忠犬と飼い主~IF~もしもオリ主が黒の組織の幹部だったら?   作:herz

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・pixivのコメント欄にてリクエストをいただいた作品です

・ライ視点(途中からオリ主視点)

・時系列はそしかい前。映画、純黒の悪夢の直後

・純黒が始まるよりも前に、ライからの報告によってライの生存や、バーボンとキールの正体はオリ主、ジン、ラム、ボスにだけは筒抜けで、全部知っているけど泳がせているという設定

・ライとジンのキャラ崩壊あり

・捏造たっぷり




IF⑥狂犬、お仕置きされる

 

 

 東都水族館の喧騒から逃れるように、俺は車に乗ってその場を後にした。目的地は、マスターを除いて誰にもその場所を知らせていない、俺のセーフハウスだ。

 既に江戸川コナンやFBIの連中には"赤井秀一"の姿で工藤邸に戻るわけには行かない、と説明し、今日は別の場所で寝泊まりすると伝えてある。……今回の件について、マスターに報告しなければいけないからな。FBIの人間が稀に出入りする工藤邸に戻るわけにはいかない。

 

 やがて、セーフハウスに到着した。そして自宅の扉を開けようとして、気づいた。

 

 

(――誰か、いる)

 

 

 間違いない。扉の向こうに、誰かの気配を感じる。……だが、何者かは気配を隠そうとしていない。……だとすると、まさか……?

 

 

(……いや。早合点はするな。念のために拳銃はいつでも抜けるように……)

 

 

 それから俺は、扉を開けた。

 

 

「!!……っマスター……!」

 

「よぉ。邪魔してるぜ」

 

 

 やはり、マスターだった!……昂る心を抑え、素早く銃から手を放し、扉を閉めてその足元に跪いた。

 

 

「まさか直接お会いできるとは……!何の準備もできておらず、申し訳ございません……」

 

「構わない。何も言わずにここへ来たのは俺の方だ。……ほら、さっさとリビングに行くぞ」

 

「はい」

 

 

 ……この時。俺はどこか違和感を感じていた。いつものマスターなら、何の連絡もなしに行動を起こす事はない。それに……

 

 

(……頭、撫でてくれなかった)

 

 

 いつもなら、跪けば頭を撫でてくれるのに……

 

 そんな違和感に、少し不安を覚えつつ、俺はマスターに導かれてソファーに座った。

 

 

「さて……そのまま動くなよ、ライ」

 

「?……はい」

 

 

 "待て"と言われれば、もちろん待つが……すると、マスターは俺の体の触診を始めた。

 

 

「マ、マスター?」

 

「…………大体の怪我は上半身と顔に集中してるな……しかし、やっぱり服の上からだと面倒だな……よし、ライ。上着を脱げ。で、自分の怪我について、分かる範囲で今報告しろ。どうゆう状況で、どんな怪我をしたのか」

 

「それは、どうゆう……?」

 

「いいから、やれ」

 

「……Yes,master(はい、ご主人様)

 

 

 マスターがそう言うなら、やるしかない。……それから俺は自身の怪我について、覚えている範囲で報告した。

 

 

「…………なるほど。……まぁ今回の一件は、黒の組織が表立って動いたからな。今はFBIにいて、しかもボスに銀の弾丸(シルバーブレッド)と呼ばれているお前が関わるのは当然。むしろそうでないと不自然過ぎる。だから、大怪我は避けられないのは分かっていた。

 しかしだからと言って――一番酷い怪我が、バーボン……いや、降谷零に殴られた傷だというのは、どうかと思うぞ」

 

「…………申し訳、ございません」

 

 

 ……確かに。冷静になって考えてみれば、あんな状況下で殴り合いの喧嘩など、無駄でしかない。……無駄は、マスターが嫌っている事だ。

 

 

「例の、スコッチの一件か?原因は」

 

「……はい」

 

 

 マスターには以前、俺がまだ潜入捜査官だった時のスコッチの一件について、説明していた。だから、既に俺と降谷零の因縁についても知っている。

 

