このすば〜もしもカズマがポケモン大好き野郎だったら〜 作:クロウド、
―――ラグラージの放った【ハイドロポンプ】によってベルディアとダクネスが激流に飲まれると、まるで戦いの終わりを告げるようにヌメラが【あまごい】で呼び出した雲が散っていく。
水気のないはずの平原で、吹き散った水が朝霧のように視界を妨げ、雲の隙間から漏れ出た夕焼けの光が空気中の水分で反射してこの場に似つかわしくない幻想的な景色を見せていた。
「ハァ……ハァ……」
「ラァジ……。」
俺もラグラージもベルディアとの戦いの疲労で肩で息をしている。使った技は数発だが瞬間の判断の連発で結構キツイ、だが、俺が音を上げるわけには行かない。俺はメンタルだけの疲労だが、ラグラージやエルレイドはメンタル的にもフィジカル的にも俺とは比べ物にならない疲労を抱えているはずだからだ。
やがて、霧が薄れていきその先の景色が明らかになる。
―――そこにいたのは。
「「「「ダクネス(さん)ッ!」」」」
霧の先にはベルディアの姿はなく、水溜りに仰向けで浮かぶダクネスの姿だった。冒険者カードの討伐欄を見ると確かにベルディアの名前が刻まれているのでどうやら跡形もなく吹き飛んだらしい。
ベルディアを倒したことを確認すると、俺とクリス、ゆんゆん、めぐみんは慌てて倒れているダクネスに駆け寄る。
「ッ!」
「ひどい……。」
ダクネスの有様にゆんゆんが口元を抑える。ダクネスの体は全身、ベルディアの剣による斬り傷でボロボロ、鎧も【ハイドロポンプ】の強すぎる水圧でへしゃげところどころ砕けている。
「カズマくん、きのみを! あれでも少しなら体力を回復できるでしょ」
「あぁ、任せとけ」
俺はロトムのきのみボックスのページを取り出して【オボンのみ】を取り出そうとする。
―――ただ、雨で濡れてたせいか指が滑って【オボンのみ】の下にあったきのみをタップしてしまった。
「やべ……。」
「貸してっ!」
「あっ、待て! そのきのみは!」
俺の手に現れた赤い小さな突起が沢山あるきのみをクリスがかっさらい、ダクネスの口に近づける。気を失っていても反射的に口に近づけられたそれをかじって口に含んでしまう。
喉に放り込まれたきのみの欠片はそのままゴクリとダクネスは飲み込んでしまう。
―――すると、気絶していたダクネスが突然目をかっと開く。
「かっ、からぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁい!!!!!!」
飛び起きたダクネスは口から火を出さん限りの大声を上げ、あたりを走り回る。
「えっ、なにどういうこと!?」
「バカッ、今食わせたのは【マトマのみ】だ!」
「【マトマのみ】? なんですかそのきのみは」
「めちゃくちゃ辛いことで有名なきのみだよ!」
「なんでそんなもの渡すのさ!」
「間違えて出しちゃったのをお前がかっさらったんだろうが!」
いきなりのことに混乱する俺やクリスたちだが、今はそんなこと言っている場合じゃない。別の意味で危機的状況に陥ったダクネスをどうにかしないと。
「はっ! めぐみん、とりあえずヌメラの【みずでっぽう】で」
「っ! それですゆんゆん! ヌメラッ!」
「メリャァ!」
「わぷっ!」
ゆんゆんの機転でめぐみんがヌメラにダクネスの顔面に【みずでっぽう】を撃たせた。水が口に入って、少しは辛味が飛んだのかようやくダクネスの動きが止まりその場にへたり込む。
「大丈夫、ダクネスッ!」
「ま、まりゃ舌がひりひりする……うぅ、倒れて無防備なわたひにぼうけんひゃ共がなにをするか期待していれば、まひゃか、こんな目にあうとは―――しかし、これはこれで」
「おい」
「あっ」
自分の失言に気づいたのかゆっくりと俺達を見上げるダクネス。そこには当然、白い目で自分を見る四つの視線がある。
「人が心配していれば……。」
「ひどいですよ、ダクネスさん!」
「最初っから、起きてたんだね?」
「実はお前、まだまだピンピンしてんだろ?」
「―――ヒュ、ヒュ〜」
「下手な口笛吹いてんじゃねぇ!」
次々と仲間に責められ流石に気まずいのか、らしくない誤魔化し方をするダクネスだが【マトマのみ】のせいで口笛が上手く吹けない様子だ。そんなダクネスの頭を掴んでその長い髪をこれでもかというくらいワシャワシャとしてやる。
「や、やめろぉ! 髪をくひゃくひゃにするなぁ! あぁ、でもこれも……。」
「メタング、連れて行けッ!」
「メタッ!」
