Morfonicaは俺を巻き込むな 作:ねこちゃん
俺が女子校に行くことになった訳
月ノ森女子学園。100年以上続く名門校。その名前を聞いてきっと普通の人は清く正しいお嬢様学校、と思うだろう。周りのイメージとか今はどうでもいい。神聖な薔薇の咲く学園と思ったらまためちゃくちゃバンドに巻き込まれました!美しいお嬢様方とキャッキャウフフ?しかし!それは違う!ただの憂鬱でだるくて……それからそれから…………つまりだ。そういう場所なのである。理由は二つ。
一つは親に無理やり一年生から入れられた事。俺はもう高3だ。なのに、なのにだ。何浪だよいい加減にしろっ!
そしてもう一つは、俺以外が女子であるという事。それもまた俺とは次元の違う女子ばかり。
俺には空気として生きるしか道がないみたいだ。
☆♪
都内に二つもない立派な豪邸があった。とても広いリビングがあり、二人の男がそこにはいた。
「
突如、家でくつろいでいた俺に対して親父が発した言葉。一瞬、耳を疑ったが親父のウザいドヤ顔でいつもの事かと俺は耳が正常な事を安心する。
「は?月ノ森?それって女子校だったよな。しかもいいとこの」
ちなみに言うと俺は男である。男の娘とかそういうのじゃなくバリバリの男の子。巻き込まれることに関してはプロなので別に今更驚かないが。
「そうそう。お前もいい加減可愛い女の子の彼女を作るべきだと、偉大なる父は思ったわけよぉ〜。あそこってめちゃくちゃかわいい〜娘、多いらしいしな!」
下心満載のエロ親父は今回も権力と息子の俺を最大限、無意味に利用して遊ぼうとしている。その権力とは弦巻……。その家系である俺らは、今日も日本は平和ですみたいな力の使い方をしている。とても無駄である。迷惑なのでやめて欲しい。
「いやいや俺、男。あそこ、女子学園。イコール、無理。OK?」
親父の狂った発言に俺は簡単にまとめて教えてあげた。……とは言っても何言ったって無駄なんだろうけど。
「知ってるか……頑張って手術に耐えたら……人間は性別の壁を越えられるらしいぞ……」
表情を真剣に変えて実の息子に言うことがこれか。マジで誰か病院連れてった方がいいんじゃないか。
「もう少しまともで現実的で痛みがない方向で頼む」
そう言いつつもノリ気な自分にも少し引いてはいるが、こうしないとこのアホは治らないことを知っている。と言うより自分が女子高に入るなんて二度目だ。もちろん原因はこの変態。
「いやぁ〜良かったよ!お前が引き受けてくれて。最悪、無理やり女装させて行かせようと思ったわ!俺に似て顔は良いからな!お前は。まあ俺が女装して行ったらすぐバレて、何故かピカピカ光ってサイレンの鳴る車来て、ビックリしたけどな!ガハハハッ!!!」
もうなんなのコイツ。そろそろ一人暮らししようかな。いや割と真剣に。
こんなんだから、妻と娘に別居されるんだよ。ウチには立派な別荘があり、そこに別居中。
正直、今の俺の気持ちとしてはざまぁとか言えない。
本当は俺も母に連れて行ったもらうはずだったのだが、父が寂しくて土下座して何とか俺だけは父と生活することになった。何でだよ。諦めるなよ母。だから俺は名字だけでも母方の堂崎にした。弦巻です!なんで名乗ったら、その瞬間に俺の人生は終わるだろう。社会的に。
「ていうか1年前もとあるアイドルグループを売れっ子にしろとか似たようなことやらせたし、それに幼馴染のバンドにも手を貸さなきゃいけなくなったし!!!その前もこころのせいで女子高に1年間いさせられた!」
こころとは俺の妹の事なのだが……どうにも俺はアイツに勝てない。半分いじめだよねこれ。この娘はこの父の遺伝を9割は引き継いでいるだろう。俺はその逆だけど。
「ということで手続きとか全部してあるし、ぶっちゃけ柊が何言おうと関係ないのでレッツゴー!」
「話聞けよ!!!」
翌日、柊の部屋に世界に一つしかない女子高の男子制服とその他学校生活に必要な物一式が届いたとさ。届いてしまった。返したい。
届いた生徒証には名前が書かれていた。
《数日後……》
うふふ!私、堂崎柊子!17歳!月ノ森女子学園のイケイケ☆の女子高生!今日から楽しくみんなお友達に___________
なる訳ねぇーーーだろうがよぉぉぉぉぉ!!!
