忠犬と飼い主~IF~もしもオリ主が黒の組織の幹部だったら?   作:herz

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・IF⑦の続き。

・公安や降谷さんに対してヘイト表現あり。

・降谷さん視点。最後の方にオリ主とライ視点(会話のみ)。

・降谷さんはまだスコッチの死の真相を知らない。赤井さんとも和解しないまま組織壊滅作戦を行った、という設定。

・シリアス。

・前編と後編に分かれています。




IF⑧復讐劇、開幕 前編

 

――SIDE:降谷零――

 

 

 窓の無いこの部屋の扉は1つのみ。その扉は外から鍵が掛かっており、内側からは開けられない。何度か扉を壊して脱出しようとしたが……扉は頑丈で、何をしても開かなかった。部屋の壁も同様に、破壊は不可能。

 

 ――完全な密室に、閉じ込められたのだ。

 

 どれだけの時間が経過したのかも分からず、情報も与えられず……こんな状態が、閉じ込められてからずっと続いていた。

 それでいて、充分な水と食料が与えられているという事は……黒の組織は、俺に利用価値があると判断しているのだろう。でなければ、俺を生かしておく必要は無いはず……

 

 

 その時。扉の方から鍵が開けられる音が聞こえた。

 

 

「っ!?」

 

 

 思わず座っていた場所から立ち上がると、扉が開き……2人の男が入って来た。――シンガニと、赤井秀一……否、ライだった。

 

 

「貴様ら!!…っ、…………何の用だ」

 

 

 一瞬頭に血が上ったが、即座にそれを抑え込んだ。……ライの裏切りには腹が立っているし、“赤井秀一“を“ライ“に変えたであろうシンガニに対しても、そうだ。

 だが、ここに閉じ込められてから初めて外にいる人間がやって来た。相手が誰であれ、貴重な情報源である事に変わりはない。

 

 ――冷静になれ、降谷零。……なんとしてでも、情報を入手しろ。

 

 

「……“ゼロ“の一員というのは伊達じゃない、か……さすがだな、降谷零。バーボンの時から分かってはいたが、自身の感情をコントロールする事に長けている……」

 

「それはどうも。……で?何の用があってここに来た?俺が持つ情報を全て渡せという話なら、断る」

 

「分かっているさ。そんな無駄な事は聞かない。――日本警察や日本国家に関する情報を得る当てなら、幾らでもあるからな」

 

「なっ!?そんな口から出任せを……!!」

 

「さて、信じるか信じないかは君次第だ」

 

 

 シンガニは余裕の笑みを浮かべ、ライは相変わらず無表情。……駄目だ。奴らの表情を見ても、先ほどの話が嘘か真か……全く判断がつかない!

 

 

「そんな事より、話を進めよう。……今日は君に、ある情報を与えるためにここに来た」

 

「……!?」

 

 

 情報を!?……いや、油断するな!もしかしたら、それを与えて俺が何らかの反応を見せる事を望んでいるのか、もしくは……俺を揺さぶって、さらに情報を得ようとしているのかもしれない。

 

 いずれにせよ、何を言われても動揺しないように――

 

 

「スコッチ――諸伏景光の、死の真相について」

 

「――っ!!」

 

 

 その瞬間、頭が真っ白になった。

 

 

「――貴様……!!どうやってあいつの本名を!?」

 

「ライからいろいろお前に関する情報を聞いた時に、個人的に気になって自分で調べた。さすがに日本警察のセキュリティネットワークを掻い潜るのには苦労したよ。

 

 おっと、そういえば――長野県警に、諸伏景光の兄がいるそうだな?」

 

「――――」

 

 

 こいつ、まさか……!?

 

 

「あの人に手を出すつもりか!?」

 

「さぁ?君次第だな」

 

「っ――この野郎!!」

 

 

 ついに我慢できなくなり、俺はシンガニに殴り掛かった。そして――次の瞬間には天地がひっくり返り、地面に叩きつけられる。

 一瞬息が止まり、それから咳き込んだ。……その間に取り押さえられ、身動きが取れなくなった。

 

 

「マスター。――こいつの骨、一本残らずへし折っていいですか?」

 

「…………許可したら本気でやるだろ、お前。駄目だ」

 

「……ちっ」

 

 

 俺を取り押さえたのは、ライだった。……俺とした事が、頭に血が上り過ぎてこいつがいた事を忘れていた……!!

