忠犬と飼い主~IF~もしもオリ主とルパン三世が過去に出会っていたら?   作:herz

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・オリ主視点。


IF④ カーチェイス開始!&護衛任務終了

 

 

 派手な登場をして銃を構えている秀一と、そんな秀一に殺気を向けられているルパン一味との間で一触即発の空気が漂う中、聞き覚えのある声が聞こえた。

 

 

「赤井秀一ぃぃっ!何をやっている!?器物損壊罪で逮捕するぞ!!」

 

「……たった一蹴りで粉々って、どんだけだよこの人……」

 

「っ、安室!?それに、コナンまで……」

 

 

 危うく降谷と呼びそうになった。

 

 

「荒垣さん!大丈夫!?」

 

「何もされてませんよね!?」

 

「あ、あぁ。俺もソフィアさんも、この通り無事だ」

 

「それは良かった。……さて、」

 

 

 そう言って、安室もルパン一味に睨みをきかせる。……おい、降谷の顔が出てるぞ。

 

 

「そのまま動かないでくださいね、こそ泥さん?――怖い狂犬に噛み付かれたくなければ、ね」

 

「……和哉さん。ソフィーと一緒にこちらへ」

 

「分かった。……ソフィアさん」

 

「は、はい」

 

 

 座っていたベッドから立ち上がり、ソフィアさんと共に秀一達の元へ向かう。……そして、彼女をコナンと共に後ろへ下がらせてから、俺も懐から拳銃を抜いて、構えた。

 

 

「形勢逆転だな。ルパン三世」

 

「…………どうやってここを突き止めた?」

 

「追っ手はいなかったはずだ」

 

「簡単な事さ。俺が発信器をつけていて、秀一達はそれを追ってここまで来たんだ」

 

「発信器、か……そういや確認し忘れてたな……もしかして、そのネクタイピン?」

 

「……よく分かったな。正解だ」

 

 

 今、執事服を着ている俺は、あるネクタイピンを付けていた。それこそが、例のもの(・・・・)である。

 

 例のもの……ネクタイピン型の発信器は、俺と秀一のために2つ用意された。これを開発したのは、コナンがお世話になっている、阿笠博士さんである。

 これには発信器と盗聴器としての機能がついており、そこから得られた情報が大本となる機械へと送られる……という仕組みだ。

 実は今日。コナン、降谷、ジョディ、キャメルが、この大本となる機械を持って、東都ベルツリータワーの近辺で待機していた。エメラルド・フラワーがルパン三世に狙われている可能性が高くなったため、万が一何かが起こった時に対処できるよう、この4人が待機していたのだ。

 ……ちなみに、今回は珍しくボスが我が儘を言って、待機組として行動したいと主張したのだが、即座にジョディに却下されていた。ジョディ曰く、

 

 

「どうせ、峰不二子が目当てなんでしょう!?」

 

 

 との事。……どちらかと言えば、俺は次元大介派だ。クールなガンマンってカッコいいよな。まぁ、今回は誘拐した、されたの関係だから塩対応にしたけど。

 また、風見は降谷の代わりに公安の連中の統率を頼まれたため、不参加だ。

 

 ……そう言えば、その峰不二子がいないな。どこか別の場所にいるのか?……まぁ、今は気にしなくていいか。

 

 

「和哉さん、こいつらどうします?とりあえず手足を撃つか折るかして身動きが取れないようにしますか?それともボコボコにして半殺しにしますか?」

 

 

 さぁ指示をください、とばかりに俺を笑顔で見つめる秀一。……目は笑っておらず、爛々としている。非常に怖い。

 

 

「とりあえずその重苦しい殺気を仕舞って、stay(待て)

 

Yes,master(はい、ご主人様)

 

 

 そう指示を出すと、秀一は素直に大人しくなった。

 

 

「…………あらー、なんてよくできた忠犬なんでしょー……」

 

「見事に手綱を握っているようだな……」

 

「猛獣使いかよ……」

 

「で、安室。ここにお前らがいるって事は、アーロンさんの護衛としてジョディとキャメルを残して来たんだよな?」

 

「えぇ。そうです」

 

「よし。……コナンとソフィアさんは、前に出ないように」

 