 

「……ふん。私情に囚われるなど、公安の……それも、ゼロの人間が聞いて呆れるな。そしてそれは……お前もだ、ライ」

 

「っ!!」

 

「今後、奴らは俺達を潰そうとさらに躍起になるだろう。そうなれば、ますますボロが出ないようにしなければならない。何せ敵には、頭の切れる奴や、観察眼に優れた奴が少なからずいるからな。……もしかしたら、たった1度のミスで、お前の寝返りが露呈するかもしれない……分かるな?」

 

「はい……」

 

「無駄な怪我をしたせいで、任務を遂行できませんでした……なんて展開はごめんだぜ」

 

「仰る通りです……以後は、2度と同じ失敗をしないよう、細心の注意を払います」

 

 

 このように叱られる事は、今回が初めてだった。自然と、俯き加減になってしまう。しかし……

 

 

「それは当然だな。だが――それとは別に、罰を与える」

 

「っ!?」

 

 

 その言葉に、はっと顔を上げた。……マスターの表情からは感情が読めなかったが、その代わりに漆黒の瞳には冷たい光が宿っている。……背筋が凍った。

 

 マスター……あなたは一体、今何を考えているのですか……?……まさか――

 

 

「――俺は、捨てられるのですか?」

 

「…………いいや。捨てはしない。罰を与えるだけだ」

 

 

 ……嘘はついていないようだ。ひとまずほっとした。

 

 

「では、どんな罰でしょうか?」

 

「簡単な事さ。――しばらくの間、俺と会話する事を禁止する」

 

「――――」

 

 

 あまりの言葉に、一瞬だけ思考が停止した。……会話を禁止する、だって!?

 

 

「俺に話し掛ける事、俺に電話する事、仕事以外でメールをする事を禁止する。……つまり、まともにやり取りをするのは仕事が関わった時のメールでのみ、という事だな」

 

「そんな、マスターっ…」

 

「口を閉じろ」

 

「っ……!!」

 

「……今のは許すが、今後はお前が話し掛けて来ても無視するし、話し掛ける度に会話禁止令の期間が長くなっていくからな。気をつけろよ?……まぁ、そもそも俺からお前に会いに行く事自体がしばらく無くなるから、そのつもりでな」

 

「なっ……!?」

 

 

 そんな……なんてことだ……!!

 

 

「と、言うわけで話は終わりだ。俺は帰る」

 

「なっ、もう!?マ、マスター!せめて今日は……今日だけはここにいてくれませんか!?」

 

「…………」

 

「マスター?……マスター!!」

 

「…………」

 

 

 ……無言のまま、マスターはセーフハウスから出て行ってしまった。

 ……本気、なのか……本気で、自分との会話を禁止する、と……

 

 

「――シンガニ…っ…!!」

 

 

 あなたとしばらく話せないなんて、俺は一体どうすればいいんですか……?しばらく、とはいつまでですか……!?

 

 

 ……マスターの一言で、俺は絶望の淵に立たされる事になった。

 

 

 

 

 

 

―――

――――――

―――――――――

 

 

 ――あれから、1ヶ月が過ぎた。……未だに、会話禁止令は解けない。

 

 

 自分でも相当参っている事は自覚していたが、意地でも表には出さなかった。そのおかげでFBIの人間にも、何かと鋭いあの名探偵のガキにも、気づかれていない。

 マスターから与えられた罰が原因で俺が動揺し、既に黒の組織に寝返っている事を悟られるわけにはいかないからな……

 

 ……しかし。そろそろそれも限界かもしれない。

 

 数日前から、食欲がなくなり始めている。それに不眠症状も出始めた。……これでは、近いうちに何らかの支障が出る。

 ……間違いなく、マスターと会っていないから不調になり始めたのだ。

 

 

(…………会話禁止令を出された当初から気づいていたが、抜け道は、ある。マスターはおそらく、あえてこの抜け道を作った)

 

 

 でなければ、会話禁止令を出した時にすぐさま"これ"を回収していたはずだ。……だが……

 

 

(……本当に、抜け道を使っていいのだろうか。今の俺は罰を与えられている身だ。それなのに、それを破るような真似をしていいのか……?)

