Morfonicaは俺を巻き込むな   作:ねこちゃん

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 かなり長くなってしまった……。


広町七深を俺は救う

 誰だって触れられたくない過去はある。勿論それは堂崎柊も例外ではない。

 

いつから普通じゃないと気づいたのか。なんでこの星に産まれたんだろうと哲学を考えるぐらいには現実逃避をし、異常さとその意味を知りたかった。いや確かに俺は普通だったはずだ。

 

『この能無しめ。自由な時間を与えればお前もちょっとはマシになるかと思ったんだが……』

 

家庭環境、普通じゃない。

 

『ずぅーっと騙してたんだな』

 

『お前なんかと友達になるんじゃなかった。二度と話しかけてくんなよ』

 

友人関係、普通じゃない。

 

 

『柊〜あんま恥ずかしがんないで〜』

 

『なんで女装しなくちゃいけないんだよ!』

 

『いいじゃん!いいじゃん!思ったより似合ってるって!』

 

『ぜんっぜん!嬉しくねえ!』

 

『柊……この猫耳を……』

 

『つけねえから!』

 

幼馴染は、まあ……普通じゃない。

 

 とにかく柊はいつから普通じゃなくなったのか。自分は何故()()なのか。月ノ森に来るまで色んな人と交流したし、自分自身を磨いてきたけれど、俺は天才である事を誇っている訳じゃない。むしろ申し訳ないぐらいだ。俺の才能は全て人の物だ。

 

  その人の経験は俺の経験となりそれは俺の技術となる。

 

この力に気づいたのはある姉妹のおかげだ。

 

氷川紗夜で異変を感じ、氷川日菜で異常だと理解した。

 

人の技術や能力を経験や過程を見て自分に取り込み、真似をする。

要するに人の能力を自分の物へと吸収する天才と柊は名付けている。

 

 人を観察する天才的センスにより、長期間その人物を観察する。もしくは経験が一番現れる手に触れるとその人物の能力を真似できる。

 

手に触れて真似できるようになったのは氷川日菜の天才さを吸収してしまって俺の天才部分が敏感になってしまった。日菜の力が大きすぎたせいだ。

 

しかし、その力を使うかどうかは本人の意思次第。

そりゃ超能力じゃないから調整出来る。だからといって人間なのでアニメみたいな事は真似できない。

 

元々ぼっちであり、幼馴染の力を取りたくなかった柊は何にも吸収していないただの凡人であり、自分で努力することに才能はない。故に堂崎柊は自分を辞書で見る普通、と勘違いしていたのであった。

 

あれ、俺歌こんな上手かったっけ?

あれ、俺こんなにコミュ力あったっけ?

レベルだったのだから。

 

よって人の才能を真似する事しかできない天才は、一般的な普通だと自分自身が消えてしまう為、無意識に苦手になってしまったのだ。

 

 

 

堂崎柊は努力の天才ではない。人の技術(才能)を盗む天才だったのだ___________。

 

 

 

 

☆♪

 

 

 

「しゅう!お願い!ギター教えて!」

 

「……はあ、透子。お前のいつものその厚い人望で有名ギタリストでも探せよ」

 

 

 月ノ森音楽祭に向けて練習の日々が続いている。そんな中、とある日の休み時間。桐ヶ谷透子はまたしても俺に音楽の教えを請う。

 

「大体なんで俺なんだよ。この学園を隅々まで探せばギターやってましたって子いるだろ」

 

「あたしはお前に教えて欲しいんだよ!そうでもしないとあたしだけ仲良くなれないだろ!」

 

 

 仲良くなりたいって七深の事を言っているのか。透子は友達多いんだし俺に友達いたってよくね?え、何もしかして俺を孤立させる作戦か!?なわけないよな……。

 

 

「別に今のままでも仲良いって……確かに俺は目標も出したし、透子の事は嫌いじゃないけどそもそも俺には教える能力がない。今は月ノ森生になってはいるが俺は一流じゃないぞ」

