名探偵コナン 探偵世界の転生者〈レインカーネイター〉 作:げろっぱ
~~~~~~~~~『Feel Your Heart』 song by VELVET GARDEN~~~~~~~~
今日はOPを歌い上げたぜこの野郎!
VELVET GARDENさんの名前が載ってはいるが、歌ったの俺だからな!?マジだからね!?
蘭さんや、俺の物語的に初登場な鈴木園子の惜しみない拍手が俺の歌唱力を物語ってやがる!!
ヒィィィィィィィィイイイイイイッッハァァァァァァァアアアアアアアアアアアアア!!おっとヤバイ、テンションがおかしくなってたな。
落ち着きがてら、状況が飲み込めない諸君にご説明申し上げよう、ここは米花町某所のカラオケボックス。
俺こと明智朝巳、MyFriend江戸川コナン、我が愛しの従姉毛利蘭、そして蘭さんの親友で、鈴木財閥令嬢、俺とは初対面の鈴木園子嬢の変則フォーマンセルでやってきたのだ。
いや、正確にはそのフォーマンセルに、人気バンド「レックス(たぶん本当はアルファベットなんだろうが、スペル分かんね)」のメンバーを加えて…より正確には彼らの打ち上げに、園子嬢の父親のコネで混ぜてもらったわけで、バンドメンバーの3人とマネージャー1人を合わせた8人編成なわけだ。
そして、折角なので今回のオープニングは俺が歌い上げた。成績97点。ふっ、チョロいぜ。
歌の下手な某名探偵は射殺さんばかりに俺を睨んでいるが、知ったことではない。俺からしたらあの下手さ加減がむしろ謎だ。つーか『江戸川コナン』の中の人の高山さんって歌手だよ?あれだけ下手に歌えるって逆に色々半端じゃないよ?
あと、心なしかバンドメンバーからの視線が強くなったような気が…。
――――――で、俺が説明してる“諸君”って誰よ?
ああ、そうそう、なんかこの間、江戸川たちはまた事件を解決したらしい。
「優勝旗切り裂き事件」とでもいうべきその事件。江戸川に聞いたところ、概要はこうだ。
・伯父さんがよく行く飲み屋の息子が所属する米花高校野球部が、昨年の地区大会優勝校であり、今年の地区大会でも優勝候補No.1でもある進学校の修好高校野球部と試合を行う。だから応援に行こうぜ、ということで、エスケープした俺を除く探偵事務所一行と園子嬢が、試合の行われる修好高校へ。
・(江戸川が行っちゃったもんだから)事件が発生。理事長室に飾られた優勝旗がカッターナイフで切り裂かれる。内部犯行か外部犯行か、名探偵、動く。
・修好高校のエースピッチャーが「自分が犯人だ」と自白。
・暫くして「眠りの小五郎」が登場すると、容疑者の母が「自分が犯人だ」と自白。しかし、容疑者親子は互いが互いを犯人だと思い込み、庇い合っていただけ。
・名探偵により真犯人は校長と判明。進学校が野球の強豪校となるのを嫌った理事長が校長に何とか大会を辞退できるようもっていくように指示し、世間の非難を避けるためにと校長が考えたのは「外部犯による優勝旗の欠損の責任を取る」ということだった。
――――――なんていうか、その、あー―――――くだらねぇ。
いや、俺が理事長になってみれば、もしくは校長になってみれば分かるのかもしれないけど――――――くだらねぇ。
もし俺がその学校の高校球児なら死活問題だろうが…傍から見てみりゃ、なんていうか―――――くだらねぇ。
「名探偵コナン」としてはなんていうか、薄っぺらい動機だな~と。
だってあんた、甲子園ともなればともかく地区大会くらいじゃ辞退したって問題になるほど非難もないだろうとか、進学校に入ったからって二度とこない青春の3年間を勉強尽くしに注ぐよりは余程健全だろうとか、そもそも部活作ったのはアンタだろとか色々言いたいことはあるがとにかく…―――――――くだらねぇ。
―――――――――だがッ!!ここで!!なんと!!かなり!!重要な!!事が!!一つ!!!
「優勝旗切り裂き事件」って色々くだらねぇがしかし!!!俺の記憶が正しければ、これはアニメオリジナルの話!!