 

 

 しかし、だからといってこのまま不調が続けば、今後、奴らを潰す作戦を実行する時に足手まといになってしまうかもしれない……

 

 

 沖矢昴の仮面を被ったまま、工藤邸内の客室で悩んでいたその時、沖矢昴として所持している携帯に、電話が掛かってきた。……非通知だ。

 念のため、その電話に出る事にした。

 

 

「……はい、もしもし」

 

「…………」

 

「……あの、どちら様でしょうか?」

 

「――くくっ……違和感しかねぇな。その声は」

 

「っ!?」

 

 

 この声……まさか……!?

 

 

「……何のご用でしょう?悪戯電話なら切りますよ」

 

「まぁ待てよ、ライ。……周りに誰もいないようなら、盗聴器等の確認をしてから変声機を切れ。普段の声以上に耳障りだ」

 

「…………ちっ」

 

 

 何故こんな時に、こんな奴と話さなければいけないんだ。……だが、何か重要な指令が伝えられるのかもしれないと考えれば、無闇に電話を切るわけにもいかない……

 そう思い、仕方なく――本当に、仕方なく――盗聴器等の有無を調べてから、変声機を切った。

 

 

「…………何の用だ――ジン」

 

「ふん……やっぱりムカつく声だな。さっきよりはマシだが……まぁいい。……普段ならシンガニの仕事だが、今あの人は手が放せないからな。俺がてめぇとの情報の共有を任された」

 

 

 ……なるほど。そうゆう事だったか。

 

 

「2度は言ってやらねぇから、しっかりと記憶しろよ。まず――」

 

 

 それからジンは、淡々と新たな情報や連絡事項を話した。

 

 

「――以上だ。分かったな?」

 

「あぁ。……それより、聞きたい事がある」

 

「あ?」

 

「マスターが今手を放せない……とはどうゆう事だ?」

 

「は?…………あぁ、なるほどな……くくくっ、ははっ!てめぇは何も聞いてねぇのか!」

 

 

 俺を嘲笑いながら、ジンはそう言った。……こいつ……!

 

 

『何がおかしいんだよこの――――が!』

 

「っは……落ち着けよ。今のてめぇは沖矢昴なんだろ?そんな汚い言葉を使っていいのか?なぁ?」

 

「っ……!!」

 

 

 ……変声機を切れって言ったのはてめぇだろうが……!!

 

 

「くくっ……いい子だなぁ、沖矢昴?……ご褒美に、教えてやるよ。他の幹部や下っ端達が全員知っているにも関わらず、てめぇだけが(・・・・・・)知らねぇ事を、な……」

 

「――っ!!」

 

 

 いつか……いつか絶対に殺してやる!この銀髪ポエマー野郎……!!

 

 

「……今、シンガニは国外にいる」

 

「何だと!?……っ!!」

 

 

 そういえば、マスターから俺に会いに行く事自体がしばらく無くなると言っていたが……もしや、この事だったのか……!?

 

 

「日本やアメリカの犬共を潰す作戦のために、下準備をしてくると言っていた。今後を左右する重要な下準備で、かなり本格的に取り掛かっているらしい。……あの東都水族館で弾丸の雨を降らせてやった日からそう間を置かずに出国して行ったからな。そろそろ1ヶ月が経つか?……まぁ、今日中には帰って来るそうだが…」

 

「帰って来るのか!」

 

「…………ちっ。俺としたことが、余計な事までバラしちまった。……いや、待てよ?……そういえば、シンガニが帰って来たとしてもてめぇはあの人と話せないんだよなぁ?会話禁止令が出てんだろ?」

 

 

 ジンがまたもや嘲笑うようにそう言った。……何故それを知っている……!?