「うん!」

 

「わ、分かりました」

 

「報告は?」

 

「しました。直に到着するはずです」

 

「了解。……というわけで、しばらく大人しくしてろよ?」

 

「……とか言われて、俺様達が素直に従うと思う?」

 

「思わねぇな」

 

「さすが和哉ちゃん♪分かってるねぇ……ってことで!!」

 

 

 そう言い切ると同時に、ルパン三世が何かを地面に叩き付けた。すると、室内に煙幕が充満する。それから、何かが崩れた音。

 

 

「…………ちっ……まぁ、そうなるよな」

 

 

 煙幕が晴れた時。空き家の壁の一部が綺麗に切り取られ、穴が空いていた。間違いなく、石川五ェ門の斬鉄剣によるものだろう。

 

 

「……でも、間に合ったみたいだよ」

 

 

 いつの間にか俺達の後ろから前に出ていたコナンが、切り取られた穴から外を覗いている。それに続いて、俺達も外を見た。

 

 そこには、大勢の警察官に周囲を囲まれたルパン三世達がいた。

 

 

「……あちゃあ……外国人も混ざってるって事は、もしかしてFBIもいる?」

 

「あぁ、そうだ。和哉さんが拐われた事が分かったと同時に、応援を呼んだ。ボウヤがそうするようにと言ったんだ」

 

「パパ達を捕まえるなら、これぐらいはやらないとね!特に前回捕まえられなかったからって、みんな張り切ってるんだよー」

 

「パパ言うな!」

 

「それにね――もーっと怖い人も呼んでるよ!」

 

「…………嫌な予感がすんだけどガキンチョ、それってまさか――」

 

「――そう!ワシの事だ!!」

 

「やっぱりとっつあん!何でいるの!?」

 

 

 ルパン三世が振り向いた先にいたのは、銭形警部だった。

 実は、ロバート・ペレスが捕まった報告と共に、銭形警部が日本に向かっているという報告もあったのだ。よって、銭形警部もルパン一味を捉えるために、我々に協力してくれる事に。……これほど頼もしい味方はいないな。

 

 

「さーて……次はどうするんだ、ルパン三世?」

 

「……そんじゃあこうしま…っ!?」

 

 

 その時。ルパン三世の手に握られていた何かを、秀一が撃ち抜いた。おそらく、また煙幕を利用して逃げるつもりだったんだろう。

 

 

「……2度も同じ手は使わせない」

 

Good boy(いい子)。よくやったな、秀一」

 

「はい!」

 

「良い腕だ!よくやってくれた。――総員、確保だ!!」

 

 

 銭形警部の号令で、警察官全員がルパン一味に飛びかかる。……ん?あれは……!

 

 

「っ、待て!全員下がれ!!」

 

 

 俺がそう叫んだ瞬間、ルパン達を中心に閃光が広がった。これは、スタン・グレネードか!

 後方にいた警官達や俺達にはあまり影響がなかったが、その近くにいた警官達はひとたまりもなかった。

 

 

「眩しいっ!」

 

「目がぁ……!!」

 

「おい、しっかりしろ!」

 

「……あ!?ル、ルパン一味がいません!!」

 

「逃げられた!?」

 

 

 閃光がなくなった頃には、既にルパン三世達はいなかった。……だが、音は聞こえていた。

 

 

「車が走って遠ざかる音が聞こえた!奴らは車で逃走したんだ!」

 

「あぁ、ワシも聞こえていた!そして、表の道はこの通り、パトカーで塞いでいる!つまり、奴らが逃げたのは……」

 

「空き家の裏か!」

 

「確認してきます!」

 

 

 そう言って、安室が空き家の裏へと回った。……そしてすぐに戻って来た。

 

 

「タイヤの跡がありました!逃げた方向は東です」

 

「よーし、追うぞ!動ける者達で追うんだ!」

 

 

 それから、動ける警官達はその準備に入った。……そんな中、俺はソフィアさんに話しかけた。

 

 

「……すみません、ソフィアさん。最終的な判断はあなたに任せると言っておきながら、こんな事になってしまって……」

 

