このすば〜もしもカズマがポケモン大好き野郎だったら〜 作:クロウド、
屋敷での生活にもなれてきた今日この頃、庭に埋めたきのみの苗木の世話とタマゴの観察が日課になり始めていた。現に今も、傍らにいるイーブイを撫でながらクッションに乗せた三つのタマゴの観察日記をつけている。
近くではタマゴを温めるためにメラルバがゆったりとしている、最近肌寒くなってきたしメラルバがいてくれると暖炉いらずで助かるというものだ。
「また新しいタマゴの観察?」
「まぁな、今度のはゴーストタイプとドラゴンタイプのタマゴだ」
「で? 相変わらず中のポケモンがなにか忘れたんですか?」
「いいんだよ。今となってはどんなポケモンが生まれるか考えるのも楽しみの一つなんだから」
俺はめぐみんのちゃちゃを軽く受け流しながら、タマゴに触れて様子を確認する。最近では触れただけでなんとなく孵化のタイミングがわかる。勿論、多少の誤差はあるが。
「…………。」
ふむ、この感じだと明日辺りに生まれそうだな。モンスターボールの作り置きは用意してあるし、問題ないな。
手帳にタマゴの様子を記録していると、ソファに寝転んでいたクリスに紅茶を飲んでいたダクネスが質問を投げかけた。
「しかし、ゴーストタイプか……私としては構わないが。クリス、お前は大丈夫なのか?」
「なにが?」
「お前、悪魔だけじゃなくて、レイスとかアンデッドとかの神の教えに反するものが大嫌いだろう?」
俺はダクネスとクリスの会話を聞いて、タマゴを守るように背に隠し、ファイティングポーズでクリスの前に立ちはだかる。
「……何してんのカズマくん」
「この子達に手を出すのなら、先に俺を倒してからにしてもらおう!」
「はぁぁぁ? しないよ、そんなこと! ダクネスも変なこと言わないの!」
タマゴの前で決死の覚悟で構える俺と言い出しっぺのダクネスに呆れながらもに怒鳴りつけてきた。
なんだ、悪魔の話をしたときの嫌悪感のこもった話し方を考えると冗談とも思えなかったので身構えてしまった、
「大体、シャンデラもギルガルドもゴーストタイプでしょ?」
「あぁ、そういえばそうだった」
考えてみれば、ジュナイパーもロトムももともとそうだ。だけど、クリスはゴーストタイプのポケモンに対して嫌悪感を持っていたような感じはしなかった。というか、ヒスイ地方のゾロアに関してはロトムで姿を見て可愛いとさえ言ってたっけ。
「それで、このタマゴから生まれた子は今までと同じ感じ?」
「まぁな、といってもゴーストタイプだからなぁ……。」
エリス様からのお願いは今のところ順調と言っていい。
この家に住み始めてからいくつかのタマゴを孵し、彼らが活躍できそうな場を仲間たちと相談しながら育て親を探した。
意外なことにあっさりと育て親を見つけることができた。と言ってもほとんどクリスの紹介なんだけどな。
―――最近で生まれた奴らだと、かくとうタイプで力自慢のワンリキーとドッコラーは前に手伝った土木工事の親方さんに頼んだら二つ返事でオーケーしてくれた。今では現場でバリバリ活躍してるらしい。
―――次に生まれたタブンネとチラーミィはダクネスとクリスが偶に様子を見に行っている孤児院で。前に様子を見にいったらタブンネはよく子供を見てくれてるし、チラーミィは細かい汚れも見逃さないからいつも部屋がきれいになって助かっていると言われた。
―――次に貰い手に困りそうだったどくタイプのゴクリンだったが、意外や意外、パン屋のお姉さんが引き取ってくれた。残飯や余ったパンなどを残さず美味しそうに食べてくれるので愛着が湧いたらしい。
―――最後に一番育て親を探すのが苦労すると思われたサイホーンという大型のポケモン、だが、今では人力の耕運機のようなものを動かして畑を耕してくれることから農家の皆さんの人気者になっている。
ただ、何故だろう。耕運機とかトラクターを連想するものを見ると、物凄い寒気を感じるのは……。
―――そういえば、偶然知り合ったパーティの奴に懐いた? のかついていったやつもいた。