 

 

「……すまないな。俺の犬は番犬として非常に優秀なんだ。だから、一度飼い主である俺に襲い掛かった以上、用が済むまで解放する事はない……そこで我慢してくれ」

 

「ふふ……光栄です。マスター」

 

「くそっ……!!」

 

 

 抵抗しようにも、うつ伏せの状態で拘束されて動けない……!!

 

 

「では……俺がライから直接聞いた、諸伏景光の死の真相を、教えてあげよう」

 

 

 そして語られた――あの日の、真実。

 

 

「補足しておくと、俺がライを組織に寝返らせたのは2年前。……つまり組織に潜入していた頃のライは、まだFBIだった。……ライが諸伏景光を助けようとしていたのは、事実だ」

 

「…………」

 

「そんなライの邪魔をしたのは――てめぇだぞ、降谷零」

 

「っ!?」

 

 

 その言葉を聞いて顔を上げると、シンガニの冷たい目が、俺を見下ろしていた。

 

 

「てめぇが潜入捜査官らしくない軽率な行動を取ったせいで、諸伏景光を助けようとしたライの行動が無駄になった。そう――てめぇが、諸伏景光を殺したんだ。奴の幼馴染みである、てめぇがな」

 

「――――」

 

「だってそうだろう?てめぇがあの日焦って足音を立てながら階段を上ってしまったせいで、諸伏景光はそれを組織の追手だと勘違いし、ライの隙を狙って……自殺した」

 

「――っ、」

 

「奴は自身の携帯ごと胸を撃って死んだ。……携帯の中には家族や仲間達の情報が詰まっていたはずだ。当然、幼馴染みであるてめぇの情報だって含まれていただろうな。

 諸伏景光は、てめぇも含めた大事な人達を守るために自ら死を選んだ。……素晴らしいな。てめぇの幼馴染みは人情味あふれる良い奴じゃないか!しかし――」

 

 

 

 

 

 

「――そんな心優しい奴が、他ならぬ大事な大事な幼馴染みの軽率な行動が原因で死んだなんて――報われねぇよなぁ……降谷零」

 

「――――ぁ、」

 

 

 ――どこかで、何かが壊れる音が聞こえた。

 

 

「……嗚呼(あぁ)、可哀想に……」

 

 

 そう言って、俺の前にしゃがみ込んだ奴の手が、俺の頬に触れる。……そこでようやく、自分が泣いている事に気がついた。

 

 

「……酷い事を言ってすまなかったな。大丈夫。もう言わないよ」

 

「ぅ、あ」

 

「何も心配しなくていい。――俺が、君を受け入れてあげよう」

 

「……っ!!」

 

「君が潜入捜査官だったから……君が正義側にいたから、あんな悲劇が起こってしまったんだよ。でも、大丈夫だ。――俺の元まで堕ちて来られたら、もうあんな悲劇は起こらない。いや――そんな事、俺がさせないよ」

 

「――――」

 

「さぁ――こちら側においで。……君が俺の手を取ってくれたら、俺が君の心を癒してあげるから。――辛い事を全て、忘れられるようにね」

 

「――――」

 

「ほら、おいで――零」

 

 

 片腕だけ、拘束が外れた。……俺は――

 

 

 

 

 

 

 ――シンガニの手(悪魔の手)を、強く払った。

 

 

「…………誰が――誰が貴様の手など取ってやるものか!!俺は悪の組織に屈しない!誰に何と言われようが、俺は警察庁警備局警備企画課の降谷零だ!!それ以上でもそれ以下でもない!!

