけ。これ以上テロを起こすようであれば……誰が止めようがスクラップにしてやる

──滅亡迅雷.NET」

 

 先日の飛電襲撃事件による記者会見で明かされた、「ヒューマギアを暴走させているテロリスト集団」の名を呟く。

 苛立ちよりももっと純粋な怒りが渦巻いていた。

 

 

「あの車、買ったばかりだったんだぞ……!?」

『デザインに一目ぼれしたと言い出し、金に糸目をつけず購入して一週間で壊れるとは……』  

 

 因縁とかもしかしたらあるのかもしれないが、特に関係ない。ただ物損についての怒りだった。

 

「いやそこっ?! ここまで出た街の被害に大してとかじゃなくて!!?」

 

 バッタ仮面は、芸人はツッコみをした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『会議には事故で出席できないと伝えてあります、Mr.草分。また周囲を確認いたしましたが、被害拡大の為か通信・録画機器などに異常が確認されます。救急車などが遅れている理由はここでしょう。

監視カメラの映像などは当てになりません』

「あぁわかった。飛電襲撃の時、映像にとられたのがよほど効いているらしいな滅亡迅雷は?」

 

 惨状が残ったままの現場に二人と二機はいた。

 変身を解除した草分は、同じく解除したバッタ仮面……もとい、飛電インテリジェンス社長、飛電アルトに詰め寄られていた。

 同じくイズもだ。アルトより一歩離れてこそいるがその視線は草分のベルト、腕輪をしっかりと観察できる位置を陣取っているようにも見える。

 

「草分さん、ありがとうございました! まさか草分さんもライダーだったなんて……あれ、もしかして俺がえっと、バッタのアレだった知ってました?」

「ふっ、当然。あのベルトを使うならば飛電の重役……それも社長レベルでなければまず可能性はないからな」

『識別、バッタ仮面は飛電アルトで間違いなし。……こちらはベリル。そしてワタシはリドル。ややこしいですが間違えないように』

 

 アルトの視線から読み取れる感情は憧れ、だろうか。

 草分は知る由もないが、先日のこと。会社が襲撃された時は同じくライダーシステムを扱うものと戦場を共にしたのだが……暴走したヒューマギアと間違えられ、銃撃されると言った事件があった。

 その人物と比べれば草分との出会いは酷く全うであり、同じ社長として先輩の立場にある彼に対して目を輝かせるのは仕方のない事だったのかもしれない。

 

 その光景を見て何を思っているのか、ピコピコと音をたて解析しているらしいイズが口を開く。

 

「草分社長。少々ご質問があります。そのベルト──」

『ベリルドライバーです、Ms.イズ。ちなみにワタシが入っているこの腕時計型総合デバイスは「マネカライザー」、ライズpayを含めた我が社の新商品です。

こちらは後日定例記者会見にて発表いたしますのでくれぐれも広めたりしないでいただけると』

 

 だがすぐにリドルによって主導権を奪い返された。

 一瞬漂う空白の時間が緊迫感を仄かに感じさせる。アルトは突然のイズの質問に真意を測りかねていた。

 

「……そうではなくなぜ──』

『経緯についてはまた遅くとも明日、口頭ではなく文章をもって……適当なことを言って混乱させては悪いですから』

「ああすまないな。オレもすぐに車の保険会社と連絡を取る必要がある。先ほどのパン屋にも寄らなければ……そちらはそちらの仕事をしてくれ、わかるな?」

 

 何を警戒しているのだろうか。リドルが入っている腕輪を手で抑え制しつつ、踏み込んでくるなと草分もにらみを付けた。

 イズとて機械だが相手の反応は読み込める。「これ以上踏み込んでもいい事は起きない」と判断し、引き下がる。

 

「こっちの仕事……?」

 

 そのやり取りが一体何なのか全くわかっていないアルトのみ、能天気に草分に尋ねた。

 だから、引き出してしまった。

 

「……ほら、見てみろ。先ほどのマギア達の残骸が散らばっているだろう? 街路樹も倒れ、アスファルトも割れてしまっている。けが人は見当たらないようだが実のところはまだ分からない。早く……」

「あっ、そうですよね! 早く直さないと……! イズ、福添さん達に連絡を取って──」

 

 

 

 

「──隠してくれ、ひとつ残らず」

 