ただ、ゴーストタイプのポケモンとなるとレイスとかアンデッドのせいでこの世界の人達はあんまり良い印象を持っていないだろうから。
もしものときは俺が面倒を見る。
そう考えていると、めぐみんが後ろから声をかけてきた。
「カズマ、ドラゴンタイプの子なら私が育てますよ」
「めぐみんにはもうガバイトがいるじゃない」
「カズマだってイーブイやメラルバの他にも沢山ポケモン育ててるじゃないですか」
「それはカズマさんがポケモンに詳しいからでしょ」
まためぐみんとゆんゆんが口論を始めそうになったので仲裁に入る。
「そこまでにしとけ。ポケモンを複数体持つこと自体は珍しくない。基本的に手持ちにできるのは六体までだけどな」
「となると私はあと五体までいけるわけですね」
確かにそのとおりだが、それは他の皆にも言えることだ。
めぐみんはドラゴン、ゆんゆんはエスパー、ダクネスははがね、クリスはひこうとそれぞれ気に入ったタイプを見つけたらしいのでそのポケモンが生まれたら相談しようとは思ってる。
ただ、クリスがひこうタイプなのは意外だった。てっきりフェアリーだと思ったのだが。
っと、クリスといえば。
「そうそう、クリス。あの話、ちゃんと伝えてくれたか?」
「ああ、あの話? 明日ならオッケーだって言ってたよ」
「そっか、じゃあ明日の……昼頃に行くか。飯時なら流石に人は少ないだろう」
「別にご飯時じゃなくても大丈夫だと思うよ? あそこ年中閑古鳥鳴いてるから」
「それ大丈夫じゃなくね?」
「何の話です?」
俺がクリスが話していると事情を知らない、めぐみんが話に入ってきた。
「ほら、この家をくれた魔導具店の店主さん。家をくれたお礼が言いたいから。クリスに約束を取り付けてもらったんだよ」
「ああ、なるほど」
めぐみんが納得すると、キルリアの髪を撫でていたゆんゆんも思い出したように口を開いた。
「そういえば、ラル……じゃなくてキルちゃんがエルレイドナイトを見つけたのも、あそこでしたよね」
「キルッ!」
「そういえばそうだったね」
「ああ、そのことについても聞きたいしな。もしかして、他のメガストーンを見つける手がかりが見つかるかもしれないからな」
「……カズマ、私も行っていいですか?」
めぐみんは顎に手を当てて何かを考えると、自分も同行すると提案してきた。あんまり大人数で行くとお店に迷惑がかかるから、俺とクリスだけのほうがいいと思うんだが。
多分、めぐみんが行きたがってるのはガブリアスナイトの手がかりがほしいからだろう。
「クリス、大丈夫そうか?」
「まぁ、三人くらいなら大丈夫だと思うしいいんじゃない?」
「だってさ」
「ありがとうございます! クリス、カズマ!」
元気よく礼をいっためぐみんは近くにおいてあった杖と、愛用の帽子を被る。その様子を見て、部屋の隅に座って爪を砥いでいたガバイトも立ち上がってめぐみんの隣に立つ。
「それではガバイト、今日の爆裂魔法を撃ちに行きましょうか」
「ガァバ!」
最近ではめぐみんは一人で、いや、パートナーのガバイトと一緒に爆裂魔法を撃ちに行くようになった。前までは俺がリザードンで送ってやってたんだが、ガバイトに進化してからいつの間にか一人で行くようになっていた。
なので、ふと気になり呼び止めて尋ねてみた。
「そういえば、お前爆裂魔法を撃ったあといつもどうやって帰ってきてるんだ」
「そのことですか。オボンのみでしがみつくくらいの体力を回復してから、ガバイトに背負ってもらってきています。ね?」
「ギャァバ!」
めぐみんに言われて、おうっと言うように鳴くガバイト。ガバイトの負担になってないなら別に構わないんだけどさ。
ガバイトは『りゅうのはどう』も覚えてるし、なにより瞬発力は大したものだ、背負いながらでも逃げるなり戦うなりはできるだろう。
それにめぐみんにはライトストーンの加護もある、心配は不要か。
「そっか、なら良かった。気をつけていってこいよ」
「はいっ!」
「ガァバ!」
俺がそう言うと今日も元気いっぱいの様子でめぐみんはでかけていった。こうしてみるとホントにただの子供だな、やることが少々物騒だが。
