Morfonicaは俺を巻き込むな   作:ねこちゃん

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たまには本気の青春を

「……ら……きて」

 

 人が微睡んでいるのに誰かが邪魔をする……。肩を揺らして起こそうとしている。なんとか意識の紐を手繰り寄せて脳を起こす。

 

「ほら……起きて!」

 

「ふわぁ〜……今何時?」

 

「もうお昼だよ〜」

 

「まさか本当に昼まで寝てると思わなかった」

 

生徒達は各々動いており、休み時間に突入しているのが騒がしさで理解した。

 

「……マジで?」

 

「ぐっすりだったねー」

 

最近、深く眠れない。何故なら過去の夢ばかり見るからだ。だからといって午前中全部寝てしまうのはどうなのだろう。この高貴なる月ノ森生としてね!※この前サボりました。

 

「そーいや二葉が教室借りたらしいよ」

 

桐ヶ谷透子は今日も派手な見た目をしているが、俺の数少ない友人として話しかけてくれる。広町七深もその変人タイプの人間だ。月ノ森生自体、あんまりまともなのがいない気がするけど……恵まれて大切に育てられたお嬢様方のはずなんだけどなぁーあれー?

 

「よっしゃ!月ノ森の庭園とか虫だらけで嫌だったんだよなー」

 

「しゅーくん、よくこの短期間で虫とか観察してたね」

 

「え!?これぐらい普通だよ〜」

 

「あー!それ私の真似ー?」

 

 アトリエに住みはじめて寝る前、自分の中で広町七深という人間を頭の中で整理していた。はっきり言ってこの子普通じゃない。この際、俺との関係性とか無しにして、考えてみても明らかに七深は自分自身をを騙している。過去の自分を消し去って……犠牲にして。きっと根本的な部分が俺と似ている。そこに七深は親近感を覚えたのかは知らないが悪い人ではないのは確かだ。

 

「モノマネうまっ!一瞬本物かと思ったじゃん!」

 

「これも演技派女優の力添えのお陰でございます」

 

演技派女優?と首を傾げる透子。

芸能界で生き残るために、白鷺千聖には芸を身につけろと言われただけだった。人を真似る事なら任せろ。まあ、意外な特技ってだけで今は何の関係もないけど。

 

 

「そんな事よりみんなでお弁当食べようよ!つーちゃんとしろちゃんも誘ってさー」

 

「しゅうは弁当なんて持ってきてないんじゃね?」

 

「ふっふっふ、この広町がしゅーくんの分まで作ってきましたー!」

 

「え、広町がしゅうの作ってきたの?」

 

「作ってくれたらしい」

 

正直俺は、何でもしてくれるのは嬉しいけれど、頑張りすぎていないかが心配だ。七深が楽しくやってくれてるならそれでいい_____って違う!

 

俺は今日こそ広町七深の真実を知る。誰か情報を知っている人で協力者がいればいいのだが……。そんな都合よくいるわけがないな。

 

 

「おーい!柊くん、この前の学力テスト受けてないでしょ」

 

隣の教室から来たであろうひょこっと現れた小さな少女は二葉つくし。相変わらず学級委員長の仕事を果たしているようだ。何やら面倒事の予感……。

 

「あ、つーちゃん。丁度誘おうと思ってたんだ」

 

「そうそう、二葉も倉田も一緒に弁当食おうぜ!」

 

「もちろん!……その前に、柊くん!テ・ス・ト」

 

「テスト?なんそーれ」

 

(あれ……いつの間にか名前呼びになってる……しゅーくんって人に好かれる天才?でもここだと……天然ジゴロ?)

 

「学力テスト、本当はもう受けているはずなんだけど……どこかの誰かさんがサボっちゃったからね〜〜受けないんだよねー誰かさんがねー!」

 

テンポに合わせて誰かさんに叱るつくし。近づいて威圧を与えようとしてるのか。全然威圧になってないぞ。というか近い。

 

「えー!でも俺授業で疲れてるしぃ〜〜〜」

 

「うっ……で、でも!受けないと先生が結果貼れないし……」

 

「あはは……」

 

「今まで寝てたから疲れてるわけないって」

 

「寝てた……?」

 

「はい受けに行きます。行きましょう!今すぐ!俺の飯取っといて!あと先食ってていいからー!!!」

 

これ以上我がつくし様を怒らせるわけには行かないのでダッシュで職員室へ向かうのであった。残された少女三人は顔を合わせて呆れ、ため息、苦笑いと三者三様の対応をする。

 

「……倉田誘って昼にしよ、マジお腹ペコペコ」

 

「そうだね……はぁ」

 

「ねぇ……つーちゃん。しゅーくんって格好いいよね」

 

 二葉つくしはいきなり飛び出した発言に驚いていた。

それは横にいた桐ヶ谷透子も同じく。だが置いてかれていた。

 

「広町、ど、どうしたん?」

 

広町七深の目は輝いていた。濁っていたわけではない。むしろこれは羨望や憧れに近いかもしれない。

 

「普通なのにその中に輝く無限の可能性が凄く好きなんだ」

 

普通と無限の可能性。私なら普通という前者より、無限の可能性という後者の方が魅力を感じている。彼女はその逆のようだ。

 

(……これが柊くんの言っていた解除すべき婚約者ってやつなのかな。確かに広町さん、()()に依存してるというか……)

 

本当は自信なんてない。月ノ森生として堂々と言える長所も無い。無いからこそ言い訳なんかしたくない。無理だとか人のせいにするってことが一番駄目なんだ!