「いいえ。構いませんよ。だって、荒垣さんは彼らを元から逮捕するつもりだったんでしょう?」

 

「!……何故、そう思ったんですか?」

 

「あなたは、ルパン三世にお礼を言ったりしていたけれど……"逮捕しない"とは一言も言ってなかったから」

 

「……なるほど、ソフィアさん。あなたは本当に聡明ですね。……それで、本題なのですが…」

 

「どうぞ、行ってください。お父様の時のように、他のFBIの方を護衛に回していただければ構いませんよ」

 

「…………本当に、あなたは……いえ、ありがとうございます!」

 

 

 ソフィアさんから許可はもらった。あとは……

 

 

「……安室」

 

「…………はぁ……駄目だと言っても、あなた方は行くんでしょうねぇ……いいですよ、行ってください。その代わり!あとでいろいろ聞きますからね!」

 

「助かる。……コナンは…」

 

「僕も行く!」

 

「あら、駄目ですよコナン君!そもそもどうしてここにいるんです?危ないでしょう!」

 

「え!?い、いや僕はそのー……」

 

「安室さんもどうして彼を連れてきてしまったんですか!?」

 

「いやー面目ないです……」

 

 

 そんな会話を聞きつつ、俺はFBIの何人かに護衛として残るよう指示を出した。

 

 

『あぁ、そうだカズヤ。頼まれてたもの、持って来たぞ』

 

『ありがとう。どこにある?』

 

『今シュウが取りに行ってる』

 

 

 すると噂をすれば……

 

 

「和哉さん。持って来ました」

 

「お、ありがとう。……こいつを使うのも久々だな……」

 

 

 頻繁に整備していたが、最近は忙しくて使ってなかったし……

 

 

「……もう銭形警部達は出発したようだし、俺達も行くか、秀一」

 

「……俺も乗っていいんですか?」

 

「あぁ。……ただ、後ろに誰かを乗せるのは家族を乗せた時以来だ。多少バランスが悪くなっても文句は言うなよ?」

 

「!!……つまり、家族以外ではまだ誰も乗せていないんですね……?」

 

「そうだが?」

 

「ありがとうございます!文句なんて言いません!!」

 

「お、おう」

 

 

 それくらい珍しくもないだろうに……何がそんなに嬉しいんだか。

 

 

「準備はできたか?」

 

「はい!」

 

「よし――行くか」

 

 

 それから2人揃って、俺の愛車に跨がった。

 

 

 

 

―――

――――――

―――――――――

 

 

 ――都内の道路を、1台の車が猛スピードで走り抜けた。……その後、それを追うパトカーが何台も通り抜けていく。通常のスピードで走っていた何台もの他の車が、慌てて道を開けていた。

 

 

「はいはいすみませんねぇ、通りますよっと!」

 

 

 最初に猛スピードで走り抜けた車を運転していたのは、ルパン三世だ。助手席に石川五ェ門、後部座席に次元大介が乗っている。

 また、それを追い掛けるパトカー達の先頭車には、銭形警部が乗っていた。彼は窓を開けて身を乗り出し、叫んでいる。

 

 

「待てぇっ!ルパン!!今日こそは逃がさんぞぉ!!」

 

 

 

 

「全く……相変わらず銭形はしつけぇな……」

 

「このまま振り切るのか?ルパン」

 

「……いいや。日本の警官とFBIには悪いが、ここらで追跡を止めてもらおうかね……次元、上開けるぜ。頼んだ」

 

「へーへー……仕方ねぇな」

 

 

 ルパンが運転している車は、オープンカーだった。車の上部が開き、その間に拳銃を用意していた次元は後ろを向いて身を乗り出し、銃を構え――撃った。

 

 狙った場所は、先頭のパトカーとその近くのパトカーの前輪。……見事に命中し、大クラッシュが起きた。当然、その後ろを走っていた他のパトカーは、追跡を止めざるを得なかった。

 

 

「さすがだぜ次元ちゃん♪」

 

「ちゃん付け止めろ」

 

 

 一方、足止めを食らってしまった銭形は、次元への恨み言を呟きつつ、警官達に指示を出していた。

 

 

「……えぇい、次元め!……無事な車のみでもう1度追うぞ!」

 

