このすば〜もしもカズマがポケモン大好き野郎だったら〜 作:クロウド、
因みにこの和真さんは年齢的にダイパ世代です、だから旅の順番はシンオウ、ジョウト・カントー(ソウルシルバー・ハートゴールド)、イッシュ(ブラック・ホワイト)、ニ年間Nを探し回る(ブラック2・ホワイト2)、カロス(XY)、ホウエン(オメガルビー・アルファサファイア)、アローラ(サン・ムーン)、ガラル(ソード・シールド)、ヒスイ(レジェンズ)にするつもりです。これでリメイク版のメガシンカとかの追加要素はあんまり問題ないような気がするので。
「悪いな、皆付き合ってもらっちゃって」
「構わんさ、私達もポケモンには世話になっているからな」
「冬も本格的になってモンスターも冬眠し始めたからロクなクエストもないしね」
今日、俺達は街でそれぞれパートナーを見つけ、役割を持ったポケモン達の健康診断を行っていた。トレーナーになった人の住所や名前はロトムのメモアプリに残っているので場所はわかる。
本当は一人でやるはずだったんだが、ダクネス達が手伝いを名乗り出てくれたお陰で大分スムーズに訪問することが出来た。今は次のお宅に訪問するために移動中だ。
「でも、本当にいいのか? なんなら、ギルドを通して正式な依頼として」
「何度も言ってるでしょう、別にいいですって」
「それにカズマさんからお金なんてもらえませんよ」
「ただ、次回からは場所を決めたほうがいいだろうね、これじゃあ数が増えるたびに時間が長引いちゃうから」
「そうだな」
場所、か。やっぱり、ギルドの場所を借りるしかないかな。
ベルディアとの戦いでの報酬もあるし、どっかの家を借りるって手もあるか。だけどなぁ、折角ならもっと広い場所を手に入れてもっとポケモン達がのびのびできる場所が欲しいんだが、そう例えるならエーテル財団の保護区みたいな場所が理想か。
「カーズーマーくーん!」
「うわっ、どうしたクリス!」
「前にもあったよねこんなこと……。」
いつの間にか正面にいたクリスから大声で名前を呼ばれて、思考を中断してクリスの顔を見る。
「カズマは考え事をすると、周りが見えなくなるのが欠点ですね」
「あとはポケモンのことになると、暴走しがちなところだな」
「お前に欠点云々言われたく―――「フィア〜?」―――ん〜? どうしたんだ、ニンフィア〜?」
「「言った側から……。」」
背中にメラルバを乗せたニンフィアの声に立ち止まって頭を撫でる。
めぐみんとダクネスがなんか言ってるが……まぁ、いっか。
「良くないでしょうが!」
「いてててて!! 耳引っ張んな!」
目線を下げてニンフィアとメラルバの頭を撫でているとクリスに耳を引っ張られ無理矢理立たされる。
「ったく、なんだよクリス」
「だ〜か〜ら〜、残りの健康診断の場所は何処なの?」
「あ〜、そのことね。えっと、確か残りは農家のご夫婦のところにいったコロボーシあとはウィズさんのムウマとヒトモシで最後か」
「ここから近いのはコロボーシのところだな」
「コロボーシってどんな子だっけ?」
「むしタイプのポケモンで触覚をすり合わせてコロコロって鳴く可愛らしいポケモンでな」
「コロロロ〜」
「そうそう、こんな感じでな……ん?」
聞き覚えのある鳴き声に振り返ると、そこにはナイフのように鋭い腕を持った口元に生えたひげが特徴的な虫ポケモンが立っていた。
「この子は……。」
「コロボーシの進化系のコロトックだな」
『それでは久しぶりに僕の出番ロト!