いいか。俺が今まで女子と仲良くできてたって偶々運が良かっただけで、こんな場違いな所に来たら表面上は仲良くしてくれても、裏で「チッ……んであんなのと同じクラスなんだし、キモっ……」って言われてるに違いない。
いつも通り俺はやれやれ系でクールに乗り切れればそれでいい。
目の前の校舎と周りの女子生徒からの不審な目。ヒソヒソと噂話さえも聞こえる。もしかしなくても俺って浮いてるのでは?
(ああやだもう帰ろうかな……弦巻という裕福層にいてこんなにも不幸なのって俺だけだろ……)
と考え事をしながら歩いていると人にぶつかった。
「いたっ!」
派手な金髪が目立つ少女。ギャルというやつだろうか。それとも今井リサのように見た目ギャル的な?しかし彼女も普通とは程遠いオーラがある。才能もきっと豊富で人望もありそうだ。
え?てかここ金髪アリなの?俺のわざわざ黒に染めてきちゃったんだけど。
「っと、ごめん!考え事してて……怪我はないかな?」
必死に帰りたいという感情を隠しつつ、あくまで紳士的に対応で手を差し出す。
すると、やはり紺色のブレザーの俺が珍しいのか俺の全身を何度も見回す。
「あの…その制服って月ノ森っぽいけどもしかして噂の男子生徒君?」
「ななななな、何で俺が月ノ森男子学生だとバレた!?」
(あーわかる?俺ってほら見た目からして月ノ森じゃん?ほらそういうこと)
「なんか言ってることと表情が合ってないんだけど……」
苦笑いでそう言いつつ、ギャル?ちゃんは俺の手を取り立ち上がる。その時フワっていい匂いがする。やっとここで俺は女子校もアリだなと希望が湧いてきた。
この時点で前回の花咲川女子学園とは大違いだ。あそこではいきなりコスプレした変態扱いされた。本当は親父(この世の悪の全ての元凶)が話を通していなかっただけなのだが、今回はそういう事態にはならなそうだ。命拾いしたな親父。
いや息子を女子校に入れるって学習するなよ。お見合い勝手に組まれる方が100倍マシだぞ。
「こんなとこにいるからあたしの知り合いかと思った」
ニコッと笑顔で喋る彼女だが、そんなに有名な人なのだろうか。そうでもないとただのイタい人だ。
「知らないよ。ぶつかってごめんね」
(無事みたいだし、さっさとかえ……職員室にでも行こうかな)
俺も彼女の様にニコッと笑い返し、校門へ向かった。
「そっち校舎じゃないよー!」
なんか俺の制服だけでバレるってまさか彼女は服に関して鋭いのかもしれない。
「じゃ、行こっか。あたし桐ヶ谷透子!よろしく!」
透子という彼女に手を取られついていく。この時点で彼女がリア充だとか、コミュ力お化けとかそういう陽気なキャラクターだということがわかる。ああ、恥ずかしいからやめてくれ。
☆♪
俺にとって慣れない校舎を少しずつ紹介しながら桐ヶ谷透子はまるで自分の家のように話してくれる。とてもわかりやすくテンポがいい。それに先程から通り過ぎる女子学生が皆、挨拶をしそれを返していくという事が続いている。俺はそれに軽く会釈しながら、前を軽い足で歩いていく彼女を追う。
成る程、彼女が人気者な理由が少し分かった気がする。
よし、大体の建物の構造が掴めた。そして30分も経たないうちに目的地の職員室に。ここで彼女とはお別れすることに。
