忠犬と飼い主~IF~もしもオリ主とルパン三世が過去に出会っていたら?   作:herz

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・オリ主視点。

・最後のエピローグ部分は次元視点。


IF⑤ 後日談&エピローグ

 

 

 護衛任務が終了した、翌日。ルパン三世と関わった例の件について、俺と秀一――特に俺――が他の幹部達に詳しく事情を話す事になったのだが……そんな矢先にそれは起きた。

 

 俺達が使っている会議室には、1つだけ固定電話が設置されている。その固定電話に突然、着信が入った。この電話の番号を知っているのは、合同捜査に参加している人間のみ。

 だからこそ、そのうちの誰かからの連絡だろうと思って、電話の1番近くにいた俺が受話器を取った。

 

 

「はい…」

 

「――ハァーイ♪俺様ルパン三…」

 

 

 ――ガチャンッ!

 

 

 俺は、即座に受話器を戻した。……そして、再び着信を告げる音が鳴り響く。

 

 

「……あ、荒垣さん……?」

 

「何があったんですか?」

 

 

 頭を抱える俺に対して、コナンと秀一が声を掛けた。

 

 

「…………いいか。全員、今から何が起こっても声を出すなよ?いいな!?」

 

「それはどうゆう…」

 

「返事!」

 

Yes,master(はい、ご主人様)!」

 

 

 すぐに返事をした秀一に続いて、幹部の全員が了解した。……よし。それじゃあ電話に出て、スピーカーにして、と。

 

 

「あ、出た。酷いなぁ、いきなり切るなよ!俺様悲しい……」

 

「どうやってこの番号を調べた?ルパン三世」

 

 

 幹部達が声を押し殺して驚いている。秀一はそれに加えて殺気が出た。……ちょっと落ち着きなさい。ステイ。

 

 

「この番号を知る人間は限られている。どうやって知ったんだ」

 

「……その声は和哉か。こりゃあ好都合!ちなみに、どうやって知ったのかはまぁ、企業秘密って事で!」

 

「…………ちっ。どうせハッキング仕掛けたんだろうが……」

 

「もしかしたら、お仲間さんから教えてもらったのかも?」

 

「っは、抜かせ。俺達の同志が、そんな裏切りを働くわけがない」

 

 

 なぁ?と、視線で残りの幹部達にそう問えば、全員が頷いた。

 

 

「いやー、分からねぇぜ?……まぁ、その通りなんだけど」

 

 

 だろうな。

 

 

「……さーて、本題に入ろう。和哉ちゃんの事だし、電話に出た時点でスピーカーにしてるんだろ?だからここからは……お前さん達の言う、幹部だったか?その連中も聞いていると思って話すぜ。といっても、メインは和哉ちゃんなんだけど」

 

「俺がメイン……?」

 

 

 一体、何の用だ?

 

 

「まず、全員に関係がある話からな。――俺は、黒の組織の残党達が拠点としている場所を発見した」

 

「なっ……!?」

 

「何だと!?貴様、それは一体どうやって!?」

 

「お?その声は一昨日ワンちゃんとガキンチョと一緒にいた奴かな?安室透……いや、"ゼロ"の降谷零だったか?」

 

「……っ!!」

 

 

 こいつ……降谷の事まで……!?本当にどうやって調べたんだ?ハッキングするにしても、日本の公安……それも"ゼロ"の事を調べ上げるには、数多くのセキュリティを突破する必要があるはず!

 うちもそうだが、日本のサイバーセキュリティだって、そう簡単に突破できるような代物ではないはずなんだが……

 

 

「…………俺の正体をどこで知った!?」

 

「まぁまぁ。今はそんな事は置いといて話を戻すが……その拠点の場所は……」

 

 

 降谷の言葉には応えず、ルパン三世は拠点の場所を伝えてきた。……その場所は、確か……

 

 

「……我々が、残党達の拠点の有力候補だと睨んでいた3つの場所のうちの、1つですね」

 

 

 キャメルの言う通りだ。……ルパン三世の話が信憑性を増した。

 

 

「へぇ?もう3つまでに絞っていたのか。優秀だな!……そんで、その他諸々の情報を和哉ちゃんの仕事用のノートパソコンに送っておいたから、後で確認してちょーだい」

 

 

 ……は?