コロボーシ こおろぎポケモン むしタイプ
鳴くときはナイフのような腕を交差させる。即興でメロディを作る。感情をメロディで表す。メロディの法則性を学者たちが研究している。』
ロトムの図鑑説明を聞くのも久しぶりな気がするな。
「カズマのポケモンじゃないですよね」
「あぁ」
「ということは」
「コロちゃーん!」
何故か街中にいたコロトックに俺達が頭を捻っていると、何処からか聞き覚えのある声が聞こえてきた。声のした方向に視線をやると道の向こうから大きな紙袋を抱えた妙齢な女性が走ってきた。
あっ、この人は。
「農家の奥さん」
「あらまぁ、カズマさんじゃありませんか」
この方はさっき話していた農家のご夫婦の奥さんだ。と、いうことはこのコロトックはもしかして。
「あの、もしかしてこの子は」
「実は、この間じゃがいもの収穫中に突然光りだしてこの姿に。それで、カズマさんが今日、ポケモン達の様子を見て回ってると聞いて探してたんです。そしたら急にこの子が走り出して」
やっぱりか。
そういえば、進化についての説明はあんまりしてなかったな。
―――俺は奥さんにポケモンの進化について簡単に説明する。
「じゃあ、特に病気とかではないんですね?」
「はい。寧ろ成長に近いものです。……心配なのは進化して体が大きくなって不都合なこととかは?」
「いえ、寧ろこの姿になってから収穫も前よりも捗って助かっています。あぁ、そうだ! これを」
「ん?」
奥さんは持っていた大きな紙袋を俺に差し出す。中を見ると、そこには結構な数のじゃがいもが入っていた。
「じゃがいも?」
「えぇ、この子が眠らせてくれたお陰で楽に収穫ができたのでお裾分けをと」
あぁ、そういえばこの世界じゃがいもも動き回るんだっけ……。サンマも畑から生えてたし、この世界の生態系ってホントにどうなってんだ……ポケモンのことも簡単に受け入れられるわけだ。
しかし、眠らせてってことはコロボーシの【うたう】か。確かに、それなら収穫は楽だろう。
「しっかりやってるようで安心したよ」
「コロロ〜♪」
コロボーシの頭を撫でて、奥さんからじゃがいもを受け取る。なんか、受け取らないのも悪い気がしたので。
「それじゃあ遠慮なく」
見たところ健康状態も問題なさそうだし、コロボーシの健康診断はこんなものでいいか。
その後、なにか困ったことがあったらギルドを通して俺に連絡して欲しいと伝えて旦那さんにもよろしく言っといて欲しいと伝えてその場で別れた。
「皆、それぞれの役割を全うしているんですね」
「あぁ、安心したよ」
めぐみんがふとこぼした言葉に心から同意する。
―――こういうことをしていると本当にヒスイ地方でのことを思い出す。
建築舞台の隊長のサザンカさんのもとへ行ったいたずらピッパ達や医療隊のキネさんのもとで薬の開発を手伝うことになったグレッグル、方向音痴の製造隊のカエさんの元へ行ったノズパス。
こうして人とポケモンが共存して生きられる手伝いをしていられると思うと、本当に誇らしく感じる。
なんて、昔のことを思い出しているうちに最後の目的地に到着した。
「ウィズさん、少しいいです……か……。」
ウィズ魔導具店の戸を開いて中に入った俺は絶句し、じゃがいもの入った袋を落としてしまう。
「カズマさん、どうし……たんです、か……。」
続いて店に入ったゆんゆんも店の光景に絶句した。
俺が落とした袋がドサリと倒れ、中に入っていたじゃがいもの一つがコロコロと俺達が言葉を失っている原因へと転がっていく。転がっていったじゃがいもの先にあったのは、うつ伏せに倒れたウィズさんと近くで心配そうにその姿を見ている彼女のパートナーであるムウマとヒトモシだった。
「「うぃ、ウィズさーん!!」」」
慌てて店の中に突入する俺とゆんゆんに続いてめぐみん達も店に入ってきた。
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「ご心配をおかけしました」
「本当にびっくりしましたよ……。」
「とうとう街のプリーストに正体がバレて闇討ちされたかと思いましたよ」
店の奥にあるキッチンで俺が渡した【オレンのみ】を片手に頭を下げるウィズさん。そう、ウィズさんが倒れていた原因は空腹……。なんでも、ここ三日何も食ってないらしい。
「でも、なんで……。」
「それが最近、店の売れ行きが芳しく無くて、残った食料もこの子達に与えてしまったので」
「ムゥ!」
「モッシ!」
いい人すぎるだろう、このリッチー。だが、同時に呆れてしまう。
「そういうことならうちに頼ってくださいよ。こっちはムウマとヒトモシの面倒を頼んでる側なんだ、それくらい要求してくれて全然構わないんですから」
「ですが……カズマさんたちには墓地の浄化もお願いしているのに……。」
「でももなにもないんです! 貴女になにかあったら、ムウマやヒトモシがどれだけ悲しむか」