「あっこりゃ、めひゃんぐ! まひゃ勝手に【サイコキネシス】を使うのはやめりょッ! こんりゃ、何もできない状態でボロボロの姿を街の冒険者に晒すなど―――ふむ、ありかもしれん」
「あいつ、無敵かよ……。」
また新しい扉を開こうとしているダクネスをメタングに連行してもらおうとすると、まだ興奮したようで身を捩っている姿に俺は頭を押さえる。おまけに全身ずぶ濡れで鎧や服が斬り裂かれていたり砕けたりしているせいで扇状的になっているのも相まってあの表情はまずいと思う。
だって、男性冒険者の何人かがその姿に前かがみになっているもの。……対照的に女性冒険者はゴミを見る目をそいつらに向けてるけど。
「「「カズマ(くん)(さん)?」」」
「えっ、俺も?」
男性冒険者がダクネスを卑猥な目で見ているせいでそのメタングに連行するように言った俺までクリス達に睨まれるという弊害を受けている。……何故だ、解せぬ。
若干心を痛めながら沈みかけている夕焼けを感傷にふけるように見つめる。
「ん? 夕焼け?」
戦闘に夢中ですっかり忘れていたが―――今、何時だ?
「へいロトム、今何時?」
『僕はシ○じゃないロトよ……まぁ、いいロトけど。午後四時ロトよ』
「やっべぇじゃねぇか!」
ロトムが答えた時間に頭を抱えて叫んだ。いきなり叫びだした俺にクリス達がぎょっとしてこっちを見るが、そんな事を気にしている暇はない。
「すまんクリス! 俺は先に帰る! 後のこと任せる!」
「え? あっ、ああ。なるほどね。わかった、早く行ってあげて」
「恩に着る!」
うちのパーティのサブリーダーと言えるクリスに短く要件を告げると、それだけで事情を察してくれたらしく早く行けとひらひらと手を振ってくれる。
ただ帰る前に、今回活躍しくれたラグラージの頬に触れる。しっとりとした体に触れるとラグラージは懐かしむように瞳を細めて微笑み、俺もそれにつられて口元が緩む。
「ラグラージ、突然呼び出して戦ってもらって悪かったな。でも、おかげで本当に助かったよ」
「ラージ♪」
「久しぶりにお前と戦えて楽しかったよ。ありがとう、ゆっくり休んでくれ」
心からの感謝の言葉をラグラージに送り、モンスターボールに戻ってもらう。
―――さて、それじゃあ行かないとな。
「うおぉぉぉぉぉぉ!!! 待ってろ、イーブイぃぃぃぃぃぃ!!!」
俺はベルディアとの戦いでの疲労を無視して自分の出せる最大速度で街を駆け抜けていく。本当はアヤシシに乗って爆走したいところだが流石に街中でそんなことをするわけには行かないので足で走る。
―――余談ではあるが、その時の俺の姿をクリスを含めた冒険者たちはひょっとしたらベルディアよりも速かったかもしれないと語っていたとかなんとか。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「ゼェ……ゼェ……つ、ついた……!」
息も絶え絶えになりながら俺はようやく屋敷の庭の前に辿り着いた。ベルディア戦での疲労も相まって足が生まれたての子鹿のようにガクガクとかプルプルとかいう擬音がしっくり来るような状態だがそれでも必死に前に進む。
『ロト? ロトトッ!?』
「あっ、あぁ……見張りお疲れ様カット……。」
庭で寝ていたカットロトムがあまりにもヘトヘトの俺に目を見開くが、なんとか俺は玄関の扉に辿り着き鍵を挿して解錠する。ガチャという音で鍵が開き、疲れで震える腕でノブに手をかけて扉を開く。
「ただい―――「ブイッ!」―――うおぉっ!?」
扉を開いた瞬間、白い影が凄い勢いで俺に向かって飛んできた。足に力が入らない俺はそのまま背中から倒れてしまう。
「ブイッ!」
「イーブイッ!?」
背中を打った痛みよりもそこにいたのが、俺が謝ろうと思っていたパートナーだったことに驚く俺。
……どうして、今朝はあんなに怒ってたのに。
「ブイッ!」
イーブイは俺の考えを察したのか家の中を振り返る。すると、そこにいたのはのそのそと歩いてくるメラルバ。
―――そして。
『…………。』
「そうか、君か……。」
そこにいたのは例の
―――そうか、君がイーブイの怒りを宥めてくれたのか。
「ブイッ!?」
「ッ、この光は!?」
ありがとう、と彼女に言おうとした途端イーブイの体が進化を告げる青い発光を始め俺もイーブイも驚愕する。
おかしい、確かにイーブイには【かわらずのいし】を持たせていたはずなんだが……。
「ってない!?」
まだ完全な変化が始まっていないイーブイの首元を見ると、たしかに紐に通して首にかけていたはずの【かわらずのいし】がどこにもない。
馬鹿な、勝手に外れるような代物ではないのに!
