このすば〜もしもカズマがポケモン大好き野郎だったら〜 作:クロウド、
感想、評価、お待ちしています。
「冒険者ギルド、ここだな……。」
「イブイッ!」
俺とイーブイは通行人に道を聞き、この街で一番大きな建物。『冒険者ギルド』へとやってきた。俺はポケモンが大好きだが、何もポケモンだけしかゲームをやってなかったわけではない。RPGもそれなりにやったのでこういうのの定番は冒険者ギルドに来るのが基本だと知っていた。
異世界のハロワみたいな場所だからな、ここは。
通行人は俺の奇妙な格好より、俺の肩にいるイーブイの方に興味津々だった。ときたま、撫でさせてくれっていう子供もいたし。
取り敢えず、中に入ってみようと扉を開けると。
「あ、いらっしゃいませー。お仕事案内なら奥のカウンターへ、お食事なら開いてるお席へどうぞー!」
短髪赤髪のウェイトレスのお姉さんが愛想よく出迎えてくれた。
もっと、荒くれ者共がいるような場所だと勝手に想像していたがそこは少し薄暗いだけで、それほどガラの悪い連中がいるようには見えなかった。
そして、その視線は新参者である俺。もっと言えば、俺の肩に乗ってるイーブイを注目している。
「ブイ〜?」
自分が見られていることに気づいていないのか小首をかしげるイーブイ。そんな可愛い仕草に人差し指で首元を撫でてやる。
俺は取り敢えず、ウェイトレスのお姉さんに言われたとおりカウンターに並ぼうとした。カウンターは4つありそのうちの一つがやけに混んでいたので別のところにしようと思ったのだが、
「ブイッ!」
「あっ、イーブイっ」
俺の肩から床に飛び出し、人が並んでるところカウンターの前に並ぶようにする。
「ここに並べってことか?」
「イブイッ!」
なんだか、犬に案内される花咲かじいさんになった気分だな。まぁ、パートナーのアドバイスだし聞いておいて損はないだろう。
「はい、今日はどうされましたか?」
やがて、俺の番が回ってきたので床を歩いていたイーブイを抱き上げる。
受付の女性はおっとりした感じの美人だった。
「冒険者になりに来たのですが、何分田舎から出てきたばかりで勝手がわからずここに来まして……。」
「そうですか。えっと、では登録手数料がかかりますが大丈夫ですか?」
「…………登録手数料?」
「はい」
………どうしよう、この世界に来たばかりの俺に金なんてあるわけがない。それでも一応財布の中身を確認する……駄目だやはり日本円しか入っていない。
「ブイ〜?」
俺の腕の中でイーブイが脂汗を流す俺を見て心配そうな顔で見上げる。
「ねぇねぇ、ルナ。どうかした?」
「あっ、クリスさん」
そこへ、一人のボーイッシュな姿の銀色短髪の少女が俺と受付嬢の前に現れた。クリスと呼ばれた少女は俺の格好を見ると、ふ〜んと声を漏らすと。
「なるほど、ズバリ遠くから冒険者になりに来たけど。お金がなくて困ってるってところかな?」
「す、鋭いっ!?」
「最近、君みたいに変わった服装の子が多く現れてね。いつも同じように躓くんだよ」
多分、俺より前に転生した日本人のことを言っているのだろう。
「ルナ、彼の登録料は私が払うよ」
「え?」
「お、おい、いいのか?」
「いいって、いいって、困ったときはお互い様。まっ、その代わりといってはなんだけど……」
クリスの視線は俺の手の中で抱かれているイーブイに映る。
「その子、君の使い魔だよね?撫でさせてくれないかな?」
「どうする、イーブイ?」
「イブイッ」
「いいってさ」
「やった!わぁ、モフモフ!」
クリスは嬉しそうにイーブイの頭を撫でる。その顔はすごく幸せそうだった、まぁ気持ちはすっごくわかるけど。
「ふぅ、満足満足。はい、コレ約束のお金」
イーブイを撫で終えたクリスはポケットから取り出した硬貨を俺に渡す。
「君とはまた会う気がするな、私は『盗賊』のクリスだよ。よろしくね」
「俺はサトウカズマ。カズマって呼んでくれ、でこっちはパートナーのイーブイ」
「イブイッ!」
「私は用事があるから、それじゃあねカズマ。イーブイちゃん」
そう言ってクリスは走り去っていった。変わった女の子だったな。
「すいません、手数料できました」
「はい、確かに」
俺はクリスから受け取ったお金をそのままカウンターに置く。受付嬢のお姉さんはそれを受け取ると説明を始めた。