驚愕の真実!!俺の転生したこの世界はどちらかと言うとアニメに沿っていたのだ!!
――――ちなみにアニメの第二話ってスゲェよな。
原作では、ジンに殴られた後、包帯巻いてるけどアニメは巻いてねぇもん。
ジンに殴られてコナンになって起きた直後は血垂れてたのに、雨の中包帯なしで走ってんのに血出てないもん。
傷治ってるもん絶対。
……ん?あれ、今にして思えば、俺も幼児化して起きた後、ジンに殴られたところ瘤にすらなってなかった様な…いや多少ズキズキはしたが…あれ、大発見でね?
それはそれとして、今いるこのカラオケだが…なんか引っかかってんだよね―――江戸川が来てるんだから、ココでも事件が起こるだろうし…。
「ザウルス(←違う)」のボーカルの髪型が超野菜人もどきなのも気になるといえば気になるが…。
確かカラオケボックスネタが後の事件と被ってたことは薄らぼんやりと覚えてるが……。
ん~?とか考えながら俺はトイレに向かう。
で帰ってくる。
よし。事件っぽいことは起きてない。
う~ん、今蘭さんと園子嬢が『名探偵コナン』のop1『胸がドキドキ』歌ってるんだけど…。
ビブラートが足りねぇよ、二人とも!!!
あ、歌い終わった。ふっ…72点。江戸川に比べれば素晴らしい結果だが所詮はその程度か…
お?次に流れ出したのが赤鼻のトナカイか。
よし。じゃあここは俺が…
【SIDE:STORYTELLER】
朝巳が立ち上がった瞬間、バンド「レックス」のボーカル、
「いや、ボウズ。これは俺が、マネージャーさんにリクエストした曲だぜ。お前は歌うな」
マネージャーの名前は
「エッ!!?キムタツさん歌うんスか!!?」
「いや歌わねぇよ!!俺がマネージャーにリクエストしたっつってんだろうが!!てか誰がキムタツだ!!どこの『SM△P』だよ!!そんな呼ばれ方したの初めてだわ!!」
「でも駅前とかで肩組んで歌ってるおっさんいましたよ!ってかあんたの芸名明らかに『$MAP』さんのパクリでしょうが!!」
「駅前ってそりゃただの酔っ払いおやじだろうが!!あとパクリじゃねえ本名だ!!――まあ若干肖ろうとした感は否めねえケドさ!!とかやってる間に始まっちまうよ!!マイク寄越せコラ!!」
「ってやっぱり歌うんスね!!ホイ、マイク!!!」
『俺じゃねエエエエエエエエエ!!!
朝巳のボケ全てに律儀にかつハイテンションでツッコむキムタツ。特に最後のシャウトなどはマイクに向かって叫んでいる。
その凄絶な応酬に、残りの6人は目が点になり、完全に置いてけぼりを食らっている。
でその後も『赤鼻のトナカイ』を流し、マネージャーにマイクを渡そうとして取った瞬間
「え!!!?キムタツさん「歌わねぇって言ってんだろうが!!てかお前『赤鼻のトナカイ』かうちのマネージャーに何か恨みでもあんのか!?それとも俺か!!実は俺なのか!!?本当は俺嫌われてる!?だから呼び方直さねえの!!?」
てな事が何回か行われてとうとうキムタツも『赤鼻のトナカイ』を歌わせるのを断念した。
木村達也、通称キムタツ。中々に見込みのある男。
その後暫くカラオケを行っていくなか、木村とは旧知の仲であるカラオケボックスのオーナーである
その時にキムタツが言った
「下手なドラムとも、ガキっぽいギターとも、お高く留まったマネージャーともお別れ」
という言葉が朝巳には字面通りのニュアンスには聞こえなかった。
なにより、その話の後の木村の寂しげな表情が印象に残っていた。
――――因みに今更ではあるが、『レックス』は、ドラムの
そんな感じで暫くしていると、朝巳には全く聞き覚えのない歌の伴奏が流れてきた。
「おっと?俺の曲じゃねぇか。誰がリクエストしたんだ?」
と木村達也は立ち上がると、
「いくぜ!!Bloody Venus!!!」
と上着を派手に打ち振って脱ぎ捨てながら宣言し、自身の代表曲『ブラッディ・ヴィーナス』を、振り付けつきで熱唱した。
曲名に歌詞に振り付けに厨二っぽさ満載の上、木村の上着の脱ぎ方が余りにカッコつけだったため、朝巳は半眼でそれを眺めていた。
だが、『ブラッディ・ヴィーナス』がサビに入った刹那、全然聞いた事のない曲のはずなのに、朝巳を頭痛が襲った。
「うっ!?」
朝巳が少し呻いた。
【SIDE:ASAMI AKECHI】
キタキタキタキタキタ―――――――――!!!!!!