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―――夜中、俺は唐突に目を覚ました。理由は特にない、ただ偶然にも寝付きが悪かったというだけだろう。
しかし、寝ぼけ眼で体を起こそうとし、机の近くに作ったクッションで出来た簡易ベッドに置いてあったはずの三つのタマゴのうち二つが消えていることに気付く。
あたりを見回すとクッションのすぐ下に二つのタマゴが落ちているのを見つけた。
「置き方が悪かったのか?」
俺は未だに寝ぼけて頭で今度はちゃんと落ちないようにしないとなと思い、タマゴを拾い上げようとすると。
―――ヒョイ
「?」
―――ヒョイ、ヒョイ、ヒョイ
俺が拾おうと手を伸ばすたびにタマゴ達はまるで俺の手を避けるように転がっていく。一度目は偶然かと思ったが四度も同じことが起きればそれはもう現実として受け止めなければならない。
あまりの光景に寝ぼけも相まって唖然としていると、今度はタマゴ二つがなにかに吸い寄せられるようにドアに向かっていく、閉ざされているため通れないはずのドアが勝手に開き二つのタマゴは一人でに俺の部屋をあとにした。
「おっ、おい! 何処行くんだ!」
いきなりの光景に唖然としたが俺はようやく目が覚めてきた頭で慌ててベッドから飛び降り、念のためにモンスターボールを一つ取って、イーブイとメラルバを起こさないように廊下を出る。
コロコロと廊下を転がっていく二つのタマゴを俺は慌てて追いかける。
「一体なんの騒ぎだ?」
丁度いいことに、俺が走る音かなにかでで目を覚ましたらしいダクネスがタマゴ達の前方の部屋から出てきた。
俺は廊下の向こうから慌ててダクネスに声をかける。
「ダクネス! そいつら、捕まえてくれ!」
「ん? タマゴ?」
いきなりのことで戸惑いながらもダクネスは反射的にタマゴを捕まえようと身構える。だが、二つのタマゴのうち、一つが跳ね上がりダクネスの顔面にヒットする。
「グハッ!」
そのままダクネスを踏み台にして飛び上がったタマゴは、見事に着地してまた廊下をコロコロと転がっていく。もう一つのタマゴは倒れたダクネスをスルーして、転がっていってしまう。
俺はタマゴにぶつかられ赤くなった鼻を押さえるダクネスに駆け寄る。
「大丈夫か、ダクネス?」
「あ、あぁ……しかし、なかなかいい攻撃だったなあのタマゴ」
「お前を心配した俺が馬鹿だった……。」
タマゴから受けた攻撃に悶えているダクネスを放って俺はタマゴが転がっていた方向を向く。
「ねぇ、なんの騒ぎ?」
「……うるさくて眠れませんよ」
「何かあったんですか?」
流石に騒ぎすぎたのか、クリスたちも起きて部屋から出てくる。俺は簡単に事情を説明すると、流石に半信半疑だったがダクネスも証言すると信じざるをえなくなったようだった。
「タマゴが勝手に動き出すなんて、そんなことあるの?」
「ポケモンのタマゴは未だに解明されていないことが多い代物だからな、こんなこともあるのかもしれない」
「ホンット、君といると退屈しないや」
クリスの皮肉を聞き流しながら玄関に辿り着くと、俺の部屋のときと同じように勝手に開いた玄関から二つのタマゴが出ていくところだった。
俺たちも慌てて家から出ると、タマゴたちは庭への入り口から出て、そこから隣に向かって転がっていく。
「あの方向って……。」
「ああ、共同墓地だ」
墓地にゴーストタイプのポケモンのタマゴ、嫌な予感しかしないんだが……。
―――タマゴを追いかけて、墓地に踏み込むと、昼間との違いは目に見えて明らかだった。
ただでさえ薄暗い墓地というだけで不気味な場所だが、今朝方にはなかったはずの妙なものがポワポワ浮いていた。
紫色の炎のような姿のそれは妖しい明かりを墓地に灯している。しかし、その光は淡く沢山あるはずなのに全く明るくならないのが不気味さを助長していた。
これがなにか尋ねようと、ダクネス達の方を見ると、彼女たちは人魂らしきものをスルーして墓地の先にどんどん進んでいく。
もしかして、これってこっちの世界では普通なのか?