「ありがとう桐ヶ谷さん。お陰で助かったよ」
「いいっていいって。また後でね、しゅう」
桐ヶ谷さんは自分の教室に向かって行った。
(あれ……俺、名前名乗ったっけ……)
疑問がひとつ浮かんだが彼女のインパクトが強くて、まあ重要な事ではないだろうと俺は疑問を忘れ、俺は職員室の扉を開く。
「こんにちは、貴方が弦巻さんの被害者の……堂崎君ね。ご愁傷様」
あの親父が無理言ってこうなってはいるが、それでも自分に気を使っている教師達の目に、俺は少し苦笑いになってしまうが、早歩きでB組の担任の先生の所に挨拶をする。
互いに挨拶を済ませ、ついに禁断とも言われる女子校の教室の扉が開かれる時。思わず俺は唾を飲み込んでしまう。
「緊張しますか。新たな環境で新しい物事を始めるのはとても良い事ですが、上手くいかないこともあります」
その言葉に自分を快く受け入れてくれるのは全員じゃないということを思い出す。やっぱり慣れないこの瞬間に、担任の言葉ものしかかり、顔が強張ってしまう。
「ですがそれでも前に進もうとすることはとても、素晴らしいことだと思います」
そして俺は扉を開いた。いや、正確には開いたの先生なのだが。
軽く身嗜みを整え、重い足を動かす。教室に入ると自分だけ浮いていることに気配だけで気付く。
(あー、当たり前といえばそうだけど女の子しかいない……)
ある程度進むとクラス全体が見渡せる。なんでかざわざわと女子生徒が話始める。(うわ顔面キモすぎワロタ)と思われているのか!?と一気に不安になる。
1人だけ異彩を放っている少女は先ほどまで一緒にいた、桐ヶ谷さん。なんとなく言いたい事が分かる。
(同じクラスだねー!)
とでも思っているのだろうか。笑顔で軽く手を振っている。気楽でいいよな。
「堂崎柊です。皆さんには編入からして迷惑をかけてしまっているかもしれませんが、何卒よろしくお願い致します」
ペコリと頭を下げる。
シーーーン。場が静まる。
(…………あれっ?)
「あ、あのっ!堂崎くんって、彼女いるんですか!?」
「堂崎君の好きな異性のタイプは!?」
「1人だけ男子の編入って、天才ですか!?お金持ちですか!?変態ですか!!??」
もう帰りたい。桐ヶ谷さんがニヤニヤしてるのがムカつく。可愛いけど。
☆♪
「あーやってらんねぇ〜」
俺はさっき一限目をさっさと済まし、桐ヶ谷さんに教えてもらった地形を把握し、すぐに屋上へと足を運んだ。サボりともいう。
少し身体を休めていると、足音が聞こえる。なんだ……?
「……ああ、桐ヶ谷さん。どうしたのこんな所で」
「そっちこそ。様子を見に来たんだよ。……随分さっきと態度が違うね」
威圧的なものではなく、ただ単純に俺のおふざけモードが切れてるってだけだろう。物珍しげに見ている桐ヶ谷さん。沈黙が続き、俺は声をかけた。
「なんの用?もう寝たいんだけど」
そう言う俺に苦笑いしながら口を開いた。
なんだか嫌な予感がする。こういう勘だけは異常に当たる。
「初めて会って、少し経ってからあなたのこと調べたよ。Roseliaのしゅうさん?」
スマホ片手にからかうような桐ヶ谷さんの目は、少し怖かった。俺の中で新しい風がまた吹き始めた予感がした__________。