「では。冒険者になりたいとおっしゃるのですから、ある程度理解されているとは思いますが、改めて簡単な説明を。……まず、冒険者とは町の外に生息するモンスター……。人に害を与えるものの討伐を請け負う人のことです。とはいえ、基本はなんでも屋みたいなものです。……冒険者とはそれらの仕事を生業とにしている人たちの総称。そして、冒険者には各職業というものがございます」
職業、ジョブとかクラスのことか。戦士とか、弓兵とか、そういやクリスは盗賊って言ってたな。
そんな事を考えていると受付のお姉さんは免許証くらいのサイズのカードを俺の前に出す。
「こちらに、レベルという項目がありますね?御存知の通り、この世のあらゆるモノは、魂を体のうちに秘めています。どのような存在も、生き物を食べたり、もしくは殺したり。他の生命活動に止めを指すことで、その存在の魂の記憶の一部を吸収できます。通称、経験値、と呼ばれるものですね。それらは普通で見ることはできません。しかし……」
お姉さんが、カードの一部を指差した。
「このカードを持っていると、冒険者が吸収した経験値が表示されます。それに応じて、レベルというものが同じく表示されます。これが冒険者の強さの目安になり、どれだけの討伐を行ったかもここに記録されます。経験値をためていくと、あらゆるモノはある日、突然急に成長します。俗に、レベルアップだの壁を超えるだのと呼ばれていますが……。まぁ要約すると、このレベルが上がると新スキルを覚えるためのポイントなど、様々な特典が与えられるので、是非頑張ってレベル上げをしてくださいね」
ここまでの説明を聞く限りまるで、ポケモンのレベルアップまんまだな。
「まずはこちらの書類に身長、年齢、身体的特徴の記入をお願いします」
そう言われて差し出された書類の項目に記入していく。
身長172cm、体重58キロ、年は17で、茶髪に茶色目っと……。
「はい、結構です。ではこちらのカードに触れてください。それであなた方のステータスがわかりますので、その数値に応じてなりたい職業を選んでくださいね。経験を積むことにより、選んだ職業によって様々な専用スキルを習得できるようになりますので、そのあたりも踏まえて職業を選んでください。」
そう言われて、俺は冒険者カードに触れる。まぁ、平和な日本でくらしてた俺がチートステータスなんていうご都合展開あるわけないので期待薄でカードに触れる。
「……はい、ありがとうございます。サトウカズマさん、ですね。ええっと、筋力、生命力、器用度、敏捷性が結構高いですね。魔力は普通……あとは知力と幸運が非常に高いですね。コレなら上級職以外なら大抵の職業を選べますよ」
おおっ、思ってたより俺のステータスは高かったらしい。毎日、GOのために遠くまで足を運んでたのが幸いしたのか?
「あれ?」
「どうかしましたか?」
職業の選択欄を見ていたお姉さんが声を漏らしたので聞いてみると。
「見たことのない職業がありますね、『トレーナー』?」
「ッ!すいません、それでお願いします」
「え?」
「ブイ?」
トレーナーという職業に食いついた俺にお姉さんもイーブイも目を丸くする。
「あっ、すいません。俺の地元じゃありふれた職なので。それに俺もそれになりたかったんです」
「そうですか、では職業は『トレーナー』ということで。早速クエストを受けられるのならあちらのクエストボードにあるものを選んでください」
そういって指さされた方向にはいくつかの張り紙のある大きなボードがあった。さて、早速今後の生活費を稼ぐのに良さそうなものを選ばなければ。
「あっ、すいません……」
俺がクエストボードに行こうとしたらお姉さんに呼び止められた、
「まだ、なにか?」
「よければ、私にもその子を撫でさせてくれませんか?」
「ブイ〜?」
「ーーー罪なやつだな、お前は」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ーーージャイアントトード。
牛を超える体躯を持つカエルのモンスター。その危険さは中々のもので繁殖の時期になると、産卵のために力をつけるため、餌の多い人里にまで現れ、農家の買っているヤギを丸呑みにするらしい。しかも人を喰ったという報告も上がっており結構危険なモンスターだ。