 

 

「おい、こら…」

 

「和哉さんの仕事用のアドレスまで盗み見たのか――いい加減にしろよ、てめぇ」

 

 

 あ、秀一がキレた。

 

 

『一昨日といい、今日といい、てめぇは何様のつもりだこそ泥。俺の和哉さんを拐い、銃弾を何発も飛ばしてきて、和哉さんの大切な相棒を真っ二つにし、次に轢き殺そうとして……さらには和哉さんの個人情報を盗んだ、だと?脳天に鉛玉ぶちこまれてぇのかこの――』

 

「秀一、Stey(待て)

 

「…………Yes,master(はい、ご主人様)

 

 

 そう指示を出し、スラング英語が飛び出す前に落ち着かせた。

 

 

「さっすが飼い主……っていうかワンちゃん?それの半分以上は俺様がやった事じゃないんだけど?」

 

「知らん。そしてワンちゃんと呼ぶな。俺を犬呼ばわりしていいのは和哉さんだけだ」

 

「ワーオ、筋金入りの犬だなこりゃ。愛されてるねー和哉ちゃん♪」

 

「一昨日も思ったが、和哉さんの名前を気安く呼ぶな!こそ泥風情が……!!」

 

 

 ……"待て"だけじゃ駄目か。

 

 

Quiet(静かに)。俺がOkay(よし)と言うまで話すな」

 

「…………」

 

 

 ……よしよし。これなら話が聞けるだろう。

 

 

「…………ほーんとに、よくできた忠犬ですこと……」

 

「で?続きは?」

 

「あ、はい。……とりあえず、全員が関係している話はこれだけ。次はお待ちかねの――和哉が関係してる話だ」

 

 

 ……どうやら、俺の話がメインというのは本当らしいな。さっきまではおふざけ混じりだった声音が、真剣なものに変わった。

 

 

「まず……俺が黒の組織の残党の拠点を調べ上げた時、ついでに奴らが使っているネットワークにもハッキングしていろいろ調べたんだが……その時、とんでもない情報が出てきてな……」

 

「とんでもない情報?」

 

「勿体ぶらないで早く教えてよ」

 

「まぁそう焦るなよガキンチョ。その情報はなんと――和哉の個人情報だった。生年月日、生い立ち、家族構成、現住所、連絡先エトセトラ……」

 

 

 すぐ隣にいる秀一が、息を呑む音が聞こえた。……いや。もしかしたらそれは、俺の喉から出た音でもあったのかもしれない。

 

 

「そんな……!」

 

「荒垣さんの個人情報を、残党が……何故……!?」

 

「そう思うだろ?……と、いうことで、俺様が探ってみました!その結果、和哉の情報を流した人物を突き止めた」

 

「誰だったの!?」

 

「――バーナード・オルソン」

 

 

 その名を聞き、FBIの面子は驚いた。……俺以外。

 

 

「何……!?」

 

「バーナード・オルソン!?」

 

「…………誰?」

 

「バーナード・オルソンは、FBIの上層部の人間だ……」

 

「え……!?じゃ、じゃあ荒垣さんは…」

 

「そう。本来なら、仲間であるはずの人間に、売られたんだよ」

 

 

 コナンにそう説明した俺は、そう言いつつも全く動揺していなかった。

 

 そして、思わず呟いた。

 

 

「ついにやりやがったな、あの野郎……」

 

「やっぱり、和哉には心当たりがあったか……お前さん、そいつには特に嫌われてるみたいだしな」

 

「……まぁ、な」

 

「……差し支えなければ、荒垣さん。その理由を教えてくれませんか?」

 

「あぁ。大した事でもないから大丈夫だ。……俺が上層部に意見する時、奴は毎回反発する。その度に言い負かしていたら、いつの間にか相当嫌われるようになっていた。

 そのせいか、奴にはいろいろと無茶振りされる事が多い。そして奴は上層部の中でも結構な権力を握っている。だから、他の上層部の人間もそれにつられて俺を厄介者扱いしてくる。……おそらく、今回の護衛任務が下ったのも、バーナード・オルソンが原因だと考えているんだが……どうなんだ?ボス」