 草分が、飛電アルトとソリが合わない部分を。

 言葉一つ、アルトとの関係性にひびが入る。

 

「……えっ?」

「あぁ、言葉足らずだった。被害者と目撃者には見舞金として金を握らせ話をメディアや警察関係者より早く聞き整合性を合わせよう。

マギアの暴走した機体は出来るだけ隠すんだ。壊すなりスクラップにしてな。奴らに破壊されたということでもいいか。

悲運なことにドライバーヒューマギアと数体が暴走したが直ぐに止められた。……ライダーであるという事はまだ隠しているのなら、鎮圧したのはオレ一人ということでいい。

これが落としどころだ」

 

 今回は……そうだな、と言って辺りを見回す。転がるトリロバイトマギアの数は軽く見積もっても十を超えている。

 

 詳しくその数を発表すれば思うだろう「どのようにして多数のヒューマギアがハッキングされ、暴走したのだろう」かと。

 

 丁度いい落としどころを彼の頭で考え、言葉にしていく。

 それはつまり、慣れているという事の証明だ。

 今までとは全く違う、別の生き物を見ているような気分にアルトはなっていく。

 

「俺の運転手くんは隠せないだろう。だから、運転手くんと数体が()()()()()()()によって暴走したことにするんだ。「暴走した個体から感染して暴走する恐れがあるヒューマギア」なんてことをお客様が知る必要はない。なれば、お互いのビジネスにとって大きな深手を負う。そうだろう?」

「なに、言ってるんですか……それじゃ隠蔽だ!」

 

 決して事件が起きなかったことにする訳ではない。

 彼にとっての正義と金儲けのためにするべき当たり前のことだ。

 真実を真実のまま伝えて何が起こる? 感染を恐れたヒューマギア排斥運動だ。

 

「放っておくわけじゃない。爆散した運転手くんの残骸はオレの部下が回収している所だろう、秘密裏にそっちに送り届ける。捜査機関に渡らないようにな。いち早く原因を究明し、テロリストどもを片付ける。

そうすればヒューマギアは晴れて人々の夢の道具に返り咲く、そのためには協力は惜しまないとも」

「……」

 

 そうすればヒューマギアの生産、派遣、販売を取り扱う飛電。優秀な人手として扱い多くの傘下に導入している竹innovationも困る。

 win-winになろうと草分は囁いた。

 

「アルト様」

『──ちなみにMs.イズ、な ぜ か 録音を始めようとしている様なので悪いのですが、ワタシ少し調子が悪く……()()()()()()()()()()が出そうな気配がします』

「っ!」

 

 先日テロリストの正体を暴いた映像は、社長の隣に立っていたイズの映像データから。

 そのことも推定していた草分が何の対策もなく彼女の前で喋るわけでもない。

 

「二択だ。オレの言うことを聞き、トリロバイトマギアを数体いなかったことにして伝える情報も操作する。オレと協力し、滅亡迅雷を追い詰める

もしくは……馬鹿正直に、すべて真実を伝えると叫ぶか? それで会社は大きく傾くか、多くの人が路頭に迷うかもしれないのに」

 

 さあ優秀な秘書の手助けも除いた。

 色々と教えてあげよう、飛電社長? そうにこやかに草分は返答を待った。

 

「さあ手を取ってくれ。一緒に巨悪を打ち倒そうじゃないか」

「…………」

 

 ──飛電アルトは何を思っただろうか。

 決して、全てが理解できなかったという訳ではないだろう。

 

 彼は社長である。

 彼の部下には突然ではあったが数えきれないほどの社員がいて、自分の行動一つが彼らの生活につながってしまうという事は実感がわかないが理解していた。

 

 だからこそ、目の前の「実力で社長に成り上がった男」の言葉を聞くべきなのではないか?

 どこかそう思えてしまう自分がいた。

 

 

──俺はヒューマギアを許さない! ヒューマギアは人を不幸にする、飛電はあの惨劇を隠ぺいした!

全てぶっ壊す、ぶっ壊してやる!! 俺のルールで!!