この事件ピーンと来たぜ!!!!まったく知らない曲なのに思い出したぜ!!!!
なんで思い出したかって、俺が覚えてる中ではこの件が初めてだからな!
[コナンの推理ショー→犯人が動機を語る→実は加害者の一方的な誤解等だった事が判明→そんなの嘘だ!うわああああああああ!!]的なパターンの事件は!!
俺は「嘘だパターン」って呼んでる。どうだ、ド直球で捻りも何もないネーミングだろう?
いやまぁパターンをどう呼んでるかとかこの際どうでもいいが、この状況、まずいぞ。すこぶるまずいぞ。
思い出したことによるとこの件、トリックは
1.上着の裏の肘に当たるところに毒が塗ってある
2.その下に着ていたYシャツの肘に毒がつく
3.『ブラッディ・ヴィーナス』を歌わせれば振り付けつきでキムタツは歌う
4.『ブラッディ・ヴィーナス』の振り付けには肘を触る形で腕を組むものがある。つまりそのポーズをとった時点で手には毒がベッタリ
5.その状態で手掴みでものを食べれば死ぬ
だったハズ。
死ぬと分かってて放置するのもなんかアレだし、原作知識があるんなら未然に防げる時は防ぎたいし、なにより俺のボケに律儀に突っ込んでくれていい人っぽかったから助けたいがしかし。
もうキムタツ歌っちゃったから、この後キムタツがおにぎりとかサンドイッチとか食ったらアウトじゃねぇか!!
う~ん…
って、言ってる間に、もうドラムの克己がキムタツに言われておにぎりパスしてやがるぅぅ!!!
【SIDE:STORYTELLER】
「いくぞ。それ」
と克己がおにぎりを投げた。受け取ろうと手を出すキムタツ。
しかし―――
―――――――ダアァァァァァァァラッシャァァァァァァァァッ!!!!!
という叫び声。朝巳が叫びながら皿に付いていたラップを構えて跳び、おにぎりを奪取したのだ。
『ッ!!!!??』
皆一様にで朝巳を見る。
「何してやがんだ?」
キムタツがイラッとしながら言う。
「何って、キムタツさんが病気に罹るのを未然に防いでるだけっすよ」
しれっと答える朝巳。
「あぁ?病気ぃ?」
言ってる意味が解らないといった感じのキムタツ。
「いいですか?人間の手には、何千、何万という雑菌が付着してるわけですよ?そんな手で、そして何人もの人が触れているマイクに触った手でおにぎりなんぞ食べたらどうなります?もち、病気になります。ならなくても汚ねーです。想像してみて下さい、脂ぎってベトベトなオヤジが触ったかもしれない、有害物質を含んだ化粧を触った女性の手で触ったかもしれない、超野菜人ヘアーの変な兄ちゃんが触ったかもしれない、旧時代の名探偵の助手かよ的な格好の変なクソガキが触ったかもしれない、そんなマイクを触った手でおにぎり食べますか?」
皆一様に沈黙し、やがて一人また一人と顔を青くしていく。それでいいのか大人…。
それを確認し、朝巳はいい笑顔で告げた。
「ので簡単な話、手ェ洗ってきてくださいということが言いたかったんです」
皆コクコクと神妙に頷いた。(まぁその超野菜人ヘアーと旧時代の探偵の助手的な服装したヤツはちょっと複雑な顔してたが…)
「しゃぁねぇか…。おいボウズ!そのおにぎり絶対…!」
「ん?」
キムタツが言って朝巳を見てみたら、その目にはおにぎりをもっちゃもっちゃと頬張っている朝巳がいた。
「もう食ってんのかよ!!!食うの早すぎるだろ!!つーかヒトに言っといて自分は手ェ洗ってないヤツの投げてよこしたの普通に食うのかよ!!!!」
「あ…サーセン。腹へってたもんで…」
ごっくん。
「だぁぁぁぁ!!お前といると本当に調子狂うな!!!」
といってドアをバーンッと閉めて手を洗いに行った。
で、数分後。