 

 その時……突然止まっているパトカー達の後ろから、1台のバイクがやってきた。そのバイクは何台ものパトカーの間をすり抜け、そして……

 

 

「――なにぃっ!?」

 

 

 ――クラッシュしていたパトカーを踏み台にして、空中へと飛んだ。

 

 それから見事に着地したそのバイクは、ルパン達が乗っている車を追い掛けて行った。

 

 

「…………今のは、先ほどの執事と、腕の良かったニット帽の男か?そういえば、彼らは一体……?」

 

 

『今の、カズヤとシュウだよな?』

 

『出発遅れたのにもう追い付いたのか!』

 

『もうあいつらいれば充分じゃねぇか?』

 

『そんな事カズヤに言ってみろ。俺達に押し付けんなって怒られるぜ?』

 

『全くだな。さっさと迂回して追い掛けないと……』

 

 

『…………すまない、君達。そのカズヤとシュウについて教えてくれないか。あと、ついでに君達の車に乗せてくれ!』

 

 

 バイクに乗った2人……荒垣和哉と赤井秀一に興味を示した銭形は、FBIの3人の男に、そう声を掛けた。

 

 

 

 

 

 

―――

――――――

―――――――――

 

 

 俺と秀一は、400CCのネイキッドバイクに乗り、ルパン一味を追跡していた。……ちなみに、"スーフォア"という愛称で呼ばれるこのバイクは、長年俺の相棒を勤めている。

 

 

「……よし。何とか追い付けそうだ。秀一、いけるか?」

 

「はい。いつでも」

 

「分かった。――振り落とされんなよ!」

 

 

 そう言って、俺は一気にスピードを上げ、ルパン三世達が乗る車に迫った。……それと同時に、次元大介がこちらへ向かって銃を構える。

 

 

「っ!来るぞ、しっかり掴まれ!!」

 

「はい!」

 

 

 銃口は下の方を向いている。って事は奴が狙っているのはタイヤのパンク!

 

 

「狙いが分かればこっちのものだ!」

 

 

 次々と放たれる弾丸を、必要最小限の動きで避ける。それから弾切れした瞬間を狙い、一気に距離を詰めた。

 

 

「カウントダウン!3、2、1――」

 

 

 瞬間、俺は車体を縦から真横に。そして――

 

 

「――Shoot(撃て)!!」

 

「――Yes,master(はい、ご主人様)!!」

 

 

 秀一が放った弾丸は、ルパン一味を乗せた車のタイヤに命中。走行不能となった!

 

 

「秀一、よくやった!」

 

「はい…っ和哉さん!!」

 

「うおっ!?」

 

 

 しかし突然、秀一が俺の体を抱き寄せてバイクの車体を蹴り、俺共々地面に転がる……と同時に、金属音が聞こえた。……おいおい、まさか……!?

 

 

「……俺の……俺のスーフォアが……!」

 

 

 見事に真っ二つだ。その側には石川五ェ門の姿があった。……よくも俺の長年の相棒を……!

 

 と、沈んでいたのもつかの間。今度は背後から猛スピードでピンク色の派手な車がやって来た。このままここに転がってたらぶつかる!

 

 

「危ねぇ、秀一!!」

 

「っ!?」

 

 

 今度は俺が秀一を引っ張って地面を転がり、間一髪でその車から逃れた。

 そして、危うく俺達を轢くところだった車はというと……

 

 

「――ハァーイ、ルパン!」

 

「ふーじこちゃーん!!ナイスタイミング!」

 

 

 峰不二子が乗っていた車だったようだ。ルパン三世達は、その車に乗って去って行った。逃げられたか……

 

 俺と秀一は同時に立ち上がった。

 

 

「……秀一。怪我は?」

 

「手を擦りむいた程度です」

 

「手!?っ馬鹿野郎!見せろ!!」

 

「っ、和哉さん……?」

 

 

 秀一の両手を見ると、確かに右手に擦り傷があった。……まだ利き手じゃなくて良かった。それに、これならすぐに治りそうだ。……良かった。

 

 

「お前の両手は大事な仕事道具で――仲間や俺を助けてくれる大切なものだ。無論、自分自身を守るものでもあるんだから、ちゃんと大事にしてくれ」

 