 

「……確かに。今回の任務が下される事になった理由は、彼がそれを強行したからだと、本国の同僚から聞いている」

 

 

 やっぱりな。そうだと思ったよ。

 

 

「……幸いにも、和哉の情報が残党達の元へ流されたのはつい最近だったらしく、俺がその情報をごっそりと盗んだ事で、それが流出する可能性はなくなった。……ただし、既に残党達の何名かはその情報を把握しちまってる。……だからそいつらを確実に捕まえねぇと、この先どうなるか……何となく、分かるだろ?」

 

「…………荒垣さんがまた、人質にされる……?」

 

「ピンポーン♪……まぁ、そうゆう事だ。何せお前らに対抗するには、それが1番効果的だろうからな。和哉を捕らえれば、銀の弾丸(シルバーブレッド)を封じる事ができる……連中は、それを知ったのさ」

 

 

 全員の視線が、秀一の元に集まった。

 

 もしかすると……以前俺が危惧し、秀一に忠告した事が、現実になるかもしれない……

 

 

 ――まぁ、そんな事はさせないけどな。

 

 

 以前の俺は、自身が人質になる事で秀一の身が危険にさらされてしまうかもしれないと考えて、それを恐れていた。

 

 しかし、今の俺は違う。

 

 秀一を危険な目に合わせたくないのであれば、俺自身が人質にならないように、強くなればいい。

 ……今の俺は、そう考えている。そのために以前よりも鍛練の時間を増やした。……こう考えられるようになったのは、秀一のおかげだ。

 

 

 ――同じ失敗は、2度も繰り返さない。俺と秀一は、そう決意している。

 

 

「ん?……どうした、秀一」

 

 

 その時、秀一が俺の服の裾を軽く引っ張った。目を合わせると、何か言いたげにしている。

 

 

「黙ってたら何も分からな…って、」

 

 

 え?……あ、そうゆう事か!いくらなんでも忠実過ぎやしないかお前!?

 

 全くしょうがない奴だな!

 

 

Okay(よし)!話していいぞ」

 

「ありがとうございます」

 

「…………本当に、"よし"と言われるまで話さなかった……」

 

「……そのまま黙らせておけば良かったのに、どうして許してしまったんですか荒垣さん!」

 

「ややこしくなるからお前も黙っとけ、降谷」

 

 

 秀一の様子に驚愕する風見と、憤る降谷。とりあえず、降谷は静かにしてくれ。

 

 

「僕はあなたの犬ではなく日本の番犬なので、命令は聞きませ…」

 

「――Be quiet(静かに、しろ)

 

「…………Yes,sir(承知しました)

 

 

 少々怒り気味に言ったら、黙ってくれた。

 

 

「…………和哉ちゃんはワンちゃんを2頭飼ってるのかな?」

 

「違う。1頭だけだ。あっちの日本犬の飼い主は日本という国であって……いや、それだと放し飼いになっちまうな……よし。飼い主代理は任せたぞ、風見」

 

「飼い主……代理!?私が!?」

 

「ちゃんと手綱握っとけよ。……で、結局秀一は何が言いたいんだ?」

 

「…………和哉さん」

 

 

 秀一は、真剣な顔つきで俺を見つめて、口を開いた。

 

 

「――同じ失態は、繰り返しません。もう、2度と」

 

「――――」

 

 

 ……そうか。秀一も同じ事を考えていたのか。……なんか、ちょっとくすぐったいな。

 

 

「……と、言いつつ、一昨日俺が和哉を拐ってるんだけどな。……そこんとこ、どう思う?赤井秀一」

 

「……あぁ。確かに、その通りだ。お前に和哉さんを害する意思がなかったからこそ、彼は無事だった。これも、俺が油断していたせいだ」

 

「……お前だけのせいじゃない。俺だってそうだ。俺も、油断していた。ルパン三世の変装を見破れなかったし、背後も取られた。……鍛練不足。職務怠慢……俺達は、2人揃って気を抜き過ぎていた」

 

 

 だからこそ――

 

 

「――互いに次はねぇぞ。秀一」

 

「――はい」

 

 

 俺達は、目を合わせて頷いた。

 

 

「……ふーん……ま、大丈夫そうだな。――これなら、危機感を煽った甲斐があったかねぇ……」

 

「何?」

 

 

 ……まさかこのこそ泥、わざと……?

