忠犬と飼い主~IF~もしもオリ主が黒の組織の幹部だったら?   作:herz

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・pixiv内で頂いた、「コナンやFBI視点の話を読んでみたい」というリクエストより。

・FBIと公安へのヘイト表現あり。

・ご都合主義、捏造過多。

・シリアス。

・キャメル視点


 前編と後編に分けます。




IF⑦ 前編

 黒の組織壊滅作戦は、失敗した。その原因は味方の――赤井秀一の、裏切り。

 

 まさか。……まさか、あの赤井さんが裏切るなんて……!そんな事、誰も予想できなかった。できるはずがなかった。

 何よりも、我々の司令塔であるクールキッド――コナン君が、1番信頼していた人だったから。

 

 そのコナン君はというと、我々が閉じ込めれている場所――組織の人間は拠点の最下層だと言っていた――には、いない。彼だけは、別の場所に連れていかれてしまった。それにボス……ジェイムズさんと降谷さんも、ここと同じフロアにいるはずだが、それぞれ別の場所で監禁されているようだし……

 心配だ。3人共、無事なのだろうか……?

 

 

(……ここに監禁されてから、全く情報が与えられない。与えられるのは、最低限の水や食料。それから環境。……まさか、監禁されている場所にシャワーやトイレが完備されているとは……それに、あらゆる衛生管理が整っている。……監禁にしては、待遇が良すぎる)

 

 

 一体、黒の組織は何を考えているんだ……?

 

 

 我々が監禁されている場所は、幾つもの広い牢屋だった。ここに監禁される前に、FBIと公安の捜査官達はまず、性別で2つに分けられた。そこからさらに5~6人のグループに分けられ、それぞれがこの広い牢屋に収容された。

 コナン君と、ジェイムズさんと、降谷さん以外の男性の捜査官達の事は、鉄格子越しに他の牢屋を見る事で把握できているのだが……ジョディさん達、女性捜査官はこことは別のフロアに監禁されているらしく、彼女達がどうなっているのかまでは、分からない。……無事だといいが……

 

 と、その時。突然このフロアの入り口がある方面から、幾つもの怒声が聞こえた。……その合間に、2人分の足音も聞こえる。誰が来たんだ?

 

 

「この裏切り者め!何をしに来た!?」

 

 

 ……という罵倒が聞こえた時、誰が来たのかが分かった。……赤井さんだ!では、もう1人は?

 

 それが気になった私は、一緒に収容されていた仲間達と共に鉄格子に近づいて、その様子を見た。……赤井さんと共にいたのは、黒の組織の幹部――シンガニだった。

 2人は怒声を浴びせられても表情1つ変える事もなく、颯爽と歩いている。しかし、

 

 

『――そんな女顔の野郎の犬に成り下がりやがって!恥を知れ!!』

 

 

 そんな、一際大きい声が聞こえた時、赤井さんの足が止まった。……私の同僚の声だった。

 

 この声の主の事を、私は嫌悪していた。……彼は赤井さんに……我々の大事なエースに嫉妬し、理不尽な誹謗中傷を浴びせたり、陰口を言う者達の中でも、特に目立っていた人間だ。

 一方的に赤井さんをライバル視し、その上、中傷を広めるような彼の事は、本当に嫌いだ。中傷は以ての他だし、何より、あの(・・)赤井さんに敵うはずがないのにライバル視しているなんて、烏滸がましい。

 

 そんな男の声を聞いた赤井さんは、そいつがいる牢屋の方へ振り向いた。

 

 

「……ライ?」

 

 

 シンガニもまた、足を止めて赤井さんを見た。……ライ、などと呼ばないで欲しい。

 

 彼は――赤井秀一は、我々FBIの大事なエースで、英雄(ヒーロー)なのだから。

 

 

「……申し訳ありません。マスター。今、聞き捨てならない言葉が聞こえたもので」

 

「放っておけ。そんな屑の言葉など、気にする必要はない」

 

「しかし――」

 

『あ?……なんだお前――そんな趣味の悪いチョーカーなんて着けやがって。まるで犬の首輪だな!!』

 

 

 ――ガァァンッ!!

 

 

 ……突如として響いたその轟音に、今まで罵声を浴びせていた者達が、一斉に口を閉じた。……一体、何が起こったのか。私はこの目で見ていた。

 

 ――赤井さんは、そのすらりとした長い足で、男がいる牢屋の鉄格子に向けて、回し蹴りを放ったのだ。……その威力は、先ほど聞こえた轟音が物語っている。

 

 

「……ライ。落ち着け」

 

『――今、何て言ったんだ、てめぇ……』

 

 

 静かで、とても低い声だったのに……何故かその声は、我々がいるフロア中に届いた。

 

 

『え……う、あ…』

 

『間違いじゃなければ……今、てめぇは馬鹿にしたよな……?俺の大事な大事なマスターから――俺が心から崇拝するシンガニから贈られた、このチョーカーの事を!!』

 

『ひぃっ!?』

 

「落ち着けって」

 

 

 あの赤井さんが……感情を爆発させている!?それも、烈火の如く怒りを顕にしている……!!

 

 

「ライ…」

 

『この―――――がっ!!これは世界にたった1つの、俺だけの特別なチョーカーだ!シンガニが俺を手離さない事を証明してくれた、大事な"首輪"なんだよ!!それをてめぇは…』

 

「――秀一!!」

 

「っ!!」

 

 

 ビクリと、体を震わせた赤井さんが、シンガニの方へ振り向く。そして、すぐにその足元に片膝をついて跪いた。

 

 

「…………マスター。……すみませんでした」

 

「……落ち着いたか?」

 

「はい……」

 

「ん、そうか……Good boy(いい子だ)ライ」

 

 

 そう言って、シンガニは赤井さんの頭を軽く撫でた。……それだけで赤井さんはうっとりと、息を吐く。……なんで、

 

 

(どうして赤井さんは――あんなに幸せそうにしているんだ……!?)