「……はい、すみませんでした」
「ムゥムゥ!」
「痛っ! 痛いってムウ―――熱っ!」
「モ〜シ〜!」
「ヒトモシやめろ! 服燃える! 服燃えるって!」
ウィズさんを叱っている姿に俺がウィズさんをいじめているように見えたのかムウマが髪を引っ張り、ヒトモシが足元から頭の炎を服に引火させようとしていた。
「二人共余程ウィズを慕ってるんですね」
「そうだね。だから、カズマくんの言う通りウィズさんになにかあったらホントに悲しむよ」
「あぁ、私のメタングもなんだかんだ私のことを心配してくれてるしな」
「ダクネスの場合は心配かけ過ぎなんですよ」
「あの、そろそろカズマさんを助けないと火達磨になっちゃいますよ?」
「あっ、そうでした。ヌメラ【みずでっぽう】、お店の中なので弱めで」
「メラッ! メラーっ!」
めぐみんが帽子の中にいたヌメラに【みずでっぽう】を命じてくれたお陰でズボンが少し焦げた程度で済んだ。あ〜あ、このズボン気に入ってたのに。
ムウマとヒトモシはウィズさんを守るように俺とウィズさんの間に割って入っている。まいったな、これは嫌われちゃったか?
「ウィズさん、キッチン借りていいですか。流石にきのみだけじゃまだ足りないでしょう」
「さ、流石にそこまでは……!」
「いいって。ちょうど材料もあるし」
遠慮しようとしているウィズさんだが、俺は立てかけてある紙袋に入っているじゃがいもを持ち上げてみせる。これがあれば懐かしいものを作れそうだし。
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「さて、調味料はあるな」
「ねぇ、カズマくん。何を作るの?」
「ヒスイ名物、イモモチだよ」
「「「「「イモモチ?」」」」」
聞いたことのない名前に小首をかしげる五人。いいって言ったのに、皆手伝うと行ってキッチンについてきた。
ムベさんや弟子のセキさんほど上手く作れる自信はないが、これでも料理にはそれなりの自身がある。
「まずはじゃがいもと片栗粉を用意する」
「ふんふん」
「ここは好みの問題だがチーズなんかを用意すると隠し味になるかもな。ただ、今はないから省略しよう」
まず、じゃがいもを洗い、芽が出ていないことをよく確認する。ある場合は包丁やピーラーで取り除く。三個ほどのじゃがいもをそれぞれで水洗いしながら芽が出ていないかを確認すると今度はシチューなどを作る用の少し大きめの鍋を取り出す。
「ヌメラ、【みずでっぽう】頼めるか」
「メラッ!」
鍋にヌメラの【みずでっぽう】で水をなみなみと入れていく。水の次は火の準備だな。
「ウィズさん」
「はい、ヒトモシ。竈に【ひのこ】を」
「モシッ!」
ウィズさんに頼まれてヒトモシが竈に炎を灯す。その竈の上に鍋を置き、鍋、芋、水、火と水から茹でる。または蒸す。
「この火力なら多分三十分くらいで茹で上がるだろう。その間に、タレの方を作ってしまおう」
タレの材料は醤油、砂糖、味醂(ない場合は酒)、水、片栗粉を適当に混ぜて火にかけるとみたらし団子風の甘辛いタレが仕上がる。
鍋の中から甘いい匂いがキッチンに広がるのに女子たちは目ざとく反応する。
「ちょっと味見を」
「あっ、それあたしにさせて」
「いいよ」
真っ先に味見係に名乗り出たクリスに味見用のスプーンを渡す。クリスは鍋から少しだけタレをすくうとワクワクしたように口に運んだ。
「んー! 美味しい!」
「そんなにですか? カズマ、私にも……。」
「はいはい、なくなると困るから少しずつだぞ」
めぐみんを始め、クリスの様子に皆物欲しそうな目をしてきたので少しずつ味見させるが、この様子ならタレの方はこんなものでいいか。
―――さらに、十分後。
「さて、芋も茹で上がった頃だな」
ホクホクと煙を上げるじゃがいもを鍋から出し、竹串で中まで火が通っていることを確認する。そして、やけどしないように注意してでも冷めないように素早く皮を剥いていく。ここは危険なので俺とそういったものに耐性のあるダクネスにやってもらう。
「んじゃ、ダクネスもう一仕事頼む」
「カズマ、こういう仕事は男がやるものでは……。」
「だってお前のほうが力強いじゃん」
「それはそうだが、私だって偶には女として扱って欲しいんだが……。」
ぶつぶつと文句を言いながらも俺の指示を聞いてくれるダクネス。ここは速さが大切だからな。
ボウルに皮を剥いたじゃがいもを入れて滑らかになるまで、熱いうちにすり潰す。潰し終わったら冷める前に片栗粉を入れて、モチモチになるまでさらにかき混ぜる。これも冷めないうちにやるのがポイントだ。
「ふぅ、こんなものでいいのか?」
「オッケー、お疲れ様ダクネス」
「いや、最初はどうかと思ったが……このいい感じの腕の痛みがまた……。」
「はい、次行くぞ、次っ!」
もういい、もう流石にいいッ! ダクネスの性癖にこんなところでまで付き合いきれん!