ドアがガチャっと開いてキムタツが入ってきて朝巳の前にバッと手を出して
「コレでいいだろ。ほら」
と言った。手からは石鹸のいいにおいがする。
「はい。分かりました。じゃあ次の段階の殺菌を…」
と言って取り出したのは、小さいライター。そのライターにボゥッと火をつけキムタツの手に近づける。
すると、キムタツは当たり前だが、バッと手を引っ込めた。
「いやこらこらこら!!俺の手に何するつもりだ!!」
「いや、まぁ、一応熱殺菌しとこうかな…なんて。あとついでにイケメン氏ね的な…」
と平然と言ってのける朝巳。
何人かは朝巳に戦慄を覚えたかもしれない。
「あっ!そういえばキムタツさん。ドアのノブ触れたっしょ!」
「あ?当たり前だろ。じゃねぇと入ってこれねぇし…」
「いやまぁ言い辛い事ではあるんですけど…ノブもマイクと同じで何人もの人間が触った場所なんで消d「分ぁったよ!!!消毒してくりゃあいいんだろ!!」
と怒鳴って出て行った。
キムタツ、やっぱノリのいい人。
そして朝巳は急にキリッとし
「さてと…」
と言ってキムタツが脱ぎ捨てたまま放置されていた上着を手にとり…
【SIDE:ASAMI AKECHI】
問題は今キムタツが着てるシャツとこの上着だよな。
後々問題の箇所触られてなんか食ったらアウトだし。
未然に犯人に殺人をやめさせられる方法はやっぱり動機を潰すこと。それには両者のすれ違いをなんとか…。
「…ん?」
なんか上着の中に入ってた。
――――――――写真?
一体何の??
―――――――あっ!?そうだ写真だ!!今回の事件と密接とはいわないまでも関連する写真。
今しがた戻った原作知識によれば昔隅井さんとキムタツと寺原さんは一緒にバンドを組んでいた事があって、その時に撮られた写真だったはず。
――――うん。コレを上手く使えば、両者のすれ違いを上手く解消し、犯人を止められるかもしれない。
が、とりあえず、上着とYシャツに対する対応だな。コーヒーを頼んで…。
―――――ガチャッ。
おう?何の音?あぁキムさんが様々な所を消毒して帰ってきた音か。
――――――――――ってヤッベ!!急ご!!!
んじゃぁ、作戦はコーヒーとが来てからってことに…。
手早くコーヒーを頼んで…。
~十分後~
――――コーヒーktkr!この十分、エライ長かった…。
でもまぁ。これで準備は出来たから…。
作戦開始!!
まず、コーヒーを口に淹れて、盛大に―――――――
――――――――噴き出すッ!!!!!!!
…我ながら最低だな。
ブシュゥゥゥゥゥゥゥウウウウウウウッ!!!!!!という音と共に噴出されたコーヒーは見事にキムタツのシャツをコーヒーでビッタビタにした。
「てめっ!!!コラ、ガキ!!!お前本当に俺に恨みでもあるのか!!!!」
「サ、サーセンwww。キムさんの顔見てたらなんか笑えてきたもので…」
「ホントに失礼だな、お前!!一回泣かすぞコラ!!」
おっと!?犯人ではないがキムさん、キタ――――――!!
つうか俺追っかけられる率、高くね?俺がムカつくヤツだから?
危ッ!!おっと!!とか言いながらキムタツを避け続ける。
おっ!?ジャーマネが何か喋ってる。
「ちょっと!!達也!!この後トーク番組があるっていってるでしょ!!」
「うるせぇ!関係無ねぇヤツは引っ込んでろ!コイツとはケリを付けなくちゃならねぇんだ!!」
「ハァ…。しかたない…スタジオに電話してくるわ…」
とキムタツとジャーマネさんのやり取りを聞きながら逃げる。
しっかし、小一相手にケリを付ける発言ってキムタツ大人気なさすぎだろ…。
まぁ、大人気ないという事はともかく、作戦は継続。
このままキムタツが歌ったときから脱ぎっぱの上着を踏んで、わざとコケる!!!