 

 あとで治療しないとな。

 

 

「…………和哉さん……」

 

「ん?」

 

「あなたは――これ以上俺の好感度を上げて、どうするつもりですか……!?」

 

「はぁ?」

 

 

 訳が分からん事を言うな。

 

 

「……ところで、秀一。お前、ルパン一味の事をどう思う?」

 

「俺のマスターを誘拐しやがった悪党共」

 

「そうゆう事じゃない。……お前、あいつらと正面切って戦ったとして――勝算はどれくらいある?」

 

「…………50:50(フィフティ フィフティ)……と、言いたいところですが、実際はこちらがかなり不利になるかと……」

 

「どうしてそう思った?」

 

「……奴らは、手を抜いていた」

 

「そうか――俺も、そう思う」

 

 

 秀一と見解が一致したという事は、おそらく予想は当たっているのだろう。

 

 例えば、ネクタイピン型の発信器に気づかれなかった事。

 例えば、銭形警部の来日を予想していなかった事。

 例えば、俺達が奴らに追い付けた事。

 

 例えば――俺達の怪我が軽症である事。

 

 他にもいろいろあるが……これらは全て、ルパン一味が本気を出していなかったからではないのか?

 

 

 ……という俺の考えを、秀一に話した。

 

 

「……その可能性は大いにあると思います。……しかし、それを言うなら和哉さんもそうですよ」

 

「ん?何がだ?」

 

「あなただって、手を抜いたじゃないですか」

 

「、何の事だ?」

 

「和哉さんが本気を出していたら、今この瞬間も他の捜査官達に電話して次々と指示を出していたはずです。あなたの本分は、どちらかといえば"手足"として動く事ではなく、"頭"として"手足"に指示を出す事ですから」

 

「…………」

 

「それに和哉さん。あなたはソフィーの言うとおり、盗聴器越しの時も、俺達の目の前で話している時も、奴らを逮捕しないとは一言も言っていませんでしたが――"逮捕する"、とも言っていませんでしたよね?一言も」

 

「――――さーて?何の事やら。それよりもほら。銭形警部達が追い付いたみたいだ。合流するぞ」

 

「和哉さん……」

 

「……何にせよ確かな事は、手加減された状態でも逃げられてしまった今の俺達じゃ――ルパン一味の逮捕は、夢のまた夢って事だ」

 

 

 本当に、厄介な相手だった。……それにしても……

 

 

「…………あーあ……俺のスーフォア……これじゃあ修復もできやしない……長年の付き合いだったのに……」

 

 

 そう嘆いて、俺は大きく溜め息をついた。そして秀一に必死に慰められた。

 

 

 

 

 

 

―――

――――――

―――――――――

 

 

 ――峰不二子が運転する車の車内にて。

 

 

「……いやー、助かったぜ不二子ちゃん♪」

 

「全くしょうがないわね……お宝が手に入るわけでもないのに助けに来て上げた私に感謝しなさいよねー」

 

「それはもう!」

 

「……相変わらず偉そうな女だぜ……」

 

「いつもの事だ」

 

「あら、何か文句でもあるの?私は助けて上げたのよ?」

 

「へーへーありがとうございました!」

 

「一応、礼を言う」

 

「はーい。……それで、ルパン。目的は達成したの?」

 

「あぁ。……日本に来た目的は、大方達成した。あとは、俺にとって一番重要な目的を果たすだけだ」

 

「あ?まだ何かあんのか?」

 

「また盗みか?」

 

「違う違う!……次元と五ェ門にはもう言ったはずだぜ?――借りを返すんだ、って」

 

「……あー……そういえば言ってたな。荒垣和哉に借りがあるって」

 

「誰?それ」

 

「……先ほど、お主が轢き殺しかけた男が2人いただろう?そのうち、執事服を着ていた男の方が、荒垣和哉だ」

 

「ふーん?どっちもヘルメットしてたから顔は見えなかったけど、カッコいいの?」

 

「カッコいいというか、あれは美人だな。悪く言えば女顔」

 

「女顔?……ルパン、あなたまさか…」

 