 

 

「――わざと、俺も拐ったのか?俺と秀一の気を、引き締めさせるために……?」

 

「んー?何の事だ?……そんな事より、次の話だ。

 情報を流した人物が、FBIの上層部の人間だと分かった時、俺は和哉には悪いなと思ったんだが……勝手ながら、和哉の個人情報がどの程度守られているのかを、実際にハッキングする事で調べさせてもらった」

 

 

 ……こいつ、どんだけハッキングしてんだよ。

 

 

「で、その結果。――和哉の個人情報だけが、ハッキングされやすくなっていた事が分かった」

 

「は?」

 

 

 それは、つまり……?

 

 

「セキュリティが甘くなってたって事だよ。それも秘密裏に、な。どうなってんだと思ってさらに調べたら、原因はバーナード・オルソンにあった。

 奴は、FBIのサイバー対策課の人間達数名を買収し、和哉の個人情報を守るセキュリティのみを弱くさせて、かつ、それに関してその数名に口止め料も払っていた。

 ちなみに。それが実行されたのは、和哉が日本に向かった直後だったようだぜ」

 

「……と、いう事は……!」

 

「……ジンがカズヤの情報を手に入れる事ができたのは、まさか、そのせいなの……!?」

 

「おそらくな」

 

 

 そうゆう事だったのか……

 

 

「…………ホー、なるほど――つまり、全てが片付いて帰国したら、バーナード・オルソンをボコボコにすればいいわけだな。よし分かった」

 

「秀一」

 

「止めないでください、和哉さん。俺は殺ると言ったら殺りますよ」

 

「――俺も混ぜろ。ただし、一発ぶん殴るだけにしよう。とびっきり、重い一発を、な」

 

「!!……くくっ……!了解……」

 

 

 2人であいつをぶん殴ろうぜ!ついでに他の上層部の奴らも!

 

 

「荒垣さんっ!?」

 

「飼い主が狂犬の手綱を手放してどうするんですか!?」

 

「あー……そこの飼い主と狂犬さん?多分無駄だと思うぜ?あと2、3日もすれば、バーナード・オルソンは逮捕されるから」

 

「何……?」

 

「バーナード・オルソンは叩けば叩くほど埃が出てきてなぁ……それはもう汚職だらけだったんで……それらの情報ぜーんぶ、銭形のとっつあん経由で、もっと上に送っちゃった♪」

 

 

 送っちゃった♪って、おい。もっと上って……おいおい……!?

 

 

「その上ってまさか……FBI長官とか言うんじゃねぇだろうな……!?」

 

「そうだぜ?……あ、そうそう。和哉ちゃんの情報を守ってるセキュリティ。あれも勝手に強化しておいたから」

 

「はぁ!?」

 

「あれじゃあ、また流出してもおかしくねぇからな。ちょちょいと手を加えた。もう情報が流出する心配はないぜ」

 

 

 両手で頭を抱えた。とんだ大事になっちまった!……というか、そもそも、だ。

 

 

「……何で、てめぇがそこまでやるんだ?そもそも、てめぇが黒の組織の残党のネットワークにハッキングを仕掛ける必要があったのか?……何が目的だ?」

 

 

 ルパン三世が残党達のネットワークにハッキングを仕掛けなければ、俺の情報について知る事はなかった。さらには、その事を知ったとしても、情報を流した人物を調べる必要もなければ、わざわざ再び銭形警部に頼んで、長官へ報告させる必要もない。

 ましてや、セキュリティの強化をする必要なんて、どこにもない。

 

 

「――和哉に"借り"を返すため」

 

「借り、だと?」

 

 

 ……そういえば一昨日、こいつは"借りがあるのは俺の方"と言っていた。

 

 

「……借りなんてあったか?」

 

 

 さっぱり思い付かない。確かに、20年前にこいつを庇った事が"貸し"だというなら分かるが、それはその日、怪我の手当てをして救急車を呼んだ事で返されているはず……

 

 