「って、そんなこと言ってる場合じゃない! Bボタン、Bボタンはどこだ!? 現実世界にBボタンなんぞあるかっ!?」
テンパってったせいでらしくない一人漫才をしているうちにイーブイの進化が本格的に始まってしまった。
小さかった体が二周りほど大きくなり、首元からリボンのような触覚が伸びる。
「フィア〜」
やがて、進化の光が消えるとイーブイは本来はピンク色の毛並みだが、色違いである故に、薄い青色の毛並みのポケモン、むすびつきポケモンのニンフィアに進化していた。
「あちゃ〜……。」
とうとう進化が完了してしまった。
この子はキュウコンに憧れていたようだからグレイシアになりたかったはずなのに……。
俺がどうしたものかと思っていると、てっきり自分の望む進化先じゃなかったから凹んでると考えていたニンフィアを見る。
「フィア♪ フィ〜ア♪」
ところがどうしたことか、ニンフィアは凹むどころかむしろ上機嫌にピョンピョン飛び跳ねている。
「?」
ニンフィアがリボンのような触覚をたなびかせる姿に俺は何か既視感を覚えた気がした。なんだろう……凄く見覚えがある動きだけど。
『コ〜ン』
「あっ! キュウコンの尻尾か!」
「フィ〜ア!」
俺の答えにそのとおりというように鳴くニンフィア。そっか、イーブイの奴、キュウコンの氷じゃなくてあの綺麗な尻尾に見とれてたのか。そういえば、アローラのキュウコンはこおりタイプの面が強くて忘れがちだがフェアリータイプも持ってたんだったな。
今の今まで気付かないとは、俺もまだまだだなぁ……。
「フィ〜ア」
「ん? ニンフィア?」
若干落ち込んでいるとニンフィアは触覚をたなびかせるのをやめて俺の腕に巻きつける。
―――余談だがニンフィアが触覚をトレーナーの腕に巻きつけるのは親愛の証だと言われている。
「―――これがやりたかったんだな、ニンフィア」
「フィ〜ア」
うんっと答えると鳴くニンフィアの目を見て俺は朝からずっと言おうと思ってたことを口にした。
「今朝は悪かったな、生まれたばっかのヌメラにばっか構っちまって。だけど、お前のことを忘れたわけじゃないんだぞ? これは信じてくれ」
「フィ〜ア……。」
ニンフィアは俺の言葉を受け取ると今度は自分が謝るように頭を下げた。そっか、お前も謝りたかったんだな。
「改めて、俺のパートナーとしてやっていってくれるか?」
「フィ〜アッ!」
「メラッ!」
「勿論、メラルバも忘れてないぞ」
俺が手を差し出すと、ニンフィアが前足をメラルバが小さい手を乗せてくる。
自分でもよくはわからないが、この二体は俺にとって他のポケモンとはまた違った意味で大事な存在になっているからな。
「これからも仲良くやっていこう!」
「フィアッ!」
「メラッ!」
こうして俺とイーブイ、いや、ニンフィアは改めてパートナーとなった。
その後、帰ってきたクリスとゆんゆんが進化したニンフィアの可愛さにメロメロになってもみくちゃにするのだがまぁ、これは仕方ないことだから割愛しよう。
―――そういえば、【かわらずのいし】は自室の机の上にあった。一緒に見覚えのない西洋人形が置いてあったのだが……誰の仕業かはあえて語るまい。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
―――翌日、冒険者ギルドにて。
「フィア〜?」
「「「「「かわいい〜〜〜〜〜!!」」」」」
「メンラァ〜?」
「「「「「こっちの子もかわいい〜〜〜〜!!」」」」」
現在、ニンフィアとヌメラはギルドの女性冒険者やウェイトレスさん達に囲まれている。あそこの密度がギルドの中で一番密集している状態だ。
あそこから連れ去ったりしたら、暴動が起きそうだし二体とも嫌な顔はしていないのでしばらくあのままでいてもらおう。
「凄い人気だな、お前のニンフィアとめぐみんのヌメラは」