俺の今回の依頼は町の外にいるジャイアントトードを五匹の討伐だった。
そして、俺の視界には七、八体ののんびりした顔つきの巨大ガエルがいる。
「さて、やるか」
「イブイッ!」
俺の言葉に自分の出番と思ったのか肩に乗っていたイーブイが前に出る。だが、
「あぁ……イーブイ、悪いんだけど今日は下がって欲しいんだ」
「ブイッ!?」
やる気満々のイーブイにそう告げると、イーブイは驚愕の目で俺を見る。そんなイーブイには申し訳ないがジャイアントトードはヤギは愚か人すら丸呑みするような危険なモンスターだ。そんなのを相手にイーブイを前に出せるか。
「それに、さっき呼び出したこいつの力も見たいしな」
「ブイ〜」
俺がここに来る途中預かりシステムから呼び出したポケモンの入っているボールを取り出すとイーブイはむくれて頬をふくらませる。
「ごめんて、ほらこれあげるから」
「ブイッ!?」
イーブイは俺の手にある青い木の実を見ると目を輝かせて飛びついてくる。まったく、現金なやつだなぁ。俺がイーブイに渡したのはポケモンの世界の木の実『オレンのみ』だ。ポケモン用のお菓子の材料として、体力回復として役立つ万能木の実。
なぜか、ポケモンの預かりシステムに十個ほど入っていたので一つ取り出しておいた。自家製キットもあったので今度育ててみようと思う。
俺の肩に戻ってきたイーブイは受けとったオレンのみをパクパクと食べ始める。
ーーーうん、実に愛らしい。スマホのカメラ機能は生きていたので、一枚パシャリと。
「さて、そろそろ行くか!」
俺はモンスターボールを構え空に向かって投げ上げる。
「出てこい、ギルガルドッ!」
「ギルッ!」
モンスターボールから現れたのは一本の剣から二本の腕が生えたようなポケモン、二本の手を交差させて丸い盾を構えている。その体はふわふわと宙に浮いている。
おうけんポケモン、ギルガルド。ゴースト、鋼タイプのポケモンで王の素質を見極める力を持ち、認められた人間はやがて王になると言われたポケモンだ。
俺のお気に入りの一体でヒトツキから育てて、ニダンギル、そしてギルガルドと進化させ、共にカロスリーグに挑んだポケモンだ。
俺は恐る恐る、ギルガルドに近づき、
「ギルガルド、俺のことわかるか……?」
「ギル?」
ギルガルドはその一つ目で俺を見つめると、俺の周りを浮かびながらくるくると回って観察している。
そして、
「ギル♪」
はずんだ鳴き声を出すと、俺にすり寄ってきた。
「ギルガルドッ……お前」
どうやら、彼は俺のことを自身のトレーナーとして覚えてくれているらしい。それが嬉しくて、俺もギルガルドの体に触れる。素人目から見ても凄まじい切れ味を誇りそうな剣の体。やっぱりカッコいいなギルガルド。
「ギルガルド、一緒にあのカエルを倒してほしいんだ」
「ギルッ!」
任せてくれと言わんばかりに鳴くとギルガルドは視線をジャイアントトードに向ける。
「行くぜ、ギルガルド。『せいなるつるぎ』だッ!」
「ギルッ!」
ギルガルドは両手で持っていた盾を片手に持ち替え、特性『バトルスイッチ』によって防御態勢の『シールドフォルム』から攻撃態勢の『ブレードフォルム』へとフォルムチェンジする。そして、自身の本体である剣に光が灯る。
ーーーそして、一閃。
「す、すご……。」
そんな陳腐な言葉しか思いつかないほどに美しい剣閃。文字通り一瞬の間にジャイアントトードは真っ二つに斬り裂かれた。
想像以上の力、いや、ある意味想像通りの力。だからこそ、俺はこのポケモンを選んだ。数々の難敵をゲームの中とはいえ、共に倒してきたコイツだからこそ選んだ。
そんな事を考えていると、他のジャイアントトードが舌を鞭のようにしならせてギルガルドを攻撃してくる。
「ッ!ギルガルド、『キングシールド』!」
「ギルッ!」
ギルガルドは俺の指示に素早く反応すると、再び盾を両手持ちに変えて『シールドフォルム』担って盾を構える。そして、ジャイアントトードの舌はギルガルドに届く前に不可視の盾に阻まれる。ギルガルドの固有技、『キングシールド』。あらゆる攻撃をはねのけ霊力のバリアで敵を弱めるギルガルド最強の盾だ。
俺は畳み掛けるように指示を飛ばす。
「ギルガルド、『れんぞくぎり』!」
「ギルッ」