「まぁ、和哉に心当たりがないのは当然だろ。これは、俺が勝手に借りだと思っていた事だからな」

 

「その、借りってのは?」

 

「……20年前。俺は和哉に助けられた。だから、俺を庇って代わりに撃たれちまったお前の手当てをして、救急車を呼んで、その借りを返した……それだけだと、お前は思ってんだろ?」

 

「……あぁ。そうだ」

 

「だが、俺にはもう1つ、借りがあるんだよ……調子に乗って気を緩ませていた当時の俺を、正気に戻してくれた事……これが、その借りだ」

 

「……それが、借り?」

 

 

 それほど重要な事だとは思えないんだが……

 

 

「……あの日、お前に……一般人のガキに庇われた事。そのガキが俺の代わりに撃たれちまった事。……そのガキにとっては生まれて初めての死体を、俺自身の手で目撃させちまった事……その全てが、衝撃的だった。その分、罪悪感も酷いものだった。

 

 しかしそのおかげで、何もかも成功し過ぎて調子に乗っていた俺は、ようやく正気に戻った。……もしもここで正気に戻っていなかったら、今頃俺は死んでるはずだった。

 和哉。お前はこの俺に、それほどでっかい貸しを作ったんだよ」

 

「…………」

 

「あの日以来、俺は極力過信しないようにした。いつ、何があってもいいように、慎重に事を運ぶようになった。……そして気がつけば、世界を股に掛ける大泥棒になっていた。

 

 ――ありがとう、荒垣和哉。お前のおかげで俺は、今もなお、大泥棒として生き延びているよ」

 

 

 ……その感謝の言葉は、FBIの俺にとって皮肉そのものだったが……聞こえたのは声だけだったというのに、俺は確信していた。

 

 ――本気で、心の底から、感謝されているという事を……

 

 

「だから、いつか機会が訪れたら、この借りを倍に……いや、数倍にして返そうと決めていたんだ。……20年経って、ようやくその機会が訪れた。ずっと待ってたんだぜ?この時を」

 

「……それで、一連の流れで俺を助けて、借りを返したって事か」

 

「そーゆう事♪……まぁ、バーナード・オルソンを逮捕させたのは半分がその借りを返すためで、もう半分は私怨なんだけどな」

 

「私怨……?」

 

「だってさぁ……俺の恩人にしてお気に入りの和哉を、自ら手を下さずに危険な目に合わせようとしたなんて――許せるわけがねぇだろ」

 

「っ、」

 

 

 …………声に、殺意が混じっていた気がする……

 

 先ほどまで上層部の奴らに怒りを感じていた俺だったが、この声を聞いた瞬間、一気に怒りが冷めた。そしてそれは、秀一も同様だったらしい。怒気が消え去り、代わりに顔が強張っている。

 

 

「ほーんとにさぁ……FBIの上層部ってほとんどがクズだよなぁ……本当ならそいつらがやってる後ろめたい事をメディアにでもバラしたいところだけど、そうすると上層部のほとんどがすげ替えになっちゃって、結果的に和哉ちゃんが苦労する事になるし…………なぁ、和哉ちゃん。FBI辞めて泥棒になる気は…」

 

「あるわけねぇだろ!」

 

「ですよねー♪……残念」

 

 

 警官を犯罪者の道に誘うんじゃねぇよ!俺は定年退職するまでFBIを辞めないって決めてるんだ!

 

 ……だから秀一。そんな人を殺せそうな目で電話機を睨むな。怖い怖い。

 

 

「けど、だからって何もしないってのは、なぁ……例えば、奴らのパソコンにウイルス仕込んだり、奴らの家族だけに例の後ろめたい事をバラしてやったりとか……」

 

「…………とりあえず、バーナード・オルソンの逮捕だけで今のところは腹一杯だから、止めてくれ」

 

 

 だがしかし。個人的にはゴーサインを送りたい。是非ともやって欲しい。……なんて、口にはしないけどな。

 

 

「んー……まぁ、和哉ちゃんがそう言うなら、止めとくかな。

 

 ……さて。これで俺様の用事は終わり!残党狩り、引き続き頑張ってちょーだい!」

 

「あぁ。捜査への協力に感謝する。一応な」

 

「…………相変わらず、律儀だなぁ……っと、そうだ。忘れるところだった。――赤井秀一」

 

「!?」

 

 

 秀一が背筋を伸ばした。

 

 

「――和哉の事、頼んだぞ。和哉がFBIを辞めない以上、後の事はお前に任せるしかない」

 

 

 ……その口振りだと、さっきの誘いが実は本気だったとも取れるんだが……冗談、だよな?