キャベツが飛ぶ世界だし夜の墓地に人魂みたいなのが浮いていてもおかしくないのだろうか?
前にキャベツについて聞いたとき物凄く可愛そうなものを見る目をされたのでそう結論づけて、俺も気にしないようにして先に進んでいくことにした。
「うわ……。」
「どうした、クリス?」
先を進んでいた俺は後ろから聞こえてきたクリスの声に振り返った。彼女は心底嫌そうな顔でその理由を口にする。
「この先にアンデッドがいる、それも沢山」
どうやら、【敵感知】を発動していたらしくモンスターの反応を見つけたらしい。
「ゾンビメーカーかもしれんな」
「ゾンビメーカー?」
疑問符を浮かべる俺に博識なゆんゆんが『ゾンビメーカーとはなにか』教えてくれた。
なんでも死体に乗り移る死霊系のモンスターで、死体で作った取り巻きのゾンビたちを操ることからそう呼ばれているらしい。油断しなければ、初心者でも普通に倒せるらしいが。
「でも、ゾンビメーカーの取り巻きのゾンビって二、三体って聞いたような」
「クリス、何体くらいいるんだ。」
「少なくとも、五体かな」
アンデッドが嫌いなクリスは不機嫌そうに俺の質問に答えた。
五体? 上位種か、はたまた別のモンスターなのか……。一応、皆の方を見る、当然皆は夜中に叩き起こされたことで寝間着姿、武器など誰一人持っていない。
俺も咄嗟に持ってきたモンスターボールが一個。タマゴのことは心配だが、下手にいって返り討ちに遭うのもまずい……。
「一旦戻って体制を立て直す―――」
か、と言おうと踵を返した瞬間、俺の背後の土が盛り上がり何かが地表を突き破って飛び出してきた。
「あ゛あ゛あ゛あ゛ーーーっ!」
「ぎゃああーーーーっ!!」
「ッ! 【ファイアーボール!】!」
不気味な声を漏らして出てきたそれ―――動く死体、所謂ゾンビやリビングデッドと呼ばれるそれの姿に俺は絶叫し、そんな俺を助けるためにゆんゆんが魔法を放った。
俺の真横を通り過ぎていった火球の爆発で俺は吹き飛ばされ、転がりながら着地する。
「だ、大丈夫ですか!? カズマさん?」
「じゅ、寿命縮むかと思った! サンキューゆんゆん!」
体を起こして助けてもらった感謝を込めて、ゆんゆんにサムズアップを送る。やばい、まだ、心臓がばっくんばっくん言ってる……。
ただ、さっきの魔法によって出来た炎の明かりに引き寄せられたのか、奥の方から続々とゾンビがこちらに迫ってくる。
「うわぁ、たくさん来た……。」
「ゆんゆんが炎系の魔法なんて使うから」
「えぇっ、私のせい!?」
「おい、ふざけている場合ではなさそうだぞ」
明らかには五体では済まない数のゾンビたちが四方八方から現れ、俺達を取り囲む。まずいな、逃げ場がない。
「しょうがねぇなぁ……皆、俺から離れるなよ」
―――夜中に戦わせるのは気が引けるからやりたくはなかったが、こいつに頼るしかないようだ。念の為に持ってきていたモンスターボールを構え、空に向かって勢いよく放り投げる。
「頼むぞ、バクフーン!」