じゃがいもと片栗粉を混ぜたものを時分のお好みのサイズに丸める。チーズなんかを入れるときはこのタイミングなんだが、ないので省略、省略。
ヒトモシやムウマも小さい手でコロコロと小さいサイズを丸めている。ニンフィアは……なっ! 触覚を使って丸めているだとっ!? そんな器用なことができたのか。
ニンフィアが触覚を使って器用に丸める姿に度肝を抜かれたが、一つ咳払いして調理に戻る。
「コホン! ここで、一つ豆知識。作りすぎたものは冷凍して保存しておけば好きなときに焼いて食える。鍋やスープにいれてぷるもちで食べてもいいな」
食べきれなさそうな量の丸めたじゃがいもを冷蔵庫に保存する。
さて、と。あとはフライパンにバターを入れて焼くだけだな。
「…………。」
「どうした、めぐみん?」
切ったバターをフライパンに乗せて、熱して溶かし全体に広がるようにしているとめぐみんが俺の手元を見ていることに気付いた。
「前々から思ってたんですけど、カズマって料理の時の手際ホントにいいですよね……。」
「そういえば……。」
「あれ、言ったことなかったっけ? 俺、一時レストランでシェフの見習いみたいなことしてたんだよ」
「えっ、そうなの?」
「初耳だな」
俺の言葉に意外そうな顔をする面々。そうか、話してなかったか。
―――あれは確か、カロス地方を旅してたときのことだったかな。いまいち、旅の目的を見つけられなかったときに、たまたまカロス地方の四天王の一人、ズミさんがジムリーダー達を集めて行う食事会に誘われてひょんなことからアシスタントを頼まれたのがきっかけだったかな。
次にどこを旅をするのか決めるまで、そのままズミさんが経営するレストランで見習いとして雇ってもらって、まぁ、料理の腕はそれなりに自信があったからズミさんからの評価は結構高かった。
「つっても、三ヶ月くらいで次に旅する場所が決まってやめさせてもらったんだけどな。」
「どうりで、作る料理がいちいち凝ってるなと思ったんだ」
「もったいないと思わなかったんですか?」
「いや、働かせてもらっておいてなんだけど、なんか違うなーとは思ってたんだよ。やっぱり俺はポケモンともっと積極的に関わっていくのが性にあってるってズミさん―――オーナーにも言われたよ。ただ、やっぱポケモンにはうまいもん食わせてやりたいから旅の合間に料理の勉強はしてたんだよ」
「確かに、カズマはそっちのほうがらしいように思いますね」
さて、昔語りをしているうちにイモモチの両面が綺麗なキツネ色に焼ける。
「よし、最初の分が焼き上がったな。ウィズさん、皿をもらえますか?」
「はい、どうぞ」
ウィズさんから皿を受け取り、ヘラを使って皿に焼き上がったイモモチを盛り付けていく。最後にさっき作った甘辛タレをかけてっと。
「よし、出来た。ヒスイ名物、イモモチ完成だ」
甘辛タレをかけると、香ばしく焼かれたイモモチの湯気にのってタレの匂いが厨房に広がっていく。俺にとってはとても思い入れのある、懐かしい香りだ。
「いい匂いですね」
「そうだな」
「よし、そんじゃ早速。ウィズさん試食お願いします」
「では……。」
ウィズさんは俺から皿を受け取り、フォークを持つとイモモチをフォークで小さく切ってそれを口に運ぶ。口元を手で隠しながら食べる姿に、料理人として僅かな緊張が走る。
「っ! 美味しいですっ!」
「良かったぁ〜! こっちの人の口に合わなかったらどうしようかと思ったよ」
ホッと一息つき、残りのイモモチもどんどん焼いてテーブルに持っていってもらう。
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「ふ〜、美味しかったです」
「……結構いきましたね」
「カズマくん、女の人に食事の量を指摘するのはやめたほうがいいよ」