 

 

「犬らしく、飼い主の事はしっかり守ってやれよ」

 

 

 ……その言葉は、気に食わないな。

 

 

「おい。俺を甘く見るんじゃねぇぞ、ルパン三世。――俺は、ただ守られるだけの男じゃない」

 

「全くだな。確かに、飼い主を守るのは犬の務めだが――飼い主と共に戦う事もまた、犬の務めだろう。……俺の飼い主は――和哉さんは、そんな柔な男ではない」

 

「そして――秀一もまた、同じ失敗を繰り返すような馬鹿じゃない」

 

「そう――俺は、そんな和哉さんの信頼に応える事ができる男だ」

 

 

「というわけで、」

 

 

「お前のその言葉は、」

 

 

「「――大きなお世話だ」」

 

 

 

 

「…………くくっ……ぐふ、ふふ――っは、ははははっ!!」

 

 

 ……また突然笑い出したぞこいつ……

 

 

「はははっ!……そうか。大きなお世話、か――今2人で言った言葉、全部忘れんじゃねぇぞ。必ず、2人揃って、無事でいてくれ。……じゃあな」

 

 

 その言葉を最後に、電話が切られた。

 

 

「……ちっ。逆探知の準備ができていなかった事が悔やまれる……」

 

「いいや。それは後悔しても無駄な事だぞ降谷。奴なら、何らかの対策をした上で電話を掛けていたはずだ」

 

「……一昨日、盗聴機越しに話を聞いてた時も思ったけど……荒垣さんってルパン三世の事、結構高く評価してるよね」

 

 

 と、コナンが言った。……確かに、そうだな。だが……

 

 

「勘違いするなよ、コナン。俺は確かに奴を高く評価しているが、それはルパン三世が油断ならない人物だからだ。嘗めてかかったらこちらが痛い目を見る……必ずな。だから別に、奴に好意的だからという理由ではない。

 ……まぁ、昔助けてもらった事には感謝してるが……それでも最後の最後に、怪我で身動きが取れない俺の顔面に催眠スプレーぶっかけやがったからな。それでプラスマイナス0ってところだ」

 

 

 ……人柄は、嫌いではないが。

 

 と、心中でそう呟いた時。恐ろしいほどに低い声が聞こえた。

 

 

「ホー……――顔面に、催眠スプレー、ですか」

 

「あ」

 

 

 つい口が滑った……!!

 

 

「……そういえば和哉さん。一昨日に関しての事情聴取がまだ途中でしたね。……ひとまず、20年前のお話を先に聞きたいのですが――構いませんよね」

 

「あ、僕もそのお話とーっても気になるなぁ♪」

 

「確かにその話はまだ聞いていませんでした。是非ともお聞かせ願いたいですねぇ……」

 

 

 威圧感増し増し、そして満面の笑みでこちらを見つめる秀一。子供口調とは裏腹に、鋭い目で見てくるコナン。口元は笑っていても目が笑っていない降谷。

 

 

 あ、終わったな俺――と、ルパン三世。

 

 

 今のところは問題ないが、次にルパン三世に出会ったら、見つけた瞬間に狩りに行きそうな気がする。秀一が。

 

 

 ……その後。根掘り葉掘り事情聴取された俺は、ただ話しただけだというのに体力を大幅に削り取られ、事情聴取が終わってすぐに死んだように眠ったのだった。

 

 

 

 

 

 

―――

――――――

――――――――――

 

 

「…………珍しいよな。てめぇがそこまで気に掛けるなんてよ……」

 

 

 ルパンが電話を切った後に、俺はそう声を掛けた。すると、ルパンが振り向いた。……さっきまで素で大笑いしてたくせに、もう普段のニヤついた顔に戻っている。

 

 

「なーに?次元ちゃん。嫉妬?」

 