 

「……っ」

 

 頭に声が響く。誰の声か。怒りに支配された、笑いのない男だ。

 その男に対して自分が何を言ったか。忘れたわけではじゃないはずだ。

 

「……そうだな」

 

 惑わされてしまったがなんてことはない。

 答えは、決まっていた。

 

「……ご協力の件、本当にありがとうございます」

 

 数分かと思える沈黙の後、アルトは顔を上げる。

 顔つきを見て、草分は既に顔を歪めていた。口を開いても自分が欲するものを出さないと気がついていたから。

 

「──俺は、隠し事なんてしません。爺ちゃんの飛電がどうだったのか知りませんけど、絶対に……! 飛電アルトとして!」

「……」

 

 若い。十近く年が離れた青年の顔は……男の心を刺激した。

 

「……ヒューマギアを捨てるのか?」

「いえ! 俺は真実を伝えたうえで、ヒューマギアが人の……夢を目指すためのパートナーになれるよう頑張ります!」

 

 難しく険しい道だ。草分は眉をひそめた。

 そこに至るまでに、どれだけ損失が出るだろう。

 

「……会社の利益を求めるのが社長だ」

「だからこそ、会社の人たちに顔向けできるよう……後悔しない、誤魔化すような真似なんてしません!」

 

 それではまるで草分が部下に対して恥ずかしい事をしているようではないか。

 草分の怒りの火が再燃する。

 

 だから彼は……ポケットから、プログライズキーを取り出した。

 絵柄がアルトたちに見える様、印籠の様に見せつける。

 

「……最終警告だ。夢の為に──理想を捨てろ」

 

 数秒、また沈黙が流れた。

 けれど、アルトは折れなかった。折れてなるものかと力の入った顔つきを見せ、

 彼もまた、しまい込んだプログライズキーを取り出す。草分はそれを見て、ため息を吐いた。

 

「Bet、一万円」

カネバライズ! Welcome!!

 

 草分が一手早い。パワードスーツが投影されていく。

 人としての彼を隠していく機械の体。

 

 決して二人とも、脅しの空砲ではないと知っている。先ほど見たからこそ、握る力が自然と強くなる。

 

「……俺は、理想に向かって跳び続ける!! 」

「仕方がない……愚行の代償を支払うといい!」

 

 二人はお互いに一歩、距離を取った。

 プログライズキーのスイッチが今、押される。

 

Jump!

Pay!

 

──オーソライズ!!

 

 天から、衛星より巨大なバッタが落ちてくる。

 ベリルライザーから写し出された、金属骨組みのスカラベが宙を舞う。

 

 バッタとスカラベは何度か激しくぶつかり合い、瓦礫の量を増やす。

 その様を見て、二人を何を考えただろうか。

 アルトは顎の力を強くし、草分はただキーを粛々と展開した。

 

「──変身!

「……」

 

プログライズ!!

 

 二人の動作は示し合わせたかのように同時に行われる。

 キーがお互いのベルトの右側に差し込まれた。

 

【──Kick away the ladder!】 【飛び上が Rise!】

ディスバースィング スカラベ!!】 【ライジングホッパー!!】

【──Millionaire is 1 percent fortune and 99 percent property.

【──A jump to the sky turn to a riderkick.

 

 宝石が散らばる。

 昇りゆく朝日の様に輝かしい光が辺りを照らす。

 

 すれば……そこには二人のライダーがいた。

 

「……ヒーロータイムだ、飛電社長!」

「いや、今は……ゼロワン! それが俺の名だ!!」

 

 であれば、ぶつかり合うのが当然。

 ライダーバトルの開幕であった。

*1
絶滅種のデータを保存する為に作られたシステムデバイス




■仮面ライダーベリル ディスバースィングスカラベ
197.6cm
138.1kg
パンチ力
17.8t
キック力
44.7t
ジャンプ力
15.9m※1
4.1※2

※1ひと跳び
※2100m走時


オリキャラ紹介~
・草分 カツラワ 男 30歳
 竹innovation社現社長。
 自分が悪人だと思い込んでいる成金社長。技術畑の人間である。
 
 それはそうとこの年で社長になった人間なのでそれなりの手管はある。
 飛電前社長とも交流があったようだが……?

・リドル AI 10歳
 草分の腕輪に装着された「マネカライザー」に生息するAI
 小悪魔を意識して作られているためか、やたら悪戯をする。その代わり性能は間違いない。
 基本的にベリルの戦闘時の演算、提案は彼女の担当。偶にひっかけを出したりして楽しんでいる。


〜現在支払額〜
¥20,000-



次回S1『アナタの特許はナンですか?』
5/18 1030予定(諸事情により1日延ばしました)
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