「実際、あの二体は人気の高いポケモンだからな」
「メラッ!」
「勿論、お前もだぞ〜」
受付カウンターからベルディア戦の報酬の入った袋を持ったダクネスが戻ってきた。
今日はベルディアとの戦いでの報酬をあの戦いに参加した冒険者達全員に配られる。全員、命がけで戦ったのだから当然と言えば当然だ。
因みに俺はトドメをさしたことや、作戦を立てたという功績を認められて特別報酬としてベルディアにかけられていた懸賞金が支払われるらしい。ただ、金額があまりにも大きいので俺の報酬の受け渡しは一番最後となった。
冒険者の殆どはその金を使って、今日はベルディアへの勝利を祝って盛大に盛り上がるそうだ。
「で、ダクネス。体の方はほんとにもう大丈夫なのか?」
「ああ、ハピナスのお陰でもう万全だ」
「…………。」
俺はあっけらかんと答えるダクネスの打たれ強さにもはや呆れてしまう。
雨のときみずタイプの技の威力は上がる。その状態でぶちかましたみずタイプ最強クラスの技である【ハイドロポンプ】を喰らってハピナスの【いやしのはどう】を受けただけで復活するとか……。
耐久力だけなら伝説級なんじゃないか?
「おおっ、カズマじゃねぇか!」
「うわっ! なにすんだよ、ダスト」
「いやぁ、ベルディアとの戦い凄かったなッ! お前はいつかはやるやつだって思ってたんだよ!」
「お前、前に俺に喧嘩ふっかけてイーブイとメラルバにボコボコにされてなかったか?」
「うっ……嫌なこと思い出させんなよ」
いきなり背後から肩を組まれたので驚いてそいつの顔を見ると、そこには既にしこたま酒を飲んだのか顔の赤い粗暴そうな金髪の男がいた。片手には並々注がれた酒がまだあるし、酒臭いから離れてほしいんだが。
―――この男の名はダスト。最近街で噂になっている俺に上級職に囲まれて楽してるだけのペテン師といちゃもんをつけ、さっきも言った通りイーブイに【シャドーボール】をかまされ、メラルバに【ひのこ】で焼かれた街で有名なチンピラである。
調子のいいことを言っているダストだが、俺に当時のことを言われてそのことを思い出したのか赤かった顔が少し青くなった。
「しっかしすげぇなポケモンってのは……ウチにいるアイツも育てりゃあんくらいになんのかねぇ」
「ああ、お前についていったアイツか。今どうしてるんだ?」
「今はリーンの面倒見てるぞ」
「逆でしょうが!」
「ぐふっ!」
俺達が話しているとダストの背後からポニーテールの少女が持っていた杖で思いっきりダストの頭をぶっ叩いた。
因みにここからなら叩く前にダストに教えられたが、あえてやらない。
「リーン久しぶり」
「久しぶり、カズマ。今回は大手柄ね」
「頑張ったのは俺じゃなくてエルレイドやラグラージだけどな」
この少女はリーン。ダストのパーティのウィザードで、ダストのお目付け役的立場だ。俺としてはあの狸みたいな模様の尻尾が凄く気になるのだが、触れないほうがいいと本能が言っているので聞かない。
そして、そんなリーンの足元にいるのがダストについていったポケモンだ。
「ナックラーも久しぶりだな」
「クラー!」
オレンジの体に大きな口がトレードマークのこのポケモンの名前はありじごくポケモンのナックラー。タマゴから生まれたこの子の育て先を街で探しているうちにナンパをしていたダストを発見。それを見たナックラーが尻に噛みつき、なんやかんやあってパートナーになった。
―――ふむ、改めて言ってもわけがわからない。
ただ、こいつはリーンに次ぐダストのお目付け役らしく。ダストが馬鹿なことをすると噛み付いてそのままリーンのところに引っ張っていくらしい。
「ナックラーのお陰でこの馬鹿がやらかしたときの苦情が減ってほんとに助かってるよ」
「そっか、偉いぞナックラー」
「クラー!」
「こっちはいい迷惑だっつの!」
俺がナックラーを褒めてやるとダストは噛まれたことを思い出したのか、尻を押さえながら叫び声を上げた。
