Morfonicaは俺を巻き込むな   作:ねこちゃん

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第1章 出会い
桐ヶ谷透子は俺を巻き込むな


 広い校舎に比例して立派で豪華とも呼べる屋上には、温い風が吹いていた。

堂崎柊の中でも生ぬるい感情が廻っていた。懐かしい単語が頭の中から離れて消えないのだ。目の前にいる桐ヶ谷透子が彼女(リサ)に重なる。ニヤニヤ笑う顔が似ているのだ。でも違う(幼馴染ではない)

思わず身構えてしまっている自分がいた、身体でも心でも……。

 

 

 

 

 

 桐ヶ谷さんがスマホで見せてくれたのは、二年前に撮った写真。SNSで拡散されたその画像に映っているのは()()()の俺とRoselia。

いつもの練習中、偶然リサが撮った写真の中に映り込んでいる俺。

 

「一体そんな物掘り返して何が目的だ?」

 

その過去は俺の夢と思い出(Roselia)で忘れるべきものなんだ。誰にだって触れられたくない過去はある。向かうべき夢と楽しかった思い出さえあればそれでいい。

大切な人を守れるならそれは誇りだ。

 

 

「しゅうは二面性の人なんだね。君はきっと流行るよ〜」

 

俺の冷めた声にも全く意を介さず、会話として成立していない。

大体初日からこんな調子じゃ桐ヶ谷さんの話が終わってもどうせ空気や背景にはなれない。経験上、絶対誰か巻き込んでくる。間違いないね

それに流行るってなんだ。タピオカか何か?

 

 

「はぁ……」

 

桐ヶ谷透子。会話から何から彼女にペースを握られていて気が抜けてしまう。どうやら完全な悪意で無いことを燐子ちゃんがしていたように顔色を伺って分かる。

しかも距離の詰め方が異常に早い。もしくは俺の名字を知らないか。このイマドキ女子め。

 

「ねえしゅう。少し前からさ、ガールズバンドって流行ってんじゃん?」

 

「ソウダネ」

 

「それでこの前ライブハウス行ったらさ、倉田と二葉に会って3人で見たんだ!ちょーやばかった!」

 

「ヨカッタネ、ソレハタノシソウダ」

 

「それでバンド組むってなったらあたし絶対ギターやりたい!」

 

「ウンウン、ヤッパリタマゴハオイシイヨネ」

 

「ちょっと聞いてるー?」

 

つまりこの桐ヶ谷透子、ガールズバンドにハマってしまったらしい。影響されてギター始めたいだなんてまるでイタい男子中学生みたいだが、それを微塵も感じさせないとは桐ヶ谷さんのギャル的オーラが輝いている。倉田と二葉って誰だよ。少なくともB組でない事は確かだ。さっき全員()()()

 

確かにガールズバンドは俺が興味を持ち始めた頃には既に、Glitter*Greenを代表に有名なガールズバンドがいた。

ほとんどの知り合いが熱中していたし、やったことないけどやりたいって人なんて話は聞き飽きたぐらいだ。

 

「それでー、あのRoseliaと一緒にいるぐらいだからめちゃギター上手いとか!」

 

 

とか!じゃないんだよ。馬鹿め、俺に何を期待しているんだ。何なら今からイケイケ(逝け逝け)曲弾いてやろうか。喜べよギターソロだぞ?

 

 

 

「何を期待しているのかは知らないがこれだけは言っとく。()()ぐらいじゃなくて、()()ぐらいだ」

 

 

勘違いしないで欲しい。縛らないで欲しい。俺は一発ネタがウケたからってそれしか出来ない芸人じゃない。俺はRoseliaじゃない。

 

「そっか……今は違うんだ」

 

「そういうこと。わかったらさっさと_____」

 

「じゃああたし達のバンドに入れるじゃん!」

 

「は?いやそうじゃなくて」

 

「じゃあ放課後ホームルームが終わったら校門ね!その後虹も飲ませてあげるよー!バーイ!」

 

 

勝手に話をして勝手に帰ったよアイツ。でもまだ『へっへっへ……これをバラされたくなかったら金だしな』とか言われなくてよかった。

 

桐ヶ谷さん、本当に俺もメンバーにするつもりなのだろうか。俺もしかしてまたガールズバンドに巻き込まれてる?何これ呪い?