 

 

「くくっ……シンガニから聞いたぜ。東都水族館でしくじった事への罰なんだろ?……っは、良い気味だぜ……」

 

「くっ……!!」

 

「お仕置きされてる気分はどうだ?犬っころさんよぉ……?」

 

「ぐぅ……っ……!!」

 

 

 殴りたい……!サンドバッグにしてやりたい……!!いや、いっその事犬らしく噛み殺してやろうかこの野郎……!!

 

 

「……あ?どうした、ウォッカ…………そうか、帰って来たか。…………聞いたか?シンガニが今帰って来たそうだ」

 

「!!」

 

「くくっ……まぁ安心しろ。俺がてめぇの代わりにシンガニの兄貴とたくさん(・・・・)話して来てやるからな」

 

「っ、てめぇ!!」

 

「はははっ!……じゃあな」

 

 

 ……電話が切れた。……それから、スマートフォンをベッドに向かって投げつけた。

 

 

『――――っ!!……あの野郎……!!』

 

 

 誰もいないのをいいことに、俺はひたすらスラング英語を撒き散らした。……そして……

 

 

「――限界だ」

 

 

 もう、耐えられない。

 

 

 

 

 

 

―――

――――――

―――――――――

 

 

 国外での下準備を終えて、日本に帰国した。先に組織の拠点に寄ってボスに事の次第を報告し、それからジン達幹部に帰国した事を知らせるついでに、土産を渡す。……やけに機嫌のいいジンの事が少し気になったが……まぁ、いいか。

 

 その後、1ヶ月振りに自宅へと帰ったのだが……

 

 

(――誰かが、いる)

 

 

 家の中に、確実に、誰かがいる。……これは、もしや……?

 

 いつでも銃を抜けるように準備はしたが、俺はそこまで警戒していなかった。なぜなら、まず、この家のセキュリティはかなり高度なもので、泥棒やら不審者が入る事はまずないからだ。

 そしてそれを除けば、俺の家に入って来れる人間は、合鍵を渡している2人の男に限られる。そのうちの1人であるジンは、つい先ほど別れたばかりだから、除外される。

 つまり、この気配の正体は、合鍵を渡してあるもう1人の男の方だ。

 

 ……とはいえ、確認する必要があるな。

 

 俺は、スマートフォンを取り出して、とある人物に電話を掛けた。

 

 

「……あー、もしもし?今、俺の家の中を確認してもらいたいんだが…おぉ、そうか。それで?…………そうか。ちゃんと我慢できたんだなぁ……じゃあ、もういいよな?………了解した。

 ……だが、もうこんな事はこりごりだからな。余程の理由がない限りは止めてくれ。でないと――さすがに俺、怒るぜ?本気で。……じゃあ、切るぞ。ボスによろしく」

 

 

 電話で、ある事を確認した俺は、銃から手を離して警戒を解き、自宅の入り口の扉を開けた。――その瞬間、

 

 

「――っ!?」

 

 

 何者かの腕が俺の腕を掴んで、室内へと引きずり込んだ。そして、その腕の中に閉じ込められるのと同時に扉が閉まり、オートロックが掛かった。

 

 

「…………」

 

「…………」

 

 

 ……その後、沈黙が続いた。……こいつ、まさかまだ律儀に俺の言い付けを守っているのか?本当に、意外に健気な奴だよなぁ……

 

 それなら、"よし"って伝えてやらないとな。

 

 片腕を伸ばし、俺を抱き締めている男の頭を撫でた。

 

 

「――Good boy(いい子だな)、ライ。……会話禁止令は既に解かれた。もう話せるぞ」

 

「…………マス、ター……?」

 

「あぁ」

 

「っ……マスター……」

 

「んー?何だよ?」

 

「っ、マスター……マスター、マスター、マスター、マス…っシンガニ……!!」

 

「ぐえっ」

 

 

 突然、今まで以上に強く抱き締められた。おかげで変な声が出ちまった。……かなり我慢してたみたいだな……しばらく、やりたいようにやらせてやるか……

 

 ……しばらくの間、ライは俺を相手に、肩や背中にグリグリと頭を押し付けてきたり、正面から抱き締めてきたり、俺の頭の上に顔を押し付けてきたり……仕舞いには家の中のソファーまで、俺を抱き上げて運んでそのまま俺を膝の上に座らせたりと、好き放題に甘えてきた。