「そんなこと言って、なんだかんだ一番甘やかしてんじゃん」
「へぇー、意外だな。お前に生き物を慈しむ心があったなんて」
「だったらなんでそいつ渡したんだよ……なんか、昔飼ってた犬に似てんだよそいつ」
「犬には似てないと思うが」
「いや、姿じゃねぇよ」
そんなことはもちろんわかってる。
ただ、なんとなく聞いてほしくなさそうな雰囲気を出しているのであえて聞かないように話をそらした。
その後、二言、三言話してダストとリーンとは分かれた。
さて、まだ俺の番まで順番があるしどうしようかと思っていると、この場に似つかわしくないどんよりとした空気がこちらに何処からか流れてきたのを感じた。
「うわっ! ど、どうしたんだ二人共ッ!?」
空気の出処に目を向けるとそこには小さなテーブルで向き合うようにして座っているクリスとゆんゆんだった。二人共うつむいていて、空気が重い。
クリスの近くで飛んでいるトゲチックもゆんゆんの椅子の近くにいるキルリアも二人を見てどうしたものかとあたふたしている。
「いや今回の戦いを振り返ってみると、あたし達……」
「全く良いところなかったですねって……。」
「ああ、なるほどね……。」
俺は二人の発言に納得する。
言われてみれば、クリスもゆんゆんも今回はこれと言って目立ったことはできてなかった気がする。
でもそれはしょうがないだろう……クリスは接近戦が得意故にベルディアとは相性最悪だっただろうし、ゆんゆんも魔王の加護を受けた鎧だかのせいで魔法が全然通らなかったからなぁ。
ただ、今回活躍したせいで天狗になってるのがいるけどな。
「まぁまぁ、いいじゃないですか。たとえ、ライバルのこの私が! 大活躍しても、今となっては同じパーティメンバーなのですから」
「だったら、あからさまにマウントとるんじゃないわよ!」
めぐみんがゆんゆんにそれはもうドン引くようなマウントを取り始めた。この子の将来は果たして大丈夫なのだろうか……。
ただ、少しはマシな大人になれるように釘は刺しておこう。
「今回の原因を作ったのが誰か、忘れたわけじゃあないよな?」
「うぐっ!」
俺の言葉にギクリとさっきまでの余裕な様子を崩すめぐみん。俺も苛ついて挑発したのはやっちまったけどな……。
クリスあたりにそこらへん、ぶり返される前に帽子の上からめぐみんの頭に手を置いて話題を変える。
「まぁいいさ、俺もお前くらいの歳の頃は結構無茶したからな」
「たとえば、どんなだ?」
「うん? 一人でポケモンを悪用する悪の秘密結社のアジトに乗り込んで、その組織を壊滅させたりとか?」
「君それ、無茶じゃなくて無謀でしょ……。」
「めぐみんのやらかしが可愛く見えてきました……。」
今にして思うとよく無事だったな……ギンガ団の基地に乗り込んでユクシー、アグノム、エムリットを助け出したり、ジョウト地方で復活しかけてたロケット団を潰したり、プラズマ団をニ年かけて潰したり、フレア団からイベルタルとゼルネアスを助け出したり、アクア団とマグマ団はまだ情状酌量の余地があったな。
あそこは本気でポケモンと人類、それぞれの幸せを願ってたわけだし。ポケモンを無駄に傷つけなかったところもポイント高いな。
「ただ、今度からは爆裂魔法を撃つときは俺と一緒に行くぞ」
「カズマもですか?」
「俺はお前らのリーダーだし、それに俺はお前達をトレーナーにした人間だ。お前達やそのポケモンが危険な目に遭うようなことをしてるなら何があっても止める義務がある」
「とても一人で悪の組織のアジトに侵入して、組織を壊滅させた人の台詞とは思えないのですが……。」
「俺も大人になったってことだよ」
めぐみんの言葉に少しだけ哀愁の籠もった口調で答える。
―――ヒスイ地方での経験は俺を精神的にも肉体的にも大人にしたからな。良くも悪くも今までしたことのない経験だった。