ドガシャァァァァ!!と音を発てて、上着が宙を舞う。
で飛んだ上着が俺の頭にハラリと掛かった。
「朝巳くん!大丈夫!!?」というマイスイートエンジェル蘭さんの声にテキトーに答えながら、その上着を頭の上から取るときに変なところに手が入ったから抜いたら写真が一緒に出てきた的なフリをして中から写真を取り出す。
「ん…?写真?」
と我ながらかなりわざとらしく言う。
「んな!!!!???――――返せッ!!!!!」
とマッハのスピードで写真を取り返された。
まぁ、予め、写真の表も裏もくまなく見といたから、全然問題ないんだけどね。
「ところで、キムさん、裏にあった歌の歌詞何なんですかね?」
「ばっ!おまッ、まさかッ!!?」
「見ました。舐め回すように見ました。正確に言うなら、隅々まで余すところなく読みました。アナタが手ェ洗いに行ってる間に歌の題名は確か『すが「わらああああああああぁぁぁぁぁッ!!!!!いっけねぇ!そういやもうすぐトーク番組があるんだったな!服、洗濯しとかなきゃなんねぇな!!!オイガキ!お前がビッタビタにしたんだから手伝え!!」
とシャウトしたキムさんは、「菅原…?」という誰かの呟きを無視し、上着を持ったままの俺の襟首を引っ掴んで廊下に出た。
俺は「えええええええええええええええええええ…」と悲鳴を上げながら誘拐されたのだった。
で、部屋を出てすぐの廊下で
「いいか?絶対曲名とか言うじゃねぇぞ」
曲名発表する前に釘刺されました。
「へえへえ。あ、トーク番組あるんでしょ。コーヒー臭いシャツ、洗濯しとかなきゃ。ホラこの上着も」
平然と上着を出したことにキムさんはツッコミを入れなかった。
俺としてはそこにもツッコんで欲しかった。
「あ?あぁ、そうだなこのシャツと上着を…ったく、コーヒー染みとかって落ちにくいんだよな…あまけに臭いも取れにくいし…牛乳じゃなかっただけマシか…っておいおい上着は洗濯しねえだろ。普通」
ツッコミまでが長げーよ。次のボケ、いくぞー。
「ハァ?洗濯しとけよ。キムタツ臭ぇ」
「あぁ?そこまで臭うか?キムタツの臭い…うわくっせえ、冬場だってのに汗の臭いしやがる。結構動いたんだろうなお疲れさんってキムタツは俺だぁ!!!イヤまぁ正確に言えば俺はキムタツって名前じゃねえがっ!!だがしかし不本意ながらそれは俺の事だ!!俺の臭いが臭えってどういう事だ!!」
いいノリツッコミだ。感動的だな。だが無意味だ。
「いいから洗っとけって。その後乾燥機かけとけば、汗臭さとかも無くなって、一石二鳥じゃん。そもそもそれ踏んだし俺」
「せめて謝れ。俺の一張羅踏みつけたことと、それ以前の諸々全部謝れ。ってかもはやタメかよ。やっぱお前俺の事嫌い?」
とか言いつつキムさんは心底疲れた様子で、隅井さんに借りさせてもらうことになった洗濯機にシャツをぶち込んで、洗濯を開始。
いや~言う事に対しても行った事に対してもツッコんでくれるからキムさんは楽しい。
じゃあ、っと。
「ふーっ…。おいこら。上着返…なにしてんだ?」
隅井さんから借りた、従業員用のシャツを着たキムが、恐らく上着を返してもらおうと俺に顔を向けたときには、俺は上着を掲げ、スタンディングスタートの体勢を整えていた。
「上着を返して欲しくば我に挑むがいい。矮小なる人間よ」
言ってみたかっただけですスマソ。そう言い残して俺は駆け出した。
「………………………………いやなんでだあああああああああああああああああああああああああああああ!!!なんでそうなったあああああああああああああああああああああああああ!!!てか返せええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええッッッ!!!!!!」
あ、これキレたわキム。ガチシャウトしながら追いかけてくるわ。声枯らしちゃ仕事に支障が出るから自重しなされや。
だが計画通りだ。あとはカラオケボックス内の公衆電話コーナーに走れば…
「―――――ええ、ですから………。すいません、後でかけなおします。…はい。…はい。…ええ、それではまた後ほど…」
ジャーマネさんと合流できる…。
「達也!!静かにしなさい!!ろくに電話もできないでしょ!!ただでさえ遅れるって事でご迷惑をかけてるのに!!」
「うるせえ!!今度ばかりはそのガキ泣かせてやらなきゃ気がすまねえ!!」
てなやりとりを繰り広げる『ザウルス』ボーカルとジャーマネ。…ザウルス、だっけ…?