 そして現在。ライは俺の体に寄りかかって、俺の肩に頭を預けるという形で落ち着いている。

 

 

「……マスター」

 

「何だ?」

 

「……先ほど、マスターは会話禁止令は既に解かれた、と言ってましたよね?」

 

「あぁ」

 

「あれではまるで、会話禁止令を実際に出していたのはあなたではなく、別の誰かであったように聞こえたのですが……」

 

「……ふふ……やはりお前は冷静であれば、目の付け所が違うな……」

 

 

 実際、ライの言う通り、会話禁止令を出したのは俺ではなく……ラムだったのだ。

 

 

 先ほど、自宅の扉を開ける前に電話を掛けた相手が、ラムだった。……俺が電話で確認したかった事は、ライが1ヶ月の間、俺の家に入って来なかったかどうか、だった。

 最初、ラムに会話禁止令を出す事を指示された時、期間は無期限だった。しかし、それではライが耐えられないだろうと考えた俺は、期間を1ヶ月に設定するようにと、ラムと交渉した。

 その際、あえて抜け道を作る事を条件に、期間を1ヶ月にする事を認めてもらった。その抜け道というのが、"俺に会いに行く事を禁止しない"事だった。そして、合鍵をあえて回収しないようにすれば、ライも抜け道に気づくはず。

 

 では、何故そんな抜け道を作ったのか。……それは、ライの事を試すためだった。

 

 元々、俺に会話禁止令を出すようにラムが指示を出したのは、ライの忠誠心や忍耐力を測るためだったのだ。

 ……もしもその程度が低ければ、ライへの信用はなくなる。それはつまり、今後俺達を潰しに来るであろう警察組織に対抗する際、何らかの支障が出る事を意味していた。未だ奴らに裏切りを悟られていないライの存在は、既に作戦の要となりつつある。

 

 ならば、一度試さねばならない……と、ラムが言い出した。

 

 あえて抜け道を作り、それに気づいた時、ライはすぐにそれを使うか、否か。……そうする事で、ライには俺の命令を守る忠誠心があるのか、"待て"を継続できる忍耐力があるのかを、試したのだ。

 ちょうど、俺が例の下準備で1ヶ月ほど留守にする事が決まっていたため、ライにはその事を黙っておき、その間に俺の家にいくつか監視カメラを設置して、ライが現れるかどうかをラムが見張る事になった。

 

 ――完全に"人間モニタリング"だ。……実に、不快だった。

 

 組織の今後を考えれば、これは必要な事だった。それは、分かる。……しかしだからといって、俺の犬にこんな無理をさせるなんて……

 ……だから、電話でラムに確認して、ライが1ヶ月以上耐えきった事を知った俺は、内心ではかなり喜んでいた。ついでに、次にこんな事をやらせるなら本気で怒るぞ、と軽く脅しておいた。ラムは俺が本気で怒るとどうなるかを知っているから、今後は自重してくれるだろう。

 

 

 ……といった事を、ライに説明した。

 

 

「…………ごめんな。こんな無理をさせちまって……つらい思いをさせた。すまない」

 

「いえ……俺は、あなたが俺を捨てないでくれれば、それで構いません」

 

「……誰が捨てるかよ、バカ野郎」

 

 

 自分で飼うと決めた犬を捨てるなんて、飼い主失格だろうが。それに……

 

 

(――もう、俺はお前を手放せないんだ)

 

 

 捨てるなんて、考えられない。

 

 

「……目の下、隈ができてるな。……寝てないのか?」

 

「……はい。最近は特に。……あなたと1ヶ月も話せなかった事なんて、今までになかったもので、それで……」

 

「……いつ会話禁止令が解除されるのか、不安になり過ぎて……って事か?」

 

「はい……」

 

「そうか。……悪かったな」

 

「いえ。あなたのせいではないので……」

 

「俺のせいではない、ね……」

 