ヒスイの大地に思いを馳せながら黄昏れているとすっかり復活したクリスが俺を小脇でつついてくる。
「なーに、カッコつけてんのさ」
「いいだろ、別に。男はいくつになってもカッコつけたい生き物なんだよ」
「サトウカズマさん」
「おっと、呼ばれたようだぞ?」
「ああ」
ルナさんが俺を呼ぶ声にダクネスも気付き、カウンターの方へと向かう。
ルナさんの元に行くと彼女の側に二体のポケモンがちょこんと付き従うように立っている。
「よっ、イエッサン。元気してるか?」
「「イエッサン!」」
俺の挨拶に手をあげて答えるのは白と黒の体毛を持つ二体のポケモン、かんじょうポケモンてあるオスとメスのイエッサンだ。
イエッサンはオスとメスで体の色や姿が大きく違うポケモンの一種。オスのイエッサンはどこか鋭い視線で体の黒い部分が多くアタマの角が上を向いているのが特徴で、対象的にメスのイエッサンは温和な視線で体は白い部分が多く頭の角は下を向いてるのが特徴だ。
「どうですか、ルナさん? 二人の調子は」
「ええ、二人共本当によく働いてくれて私達も助かっています」
イエッサン達のトレーナーであるルナさんは世辞ではなく、本気でそう言ってくれているようで安心した。
イエッサンは頭がよく、人やポケモンによくつくすことで知られているので、ルナさんに相談したらギルドで働いてみないか? とお誘いを受けて送り出したところ天職だったらしく今はここでギルド職員のお手伝いをしてつくしてくれてるらしい。
「それじゃあ、イエくん、あれ持ってきて。イエちゃんは向こうのほうでウェイトレス達のお手伝いをしてあげて」
「「イエッサン!」」
「へぇ〜、そう呼び分けてるんだ」
オスがイエくんでメスがイエちゃんか。なるほど、わかりやすい。
ルナさんのネーミングセンスに感心しているとオスのイエッサン――いや、イエくんが小切手らしきもが乗ったトレーを持って戻ってきた。
「イエッサ!」
「ありがとね。それではサトウカズマさん、大変おまたせしました。こちら今回のベルディア討伐の報酬です。あまりにも金額が大きいので小切手という形ですが」
「ありがとうございます」
なんか小切手にゼロが沢山あるけど、確かホーストのときは五百万エリスだったか。魔王軍幹部っていうくらいだから、かなりの額の懸賞金がかかってるんだろうけど。
小切手に書かれたゼロを指で追いながら数えていく。ええっと一、十、百、千、万、十万、百万、千万、お、お、お、億……。
「さ、さ、さ、三億、エリス……。」
「「「「「うおぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」」」」」
俺が唖然としてその額を告げると聞き耳を立てていた冒険者たちから歓声が上がる。俺はそのあまりの額に卒倒寸前なんだが……。
あまりにも大きい額に俺は震える手で小切手を握りしめながら、ルナさんに確認を取る。
「こ、こんなに……?」
「はい。デュラハンのベルディアは今まで数多くの勇者候補を屠ってきた、名のあるモンスターでしたから」
ベルディア。お前そんなに有名な奴だったのか。水を喰らってから威厳だだ下がりだったけど、凄いやつだったんだな。
それにしたって三億エリスって……あっ、やばい改めて認識したら気が遠くなってきた……。
「ねぇねぇ、カズマくん! 折角だからパァーッと使おうよ!」
「だ、駄目だ! これからやることにはいくらあっても足りないんだ、ちゃんと貯金しないと」
気を失いかけてた俺だが、クリスの声で我に返り小切手を懐にしまい込む。そんな簡単にこれを使うわけにはいかない。これからポケモン達を野生に離すまで育てる施設の事とか本格的に考えなきゃいけないのにこんなところで無駄遣いできるか。
「えぇ〜、そんなけちくさいこと言わいでさぁ〜!」
「「「「「そうだ! そうだ!」」」」」