ま、二人そろえたらあとは俺はいい感じにちゃちゃ入れて、話の方向性を操作し、誤解が生んだ一つの悲劇に終止符を打つだけだ。
…まあ、誤解もなにもキムのツンデレが過ぎた結果なんだけどね。ある意味コレも被害者の自業自得だったんだけどね。
……余りにツンが過ぎると殺されちまうんだよ。早めにデレとけよ、世の暴力的ツンデレたち。
「お?何ですか?夫婦喧嘩?『夫婦喧嘩は犬も食わない』って言いますよ」
「るせぇ!!発端はテメェだ、馬鹿ガキ!!!」
「ちょっと達也!!話はまだ終わってないでしょ!!だいたいあなたは―――」
「るせぇドブス!!引っ込んでろ!!!」
「っ!!!?」
「ドブスってキム!!女にそれは失礼ってモンでしょうがッ!!!」
「うるせぇ!ってかキムじゃねぇ!!せめて敬称つけやがれ!!というか部外者の分際で文句あんのか!!」
「フェミニストですから!!」
「てめえはただの悪ガキだっ!!だいたいこのマネージャーの顔はドブス以外の何者でもねぇ!!俺がマネージャーに誘った途端、顔を整形なんかしやがって!!」
「あんたは目か脳に障害でも負ってんのか!?このような御尊顔を平気な顔してブスって言い切れるなんて!!それともあれか、お前さてはブス専か!!?」
「いや違っげぇよ!!なんでいきなりブス専扱いだバカ!!仮にブス専だったら大喜びだろ俺!!」
「だああ、またそういうこと言う!!ちょっと寺島さん!!何とか言ってやって下さいよ!!」
「寺原だそいつは!!間違えんな!!」
「うるせぇ!黙ってろキム!!」
「黙ってろって言いてぇのはコッチだ!人様の揉め事に口出しすんじゃねぇ!!」
「口出しって何スか!!てか、寺子屋さんも少しは喋ってくださいよ!!」
「だからそいつは寺島だッ!イヤ間違えた寺原だ!!ゴメンな!本当にゴメンな!!」
「そこじゃねぇだろ謝るのは!!ブスって言った点に謝れっつってんでよしょうが!!アンタって子はほんとにもー!!」
「どこのオカンだテメーはァッ!!」
イカン…。散々長丁場怒鳴りあった割りに全然進んでいない。どうやって仲直りの方向にもって行けばいいんだ?
つか、もう面倒くさいから核心突いちゃう?
突いちゃおっか?
いやまあ、こういうのは他人の俺が口出しするんじゃなくって、彼らの間で解決するのが一番だが……進展する兆しがまるで見えんしなぁ。
「…分かりました。上着は返しましょう…」
「分かればいいんだ。とっとと返せ」
「ですが―――――――」
「…ですが…?」
「一つだけ条件があります。まぁ何の関係もない俺が出すのもナンな条件なんですけどね…」
「条件だ?…」
「貴方の本当の気持ちを彼女に喋る――――――です」
「ッ!!!??」
「相手の素顔が見たいなら、あなたも素顔を晒さなければ…。
―――で…どうします?木村達也さん?」
十分後には俺は上着とキムさんとジャーマネさんをソコにおいてカラオケボックスに帰ってきてた。
そう。キムさんはすべて自分の気持ちを喋ることにしたのだ。
別れ際俺は歩き去りながら
「いままでの態度から信じてもらえねぇかも知れないが―――――」
と言う言葉を聴いたから、キムさんの方は問題ないだろう。
万が一にでも、話が拗れて結局名探偵にご足労願うようなことにならないよう願いたい。
~二時間半後~
い…いったいどれだけ募る思いを隠していたんだ、キムさん…。
二時間半って…さすがに長くね?いくらなんでも長すぎね?なにこのままどこぞのネオン街にチェックイン的なアレですか?それとも結局名探偵の出番か?
