忠犬と飼い主~IF~もしもオリ主が黒の組織の幹部だったら?   作:herz

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IF③狂犬への第一歩 後編

 ふと、目が覚めた。……しばらく微睡んでいたが、自分の状況を思い出して飛び起きる。

 

 

「っ!?……っ……!!」

 

 

 そしてすぐに体に激痛を感じて、再び沈んだ。

 

 

(……ここは……どこだ……?)

 

 

 痛みに耐えつつ、疑問を抱いていたその時、声が掛かった。

 

 

「おう、目が覚めたのか。……良かった」

 

「…………シンガニ……」

 

「あの後倒れたお前をここまで運ぶの、結構大変だったぞ」

 

 

 ……気を失う前に聞いた声から推測していたが、まさかあの時俺を受け止めたのが本当にシンガニだったとは……

 

 

「……ここは、どこだ?」

 

「俺の協力者から借りてる家だよ。ちなみに、数日前に俺が訪ねたお前のセーフハウスから、そこまで遠くない場所にある」

 

「協力者……あぁ、そうか……」

 

 

 まだ組織に潜入していた頃、この男がよく世界各地を飛び回っており、その各地にそれぞれ協力者がいるという話を聞いた事を思い出した。

 なるほど。この国にもいるのか……いや、待て。

 

 

「……そんな場所に、俺を招き入れていいのか?それに、俺のセーフハウスからそこまで遠くない場所にある、なんてばらしてしまっていいのか?」

 

「ん?」

 

「俺は、FBIだぞ?」

 

 

 俺がこの場所の情報を仲間に流すとは考えなかったのか?

 

 

「あぁ……別にいいぞ。流すなら流せばいい。そうなったら協力者を捨てるだけだ」

 

「……簡単に言ってくれるな」

 

「大体の協力者は、いつでも捨てられるような無能ばかりだ。問題ない」

 

「…………」

 

 

 数日前に俺を褒め殺しした人間とは思えない発言だ。

 

 

「さて。……怪我の具合はどうだ?信用できる闇医者に頼んで治療してもらったんだが……」

 

 

 信用できる()医者とはこれ如何に。……まぁ、そんな疑問は置いといて。

 先程とは違い、今度はゆっくりと起き上がった。

 

 

「……起きても大丈夫なのか?」

 

「問題ない」

 

「……そうか?ならいいが、あまり無理はするなよ。闇医者曰く、怪我の方は全治1ヶ月。ただ、幸いにして歩けなくなる程の怪我はなく、今日1日安静にしていれば歩いても問題はないそうだ」

 

「……分かった。……俺の車は?」

 

「お前の車は置いてきた。勝手に鍵を借りるのも悪いなと思って。それに、俺の車もあったからな。ここへはお前を俺の車に乗せて来たんだ」

 

「……そうか」

 

 

 さて。となるとこれからどうするかな。俺の足となる車を取りに行きたいし、任務が終了した事を報告する必要もある。だが、携帯は壊してしまったからそれもできない。……幸い、任務の期間は3日と設定されていたから、俺からの連絡がないからとすぐに騒ぎになる事はないはず。……そういえば。

 

 

「なぁ、シンガニ。今は何時だ?あれからどれくらい時間が経っている?」

 

「……夜中の2時過ぎだ。あれから6時間程経過している」

 

「そうか。……今日1日、ここにいて休んでもいいか?」

 

「……そりゃあ、構わないが……」

 

 

 という事は、今日1日はここで安静にして、明日の朝早くに車を回収し、そのままセーフハウスへ向かって任務完了の報告をしても充分間に合うな。これなら、問題ないだろう。

 ……そうだ。慰謝料代わりに休暇と新しい携帯をもぎ取ろう。新しい携帯の方は最新機種で。

 

 

「…………赤井秀一」

 

「なんだ?」

 

「疑わないのか?俺の言葉を」

 

「…………」

 

「ここがお前のセーフハウスから近い場所にあるという言葉が、嘘だという可能性は?それから車を放置したという言葉が嘘で、むしろ破壊されていたとしたら?それに、ここに時計はない。窓もない。さっき言った日時も嘘で、本当はあれからもっと時間が経過しているかもしれない。