 

 ……実は、必ずしもそうとは言えないんだよな……

 

 

「…………あのな、ライ。確かに、会話禁止令を出したのはラムだが……どちらにせよ俺は、それがなくても別の罰をお前に与えていただろう」

 

「え……?」

 

「俺はあの時、確かに怒っていたぞ。……何故か、分かるか?」

 

「それは……俺が無駄な怪我をしたから…」

 

「違う。それは、組織の人間として思っていた事だ。……俺個人としては、お前が怪我をして俺を心配させた事と――何よりも、お前を危険な目に合わせてしまった、俺自身に怒っていたんだ」

 

 

 そう言って、俺は頭を抱えた。

 

 

「マスター……?」

 

「……本当に、何やってたんだかな、俺は。未だにこちら側へ呼ぶ事ができないとはいえ、お前を危険な目に合わせたし、ジン達だってオスプレイからうまく脱出してくれたから良いものの、危うく死ぬところだったし……俺だけが、安全な場所でのうのうと指示を送るだけだったのだと思うと……」

 

 

 ……溜め息が出た。

 

 

「……いや、もうそれはいい。既に終わった事だ。……とにかく!」

 

「!」

 

 

 話を変えるために、俺はライの顔を両手で掴み、無理やり目を合わせた。

 

 

「――もう、酷い怪我なんてしてくれるなよ。頼むから……」

 

「マス、ター」

 

「返事は?」

 

「――Yes,master(かしこまりました、ご主人様)。あなたを心配させないよう、尽力します」

 

「ん、Good boy(いい子だ)

 

 

 そう言ったライの頭を、気持ちを込めて撫でてやった。……さて、と。

 

 

「ライ。お前、今日はいつまでここにいられる?」

 

「そう、ですね……あと、3時間ぐらいなら」

 

「そうか。……じゃあうちでその3時間、寝ていくか?」

 

「!?……いいんですか?」

 

「あぁ。……今回の事は、確かに俺の本意ではなかったが……俺は1ヶ月前にお前が傷だらけになっているのを見て、勝手に腹を立てて……つい、冷たい態度を取って、結局ラムの計画に乗せられる形で行動してしまって……お前を傷つけた。……だから、その詫びに、と思ってな」

 

「……ありがとうございます。では、お言葉に甘えて」

 

「おう。……何なら、添い寝してやってもいいが…」

 

「お願いします!」

 

「…………お、う。分かった」

 

 

 …………冗談のつもりだったんだが。……まぁ、いいか。たまには。

 

 

 

 

 






・実はモニタリングされてた狂犬

 会話禁止令を出されて絶望した。マスターと話せない、だと……!?……鬱だ、死の…いや、死んだら2度とマスターに会えないじゃないか!却下!!
 1ヶ月以上もオリ主と話せなかった上に、ジンに散々ざまぁwwwされてSAN値をゴリゴリ削られ、仕方なく抜け道を使ってオリ主の自宅に侵入。
 数時間、玄関で微動だにせず、オリ主の帰りを待っていた。

 黒ずくめでガタイのいい男が電気も点けずに微動だにしていないなど、傍から見れば恐怖でしかない……byラム


・後ろ髪を引かれつつ出国した兄貴分

 会話禁止令を出した時のライの絶望した表情が忘れられない。ごめん……ごめんなライ……!!
 帰国してからライがちゃんと命令を守っていた事をラムから聞き、感動した。ご褒美に、好きなだけ甘えさせて、甘やかす。
 実はオリ主もライが心配であまり寝ていなかったため、添い寝をした事で互いにSAN値回復。眠ったのは3時間だけだったのにめちゃめちゃスッキリした。

 もしもまた愛犬に無茶をさせるようなら本気でキレる所存。親バカならぬ飼い主バカ。


・ざまぁwwwした弟分

 ライwwwwwwざまぁwww(ゲス顔。普段はオリ主に甘やかされているライが、不憫な目に合っていてご満悦。ここぞとばかりに盛大にざまぁwwwする。

 だがしかし、後に……?





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