「いや、流石に分かってるけどさ……。」
結構あった量のイモモチは俺とクリス達とウィズさん、あとはパートナー達と美味しく頂いたんだが、ウィズさんが一番食ってたな……。
あの細い体の一体どこに……リッチー、いや、女の人の体って不思議だ。
「ありがとうございます、カズマさん。これで、保存した分もあわせて一ヶ月はもちそうです」
「いや、絶対一週間持たないでしょ!?」
あれだけで一ヶ月過ごせたら倹約の名人名乗れるよ!
「やっぱり、根本的な解決になってないんじゃないですかね?」
「店の売れ行き、か……。」
「……それなんですよね」
俺の指摘に縮こまるウィズさん。
「というか、なんで売上が悪いんですかこの店?」
「それが……私にもわからないんです。商品は決して悪くはないと思うんですが」
ふ〜む、店主ですらわからないなら手の施しようが、ん? ふと視線をクリスにずらすとちょちょいと指を向けてくる。
なんだと、思って顔を近づけると小声で店の売れ行きの実態を話してくれた。
「……ウィズさんっていい人ではあるんだけど、目利きに関しては絶望的でね……毎回毎回ロクに使えないアイテムを仕入れてくるんだよ」
「あ〜……。」
クリスの言葉を聞いて思い出されるのはいつかの爆発するポーションがが並んだ棚。
「前なんて【スティール】が使えるようになる魔導具を仕入れたって言うから気になって聞いてみたら、盗賊職しか装備できないうえに魔力量が爆裂魔法並っていう魔導具だったっていう話もあってね」
「コスパ悪すぎんだろ」
「でしょ〜!」
【スティール】って言ったら盗賊職が全員持ってるマイナー魔法だ。それを使えるようにする魔導具をわざわざ盗賊職に装備させても無駄でしかない。そして、アークウィザードでもないのに爆裂魔法並みの魔力なんて持ってるわけがない。
「他にも最高品質のマナタイトだとか、最高硬質のアダンタイトだとか、駆け出しの街の冒険者が絶対買わないようなものばっかり仕入れてくるもんだからついたあだ名が【貧乏店主】さんってわけ」
「そりゃ、赤字になるわな」
もう納得しかない……。
考えてみたらメガストーンだって、俺からしたらお宝だが他の人から見たらちょっと変わったガラス玉にしか見えないだろうに。
「となると、純粋に使えるアイテムを売るしかないか」
「当てがあるのか?」
「こういうときこそ、困ったときのポケモン頼みさ」
俺はスマホのバッグ画面からシンオウで買いだめしておいたあるものを取り出す。
それをゴトンと食器が片付いたテーブルの上に置く。
「なんですか、この黄色い液体?」
「もしかして、これハチミツですか?」
「そう、シンオウ地方、名物【あまいミツ】だ」
「そのまんまですね……。」
ヒスイ地方では【キラキラみつ】って呼ばれていたが、まぁ、俺はシンオウ出身だしこっちのほうが馴染み深い。
「味の由来は舐めてみればわかる」
「舐めればって、甘いんでしょ?」
「いいから、いいから!」
俺の言葉に半信半疑の様子の皆だが、ウィズさんが持ってきた小さいスプーンで少しずつすくって口に含むと。
「「「「「甘いっ!」」」」」
「そう、そうなるんだよ」
同時に叫ぶ五人の様子に俺も初めて食べたときはああなったと懐かしみながらうんうんと頷く。
「なにこれ、ちょっとしか舐めてないのに口に甘さが残る」
「しかも、しつこいようでなくさっぱりとした甘みだ」
「君達、評論家?」
妙に饒舌に味を解説するクリスとダクネスの様子にどっかで見た光景だなーと思い浮かぶ。あっ、農作隊のユノスケさんか。
「なんなんですか、このハチミツ」
「このハチミツはミツハニーっていうポケモンが集めてくれるんだ。群れや場所によって味は異なるが、良質な蜜になることだけは間違いないと言われている」
「なるほど、確かにこれは売れるな」