 

 ……そもそも、数日前にお前に正確な情報を教えた事自体が仕込みで、この状況こそが俺の望んでいたものだったとしたら?……お前は、どうするんだ?」

 

「…………ふっ……」

 

 

 その言葉を聞いて、俺は思わず笑っていた。

 

 

「……おい。何がおかしいんだ、こら」

 

「くくっ……それは笑うだろう。俺はどうするか、だって?――どうもしないさ」

 

 

 正確には"何もできない"、だが。

 

 今の状況が、シンガニが望んだ通りのものだったとしたら、俺は見事に術中にはまった事になる。

 

 

 シンガニの言う"仕込み"の段階で、俺は既に主導権を握られていた。

 最初からセーフハウスの場所を突き止められた事で、少なからず動揺していたというのに、そこから上層部による俺の暗殺計画を聞かされ、かと思いきや褒め殺しされ、さらにはこれ見よがしにUSBメモリを渡された。

 ……この流れで、中身を確認しないという選択肢は、あの時の俺の中にはなかった。

 

 こうして、伝えられた情報に虚偽がない事も確認した俺は、その情報のお陰で生き延びる。……だが、終わった頃には既に疲労困憊だった。そしてそれを狙っていたかのようなタイミングで、シンガニは俺を確保した。……どこかで様子を窺っていたのだろう。

 

 それから現在。逃げるには体調が万全ではないし、うまく切り抜けたとしても足となる愛車が近くにない。ではシンガニが乗って来た車を奪えば?……おそらく、それも不可能だろう。この男なら何らかの対策をしているはず。……詰みだな。清々しい程に。

 

 

 ……といった事を、簡潔に伝えた。すると、シンガニはため息をつく。

 

 

「……そこまで分かっていながら、何故抵抗しない?それに、普通ならお前をはめた張本人である俺を恨むところだろ?」

 

「それは、シンガニが俺を見下していたらそうなっただろうな。……だが、お前は俺の事を高く評価している。だからこそ、気にかけてくれたんだろう?どうやらお前は、自分の懐に入れた人間……もしくは有能な人間への対応が甘くなるようだからな」

 

 

 逆に、無能な者や自分が懐に入れた人間に危害を加える者に対しては、徹底的冷たくなるようだが。

 

 

「……お前は俺の事を高く評価してくれているし、俺に対して未だに明確な悪意を向けてこない。そして、俺の命の恩人だ。そんな相手を恨もうとは思わない。……ところで、シンガニ。お前は本当に俺をはめようと計画していたのか?俺の予想では、お前はそこまで考えていなかったように思えるんだが?」

 

「……何で、そう思った?」

 

「お前が、本気で俺の事を心配しているように見えたからだ。……お前は、俺が気を失う前にわざわざ走って俺のもとに来て、倒れそうになった俺を受け止めてくれた。そして目が覚めてからも、俺が目を覚ました事で安心した様子を見せていたし、俺が起き上がった時も無理はしないように、と気遣っていた。

 

 俺をはめようと計画していたとして……だからといってそこまで気遣いを見せる必要はあるのか?……俺なら、そういった無駄な事はしない」

 

 

 有能な人間は無駄な事をしない。そんな人間を好むシンガニの事だから、逆に無駄な事を嫌うはず。

 

 

「…………お前に恩を売るためにやっているのかもしれないぜ?」

 

「だったらそもそも"疑わないのか?"なんて聞かないだろう?」

 

 

 すると、シンガニは口を閉ざした。……しばらくして、再び口を開く。

 

 

「やれやれ……さすがだな、赤井秀一。……と、言いたいところだが」

 

「?」

 

「確かに俺は、お前をはめようとは考えていなかった。……だが、決して下心がなかったわけではない」

 

「……ホー……」

 

 

 下心、ね……

 

 

「……ところで、数日前に俺が問い掛けた内容を覚えているか?」

 

「何?」

 

「今の立場に満足しているのか?お前のお仲間達はちゃんとお前自身を見てくれているのか?……そう、問い掛けただろう?」

 

「っ!!……それが、どうした」

 