「不二子ちゃんまでそうゆう趣味?って聞くのは止めてくれよ?俺様さすがに傷ついちゃう。……っと、そうだ不二子」

 

「……な、何よ」

 

「今回は目を瞑るが……次からはあの2人に……特に和哉には危害を加えるなよ?そんな事やったら、俺――本気で怒る、かも」

 

「「「…………」」」

 

 

「――なーんてね♪ぬふふ、冗談だぜ不二子ちゃーん?だからそんなに怯えんなって!次元ちゃんも五ェ門ちゃんもマジになるなって!」

 

「…………なぁ、ルパン」

 

「どうした次元」

 

「……お前、荒垣に一体どんな借りがあるんだ?」

 

「……どんな借りかって?それはな……まず命を救われた事と、それから……調子に乗って気を緩ませてた俺に喝を入れて、それを再び引き締めてくれた事だな。

 ……後者に関しては、和哉は全く心当たりがねぇだろうから、さっきので貸し借りはもうなしだとでも思ってんのかね……」

 

「さっきの、って……」

 

「……奴が、手を抜いていた事か?」

 

「そうそう。……俺様達も手加減したけどさー……もしも和哉ちゃんが本気出して俺達を捕まえようとしたら――さすがにちょいと危なかったかもなぁ……」

 

「……そんなに危ないの?その荒垣和哉って人」

 

「あぁ。……和哉個人の能力は、周りの天才達と比べたら若干落ちるが……あいつが"頭"となり、周りが"手足"となった時は厄介だ。

 和哉はまるで、自分の本当の手足のように周りの人間をうまく使いやがる……あれは、人間関係に恵まれていて、さらに和哉自身が人たらしであるからこその力だな。……個人の力が強過ぎるせいで、周りに足を引っ張られちまう銭形のとっつあんとは真逆だ。

 ……そう考えると、和哉ととっつあんを足して2で割ったのがガキンチョ……ってところかな?」

 

「……じゃあ、もしもその3人が正式に組んで俺達を捕まえようとしたら、どうなる?」

 

「そりゃあ、もちろん――」

 

 

 

 

「――終わるぜ。俺達の泥棒生活が」

 

 

 

 

 

 

―――

――――――

―――――――――

 

 

 ――翌日。ついに護衛任務の終わりが近づいてきた。

 現在。俺と秀一はアーロンさんとソフィアさん。そして、昨日の事件後に救出されたテイラーさんを見送るために、空港にいる。

 

 

「……荒垣君、赤井君。……今回は、本当にありがとう!私達を護衛してくれた事、そしてソフィアとブラッドを助けてくれた事に、心から感謝する」

 

「いえ、アーロンさん。我々は謝罪しなければなりません。あなた方の身の安全を保障すると豪語しておきながら、大切なお嬢様と執事さんを危険にさらしてしまった。……本当に、申し訳ございませんでした」

 

 

 そう言って、秀一と共に深々と頭を下げた。

 

 

「……頭を上げてくれ、2人共。確かに、そうなってしまった事は事実だが……それでも最初に君達に任せるという判断をしたのは、私達なんだ。だからそれは、君達のせいじゃない」

 

「しかし……」

 

「それでもまだ納得できないのであれば、これは"貸し"という事にしておこうか」

 

「貸し、ですか……?」

 

「そう。――いずれまた、私達の護衛をしてくれた時に、それを返してもらおう」

 

 

 と言って、アーロンさんはわざとらしくウインクしてみせた。

 

 

「……ふ、あっははは……!もしかしてそれって、初日の俺の真似ですか?」

 

「バレたか。その通りだよ」

 

「ははっ……承知いたしました。その時が来たら、必ず借りをお返ししましょう。秀一、それでいいよな?」

 

「はい。俺もそれで構いません」

 

「ありがとう」

 

「ありがとうございます」

 

 

 アーロンさんがお礼を言うと、それに合わせてテイラーさんもお礼を言った。そしてソフィアさんはというと……

 

 

「…………」

 

 

 どこか思い詰めた様子で、先ほどからずっと黙っている。……何かあったんだろうか?