「違うわアホ。……最初は、あの探偵ボウズと同じくらい気に入ってるんじゃねぇかと思ったが……実はそれ以上に気に入ってるんだろ?」

 

「…………あー……」

 

 

 そう聞くと、ルパンは目を逸らした。そして、何かを言いあぐねているようだ。……これも珍しい。

 こいつは俺なんかや他の奴らよりも、頭の回転が早い。早過ぎる。……だから、レスポンスも早くなるはずだが……

 

 

「……実は、さ……俺様もよく分からねぇんだよなー……」

 

「……はぁ?」

 

「なーんであの2人を……いや、和哉ちゃんの事を気に掛けちまうのか……和哉ちゃんと直接会うまでは、確かにガキンチョの方が気に入ってたはずなんだよなぁ……」

 

「…………そりゃ、てめぇ……タラシ込まれたんだろ?荒垣に」

 

「へ?」

 

 

 きょとんとした顔で、俺を見つめている。……まさかこいつ、気づいてなかったのか!?

 

 

「一昨日、お嬢様と荒垣を拐った後。車の中で大笑いしたあたりから上機嫌だっただろ?だからきっとタラシ込まれたんだなって、五ェ門と話してたんだが……」

 

 

 まさか、自覚がなかったとは……今はいつもの修行でこの場にいない五ェ門も、きっと驚くだろう。

 

 

「それにてめぇが言ってたはずだぜ?ほとんどの犯罪者は、何故か荒垣にタラシ込まれやすいって」

 

「…………そうでした」

 

 

 呆然とそう呟いたルパンは、次に頭を抱えた。そしてため息。

 

 

「あーあ……こうなったら……もしも和哉に何かあったら本気で許さねぇからな、赤井秀一……!!」

 

 

 ……と、言いつつ。もしも赤井秀一にまで何かあったら、その原因を全力で潰すんだろうな、こいつ……

 

 

(――最強のセコム、誕生。……なんてな)

 

 

 

 

 

 






・即座に受話器を叩き付けた飼い主

 なんか凄い音が聞こえた気がする。すまない、受話器。お前に罪はない(´・ω・`)

 個人情報だだ漏れ。恨むぜ、クソ上層部め!自重を止めて赤井と共にぶん殴りに行こうと思ったら、ルパン(激おこ)に先を越されていた。とりあえず落ち着け。奴が逮捕されるだけで腹一杯だから。
 ルパンの気遣いを余計なお世話だと一蹴した。俺はそんなに柔じゃねぇし、秀一だって馬鹿じゃねぇ!俺と俺の弟子を嘗めるな!

 もちろん、お得意の人心掌握術(人タラシ)で最強のセコムが生み出された事は全く知らない。


・通常運転の忠犬

 和哉さんが望むのなら、1日黙っています。"よし"と言われるまで口を開きません!

 オリ主の個人情報がだだ漏れ状態だった事に、プッツン。よし、そいつボコボコにしよう。飼い主がGo(行け)!と言うなら尚更だ。……しかし、ルパン(激おこ)の声を聞いて頭が冷えた。むしろ冷や汗が流れた。
 オリ主との阿吽の呼吸で、ルパンに対して反論した。飼い主と犬の絆があってこそ成せる業だ!俺と俺の飼い主を甘く見るなよ?

 オリ主にタラシ込まれた、新たな敵の気配を察知!過去の催眠スプレー事件も含めて、見つけ次第狙撃する(サーチ&デストロイ)!!<●><●>カッ


・セコム化した大泥棒

 いやーこいつら、というか和哉が面白過ぎ!ガキンチョよりもお気に入りかも!

 ハッキングでオリ主の情報のだだ漏れ具合を知り、激怒。ちょっと本気を出して不届き者に退場してもらった。ついでに、和哉の情報に関してはセキュリティを強化させとこっと。
 なお、セキュリティはプロのハッカーがハッキングしても絶対に破れない程度のレベル。むしろ、カウンターでウイルスを送られる。

 何故そこまでオリ主の事が気に入ったのか、自覚していなかった。相棒に言われてようやく自覚。そして開き直ってセコムになる。

 ――最強セコム、爆★誕。






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