「実際、どうだ?考えてみたか?」

 

「…………それ、は」

 

 

 ――実のところ、数日前にそう問い掛けられてから、その問いがずっと頭の片隅で燻っていた。

 

 

 今の立場に満足しているのか?――否。

 

 同僚達がちゃんと俺自身を見てくれているのか?――それも、否。

 

 

 ……考えた結果、そう結論付けた。

 

 

 自分からFBIという組織に所属すると決めておきながら、今の立場に不満を感じているなど、俺の我が儘でしかない。それは、分かっている。だがそれでも、どうしても納得できない事があるのだ。……それは、時折俺が無断で単独行動を取ったり、上司に意見を述べたりする時の事。

 

 俺は何も、好きで単独行動をしているわけではない。それがその時必要な行動だったからやっただけだ。

 単独行動をする時は、説明する時間がない時、そもそもその相手が説明してもそれを理解できない人間――シンガニに言わせれば無能と言える類いの人間――である時、早期解決が不可欠である時……などが大半だ。

 俺には、そういった理由で単独行動をしたからこそ、いくつもの事件を解決する事ができた、という自負がある。

 

 上司へ意見を述べる時も同様に、それがその時必要だった場合にのみ、俺は行動する。

 今の上司はジェイムズだからまだマシなのだが、それ以前の上司は最悪だった。俺が意見を述べてもそれを全く聞こうとしなかった。……いや、そもそもあれは俺の説明を半分も理解できていなかったのだろう。だから、生意気な部下が上司に意見しているという事しか理解しておらず、結果的にこちらが叱責される事になった。

 そんな上司だったからこそ、俺が単独行動を取る機会が増えるばかりだった。

 

 さらに、俺は大半の同僚に嫌われている。……被害妄想ではなく。

 どうやら今回俺を排除しようとした上層部の人間と同じく、俺の事を妬んでいるらしい。中には、その不満を直接俺に言ってくる馬鹿な奴も数名いた。

 曰く。ちょっと若くて顔がいいくらいで調子に乗るな、自分の活躍の場を奪うな、皆が皆お前のように頭の回転が早いわけではない、もっと周りと足並みを揃えろ……などなど。他にも挙げたら切りがない。

 

 ……とはいえ、俺の事を庇ってくれる少数派の者達――主にそれはジェイムズ、ジョディ、キャメルの3人だが、それ以外にも数人いる――がおり、彼らは俺に対して好意的に接してくれている。……だが、彼らの俺に対する扱いが問題だったのだ。

 

 ――彼らは俺を、まるで自分達とは違う世界にいる人間のように扱う。……フィクションのキャラクターのような扱い、と言えば理解できるだろうか。

 

 シュウならこれくらいできてもおかしくない。皆ができない事を容易にやってのけてしまうのが赤井秀一という男だ。こいつが簡単に死ぬ筈がない。お前なら何があっても大丈夫だろう。

 ……そんな言葉を、あいつらは俺の目の前で平然と言う。

 

 

(――ふざけるな!俺はフィクションの英雄(不死身のヒーロー)じゃない!お前らと同じ人間だ!!)

 

 

 ……そう、声を大にして叫びたい気持ちにさせられた。

 俺だって1人の人間だ。失敗だってするし、肉体的にも精神的にも疲れる時がある。できない事だって少なくない。……だというのに何故、俺がそんな扱いをされなければならない?

 

 質が悪い事に、あいつらは本気で俺の事を無敵の男だと思っているようだ。だから、俺の事を少しも疑おうとしない。気遣う事もない。……その信頼が、重圧となって俺に襲い掛かっていた。

 

 

 俺をフィクションのヒーローのように扱うのではなく――ただの"赤井秀一"として、俺自身を見てくれる存在は、どこにもいないのだろうか……?

 

 

 ……いつの間にか俺は、シンガニに長々とそう語っていた。数年越しの不満を吐き出したせいか、大分すっきりした。

 話をしている間に、敵を相手に何をやっているのか、という考えが脳裏に浮かんだが……もうどうでもよかった。

 

 

「…………そうか」

 

 

 俺の話を聞いたシンガニはそう呟くと、しばらく瞑目していた。……しかし、その眉間にはしわが寄っており、握られた拳は震えている。……怒っている、のか?珍しいな。……しかし何に対して?