「でもこれだけじゃ……。」
「あとはグレッグルってポケモンの毒から作られる塗り薬なんてのもあるな」
「毒っ!? 大丈夫なんですか、その薬?」
「カズマ、試作品はぜひ私に」
「今大事な話してるから黙っててくれ。問題ないぜ、作り方は教わってるし。実際、俺も肩に塗ってもらったけど凄い効いたし」
塗ったばっかのときはちょっとピリピリするけど、次の日嘘のように肩が軽くなったし。
「ほらよく言うだろ? 毒と薬は紙一重って」
「確かに聞いたことがあるような……。」
あとはミルタンクのモーモーミルクとか、エンニュートの毒ガスを薄めて作る香水とか、あとはケロマツのケロムースを利用して作る石鹸とかを説明していく。
「結構あるんだな」
「それで大量生産できそうなのは?」
「グレッグルとミツハニーと、エンニュートはなんとかなるかな」
グレッグルとミツハニーは群れがいるし、エンニュートは毒ガスを薄めるからそれほど量はいらないかな。
ミルタンクとケロマツはやっぱり専用の施設がないと無理かなぁ……。
「あとはきのみとかで作る【どくけし】とかかな……。」
「えっ? きのみってそんなものまで作れるの?」
「ポケモンならそのまま食べれば大丈夫だけど、材料次第で人間用にもできるって、ヒスイ地方で習ったんだよ。あそこは生傷が絶えない場所だったからな」
野生のポケモン達は容赦なく攻撃してくるし、道はロクに整備されてないから危ないし、キング達はえげつない攻撃をこれでもかっていうくらい撃ってくるし。
それでも、まぁ。決して辛いことばかりじゃなかったことってだけは、はっきり言えるかな……。
「カズマくん?」
「どうした、クリス?」
「気付いてないのか?」
「カズマさん……泣いてますよ」
「えっ……?」
ゆんゆんに言われて目元に手を当てると、確かに水滴がついていた。まずいな……ヒスイ地方を思い出すことばかりで、懐かしさに涙腺がもろくなったらしい。
「悪い……昔のことを思い出しちまったんだ」
「ヒスイって場所のことですか?」
「よければ、どんな場所だったか聞いても?」
俺は話の流れで嫌とは言えず、ヒスイ地方での話を簡単にした。
―――ヒスイ地方でポケモンの調査をする組織、ギンガ団。
―――時を司るシンオウ様を祀るコンゴウ団と空間を司るシンオウ様を祀るシンジュ団。
―――各エリアに存在するシンオウ様の血を引く十体のキングと呼ばれしポケモンたち。
―――その地で出会った個性豊かな人達。
「彼処は今まで旅したところとは違ってポケモンの知識がそれほどない場所だったから、それについて調べる日々はある意味で新鮮だったよ。少しずつだけど、危険視されていたポケモンが生活の中に溶け込んでいく姿は見ていて幸せだったしな」
「まるで今のアクセルのようだな」
「もしかして、カズマさんの活動ってギンガ団の活動なんですか?」
「いや、彼処はヒスイ地方での移住のためにポケモンの知識が必要だったから、そのために結成された組織だ。やってることも、内容も俺とはぜんぜん違うよ。それに俺はもう、ギンガ団のメンバーじゃないし」
ウィズさんの疑問にはNOと答えざるをえない。
ギンガ団はヒスイに移住する人々がその地に住む危険な生物であるポケモンについての対策などの詳しい知識を得るために結成された組織だ。
元々、人に懐いているポケモン達を信頼できる人に渡し、ポケモンと人間の共存によってより良い世界にするという俺の目的とは根本的なところが違う。
「ねぇ、コンゴウ団とシンジュ団が崇める神様って時間と空間を司るって言ってたよね?」
「時間と空間……何処かで聞いた話ですね」
「あっ、ディアルガとパルキアじゃないですか!」
「そのとおりだ、ゆんゆん」
「ディアルガとパルキア?」
ウィズさんはディアルガとパルキアのことを知るはずもないので簡単に説明して話を続ける。