 

 

 FBIとして仕事していた時も、普段の時も、あんな……あんな緩んだ表情を見せてくれた事は、1度もなかった!それが何故、敵組織の幹部なんかに……!!

 

 わけが分からなかった。そして、シンガニに対する怒りを感じた。……きっと、奴が赤井さんに何かをしたんだ!

 

 そんな怒りを感じたまま、再び赤井さんと共に颯爽と歩き出したシンガニを睨む。そして、2人が私のいる牢屋の前を通ったその時、私と同じ牢屋にいる同僚が、口を開いた。

 

 

『どうして――なんでだよ、シュウ!お前は、俺達の仲間で、FBIのエースだったはずだ!それがなんで裏切りなんて……!!っ――信じていたのに!!』

 

 

 目の前で、シンガニが足を止める。

 

 

『…………1つ、聞きたい』

 

 

 シンガニが、英語でそう言った。

 

 

『信じていたのに、とはどうゆう事だ?』

 

『は……?』

 

『お前はライの事を、絶対的な味方だと、正義の象徴であると……そんな風に、信じていたのか?』

 

『……そんなの、当たり前だろ!だって、シュウはFBIのエースで、黒の組織を壊滅させる切り札の銀の弾丸(シルバーブレッド)で――みんなの英雄(ヒーロー)なんだぞ!!』

 

「っ……!!」

 

 

 ……気のせいか?今、赤井さんの肩が揺れたような――

 

 

 ――ガァンッ!

 

 

 ……瞬間。先ほどの轟音よりは控えめだったが、それでも充分大きな音が響いた。……シンガニが、私達のいる牢屋の鉄格子に、拳を叩きつけたのだ。

 その衝撃に、私達は全員後退りをした。……そして、恐ろしいものを目にする。

 

 

 ――酷く冷たい漆黒の瞳が、私達を見下していた。

 

 誰かが、息を呑んだ音が聞こえた。

 

 

「……つくづく、無能で、無知で、愚かで――反吐が出るほどに屑だな、てめぇら」

 

 

 いっそ恐ろしさを感じるほどに無表情なシンガニが、そう言った。……しかし、その無表情はほんの一瞬だけだった。

 

 

「その無責任な信頼がライを追い詰めていた事に、何故気づかない……?てめぇらはライを――秀一を、なんだと思っているんだ!!」

 

「っ!?」

 

 

 そう叫んだシンガニが、歯を剥き出しにして怒りを爆発させたのだ。そこからさらに罵倒しようと思ったのか、シンガニが口を開いた……その時――

 

 

 ――赤井さんが、背後から片手でシンガニの両目を覆い、もう片方の手でその体を抱き寄せた。

 

 

「何、」

 

「―――さん」

 

「っ、」

 

 

 赤井さんが、シンガニの耳元で何かを呟いた瞬間、先ほどまでの様子がまるで嘘のように、落ち着いた。

 

 

「あなたが先に言ったんだろう?……"そんな屑の言葉など、気にする必要はない"と」

 

「…………」

 

「俺のために、普段は冷静なあなたが、そこまで怒りを顕にしてくれる事は、とても嬉しい。しかし、」

 

 

 シンガニの体を抱き寄せていた手がシンガニの右手を掴み、それを自分の目線まで上げて、強く握られていた拳を開いた。……手の平には血が滲んでいる。

 

 

「――そのために自身の体を傷つけてはいけない」

 

 

 そんな手の平に、血が滲んでいるにも関わらず口付けをして、そのままそれに自分の頬を寄せる。――とても、愛おしそうに。

 

 ――それはまるで、神聖な儀式のようだった。

 

 

「……だが、そのおかげでよく分かった。やはり、俺の居場所は1つしかないのだと」

 

「……秀一」

 

「俺の居場所があるのは――あなたの側だけだ」

 

 

 そう言って、赤井さんは一瞬だけ寂しそうな表情を見せた後――一転して、凍りついた表情で、こちらを見る。

 

 

「俺にとって、シンガニ以外の存在は――全てが不要なのだと、改めて確認する事ができた」

 

「――――っ!!」

 

 

 血の気が一気に引いていったのを、強く感じた。……唐突に、理解した。理解してしまった。

 

 

 ――赤井さんがこちら側に戻って来る事は、もう2度とないのだと。

 

 

「…………もう、いいのか」

 

「……はい。……元々、期待はしていませんでした。先ほど様子を見てきた女の捜査官達も、こいつらと大差はありません。……江戸川コナンは、まだ分かりませんが」

 

「……そうか。では――救済は、不要か?」

 

「――えぇ。不要です」

 

 

 救済、というのが一体何を示しているのか、私には理解できなかったが……不穏な空気を感じた。

 その空気を感じて不安と焦りに襲われた私は、赤井さんに声を掛ける。

 

 

「あ、赤井、さん」

 

「じゃあ、行くか」

 

「はい」

 

「ま、待ってください!赤井さん!……赤井さん!?」

 

 

 私が呼んでも、赤井さんはもうこちらに目も向けてくれなかった。……それでも諦めきれずに、彼を呼んだ。

 

 

「っ、赤井さん!!」

 

 

 すると、彼は一瞬だけ振り向き――

 

 

「―――――――――」

 

 

 ある言葉を口にした。……その後は2度と振り返らず、その場から立ち去ってしまう。

 

 

「っ……うぅ……っ、あ、あぁ……っ!!」

 

 

 …………その言葉を聞いた私は、泣き崩れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――もう、手遅れだ……キャメル」

 

 

 

 

 

 

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