 そんな疑問が浮かぶ間にシンガニは落ち着いたようで、既にいつものポーカーフェイスに戻っていた。

 

 

「よく、分かったよ。……本当に苦労してたんだな、お前は。そして――お前の周りには無能な人間と無知な人間しかいないという事も、よく分かった」

 

 

 俺でもぞっとする程の冷ややかな目で、シンガニは静かにそう言った。……どうやら、怒りを向けている対象は俺の同僚達だったらしい。

 

 

「……赤井秀一。確かに、お前は優秀だ。実際にフィクションの世界にいてもおかしくないぐらいには、な。……だが、お前は偶像ではない。現実に存在している、歴とした人間だ。時に強くなり、時に弱くなってしまう、人間なんだ。……その証拠に、お前は今俺の目の前で傷だらけの姿を晒しているじゃないか。――生きているよ。間違いなく」

 

 

 それから一転して、俺に対して優しい目を向ける。……その言葉に、思わず目頭が熱くなったが、なんとか耐えた。

 

 

「しかしお前の周りの連中はそんな事も分からねぇのか。屑ばかりだな。……本当に勿体ない」

 

「……何が勿体ないんだ?」

 

「お前の事だよ」

 

 

 まっすぐに俺を見つめる漆黒の瞳。強い意思を感じさせる瞳だ。……悪の組織に身を沈める人間には似つかわしくない。

 

 勿体ないな。この男の能力の高さを考えれば、警察組織でもやっていけただろうに。それこそFBIで俺の同僚になってくれたら、どんなに良かったか――

 

 

「――お前はFBIに置いておくには勿体ない。……俺なら、お前の周りの屑共とは違って"赤井秀一自身"を見てやれる」

 

 

 ……どうやら、似たような事を考えていたらしい。

 

 

「――こちら側に来ないか?赤井秀一」

 

 

 …………なるほど。

 

 

「それが、お前の下心か」

 

「……くくっ……さすが、察しがいいな。その通りだ」

 

「ホー……いいのか?そんなにあっさりと認めて」

 

 

 てっきり、はぐらかすのではないかと思っていた。

 

 

「構わない。――俺は本気で、お前が欲しいと思っている。そんなお前相手に嘘や偽りを話すなんて、あり得ない。俺はお前に誠意を見せたいんだよ」

 

「――――」

 

「さぁ……俺の手を取れ、赤井秀一。――絶対に、後悔させないから」

 

 

 差し出されたシンガニの手(悪魔の手)。俺は、その手を――

 

 

 

 

 

 

―――

――――――

―――――――――

 

 

 ――シンガニに助けられた日から3日後。俺はFBIの本部に向かい、上層部の人間に任務が完了した事を報告した。……奴らの悔しげな表情に、内心でざまぁみろと嗤った。そして慰謝料……もとい、報酬として明日から1週間の休暇と最新機種の携帯をぶん取る……もとい、頂戴してきた。

 その後、会議室にいるジェイムズ達にも任務が終わった事を報告する。

 

 

「そうか。さすがだな赤井君。たった1人で犯罪組織を1つ壊滅させてしまうとは。……いや、君ならそれくらい朝飯前かな?」

 

「やったじゃない、シュウ!目立った怪我もなさそうだし……やっぱり、私達のエースはあなたしかいないわね!」

 

「赤井さんなら絶対に無事で戻って来ると、信じていました!さすがです!」

 

 

 口々にそう称賛してくる、ジェイムズ、ジョディ、キャメルを含めた同僚達。……やはり、俺の事を心配する声は皆無のようだ。

 だが、そのように称賛する声を上げる者はごく少数。大半の人間は影でひそひそと俺の成功を妬み、恨み言を言っている。……俺には聞こえないと思っているのだろうか。馬鹿な奴らだ。

 

 

「……さて、そろそろミーティングを始めようか」

 

 

 しばらくして、ジェイムズがそう言った事でミーティングが始まった。……しかし、そこで会議室の扉が荒々しく開かれた。

 