 

 俺は愛する日本とその国民のために、この身を捧げる!!この国と国民を守るためなら――死んでも構わない!!」

 

「――――」

 

 

 そう叫ぶとシンガニは大きく目を見開き――それから、微笑んだ。

 

 

「……そうか。……よく分かった」

 

 

 俺がその微笑みを見て唖然としていると、シンガニは立ち上がり、俺に向かって深々と頭を下げた。

 

 

「――お前のような日本を愛する警察官がいてくれて、本当に良かった。

 

 ――今まで、俺と俺の両親の大事な故郷を守ってくれた事に、心から感謝を……」

 

「は、」

 

「さて、俺の用は済んだ。……行くぞ、ライ」

 

「はい」

 

 

 ……拘束が外されても、俺がシンガニ達に殴り掛かる事はなかった。シンガニの言葉が、衝撃的だったからだ。

 

 どうゆう事だ?シンガニは一体、何をしたかったんだ?俺が寝返りを拒否したというのに、それ以上しつこく言ってくるわけでもなく、脅してくるわけでもなく――まるで、俺の答えだけを聞く事が目的だったような……

 

 

「あぁ、そうそう」

 

「!」

 

「諸伏景光の兄についてだが――実は、まだ組織には報告していない。この部屋の監視カメラも事前に止めておいたから、組織内でこの事実を知っているのは俺とライだけ……あとは、俺とライがこの話を墓場まで持っていけばいい」

 

「な、」

 

「――少なくとも組織が諸伏高明に手を出す事は無いと、断言しよう。……では、失礼するよ」

 

「ま、待て!……せめて俺の部下達や、コナン君がどうなっているかを教えてくれ!!」

 

「……江戸川コナンなら無事だ。彼には重要な役割があるし、君達の中でも比較的一番良い待遇を受けている。それから君の部下の事だが……無事だよ。――今だけは」

 

「――――」

 

 

 その言葉を最後に、シンガニはライと共に立ち去った。……鍵が閉まる音が聞こえて、室内は静寂に包まれる。

 

 

 ……あの人とコナン君が組織に害される事は無いと分かった。だが……部下達はあの口振りだと――

 

 

「――ろくな目に合わない、か……」

 

 

 ――くそが……っ!!

 

 

 

 

―――

――――――

―――――――――

 

 

――SIDE:飼い主と狂犬――

 

 

「――想像以上だ。……降谷零は本気で日本を愛している、立派な警察官だった」

 

「あなたの期待通りの、ですか」

 

「あぁ。とはいえ――俺の犬を憎み、時に傷つけたという事実は変わらない。故に、今後の待遇改善はあり得ない。するつもりもない。……納得したか?」

 

「…………はい」

 

「そんなに心配しなくても、あの勧誘は奴を試すための嘘だ。本気で勧誘するつもりはなかった」

 

「……奴があなたの手を取っていたら、どうするつもりだったんですか?」

 

「うん?――利用するだけ利用して、使い捨てにするつもりだったぞ?……だから、奴が俺の手を払ってくれて良かった」

 

「……では、結局何が目的だったんですか?」

 

「個人的に確かめたかった。――奴が、本当に日本を愛する警察官だったのか、否かを。……その結果は想像以上だった。奴は確かに、俺と両親の故郷を守ってくれていたんだ」

 

「だから、奴に頭を下げたんですか……?」

 

「そうだ。俺は、シンガニとしてではなく――ただの荒垣和哉として、頭を下げた。……奴への感謝だけは、本心だ」

 

「――本当に、それだけですか?」

 

「…………」

 

「――和哉さん」

 

 

 

 

 

 

「…………あれほど日本の事を想ってくれる男に対して――申し訳ないと思った。思ってしまった。俺と両親の大事な故郷の平和ではなく――身勝手な復讐のために犯罪組織の繁栄を選んだ俺が、そんな事を思う資格など無いというのに……」

 

「――――」

 

「…………なんてな。――これからまさに復讐を始めようとしている奴が、今さら何言ってんだか……」

 

「……和哉さん」

 

「ん?」

 

「俺は例え、あなたがこの先どんな選択をしたとしても……あなたのお側にいます。あなたが望むのなら……行き先が世界の果てでも、地獄の果てでも、何処であっても――共に」

 

「――――」

 

 

 

 

 

 

「――秀一」

 

「はい」

 

「俺がこの先どんな選択をしたとしても、行き先が何処になろうとも――絶対に、ついて来い」

 

「――Yes,master (はい、ご主人様)

 

 

 

 

 

 

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