「バァク!」
出てきたのは黄色と紫色の毛並みの毛並みの二足歩行のポケモン、ヒスイ地方のリージョフォームのバクフーンだ。
ヒスイ地方のバクフーンは原種のバクフーンとは違い、荒々しい様子ではなく落ち着いた様子の美しいポケモンだ。
バクフーンが鳴くと首元と背中から紫色の妖しい炎が吹き出し、ゆらゆらと揺らめく。
「『ひゃっきやこう』!」
「バァァァァク!!」
俺の指示を受けると首と背中から出ているのと同じ紫の無数の人魂が放たれ、それを喰らったゾンビたちを一気に焼き尽くす。
すると。
「きゃあーーーーっ!!! なんですか、この炎! 消えちゃう、消えちゃいますーっ!」
「んん?」
炎の向こうからこの場に似つかわしくない女の人の叫び声が聞こえてきた。
「こ、この声! カズマくん! この炎消して!」
「え?」
「早くっ!」
「あ、あぁ……バクフーン!」
「バフゥ?」
いきなり取り乱したクリスに言われて、慌ててバクフーンに炎を消してもらうと炎の向こうでへたり込んでいるローブの人物がいた。
「た、助かりましたぁ……。」
「えっと、どちら様?」
そこにいたのは紫のローブで身を包んだ、長い茶髪の落ち着いた雰囲気の女性だった。そんな美人が涙目でへたり込む姿は男心に来るものがあるが、今はこの人とタマゴのほうが心配だ。
この人の正体を知ってるらしいクリスに事情を聞こうとすると、その人の顔を見たゆんゆんが前に出た。
「あっ! 貴方は!」
「ゆんゆん、知り合いか?」
「知り合いっていうか……」
「……例の魔道具店の店主さんだよ」
「この人がっ!?」
クリスがゆんゆんの言葉を継いで口にした真実に真夜中にも関わらず俺は思わず声を上げてしまった。
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「はじめまして。私、リッチーのウィズと申します。魔導具店の店主なんてやらせてもらってます」
ようやく落ち着いたらしいその女性―――ウィズさんが自己紹介するが、俺は『リッチー』という単語に嫌な聞き覚えがあった。
「なぁ、リッチーって確か……」
「はい……不死者の王、ノーライフキングとすら言われる超大物です。魔法を極めた大魔道士が人間の肉体を捨ててなるものですが……。」
「そういえば、あのお店の店主さん。昔はかなり凄腕のアークウィザードだったってギルドで聞いたような」
なんで、こんな駆け出しの街にそんな超大物がいるんだよ? ホーストのときといい、駆け出しに見合わないやつばかりじゃないか。
気にはなるがまずはここで何をしているのかと、見失ってしまったタマゴのことをなにか知ってるかを聞こうとすると、ゆんゆんが俺の背後を指さして叫んだ。
「あっ、タマゴ!」
「えっ、どこ?」
ゆんゆんの指さした先を視線で追うと、俺の背後から二つのタマゴがコロコロとこちらに転がってくる。だが、二つのタマゴは俺をスルーしてウィズさんの前に止まると突然孵化を知らせる光を放つ。