 

「――かっ、会議中に失礼します!つ、つい先程、このFBI本部内にて殺人事件が発生しました!!ジェイムズ・ブラック、並びにそのチームの捜査官は現場に急行するようにとの事です!!」

 

「何!?一体、誰が殺されたのだ!?」

 

「そ、それが……!!」

 

 

 会議室に入って来た捜査官の口から飛び出したのは、俺が先程任務完了の報告をしてきた、上層部の人間の名前だった。

 

 

 

 

 

 

―――

――――――

―――――――――

 

 

 あれから現場に急行し、捜査をした結果。目撃者が多数いた事で、状況が判明した。

 

 

 まず、被害者の死亡時刻は午前11時半。……俺が報告を終えてから、およそ30分が経っている。

 

 死亡する寸前の状況は至ってシンプルなものだった。被害者が他の上層部の人間達と話し合いをしていた最中、被害者の背後の窓ガラスが割れ、それと同時に被害者の後頭部から眉間に掛けて弾丸が貫通。……それにより、被害者は即死した。

 当然、周囲にいた者達はパニックになり、外にいたFBI捜査官の1人に状況を説明。それから、俺達のいる会議室にまで報告が届いた。……という流れだ。

 

 現在はFBI本部周辺の捜査も行われているが……さて、どうなることやら。

 

 

 そう考えつつも、俺は必死に無表情を保っていた。……だが、それも保てなくなりそうだ。急いでこの場を離れて1人になる必要がある。

 

 

「……ちょっと、シュウ!どこに行くのよ!?」

 

「1人で考えたい事がある」

 

 

 ジョディの言葉に対して簡潔にそう答え、なるべく自然を装ってその場を後にし、屋上へと向かう。

 

 

 

 

 

 

―――

――――――

―――――――――

 

 

 屋上への扉をくぐった後、すぐにその扉に鍵を掛け、屋上に人が誰もいない事も念入りに確認した俺は、そこでようやくポーカーフェイスを取っ払った。

 

 

「ふっ……くく……ふ、ふ――ははっ!ははははっ!!」

 

 

 そして、大声で狂ったように笑った。

 

 

「ははっ……!!っまさか、本当にやり遂げるとは……さすがだな、奴は…いや、あの人は……!!」

 

 

 あの人――シンガニは、俺の言う条件を見事にクリアしたようだ。

 

 

 ……事の発端は、シンガニが俺を黒の組織に勧誘してきたあの日。

 

 

 ――俺は、彼が差し出した手を取ったのだ。

 

 

「――そうか。こちら側を選んでくれるのか。……ありがとう」

 

 

 そう言って微笑むシンガニに対して、俺はこう言った。

 

 

「俺がそちら側に寝返るのは構わないが……その代わり、条件がある」

 

「……条件?」

 

「あんたの力を、証明してくれ」

 

「――ほう?」

 

 

 面白そうにニヤリと笑いながら見つめてくる彼に対して、俺はその条件を話した。……こちらが指定する人物を、指定した方法で、3日後……つまり今日、殺害するように、と。

 同時に、シンガニのメリットになるように、条件をクリアしたら俺が1つだけ、シンガニの言う事を何でも聞くという報酬をつける。さらに、どんな無理難題でも構わないと言った。

 すると、彼はますます愉快げに笑い、必ず成功させると意気込んだ。

 

 

 そして、指定した人物は今日、殺害されたのだ。条件通りに。それも、相当難易度の高い条件をつけたにも関わらず。

 ……遺体や目撃者から得た情報により、それが条件通りの殺害方法であった事が分かった時、咄嗟につり上がった口角を手で覆い隠したのは我ながらファインプレーだった。

 ……きっとその時の俺の表情は、決して周りに見せてはいけないものだっただろうから。

 

 ――これ程の力を見せつけてくれた相手であれば、喜んで下につく事ができる。

 

 

 そう考えていた時、シンガニから貰った携帯に電話が掛かってきた。……この携帯の番号を知っている人物は、今のところシンガニだけだ。

 

 

「……よぉ、赤井秀一。気分はどうだ?」

 

「あぁ、シンガニ――最高だ!!」

 