「……はぁ、わかったよ。―――ここの支払いだけだぞ」
「「「「「いえ〜い!!」」」」」
ただ、クリスがいつまでも文句タラタラなうえに他の冒険者達も煽ってくるので、折角のめでたい席ということふまえて多少は妥協した。
「ほらカズマくんも飲んで飲んで!」
「いや、俺。酒はあんまり……。」
クリスがジョッキに注がれたシュワシュワなるアルコール飲料、要するに酒を持ってきてぐいっと差し出してくるが俺は二十歳になるまで酒を飲む気は……。
「カズマが飲まないなら私が」
「お前はもっと駄目だろ!」
「何故ですか!?」
俺がシュワシュワを受け取らない様子にめぐみんがジョッキを奪おうとするが流石にそれはまずいので俺が先に奪い取る。
この世界では飲酒に関する規制はそこまで強くない。基本的に冒険者になれる歳のものなら普通に飲んでも構わないが、流石に十三歳の女の子に酒なんて飲ませたら間違いなく成長に悪い。
「……………。」
「ほらほら、ぐいっと」
クリスの手からうばったシュワシュワの入ったジョッキを見ながら、こんな日だしいいかという気持ちでジョッキを口に当ててシュワシュワを口に流し込む。
「ふぅ……意外とスッキリしてるな……。」
「お〜、結構いい飲みっぷりだね。もっと飲む?」
「いや、俺はこれでいいよ。朝っぱらからそんなに飲んで夜、寝付きが悪くなってもまずいし」
「真面目だねぇ、君は」
「そこがカズマさんのいいところだと思いますけど」
「それより、カズマ。私にもシュワシュワを飲ませてください!」
「子供にはまだ早い。向こうでオレンジジュースでも飲んでろ」
「んな! 子供扱いしないでください!」
俺に子供扱いされたのに腹を立てたのかむきになって俺のグラスを奪おうとするが頭を掴んで近寄れないようにする。手をジタバタさせるが俺との身長差と腕の長さではどうやっても俺の体にめぐみんの手が届くことはない。
「なんだ、お前。子供扱い嫌なのか?」
「当たり前でしょう、私はもう一人前の冒険者なんです!」
「爆裂魔法しか使えないくせによく言うわよ」
ゆんゆんがボソリと漏らした言葉にめぐみんの動きがピタリと止まる。そして、ゆっくりとゆんゆんの方に歩み寄っていく。
「なにか言いましたか? 今回何も活躍できなかったゆんゆん?」
「え? えぇ、言ったわよ! 爆裂魔法しか使えないめぐみん?」
一瞬物怖じするかと思われたがゆんゆんは真っ向からめぐみんに向き合って言い放つ。ホースト戦から肝が据わってきたよなゆんゆんも。
「なんですかっ!?」
「なによっ!?」
「やめないかっ! このめでたい日に!」
至近距離で睨み合っていためぐみんとゆんゆんは横から乱入してきたダクネスによって引き剥がされる。こういうときのダクネスは本当に頼りになるな。普段からこうだと俺もメタングも楽なんだが。
ええっと、なんでこんな事になったんだっけか……。
あぁ、俺がめぐみんを子供云々って言ったのがきっかけだったか。
「子供、ね。子供でいるのも悪いことじゃないと思うけどな」
「なんですか急に」
俺がこぼした言葉にめぐみんが訝しげな目でこちらを見て話しかけてくる。
「お前らは大人になればできることが増えるとか思ってるんだろうけど、大人になってできることなんて意外と大したことなかったりするんだぜ?」
「そうなんですか、ダクネスさん?」
「ふむ……確かにそう言われるとこれと言って大した変化はなかったような」
「そっ、意外と少ないんだよ。大人になってできることって。逆に、子供の間しかできないほうがもっとずっと多いんだよ。
―――ただ、大人になってからじゃないとそこに気付けないのが難儀なところだけどな」
言いたいことを言い終えると、長台詞で乾いた口にもう一度シュワシュワを流し込む。ゴクゴクと喉を鳴らしながら残り半分くらいになるまで一気の飲み干してぷはぁと息を吐く。