 

 

「あの、アーロンさん。……ソフィアさんに、何かあったんですか?」

 

「あぁ……そう、だな……うん……」

 

 

 アーロンさんに聞いてみると、彼は複雑そうな顔で俺を見て、口ごもる。……心当たりはあるようだが、それをどう言えばいいのか悩んでいる……だけじゃないな。どちらかというと、話したくない……のか?

 

 すると突然、ソフィアさんが顔を上げた。

 

 

「荒垣さん!!」

 

「は、はい?」

 

「私が……私が今よりもっと大きくなったら!その時は――私を荒垣さんのお嫁さんにしてください!!」

 

「!?」

 

 

 …………これは、想定外だな……

 

 周りを見ると、アーロンさんは顔に手を当てて天を仰いでおり、テイラーさんは苦笑い。そして秀一は……

 

 

(……なんとも形容しがたい表情だ)

 

 

 辛うじて、どちらかというと、この状況を嬉しく思っていない事が読み取れるぐらいか?

 

 おっと。今はそれどころじゃないな。

 

 

「その言葉に返答をする前に、あなたに聞きたい事があります。……ソフィアさん。あなたは子供扱いされる事と、1人の女性として扱われる事の、どちらを選びますか?」

 

「それは、」

 

「ただし!……女性として扱われる事を選べば、あなたは確実に後悔するでしょう。それを踏まえて、もう一度聞きます。……どちらを、選びますか?」

 

「…………女性として、扱ってください」

 

「……いいんですね?」

 

「はい」

 

「……分かりました」

 

 

 やれやれ……気が重いな。

 

 

「……俺は、君の言葉に応える事はできない。……悪いな」

 

「っ……」

 

 

 ソフィアさんは涙目になっている。……罪悪感が襲い掛かるが、こればっかりは譲れない。

 

 

「まず、君はまだ少女だ。これから俺以上に良い男に出会う機会が必ずやってくる。だから、こんなおっさんを捕まえてはいけない。

 次に、君はその気なのかもしれないが、俺にはそれがない。俺にとっての君はあくまで、期間限定の護衛対象だ。それ以上でもそれ以下でもない」

 

「っ!!」

 

 

 ……本当にすまない。だが、これで最後だ。

 

 

「最後に、君とは年齢に差があり過ぎる。20以上の差が、な」

 

「……恋に年齢差は関係ないです!」

 

「あるんだよ。少なくとも俺にとっては。……俺はな、もしも次に誰かを愛する時が来たら、もうそれ以降は生涯、その1人だけを愛すると……つまり、結婚してその人と添い遂げると決めている。

 その相手の条件として、絶対に譲れない事がある。それが年の差だ。……許容できる範囲は、2、3歳差ってところかな。それ以上は駄目だ」

 

「……どうして?」

 

「それはな。年の差があり過ぎたら――どちらか一方が死んだ時、もう片方が長い間取り残される事になるからだ。

 俺は、取り残される事がどれだけ悲しいのかを、よく知っている。できる事なら、愛する人にその悲しみを知って欲しくない。だから俺と添い遂げる相手には、俺よりも先に死んで欲しい。

 取り残される悲しみを知るのは――俺だけでいい」

 

「……そんなの……っそんなのあなたの勝手じゃない!相手が同じ事を思ってたらどうするのよ!?」

 

「あぁ、そうさ。これは俺のエゴだよ。だから、"もしも"次に誰かを愛する時が来たら、と言ったんだ。……俺としては、そんなもしもの時が訪れない事を祈っている」

 

「…………つまり、あなたは誰かを愛するつもりはもうない、と?」

 

「回りくどくなってしまったが、そうゆう事だ」

 

 

 悪いな、ソフィアさん。俺は……臆病者なんだ。恋愛に関しては特に。

 

 

「…………最低」

 

「あぁ。俺は最低だ」

 

「――っ、馬鹿!」

 

「あぁ――俺は、大馬鹿者だよ」

 

 

 君のような、素敵な女性を泣かせてしまうのだから。

 

 

「でも――ありがとう。私を、1人の女性として見てくれて。……私、忘れないから。あなたが最低だって事も、大馬鹿者だって事も――私を、守ってくれた事も」

 

 

