Morfonicaは俺を巻き込むな 作:ねこちゃん
「感動した!是非俺の友達になって欲しい!何ならこれからお喋りしないか!!!」
「え、ええええ!?」
倉田ましろは驚いていた。何故なら待ち合わせで友達を待っていただけなのに、初対面の男の子にいきなりナンパされていたのだから。興奮気味になる男の子を見て、地味な私が?もしかして人違いかも?なんて事を思いつくが、金色の綺麗なその瞳が貫くのは何者でもない私自身である事を肯定していた……。
☆♪
「おい透子、バンドをやるとして大体は決まってるんだろうな」
「今から決めるんだって、もう〜このせっかち」
堂崎柊はこの愉快な誘拐犯、桐ヶ谷透子にまさに連行されている所だった。もうガールズバンドなんて関わらない。なんて昔の俺なら拒絶していたかもしれない。
「はい?え、メンバーは?」
「しゅう入れて5人!」
入れるな。
「曲は?」
「まだない!」
「衣装とか……」
「ないけど多分あたしがやるかな〜」
「何も決めてないのに俺を呼んだのか!?」
こいつ……度胸があるというか何も考えていないというか。正直、他の3人に賭けるしかない。パートだけ決めてあるって……原画やストーリーは決まってないけど声優だけ先に決めたアニメか。
(……ん?)
後ろから付いて来てるの広町さんじゃないか。なんで声掛けないんだ?
「なあ、透子。広町さんがついてきているけど……」
「ん?ああ、だって広町、うちらのベースだし」
ようやく腕を離し、やっと並走することが出来た。広町さんも隠れるわけでもなく、俺達の方へ来た。
「やあ広町さん。さっきは挨拶出来なくてごめんね。ちょっとこの学校について分からないことが多いからよろしくね」
「えーあたしの時と対応違くなーい?」
と異議を申し立てる透子。うっさい、お前は俺の話聞かないだろう。それに透子に
「…………」
すると広町さんは教室でしてたようにじぃーと俺の顔を見続ける。ちょっと甘い匂いが……。
「な、何かな。何か顔についてる?」
「ううん。ただ堂崎くん、
「……は?」
「あーなんだそんなことか〜何かと思ってびっくり……」
「「ええええええええーーーーーっ!!!?」」
その声は広すぎて持て余すだろう月ノ森でも、そこにいる全ての人に聞こえたのではないだろうか。そのぐらいの大声を出していただろう。
「もちろん、私も最初は冗談かと思ってたよ。でも今日、うちのアトリエに弦巻さんから荷物が来てたんだ〜」
「えぇーそれマジかよ!良かったなーしゅう〜いきなり春が来たぞ」
自分には全く関係ない面白い話が入ってきた!と満面の笑みで俺の脇腹を何度も肘を当ててくる。ウザすぎる。
「いやそんな話聞いてないよ!どうせ親父だし、無視しちゃっていいよ広町さん」
こんな俺と結婚確定とかかわいそう過ぎる。死刑宣告やないか。
今までも親父の言うことは意味わからないことばっかりだったが、今回もまるで意図が分からない。
「でもね……もううちに堂崎くんの荷物、あるよ」
「そうだった……どうせ大したもの入ってないし、捨てちゃっていいよ」
「え、ダメだよ!捨てられないよ!それに……」
「それに?」
「婚約者って事は、恋人って事だよね!それって凄く普通の青春っぽい!」
えー…。確かに俺も
広町七深。彼女については全くと言って情報が無い。あえて言えば同じクラスで少しズレてる所だろうか。俺の最初の印象はそれだ。でも広町さん、別に魅力がないと言う訳ではない。むしろ可愛いのではないだろうか……。
「いやいやいやいや!いくら広町さんが可愛くてもそれはまずいよ!」
その時、彼女は驚いてた。ただそれと同じぐらい嬉しそうであった。
「え……もう一回言って」
「えっと……まずいよ」
「そこじゃなくて」
「可愛いよ、広町さん」
「堂崎……いやしゅーくん……」
「何なの……こいつら」
最早ギャグの勢いであった。彼女は俺を試しているのか!?教室から今も!俺は経験の無さが仇となり、タジタジになるばかりだった。
結局、俺が親父に電話したら、案の定、
「月ノ森の娘さんを持つ知り合いがいたから求婚しといた☆」
とそこで電話を切らせてもらった。一緒に寝るわけではないけど、こんなのまともに彼女のいなかった俺には難易度高すぎないか!?
「……話は済んだ?じゃあさっさと行こ」
「おいちょっ」
電話切るや否や透子が不機嫌そうに足を進める。さっきまでイジってきたというのにどうしたんだ。これが女心ってやつですか!?