 

(……ここって裏門とかないかな)

 

もうサボる気すら無くなり、俺はトボトボ下に降りて行った。

 

 

 

 

 

女子という女子の間を通っていく。まだ好意的な人が多いので助かるがあんまり見ないで欲しい。だって俺はちょっと胸がなくてツイてるだけの普通の人だから。

 

 

「あーーー!いたーーー!」

 

「はん?」

 

突然廊下中に響き渡る声。何事かと振り返るとかなり小柄で小さめの女子生徒が俺の方に近づいてきた。

 

「もう!ずっと探してたんだから!あなたが堂崎さんね!」

 

俺のそばまで来たその子は見上げながら自信満々に喋る。身長差が20は平気であるので自然とこうなってしまう。てか誰すか……ちょっち面倒っすオイラ。勉強で忙しいガリ勉なんだからさ、邪魔しないで欲しい。

 

 

「なんですか?ちょっとウォーキング中なので、手短かにお願いします」

 

「ウォーキング!?そんなのいつでも出来るじゃない!…それより、この二葉つくしが今日からあなたの面倒をみます!」

 

なんで?そんな付き添い人みたいな人いられたらちょっと困るよ。俺のパステルライフ的な意味で。屋上で俺の愛読漫画、 Pastel*Palettesの漫画

が読めないよ。隣に女の子がいたら。

 

「その件につきましては二葉さんに迷惑だと、俺は推測致します。故に二葉さんはご自分の有効かつ、有意義な時間を過ごされてはいかがでしょう?」

 

もちろん俺もそうするから。若い時間をこんなのに使うなんて勿体無いYO!

 

「ふふふ、それについては大丈夫よ!それも学級委員長の仕事だから!」

 

ドヤァ……っと可愛らしく宣言する二葉さん。駄目だ、こういう人に何を言っても無駄かな。現に引く気もないし、確定事項みたいだ。

 

あなたに意見聞いたけどまあ私はこれやるけどね!!!学級委員長、そりゃあんまりっすよ。こっちも被害者なんだから優しくしてほしい。要は大目に見て見逃してほしい。

 

「分かりました……お願いします二葉さん……」

 

「これは私にとっても一つの挑戦よ!互いに頑張っていきましょう!」

 

胸を張って手を差し出す二葉さんと握手を交わす。

 

(胸を……張れていない……)

 

 

「さぁーって!それじゃ私はA組に戻るから何かあったらいつでも頼ってね!」

 

「そっちC組だぞ」

 

「ああーーっ!!」

 

この人、意外とポンコツってやつかもしれない。頑張り屋だとは思うけど……。

 

 

 

 

 俺が教室に戻ってから視線が痛い。物理的ダメージを食らっているわけではないが……チラッと横を見ると自然の主が分かる。

 

(確か……広町だっけ。広町七深)

 

見るからにおっとりしてそうな彼女。いや見過ぎでしょ。感動の再会か朝痴漢された人を見る目だ。どちらでもないのだけれど。

 

「じぃーーーー」

 

ついに声に出しちゃったよ。隠す気ないって事なのだろうか。また変な人に絡まれてしまったか……。

 

(気づかないふりをしよう……。声をかけたら絶対に面倒だ)

 

「むぅ……」

 

少しいじけてしまったか。それでいい、俺に関わるな。それがベストですよ広町さん。君のせいで授業が頭に入らない。まあ元々聞いてないけど。

 

特にそれから地味なアクションするだけで話しかけたりはしてこなかった。時間だけが過ぎていき、やがてホームルームとなった。俺から話しかけろということか。俺のアクションを待ってたら卒業しちゃうけどそれでもいいかな。

 

たまに視線に耐えられなくなった時は隠れてスマホいじってたりしていた。……おい駅前の虹色のスムージー絶対流行らないというコメントを見たんだがもしかして『虹』ってこれじゃあないよな?

 

 

キーンカーンカーンコーン

 

チャイムが鳴り学生達は騒がしくなる。俺の席にも1人の少女が笑顔で近づいてきた。

 

「おーいシュークリーム!虹行こうぜ!虹!」

 

そんな海行こうぜ!海!みたいに言われても行きたいとは思わない。女子高生は1人で買い物出来んのか。俺を巻き込むな。

 

「シュークリームって誰だよ!てかお前!虹ってこれじゃないよな!?」

 

俺は調べていたサイトを桐ヶ谷さんに押すように見せつける。もしこれが飲み物(仮)なら今すぐ帰りたいのだが。

 

「おー!調べておいてくれるとは気が利くじゃーん?」

 

「桐ヶ谷さん、俺ちょっと腹が______」

 

有無を言わさず腕を取られる。もううるせえからはよ来いってことか。

 

「細かいことは気にすんなよ!あと言わなかったっけ?あたしのことは透子でいいって!」

 

桐ヶ谷さん……透子に連れて行かれながら見る教室には目を少し開いて驚いた顔をしている広町さんだった。とても可愛かったが2秒も見れなかった。

 

楽しそうに引っ張る透子を見てるとなんでも許してしまう気持ちになるが、これだけは言わせてくれ。

 

俺を巻き込むな!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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