三度、『バトルスイッチ』が発動し『ブレードフォルム』にフォルムチェンジすると周りのジャイアントトードを連続で斬りつけ、あっという間に全滅してみせた。
「よっしゃぁ、ギルガルド!さっすがだぜ!」
「ギル♪」
「イブイッ!」
俺はギルガルドの刃先に当たらないようにギルガルドに抱きつくと、ギルガルドも嬉しそうな声を上げてくれた。イーブイもギルガルドの戦いぶりに感嘆の声を上げる。
「それにしても大丈夫か?刃先とか汚れてないか?」
自慢の剣に汚れがついたりしたら大変だからな。案の定、ギルガルドの剣先にはカエルの粘液とか血とか少量ではあるがこびりついていた。これだけですんだのは多分、ギルガルドの剣戟があまりに速かったお陰だろう。
それにしても困ったな。俺、今拭けるような布持ってないからな。
「悪いな、ギルガルド。少しの間だけ我慢しててくれ、このカエル倒した報酬でなんか良さそうな布買うからさ。それまで、モンスターボールに入ってもらっていいか?」
「ギルギル」
ギルガルドは俺の言葉に頷いてくれた。そのままモンスターボールを向けると赤い光が放たれ、それにあたったギルガルドも赤い光となってボールに吸い込まれた。
「帰ろっか、イーブイ」
「ブイブイ!」
肩に乗せたイーブイを撫でながら俺はアクセルの街へとあるき始めた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「ギルガルド、力加減はこんなもんでいいか?」
「ギル」
「そうか、ならよかった」
俺は膝の上に載せたギルガルドの返事を肯定と受け取りそのまま磨き続ける。
俺は今、ギルドの紹介でとある馬小屋の中にいた。今夜はここで寝ることになる。ジャイアントトードの討伐依頼では、宿に泊まる余裕もないのでただで貸し与えられているこの馬小屋で一晩を過ごすことになった。
「ごめんな、二人共。今日はこんなところだけど、明日はちゃんと宿に泊まらせてやるから」
「イブイッ!」
「ギルギル」
俺の言葉に、イーブイとギルガルドは『気にするな』と言わんばかりだ。
静かな馬小屋で俺は無心でギルガルドの刃を磨く。イーブイも眠いのか、薄っすらと開いている目で俺を見ている。そんなときだった、
「……あれ?」
「ギル?」
手元で拭いていたギルガルドの刃に一滴の雫が落ちる。それは、俺の頬を伝ってギルガルドの刃にポタポタと落ちていく。
馬小屋の中にある小さな窓から差し込む月の光がギルガルド剣身が俺の顔を鏡のように写している。
ーーーそれは、俺の涙だった。
「ブイ〜?」
その光景にイーブイも寝ぼけ眼を見開く。
ーーーあぁ、そうか。俺は淋しいんだ。
誰も知る者がいないこの世界で夜を明かすことが……そして怖いんだ。この右も左もわからない世界で俺は生き抜いていけるか。今朝はイーブイやギルガルドと出会えた興奮のお陰でそんなことはなかったがいかんせん、夜というのは人をセンチメンタルにするらしい。
「ブイッ」
「イーブイ?」
そんな不安にかられている俺の肩にイーブイが乗って俺の涙を舐め取る。そして、ギルガルドも俺の膝の上からのいて俺の前でじっと俺を見つめている。二人共まるで、『自分たちがいると』俺に言ってくれてるようだった。
俺は二人を抱き寄せる。
「ありがとう、ありがとうな……。」
そうだ、俺にはコイツラが。いや、こいつらだけじゃない、もっと多くの仲間がいるんだ。だから俺は決して一人なんかじゃないんだ。
ーーーその日、俺と彼らは確かな家族になった。
「へぇ、あれがあの子のポケモンかぁ……。」
カズマがギルガルドに指示を出して戦っていたとき、街の防壁の上から『千里眼』というスキルで彼の様子を見ていた少女がいた。
「元がゲームの存在とはいえ、使う人によっては魂が宿る。あのなつき具合を見るからに、それだけ愛情と情熱を持って育てたってことか。……それにしてもあの子可愛かったなぁ、私もあんなパートナーほしいなぁ」
少女は自分とよく似た毛色の彼のパートナーの顔を思い出す。
「問題はあの子が持ってる伝説級のポケモンかぁ……。でも、アクア先輩の案、意外と悪くないかもしれないなぁ」
「期待していますよ、サトウカズマさん。勇者候補としてだけでなく、この世界に変革をもたらすものとして」
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