「くくっ……そいつは何よりだ。……で、俺はお前の言う条件をクリアしたわけだ。……約束通り、俺の言う事を1つ、聞いてもらうぞ。どんな無理難題でも構わないんだったな?」

 

「そうだ。……ただ、その前に……もう狙撃した場所からは離れたのか?」

 

「あぁ。今はちょうど空港に向かっているところだ。このまま日本に帰るとするよ」

 

「……そう、か」

 

 

 ……残念だ。日本に帰ってしまう前に一度会っておきたかった。……しかし、そうなると……

 

 

「……それなら、俺は何をすればいいんだ?もう日本に帰ってしまうんだろう?」

 

「なに、簡単な事だ。――今後、お前は俺のペットになれ」

 

「…………ペット?」

 

「そう、ペット。……俺、動物が好きなんだよ。特に犬。でも仕事が忙し過ぎて飼えなくてな……そんな時に有能で、放っておいても勝手に餓死する事のない、自由にさせておいても問題ない相手が手に入ったからな。ちょうどいいと思って。……まぁ、無理ならそれで構わないぜ?別に無理強いしたいわけじゃないんだ。最悪、本当に必要な時だけ、俺の言う事を聞いてくれればいい」

 

「…………」

 

「さぁ、どうする?」

 

 

 電話越しだが、シンガニの声音から少し笑っている事が分かった。……なるほど。どうやら、俺がどんな反応を返すのか、と楽しみにしているらしい。

 

 ならば。あえて乗っかるとしよう。

 

 

「――Yes Master(かしこまりました、ご主人様)。俺は今日から、あなたの犬になりましょう」

 

「え、」

 

「……しかし酷いですね、マスター。俺というあなたの犬を置いて、1人で日本へ帰ってしまうなんて……寂し過ぎて死んでしまったら、あなたのせいですよ?」

 

「お、おい、赤井…」

 

「おや、飼い犬の名前を間違えていますよ?――俺の名前は、今日から"ライ"だ」

 

「っ!!」

 

 

 そう。今日から俺はFBIの"赤井秀一"ではなく……かといって、黒の組織の"ライ"でもなく……

 

 ――シンガニ(ご主人様)"ライ"()になるのだ。

 

 

「ふっ……くくくっ……そうか……分かったよ――改めて、今日からお前は俺の犬だ。名前は、"ライ"」

 

「――ありがとうございます、マスター」

 

 

 ……さて。そうと決まれば、マスターの忠犬になるために勉強しなければな。でないと、いつマスターに捨てられるかも分からん。

 

 ……だが、今だけは。マスターとの会話を楽しむとしよう。

 

 そう考えた俺は、電話越しに聞こえるマスターの声に集中し始めた。

 

 

 

 

 

 

 …………なお、マスターの話はこれから待ち受けているジン(死亡フラグ)への対処をどうするか、という話が大半だった。

 

 ……マスター。それはさすがに俺でも対処できません。諦めましょう。

 

 

 

 

 

 

 




・銀の弾丸改め、未来の狂犬

 本人も無意識に抱いていた不満を見抜いたオリ主に口説かれ……もとい、勧誘された結果、狂犬への第一歩を踏む事になった。
 この後、初めは冗談の延長線で犬のように振る舞うが、途中からオリ主に構ってもらいたい、褒めてもらいたいという気持ちが勝るようになり、本気で犬になり始める。
 最終的に、オリ主が大好き過ぎて狂犬へと変貌する。


・狂犬を手に入れてご機嫌な黒の組織の兄貴分

 赤井秀一、ゲットだぜ!!さらに念願の愛犬()もゲットだぜ!!
 今後は赤井改め、ライを全力で甘やかす所存。自分に見捨てられないようにと健気に尽くしてくるライに骨抜きにされる事でしょう。
 迫り来る死亡フラグに少し怯えつつ、また、寂しがるライに後ろ髪を引かれつつ、日本へ帰国した。


・ヤンデレ臭が漂う死亡フラグな弟分

 鎖に足枷を用意して待ってるぜ、兄貴!!
<●><●>カッ


 …………オリ主、終了のお知らせ。





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