 

(よし!私は頼られるべきリーダーなんだ!あの柊くんの頼みで仕方なく、本当はやりたくないけど彼女役を引き受けたんだ!)

 

「うん、格好良い。抜けててしっかりやりそうな所とか素敵だよね」(本当はそんなこと思ってないよ!!!)

 

「でもでも、寝起きとか意外と抜けてる所もあるんだよ」

 

「人のやりたいこと応援してくれる所とか!」

(全然嬉しくなんてなかったし!)

 

「ノリがいいよね〜」

 

「でも_____」

 

「いやいや_____」

 

(おばあさま、もしかして……もしかしてこれって修羅場ってやつですかー!!!?)

 

 

「これが……月ノ森生なんだ……」

 

 今、この中でこの場を収められる人間はいなかった。後から来た倉田ましろは二葉つくしをすぐを追ってきたはずなのに、現状を理解できない。言い方が悪いけれど、堂崎柊も才能が冴えない自分と同じタイプの人間だと思い、そんな人間と友達になれて安心していた。なのだが月ノ森生徒の次元の違いを思い知った!※倉田ましろは何も知りません

 

全員が全員どこかズレている空間を置き去って堂崎柊はひたすらペンを動かしていた。担任の教師と向かい合っているので自然と面談に似た形になっていた。

 

「そういえば堂崎さん、昼食は済ませましたか?」

 

「いえ、まだです。丁度昼にしようとしたら呼ばれてしまったので」

 

「おかしいですね、二葉さんには昼食の後でいいと言ったはずなのですが……」

 

「まあつく……二葉ですし……ああいう所が可愛いんじゃないですかね」

 

おのれつくし。大事な伝達を忘れてるんじゃあないぞ。

 

「堂崎さんは女性にモテそうですね」

 

「何故急に?」

 

「なんとなくそう思ったんです。貴方はいずれ大物になるかもしれませんね」

 

「いつか期待に応えてみせたいです。期待されたの久しぶりなんで……それじゃ全部終わったんで提出しときますね」

 

「はい、ありがとうございます。もう堂崎さんのだけなので今日の午後には結果が貼り出されるでしょう。それでは」

 

 

 腹減った……そして疲れた。学力テストといっても短いやつでガチガチに成績が出るタイプのではなかった。昔の知恵をかき集めて大体三十分ぐらいで終わったがきっと俺の努力だけでは答えられなかった。

テスト自体は難しい……のだろう。さすが月ノ森といったところか。でも……

 

(フッ……今の俺の学力に問題はない!)

 

紗夜やPastel*Palettesの知識は無駄にしない……だって俺はそういう才能を含めて堂崎柊だから。まあどうでもいいか。

 

「さぁーてと、七深ちゃんの美味しい美味しいお弁当タイムに突入_____

 

 

「辛えええええええええーーーーーっ!!!?」

 

 

テスト終わり、透子からのいつもの場所にに来てとの連絡が来ていた。いつもの場所?と思っていたが、窓から外を見ると目立つというかわかりやすい女子4人がいた。何故か七深とつくしからも同じ数のメッセージが来ていた。……何やってんだ。俺の知らないところで競うな。

 

向かうと昼食は後から来た俺のみになってた。女子が少食ってものあると思う。あんまり見られてると食べづらいな。

 

 

 

「えっ!」

 

「ま、マジ?」

 

「マジマジ!!!ほら、あーん」

 

透子が辛さに悶える俺を興味本位で見ていたので試しにあげてみる。

 

「んっ……確かにこれからーい!……一緒に虹を飲んだらいい感じ!」

 

飲まねえよ。ミルクティーが嫌いになりかけたぞ。

 

「なぁ〜にぃ人の作ったお弁当であーんしてるのかなぁ」

 

「痛い、痛いです七深さん、ついでに口も中も痛いです」

 

そんなに透子に食わせたくなかったのか。かわいそうな我が友……。だからといってつねらないでください。ダブルアタックすぎる。

 

「それでテストどうだったの?」

 

「ん?倉田さん、お弁当箱が俺の理想だね。流石月ノ森で一番尊敬する倉田さんだ」

 

「え、あ、ありがとう」

(やっぱり堂崎くんもちょっと変わった人かも……)

 

「無視しないでよ!」

 

少し怒った顔をするつくし。

 

「ははっ、怒る顔が見たかったんだよ。可愛いから」

 

「なっ……!?」

 

「はっはっはぁ!また赤くなったなこいつぅ!可愛いやつめ!撫でてやろう!撫でてやろう!」

 