「ただ、あそこはシンオウ様が一体だと思っていたようでお互いこちらが本物で向こうが偽物っていう考えに縛られてたんだ」
「宗教観の違いってやつですか」
「そのわだかまりもギンガ団を中心に協力することで少しずつ変わっていったけどな……。」
―――思い出すのは二体のシンオウ様を鎮めデンボク団長の計らいで開かれた三つの団を巻き込んでのコトブキ村での宴。あのときの光景を俺は決して忘れないだろう。いや、忘れてはならないんだ。
―――もう二度と見れない景色だからこそ。
「ディアルガとパルキアを神と崇める人達がいる地ですか、龍使いとしては是非とも一度行ってみたいですね」
「―――行けないよ、もう彼処には」
「え?」
俺の言葉にめぐみんを含め皆が俺に視線を向ける、同時に皆が俺の表情を見て驚いたような顔をしていた。
多分、今の俺は今まで皆が見たことのない顔をしてるんだろうな。
「俺は自分の意志でヒスイ地方に向かったわけじゃないんだ。ポケモンの力で移動させられたんだよ」
「それって、ランダムテレポートみたいなものですか?」
ランダムテレポート。転移魔法【テレポート】の亜種で、本来は登録先が決まっている場所にしか転移できない魔法である【テレポート】だが、場所を指定しないことで使用者でも転移する場所がわからないというものだ。
俺の場合は
「まぁ、似たようなもんさ。だから、あそこが何処なのか正確な位置はわからない、だから二度と―――あの場所にはいけない。―――当然、彼処で出会った人達にも会えない」
「そんな……。」
「でも、それじゃあどうやってカズマはアクセルまで来たのですか?」
「それは―――」
―――ズキッ!
めぐみんの質問に答えようとした時、頭に鈍い痛みが走り咄嗟に額を押さえて瞼を閉じる。すると、ザザッと壊れたテレビに映る砂嵐のような光景が脳裏に映る。
次第にそれは鮮明さを増していき、砂嵐の中にある本来の光景を映し出してきた。
―――真っ赤に燃えるなにかが空から落ちてくる光景。大地に向かってくるそれの前に立ちふさがる二体のオリジンフォルムのシンオウ様達。
なんだ、この光景……こんなものは知らないぞ。ゲームでもこの世界に転生してから得た記憶にもこんな光景はなかったはずだ。
「カズマくんっ、カズマくんっ!」
「ハァ……ハァ……クリス?」
「どうしたんだ、カズマ。すごい汗だぞ」
クリスの呼びかけで目を開けると、クリスが心配そうに俺の顔を覗き込んでいた。ダクネスに指摘されて額に触れると、もうすぐ冬も本格的に始まる季節だとは思えないほどの汗が流れていた。
ウィズさん達を見ると、皆一様に俺の様子を心配そうに見ていた。
「フィア〜?」
「メラ?」
ニンフィアとメラルバも心配そうに俺を見つめている。俺は皆にこれ以上心配をかけないように、荒くなっていた呼吸をなんとか整えて平静を装う。
「―――悪い、皆。なんでもないんだ」
「いや、なにもないわけが―――」
「―――本当に、なんでもないんだ」
席を立って、キッチンの戸口を開く。
「少し、風に当たってくる」
「カズマ!」
ギィとキッチンの戸を開いて外に出ようとすると、背後からガタリと席から立つ音とともにめぐみんが俺を呼び止めた。
「………。」
「今は詳しくは聞きません。でも、もしも本当に辛くなったら話してください。―――話して楽になることもきっとあると思うので」
「―――助かる」
気を利かせて深くは聞かないでくれためぐみんの言葉に感謝すると、そのままキッチンをあとにした。
シリアスをねじ込みました。
因みにヒントはトバリシティ。
デストロイヤー戦はZワザを披露したいのですがどのZ技がいいでしょうか?
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