「なっ、ここで……!?」
突然の光に俺達は慌てて目を庇った。
「ムゥ?」
「モシィ?」
生まれてきたのは二体のゴーストタイプ。
―――首に赤い玉をぶら下げた長い髪をたなびかせるよなきポケモンのムウマと、白いロウソクのような体で頭には生命力を燃やして大きくなるという青い炎をともしたろうそくポケモンのヒトモシが生まれた。
「ムウマとヒトモシか。こんなタイミングで生まれるとは」
「えっと、この子達は一体?」
「ムゥ〜♪」
「モシ〜♪」
この状況に唯一人ついていけていないウィズさんが戸惑いながらこちらを見るが、件の二体はウィズさんをその瞳に映すと、一目散にすり寄っていく。
「え? え? え?」
頭の上いっぱいに疑問符を浮かべるウィズさん。まぁ、目の前でなぞのタマゴが孵化して見たことない生き物が生まれて、その生き物がいきなり自分にすり寄ってきたらそりゃそうなるか。
それにしても、ウィズさんに甘える二体の様子を見て、俺の頭にある考察が浮かぶ。
「もしかして、この子たちウィズさんに会いたくて転がってきたんじゃ……。」
ゆんゆんの言葉に俺も口には出さないが同意する。
おそらく、レイスやアンデッドと似た性質を持つゴーストタイプのムウマとヒトモシがリッチーであるウィズさんに引き寄せられた……つまりはそういうことだ。
「とりあえず、タマゴのことはどうにかなったしウィズさんの話を聞こうよ」
「そうだな」
二体の説明は後回しにして、クリスが話を進め、ウィズさんがポツポツと事の真相を語りだした。
「それで、ウィズさんはこの墓地で一体何を?」
「実は……この墓地にはお金がないためにロクに供養されないで、天に還ることもできない魂が毎晩彷徨っているんです」
なるほど、さっきから見えてるこの灯火みたいなのはその魂ってことなのか。よくよく見ると、どの墓もマトモに掃除されているようには見えない。
「リッチーの私としてはそれを不憫に思い、定期的にここに来て天に送ってあげてたんです」
やってることといい、見た目といい、話に聞くリッチーと真逆なんだが。
「あれ? じゃあ、あのゾンビは……。」
「……あの子達は私の魔力に反応して勝手に起きてしまうんです」
申し訳無さそうに言うウィズさん。死者の王の魔力による弊害か。
それにしても迷える魂、か。
「その魂ってこのポワポワ浮いてるやつだよな、どんだけ供養されてないんだよ。メチャクチャあるぞ」
「「「「「え?」」」」」
「ん?」
俺が近くの灯火を指さしながらそう言うと、皆が驚いたような表情でこちらを見ていた。
「カズマさん、見えてるんですか?」
ウィズさんが目をまんまるにして驚く様子に、額に嫌な汗が浮かぶのを感じた。
「え? あの、ひょっとして……皆は見えてなかったり?」
「私の力で可視化はできますけど、今はしてませんので……普通は見えないはずなんですが……。」
ゆっくりと皆の顔を見ると、皆揃ってうんうんと頷く。
つまり、その……この灯火のようなものは俺にしか見えてないと?