「楽器見に行こう?しゅーくん」
広ま……七深は(訂正された)新鮮な日常なのかもうノリノリ。助けてください。クラスメイト達の気持ちが分かりません。七深さんは誰にでもフランクなのはわかった。この急展開は普通ではないが……。
俺は先に行ってしまった透子を七深と追い始める。どうにか機嫌を取れればいいのだが……それでも虹は飲まないからな。
☆♪
俺は……俺はついに理想に対峙したかもしれない。あの平凡さ……まさに俺の理想であった。
校舎を出て、校門へ着くと2人の少女が人を待っていた。
そこには二葉と知らない少女が喋りながら待ち合わせをしていた。だが俺は_____。
「うおおおおっ!君!名前は!?」
「堂崎さん!?」
「え!?あ、倉田……ましろです」
(真白……ましろか……)
自信なさげに喋る倉田さん。イイッ!!!この学校にあるまじき自信のなさと謙虚。きっとこれから伸びるに違いない。
「感動した!是非俺の友達になって欲しい!何ならこれからお喋りしないか!!!」
「え、ええええ!?」
「ちょっと堂崎さん!なんであなたがここに!?」
「うるさいぞ田中。俺は今この子と話してるんだから月ノ森生の自覚を持って行動しろよ」
「なんで私が言われなきゃならないのよ!あと私は田中じゃなーい!」
「倉田ー、二葉ー、そいつちょっとまともじゃないからほっとけって」
「待ってよー!」
俺がいきなりダッシュしたので、二人とも置いてきてしまった。そこで俺は倉田さんが困惑しているのに気付いて、距離を置く。
「いきなりナンパなんて何考えてるの!?」
「なぁに、別に俺は倉田さんを口説こうとしてるわけじゃあない。君みたいな友達が欲しかっただけだ」
情熱アプローチしたせいで二葉さんが勘違いをしているかもしれない。というか絶対している。
「あんな友達のなり方があるかー!!」
「えっと……友達ならいいよ」
「マジ!?こいつ何するかわかんないよ」
なんで透子はさっきから俺の評価を下げに来ているんだ。俺をぼっちにしたいのか。特にデリケートな部分なんだからやめろよ。
「許嫁はいるのに友達はいないなんて……」
おい聞こえてるぞ。七深はもう俺の許嫁(仮)になりきっている。君の何がそうさせているのだ。満更でもない俺が一番ヤバいのかもしれない。だが七深のためにもどうにかして話に決着をつけないと……
無事、友達一人とギャル一人と委員長一人と許嫁一人と仲良く寄り道しながら帰ることになりましたとさ。どんなパーティだよ。
☆♪
俺が来る前から、4人でバンドする事は決まっていたらしい。それで色々見たいんだと。ということで都内でもかなりの品数が揃う楽器店に来た。Roseliaや Pastel*Palettesのポスターも貼ってあった。俺は詳しくないが倉田さんが好きだというポピパやAfterglowもあった。……ついでにハロハピも。センターに妹がいるってむず痒い。
みんなバラバラに動き、俺は一番近かった二葉さんとドラム関係の商品を見ていた。
「んでバンドするために楽器見たいのはわかる。それがなきゃ始まらないからな。それでなんで俺が必要なんだよ!」
「まあまあ、友達付き合いってのも重要なんだよ堂崎さん」
何かあったら私を頼ってね!というドヤ顔は今も健在な二葉つくし。あと俺が友達付き合いを大事にしなかった前提なのやめてくれない?その結果がこれなんですけどね。
「二葉さんがバンドするなんて意外だけど」
「うっ……やっぱり似合わない?」
「いーや。俺は他人が似合わないと笑っても自分の気持ちを優先する。ありのままの俺が通用するのが俺の普通。よって、二葉さんは好きな様にしなよ」
「成る程……うん!」
一見、俺の考えるこの普通は自分の考えを押し付ける独りよがりであり得ないと思うだろう。この自己中、と。
しかしそうではない、周りに自分が合わせる普通は自分を消す。今の教育の様に。一般的な普通は俺を消してしまう。
堂崎柊は普通を愛している人ではあるが普通の人ではない。自分を含め、普通という概念を打ち消す人間を共感し、また一つの普通を好む。個性を消すことのない普通を。俺は面倒くさいエゴであると自覚している。
楽器なり、人物なり、才能なり。全てにおいて自分を隠す事ない普通を目指しているのだ。
などと考えていると、向こうからそれぞれの楽器を持ったクラスメイト達が来る。