さて、小腹も空いてきたしなにかつまみにいくかと思ってテーブルに近づこうとすると。
「あの、カズマさん」
「ルナさん、どうかしましたか?」
料理が乗っているテーブルに向かおうとする俺をさっき俺に小切手を渡したばかりのルナさんが引き止めた。
「実はこの間の戦いを見て自分たちもパートナーを持ちたいという方が何人か名乗り出まして」
「本当ですかっ!? あぁ……でも、ギルドに名乗り出たってことは……」
「はい。冒険者の方々です」
冒険者ってことは当然、危険がつきまとう。タマゴから生まれたばかりのポケモンには危険なパートナーだ。ナックラーはまぁ、大丈夫だろう。ダストの奴この町では結構、腕は立つらしいし。
いや、待てよ。タマゴから生まれたポケモンではなく、ヒスイ地方で大量発生のときにゲットしたポケモンならどうだ? あのポケモン達も俺のポケモンではあるが滅多なことでは呼び出してあげられてないし、俺のところにいるよりも大事にしてくれるパートナーのもとに送ってやるべきかもしれない。
問題はヒスイ地方のポケモンは気性の荒いのが多いって点か……。相性が重要かもしれない。
「そうですね、渡せるポケモンには当てがありますが相性が悪いと厄介なことになるかもしれないので、面接とかしたいんですけど、場所とかって貸してもらえますか」
「そうですね。ギルドとしてもパートナーがいることで死者や怪我人が減ることは利益となりますし、それくらいの協力ならギルドの部屋を貸すことは可能かと」
「なら、早速詳しい日程を」
俺はルナさんと面接日取りや内容をどうするかなどの相談をするためにギルドの別室に向かった。
あれ? 俺何をしようとしてたんだっけ……まぁいいか、まずは目の前のことを片付けないとな。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
面接の打ち合わせをするため、別室に向かうカズマの背中を彼のパーティメンバーである四人の女性がなんともいえない顔で見つめていた。
その中で最初に口火を切ったのはダクネスだった。
「なぁ、クリス」
「なに、ダクネス?」
「カズマは本当に15歳なのだろうか。時々、彼が自分よりすごく年上のように感じることがあるんだが」
「それだけ、濃い経験をしてきたってことでしょうか?」
「確かに、前に話してくれたアローラ地方ってところの話も凄かったよね」
ダクネスの言葉にめぐみんもゆんゆんも同意を示す。二人は以前に、彼の経験の一つを丸々詳しく聞いているからこそ二人も同じことを考えていた。
「…………。」
その中で一人だけ口を噤んだ、銀髪の少女もまた同じことを考えていた。少し違うのは、その理由にわずかながらに仮説が立っていることだろう。
(確かに、カズマくんの立ち振舞はあの平和な地球で生きてたの人間のそれじゃない。ただ、あたしの考えてるこれが本当だとしたら……アクア先輩すごいな、これ以上ない人材をこの世界に送り込んでくれたってことだし)
心のなかで自分に仕事を押し付けたり面倒事に巻き込んだりする困った先輩に久方ぶりに尊敬の念を抱く。
(そろそろ、本格的に君の正体を暴かないとねカズマくん。
いいや、正確にはあのポケモンが君に何をしたのかを調べないとね。何が何でも答えてもらうよ―――アルセウス)
現在のメインキャラの手持ちポケモン
カズマ……イーブイ→ニンフィア(NEW)(固定)、メラルバ(固定)、沢山
めぐみん……ガバイト、ヌメラ(NEW)
ゆんゆん……キルリア
ダクネス……メタング
クリス……トゲチック
ウィズ……ムウマ、ヒトモシ
ダスト……ナックラー(NEW)
デストロイヤー戦はZワザを披露したいのですがどのZ技がいいでしょうか?
-
カプ【ガーディアン・デ・アローラ】
-
ソルガレオ【サンシャインスマッシャー】
-
ルナアーラ【ムーンライトブラスター】
-
ネクロズマ【天焦がす滅亡の光】