俺はギギギと錆びた人形のような動作で首をウィズさんの方に戻してどういうこと? という顔を向ける。
「えっと……そういった素質かあるいは大きな加護を持っているとさまよえる魂が救いを求めて姿を表すことがあるそうなんですけど」
「大きな加護、か……。」
心当たりはある。というか、ほぼ間違いなくあいつだろうな。
―――あの人も、そんなこと言ってたな。
『―――なぜ、なぜ、あなたごときが!アルセウスの加護を得ているのだ!?』
「…………。」
「カズマ、どうかしたのか?」
「いや、なんでもない」
嫌なことを思い出したな……。
ダクネスに指摘され、俺は表情の変化をこれ以上悟られないように話題を変える。
「だけど、そういった仕事って普通、街のプリーストの仕事じゃないのか?」
「その……あまりこういう事は言いたくはないのですが。この街のプリーストさんはお金が第一と言いますか……お金がない人は後回しで……ほとんどここに足を運ぶ人がいないんです」
「お金のない人の供養はしてくれないってことですか?」
「拝金主義の背教者ばかりですね」
「全く、大した罰当たり共だ」
めぐみんの言葉に心から同意する。そんなんでよく神に仕える僧侶なんて名乗れたもんだ。
「私としてはここで彷徨う魂が天に還ってくれてれば来る理由もないのですが……」
「となると」
何故か四人が俺の方に向き直りじーっと見つめてくる。
「なんだよ、皆して俺を見て?」
「カズマ、アークプリーストに転職する気はないか?」
「魂が見えるなら素質もバッチリでしょうし」
「入信はエリス教がオススメだよ?」
「ならんわ」
確かにアルセウスの加護があればそれくらいできそうではあるが、何が悲しくてトレーナーやめて僧侶にならなきゃならんのだ。というか、クリスはなにサラッと入信勧めてきてんだよ。
大体、そういうことなら他に方法はある。
「それに、バクフーンにどうにかしてもらったほうが早い」
「バッフ……。」
炎が消えたバクフーンの首元を撫でながらそう提案した。
「どういうこと?」
「バクフーンの炎は魂を浄化してあるべき場所に還す力を持ってるからな」
「なるほど、だからさっきウィズが浄化されかけたんですね」
めぐみんの言うとおり、いくらリッチーとはいえバクフーンの浄化の炎はアンデッドには効果抜群だったようだ。
バクフーンは本来は食べて体内で魂を浄化するらしいが、さっきの様子を見た限り直接燃やしても効果はありそうだ。
早速実践してみようとバクフーンに炎の準備をお願いする。
「ウィズさん、少し離れていてくれ。また巻き込まれるかもしれないからな」
「は、はい」
もう消えかけるのはごめんらしく、ウィズさんはムウマ達を連れてそそくさと後ろに下がる。
「それじゃあバクフーン、頼むぞ」
「バァァァアク!!」
バクフーンが吠えると再び紫の人魂が無数に発生し、そこら中に広がりあたりがあっという間に炎の海となる。ただ、熱くはないし俺が触れても燃え移ったりしない。
やがて、墓地に浮いていた灯火が白い光となって空に昇っていく。どうやら、俺の仮説は正しかったようだ。
そして、その光はめぐみんたちにも見えているらしく、皆その光景に目を奪われていた。
「綺麗……。」
「あぁ」
ゆんゆんが呟いた言葉に俺は同意し、皆も同意を示すように静かに頷いた。ウィズさんも安心したのか胸をなでおろしていた。
―――全ての魂が天に還るのを見届けるとウィズさんが笑顔で俺達に礼を言ってきた。
「本当にありがとうございました、おかげで胸のつかえがおりました」
「礼ならバクフーンに言ってほしい、頑張ったのはこいつだからな」
「はい、ありがとうございました。バクフーンさん」
「バァフゥゥ」
ウィズさんに撫でられて気持ちよさそうにするバクフーン。ムウマといいヒトモシといい、ウィズさんはゴーストタイプに好かれるらしい。バクフーンもゴーストタイプだから、ウィズさんに懐いているようだった。
ゴーストタイプに好かれる体質か……ホウエンの四天王、フヨウさんみたいだな。……はっきり言って、羨ましい。
そんなことを考えていると、バクフーンが俺の頭に自分の顎を乗せてきた。
「バクフーン?」
「バフゥゥゥ……。」
落ち着いた様子で俺を見下ろすバクフーン。その姿に俺はほっこりして首元を撫でてやった。
そして、俺は再びウィズさんの方に向き直る。
「それと、これは俺からのお願いなんだが」
俺達の足元でウィズさんに懐いてる様子の二体が別れを惜しんでる姿を見ながら、こっちからのお願いを口にした。