「おーいしゅう、このギターどう思う?」
この服どう?と聞いている感覚なのかコイツは。黒をベースとしたデザインのギター。ベースとしているのにギター……。
「いんじゃね」
「適当〜もっと感想くれよー」
「そんなこと言われても楽器わからないし、人に頼んで後悔する事もあるし自分がピンと来たやつでいいんだよ」
「そっか、それもそうだね」
それこそ適当なアドバイスだったが、透子は戻って行った。次は七深だ。
「ねー、しゅー。ベースってこのデザインでもおかしくないよね。普通だよね」
「普通だと思う。俺の中では」
「じゃあこれにする」
「え……」
七深は俺と透子の話を聞いていなかったのか。一応俺はもう一度、念を押してみる。
「いいのか?後で違うのがよかったーってなるかもしれないぞ」
「んー、しゅーが選んだならこれでいいかなって」
七深だけ好感度高すぎないか……?まさか親父がなんか話したか……?いやいや、変な事ばかり言う親父ではあるが、プライバシーを侵害する様な人間ではないはずだ。
ベースの色に関しては黒で統一すると厨二感あって俺は好きだ。
「七深がいいならそれでいい」
「うん!」
七深も俺の答えに満足したのか去って行った。残ったのは俺と二葉さんだけ。
「いつの間にかモテモテだね〜なんだか君の方が頼られててちょっとびっくり」
「モテモテ……俺が?二人とも俺に気を使ってくれてるだけだって」
そりゃ自分以外の人の性別が違うという事をその身に置き換えて考えてたら鳥肌が立つ事だろう。俺もたった。もちろん鳥肌が。
そんな話を二葉さんとしていたら急に鳥肌が……この鳥肌は……間違いない。こ、この無駄にビシッと決まった高いスーツにあの外見は!?
そんなまさか!?いつでも俺のことを監視しているとでもいうのか!?
「おい柊〜〜!せっかく俺が広町さんの家で待ってんだからはよ来いやぁぁぁ!」
「親父……店では静かにしてくれ……」
で、出たーーー!勝手に婚約決めるやつーー!そうだ、俺は七深の有望な将来のためにも、ここで話を無くなったことにしなきゃいけない!
「あ、あの……」
二葉さんがおどおどしているが関係ない!七深や透子が来る前にここでケリをつける!
「お、俺さ!ふた……つくしって彼女いるから結婚は無理だ!!!すまん!」
柊以外の二人の表情が固まった。あ、あれ俺ヤバいこと言った……。けどここは演技に付き合ってもらう!学級委員長の意地を見せる時だ!
俺は二葉さん……つくしに近寄り、そしてアイコンタクトを送る。
(頼む……助けてくれ)
(は、はぁ!?どういうこと!?)
(今だけでもいいから演技してくれ!お前しかいないんだ!)
(し、仕方ない……今回だけだよ!)
この一瞬で状況を変えるには、二葉つくしの力がないと無理だ。ここまで持ってきてしまったのは気が動転した俺なのだが。
「そ、そうです!私、どうざ……柊くんの彼女なんです!」
「そうそう、俺たちもう出会ってめちゃくちゃラヴ的な?付け入る隙ない的な?マジ的な?」
「なん……だと?」
顔芸をする親父。詳しくは隠キャ過ぎる息子が入ったばかりの女子校で彼女作るとか隕石降るんじゃ……って顔だ。
「わ、私!柊くんの面倒みてるんです!指導してたら、自然と恋に……」
言いながら真っ赤になるつくし……恥ずかしいのは分かるが耐えてくれ……!
「な、ナニィ!?(性的な)面倒をみて、(性的な)指導だって!?わかった!今日の所はこの辺にしよう!しかし、柊!もう話は通してあるし荷物丸ごとないから広町さんの家に行けぇ!そしてつくしちゃんと励めよ!じゃあなぁ!!!」
台無しだよ。最後までうるさいし、もうめちゃくちゃだ。
「あの柊……くん?」
「あー……。ごめんつく……二葉さん」
「つくしでいいよ。私も柊くんって呼ぶし……大変なんだね」
「つくし……親父の前だけでいいから助けてくれ」
「う、うん」
(もう……私がいないと本当ダメな人……)
二葉つくしの中で堂崎柊とは守りたくなる衝動に駆られる出来の悪い人間と認識されたが、柊はそれに気づくことなく苦笑いをする。
一つの絆が芽生えた瞬間、俺は大事なものを失った気がする。
ただ楽器を買いに来ただけなのに。ごめんよ江戸川楽器店……俺は二葉つくしを巻き込んだ……。
呼称表
Morfonica→主人公
ましろ→堂崎君
七深→しゅー
透子→しゅう
つくし→柊くん
瑠唯→???