――――ガチャ。
という音がして振り向けばそこには、どことなく清々しい顔したキムと少し泣いてる感じの寺原さんがいた。寺原さんが嬉し泣きであることを望む。
「どうでした?」
と聞けば、キムさんは俺の頭の上に手を置き…
「ありがとよ。ボウズ…」
と言った。
「ハッ!気持ち悪い顔しやがって…」
「おいおい、清々しい顔を気持ち悪いとか言うなよ…」
もう事件は未然に防げたかな…
そう思ってた途端、俺は悪態をついていた。
~~~~~~~~~~『迷宮のラヴァーズ』 song by heath~~~~~~~~~~~
後日談。
キムタツは、寺原さんと互いの誤解を解き、その延長で『Lex(と書くと後で知った)』メンバーにとっていた態度についても謝罪をしたようだ。
キムタツと寺原さん(と隅井さん)は『Lex』以前のバンド仲間。
当時からキムタツと寺原さんは両思いだったが、寺原さんは自分のルックスにコンプレックスをもっていた。
『Lex』結成時に寺原さんはメンバーに誘われず、彼女と離れたくなかったキムタツによりマネージャーとして誘われた。
寺原さんはそんなキムタツの思いに応えようと、キムタツに釣り合うように整形手術を受けたが、キムタツは、自分なんかの為に自分を偽った、寺原さんに元の自分を取り戻して欲しかったからあんな態度になってしまった。
バンドの皆に対する態度にしたって、キムタツのソロ活動が決定して以降『Lex』メンバーに対する酷い態度も増長したからではなく、自分が抜けたあと後腐れなく別のボーカルを誘い、元気にやっていってほしい、という情の顕れだった。ついでにその『Lex』脱退・ソロ活動という決定そのものも事務所からの意向だったらしく、キムタツ自身はあまり乗り気ではなかったらしい。
そして、あの上着に入っていた写真は、キムタツと整形以前の寺原さんが写った写真。その裏には、彼の思いを綴った歌「素顔の君に伝えたい」が書かれていた。
現在、キムタツはソロ活動の話を蹴り、相変わらず『Lex』のボーカルとして頑張っている。
俺はというと、あれから数日後、『Lex』の皆さんのサイン入りのCDを貰った。
収録されていたのは、代表曲「ブラッディ・ビーナス」ほか数曲、そして未発表曲「素顔の君に伝えたい」だった。
……………。
ま、なんにせよ、ある一つの悲劇を止められてよかった。
主人公である名探偵の出番を奪ってしまったが、こういう方向にならどんどんやっていきたいな。
「だめですよ朝巳君!学校にウォークマンなんか持って来ちゃぁ!!」
「あ、それって『Lex』?いいなぁ、サイン入りだぁ!」
「腹減ったなぁ…」
そんなガキ共の声を遮り、俺のイヤホンからは声が聞こえてくる。
その声は、ある一つの悲劇を退けた声。素顔を晒したからこそ、互いの望む素顔を見ることのできた。「素顔の君に伝えたい」想いは、確かに伝わったのだ。
『君に会いたいと願い続けて
君の笑顔のもと探してる
時計の音を数えるように
少しずつキミを待っている
帰っておいで迷わぬように
君と生きていく明日だから
本当の気持ち見つけてほしい―――』
ま、とりあえず、だ。お幸せに。
タイトル詐欺でした。
サーセンっした。
あと、どうやったら、子供の説得(笑)程度で今まで本当の気持ちを喋るんだよとかのツッコミはナシの方向でお願いしたいです。(作者自身、無理があったなって分かってるんで)
あと最後のは一応『素顔の君に伝えたい』の歌詞の一部抜粋です。
歌詞っつても実際CD化されてないものの歌詞ぐらいは許してくれると信じています。
あと今回コナン君喋ってねぇ!?
あ、後これだけが微妙な原作改変じゃないですよ?
ちょっと重要な原作改変だってやりますよ?
というわけでまた次回。