「や、やめてよ!髪が崩れちゃう!」

 

「そんなのいつでも直してやるって」

 

「それは撫でていい理由になってなーい!」

 

 

「「……………」」

 

(あの堂崎くんって……実はものすごく異性との距離感を掴むの下手というか……わざとやってるの?って思うし、本人が妹扱いしてるつもりでも相手にとってはただの口説き文句になっちゃう……あと二人が少し怖い)

 

 

「て、テストどうだったの堂崎君!」

 

ならここは私が流れを変えます!と話を戻す倉田ましろ。引っ込み思案で暗い自分を変えたくてバンドを始めた彼女だが、最近は変人な友人のせいで少し明るくなったかもしれない。

 

 

「ん?んー…俺的には満点かな。別に詰まる所なかったよな」

 

「強がんなよ〜結果でバレんだぞ?あたしには分かる。お前はあたしと同類だ」

 

「ふっ……舐めんなよ?本気出した俺は凄いぞ。なんならここで全てを曝け出してもいいぜ」

 

「はい逮捕」

 

ただでさえ危うい状況なので逮捕しないでください。

 

「まともな話、テストは午後に結果が出るからそこで透子と俺の違いを見るといい」

 

「言ったな!もしあたしより下ならバカにしてやっからな!」

 

「仮にも私達、月ノ森生だよ。そこそこの学力では解けない難問だって多いんだから!」

 

と、透子とつくしは自信満々に答える。そういえば倉田さんは別の学校からやって来た人だと聞いた。そんな難問を出す学校に合格するってやっぱり素の能力じゃあ勝てないかもな……。

 

「よしじゃあ、しゅうが口だけ野郎なのか確かめに行こ!」

 

 

そういって肩を組んでくる透子。もし俺より下ならギターぶっ壊すぞ。

もしくは有り金全部を虹に突っ込ませてやる。

 

 

昼休みから放課後へ……。

 

 

「テストの結果が貼り出されたよー!」

 

つくしと倉田さんが2人で一緒来た。みんなで結果を見ようと期待を込めて来てくれた。俺らも席を立ち、校内掲示板へ向かうことにした。

 

「楽しみだね〜しゅーくん」

 

「ああ、今から透子の泣き顔を見るのが楽しみだ」

 

「なんであたしが負けてる前提!?泣かないし!」

 

「もし100位以内ならコンビニでスイーツ買ってあげるから!」

 

「子どもか……俺は」

 

「堂崎くんは勉強したの?」

 

「してない。俺がしたって大した能力得られないし」

 

「……?」

 

倉田ましろは堂崎柊の変な物言いに疑問を感じた。今でも十分すぎるから別に勉強なんてしなくていいという事だろうか。彼を知れば知るほどましろは自分との違いに少し卑屈になってしまう。プラスにしろマイナスにしろ堂崎柊は倉田ましろに何かしら影響を与えている。本人達は気づいていないけれど。

 

 

「あったあった……」

 

「え〜とどれどれ……」

 

「えっ!?」

 

「これって……」

 

 

__________

 

1位 堂崎 柊

  八潮 瑠唯

 

2位…………

3位…………

 

__________

 

 

 

「あれ?あれーーー?桐ヶ谷さん?透子さん?カリスマさん?」

 

「1位って……マジで?」

 

「えー!凄いじゃん!柊くん、何だか私も嬉しくなっちゃった」

 

はっはっはっ!このオタクも認める生き字引と言われた俺の知識をナメるなよ!いやぁ〜気分は最高だなぁ!ハイになりそう。

 

《ねえ、見た?1位の人……B組の噂の人だよね》

 

《うん!なんか格好いいよね……連絡先交換しちゃおうかな》

 

「またしゅーくんが人気者に……」

 

「うわぁ、やっぱりすごいなぁ……あれが出来る人なんだ」

 

 

 

 

たかがテストにワイワイと盛り上がる俺達。その集団に一人の凛とした淑女が近づいていた。

 

「こりゃ透子、俺を馬鹿にしたのでギター壊しの

 

「ちょっといいかしら」

 

「はい?」

 

 いきなり後ろから肩を掴まれた。今まで有頂天だったので間抜けな声が出てしまったが、教師ではなさそうだ。

 

「ずっと貴方を待っていたわ……堂崎さん」

 

ドンッ!!!

 

そのまま壁に押しつけられた。逃げられないようにか片方の手を壁につけて封じ込められた。

 

これって壁ドンってやつですか……?

 

 

「この私を忘れたとは言わせないわよ」

 

 

俺は緊張のあまり喉を鳴らしてしまう。そうだなんで俺は忘れていたんだ!彼女とはいつも一緒に居たじゃないか!楽しい時も辛い時も昔受けた音楽の大会の時も!いつもライバルとして張り合ってた……認め合い切磋琢磨してきた!

 

そして俺は_____口を開く。ちゃんと言うんだ。目を見て。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え、いや……誰?」

 




八潮さんももちろん好きです。
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