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―――墓地の外でウィズさんと別れた俺達は屋敷へと戻ってきた。
「よかったね、カズマくん。引き取ってもらえて」
「あぁ、あの様子なら仲良くやってくれるだろう」
俺からのお願いは当然、ムウマとヒトモシのパートナーになってほしいというものだ。
ウィズさんはどうも他人の気がしないと喜んでオーケーを出してくれた。
ゴーストタイプとリッチーか、これ以上にお似合いのパートナーはそうそういないだろう。モンスターボールは後で届けると言って別れた。ポケモンについて詳しい説明もそのときにしよう。
部屋で寝ているはずのイーブイ達を起こさないように玄関の扉を開き中に入る。
「ブイィ〜……。」
「あっ、イーブイ。起きちまったのか?」
玄関で靴を脱いでいると、暗がりの中からまだ眠そうな目でよたよたとイーブイが歩いてきた。
音を立てないようにしたつもりだったが起こしてしまったらしい。悪いことしちまったなと謝ろうとすると、クリスがなにかに気づく。
「あれ? 何か背負ってない?」
「あっ、ホントだ」
暗がりで気づかなかったが確かにイーブイは背中に丸っこい何かを乗っけている。暗がりにも目が慣れはじめよくよく見ると、その丸っこいものが何なのかがわかった。
「ポケモン、ですよね?」
「ああ、留守にしてる間にもう一個のタマゴが孵化したんだろうな」
同じようにその正体に気づいためぐみんにそう答えると、イーブイの背中からその薄紫色の体に小さな触覚を四本生やしたポケモンを抱き上げる。
「メンラ〜……。」
「寝てないか?」
「寝てるなぁ……。」
俺の腕の中で気持ちよさそうに眠るポケモン。
今の時間帯ならまだ寝てるのが普通だろうけど、タマゴから生まれたばかりなのに寝っぱなしってのは珍しいな。
「なんか可愛いですね」
「だね。わぁ、プニプニしてる」
「あっ、ズルいですよ! カズマ、私にも抱かせてください」
「……あんまり、弄ってやるなよ」
ゆんゆんの一言から始まりクリスがほっぺたをつっつき始めたのをひきりに、今度はめぐみんが抱っこさせるようにせがんできたので、仕方なくそのポケモンをめぐみんに預ける。
まだ、夜中だっていうのに元気だねぇ。
「結構しっとりしてますね」
「そいつの体はほとんど水分で出来てるからなぁ」
「メンリァ……?」
「あっ、起きた」
めぐみんに抱かれたポケモンはそのつぶらな瞳を開いて、自分を抱いためぐみんを見上げた。
「こ、こんばんわ……。」
「メラァ……。」
「あっ、ちょっ、ちょっと!」
「メンラァ……。」
目が覚めたそのポケモンはテンパって何故か挨拶をしためぐみんの体をよじ登り、頭の上に達するとそのまま再び眠りについてしまった。
「ははっ、寝ぼけてるみたいだね」
「に、似合ってるわよめぐみん……。」
「何笑ってるんですか!?」
「しーっ! その子が起きてしまうぞ」
「うっ、うう……。」
ゆんゆんが笑うのをこらえるのを見て、声を荒らげようとするがダクネスに注意をされて悔しそうに口を噤む。
ただ、そんな心配は杞憂でポケモンはぐっすり眠っている。
「しばらく起きなそうだし、俺達ももう一眠りするか。ほら、イーブイ。ベッドに戻るぞ」
「ブイ〜」
「え? 私の頭に乗ってるの放置ですか?」
「一緒に寝てやったらどうだ? どうもめぐみんを気に入ったようだからな」
「そ、そうなんですかね」
頭の上を占領されて戸惑うめぐみんにダクネスが助言をし、めぐみんに件のポケモンを任せて俺達は中断させられた睡眠を取ることにした。
さて、カズマさんの記憶ですが……ホントにただアルセウスから与えられたものというだけなんでしょうか(すっとぼけ)。
ヒントを言うならこのカズマさんはカズマさんであって、サトウカズマさんかどうかは、ねえ?
デストロイヤー戦はZワザを披露したいのですがどのZ技がいいでしょうか?
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カプ【ガーディアン・デ・アローラ】
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ソルガレオ【サンシャインスマッシャー】
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