 そう言って、彼女は笑った。――美しい笑顔だった。

 

 

 

 

 

 

―――

――――――

―――――――――

 

 

 その後、アーロンさん達3人を見送った俺達は、帰路についていた。

 

 

「…………和哉さん」

 

「何だ?」

 

「――俺も、できればあなたよりも先に死にたいです」

 

 

 その言葉に、思わず足を止める。

 

 振り返ると、秀一の深緑の瞳が俺を真っ直ぐ見つめていた。

 

 

「……俺は先ほどの話から、例の作戦であなたが人質にされた時の事を思い出しました。……もしも、あなたが死んでしまったら……それを、少しでも想像しただけでぞっとしましたよ。あなたが俺を置いて死んでしまうなんて、耐えられない。だから――そんな悲しみを味わうぐらいなら、あなたよりも先に死にたいです」

 

「…………」

 

「でも、」

 

「?」

 

「そんな事になったら、あなただって悲しむ事になるんですよね?それも嫌です」

 

「…………我が儘な奴だな」

 

「えぇ、俺は我が儘なんです。そして貪欲だ。あなたと共により長く生きるためなら――きっとどんな事でもやってみせる」

 

「――――」

 

 

 その瞳から、目を離せなくなった。

 

 

「最終目標は、ほぼ同じタイミングで老衰する事ですかね」

 

「……俺の方が5歳年上だぞ。多分お前よりも先にぽっくり死んじまう」

 

「そこはできる限り頑張って長生きしてください。俺も頑張りますから」

 

「じゃあまずは禁煙からだな、ヘビースモーカー」

 

「そうですね。頑張ります」

 

「……意外だな。即答した」

 

「言ったはずですよ。あなたと共により長く生きるためなら、と」

 

「っ……ふん。3日坊主にならなきゃいいがな!」

 

 

 そう言った俺は、秀一に背を向けて再び歩き出した。……今、まともに秀一の顔を見るわけにはいかなかった。

 

 

(――間違いなく、今の俺は過去最高にみっともない顔になっている!)

 

 

 俺は慌てて、目尻から流れ出た雫を拭った。

 

 

 

 

 

 

 






・長年の相棒を失った飼い主

 ……俺のスーフォアが……(´;ω;`)

 今回、忠犬と共に愛車でタンデムした。バイクの運転技術について、FBIの中で右に出る者はいない。長年の相棒を失ったため、その日はずっと沈んでいた。……俺の相棒。安らかに眠ってくれ……
 実は、こっそり20年前に怪我の手当てをしてくれた借りを返すために、微妙に手を抜いていた。向こうも手加減してたんだからお互い様だ。

 そして次の日、お嬢様(12歳)による愛の告白を受けたが、丁寧に、そしてきっぱりと断る。恋愛に関しては独特な感性を持っている。だからこそ独身。

 その後。赤井の思わぬ言葉に感極まり、一瞬だけ涙を流す。……俺の弟子にして忠犬は、なんてよくできた奴なんだろう……


・飼い主とタンデムした忠犬

 和哉さんとタンデムデート()……!!しかも家族以外では俺が初めて、だと!?ありがとうございます!

 最初はルパン一味にオリ主を拐われて激おこだったが、逃走したルパン一味をタンデムして追う事になり、テンションMAX。だって合法で和哉さんと密着でき…ゲフン。今のはオフレコで。

 オリ主がお嬢様に告白されて、オリ主の魅力を分かってもらえた事に喜び、それ以上に告白したお嬢様に嫉妬し、結果的に形容し難い表情になった。その後、オリ主が丁寧に断っていたため、ほっとする。

 例え火の中水の中、銃弾の嵐の中……!とりあえず何だってやってみせる!!――和哉さんと、共に生きるために。


・逃亡した大泥棒

 狂犬の殺気に冷や汗を流し、オリ主の飼い主っぷりに唖然とし、さらには手加減していたとはいえ、2人に追われて追い詰められて、実は内心焦っていた。

 オリ主と銭形とコナンの能力を分析し、この3人に手を組まれたら本気で危ないと確信する。……あれ?俺達、そのうち本当に詰むんじゃね?

 現在。とある企みを実行中……





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