 

「でもさー、初心者が一人で手探りでやるのと、教え下手でも経験者がついてくれるのって差があるの思わね?あたし家で練習しないから早く上手くなりたいんだよー!頼む!なんでもするからさ!」

 

「ほぉう?なんでも?」

 

透子の珍しい本気の頼みに俺は眉を動かす。すると本当は考え込んでいただけなのだが、中々喋らない俺を見て何を勘違いしたのか。

 

「あ、いや!エッチなのは駄目だよ!流石に早過ぎるってか!そう!全然準備してないからムリ!」

 

「なんで俺がお前に欲情してる前提なんだ 。……何の準備をするつもりだ

 

 

 

 正直俺にとってコイツがどうなろうと関係ないが、Roseliaの事を広められると困る……。それに有名人の透子に借りを作っておくのも何かの役に立つかもしれない。

 

 

 

 

  桐ヶ谷透子__________個人レッスン

 

 

 

 昼休み、屋上で俺は七深の愛妻弁当(本人が言ってる)を食べた。透子は和食という和食を食べていた。今度俺もいつものお返しに自分と七深の分の弁当作って食べさせてあげよう。七深にはギターの練習だからと離れてもらった。来たそうにしていたけど、悪いが気が散るので教室にいてもらった。

 

「それで透子は何を教えてほしいんだ」

 

「全部!!!なんなら、あたしを最強のギタリストしてよ!」

 

「お前じゃ無理だな」

 

「なんでだよー!どうしてだよー!」

 

そういって俺の頭を脇で締めてくる。鬱陶しいわ。

 

「努力してる人間もいる。全力でやってる人と今の透子じゃ比べるまでもないよ」

 

 実際そうだ。俺はこの数日間、彼女達を観察していたがどうも貴族の(さが)なのか誰もが憧れる月ノ森にいるからなのか、彼女達は自分達は他の人とは違う。断然、私達は優秀。そう考えている節がある。確かに英才教育だとかマナーとか、俺ですら受けた事がある。ぶっちゃけだから何?って思ってしまうのは俺が庶民側に近いからか。

 

 

「じゃああたしの向いてるやり方を教えてよ」

 

「例えば…………るんっ!て感じでさ」

 

「は?」

 

「……ごめん。今のは俺が悪かった」

 

「透子はノリで弾いてる事が多い。今はそれでもいいけれど、音楽祭ではダメだね。まずは簡単な曲をいくつかマスターしてみなよ」

 

 

「えー!そんなんより、めちゃくちゃ難しい曲を弾けた方が良くね?」

 

こいつギター初心者なのになんでこんな強気なんだ。これが桐ヶ谷透子の性格なのだろう。

 

俺はギタリストではないので音楽の例えは出来ないが、俺の趣味でゲームで例えよう。

 

 初めてやるゲームでいきなり最高難易度を選ぶ。まあ出来ないって訳ではないかもしれないが、やはり簡単な方を先にクリアしていた方が()()が出来る。俺はそれを透子に学んでほしいのだ。この前、透子にギター家でもやってる?と聞いたところやってないと言っていた。だったら尚更、安定さは欲しいところ。

 

「まずは慣れと場数を踏む事だろ。その見かけだけの状態でみんなと合わせてみろ、お前だけ失敗するぞ」

 

「うぐっ……」

 

「そもそもお前、自分で家で練習するタイプじゃないって言ってんだから簡単なのぐらいは沢山弾けるようにしとけ。そうしたら実力は後からついてくるよ」

 

「マジ?そんなので何か変わる?」

 

「マジマジ。とりあえずギターを慣らせ。透子のセンスなら出来るはずだ。簡単なのをマスターしたら、難しい方に挑戦してもいい。第一にお前、目標を高く設定しすぎ。10000人ライブとか。自信を持つのは良いことだけど、自分が見えてないのは恥ずかしいぞ」

 

「あーそっか。あたし、自分が練習不足で恥かくのはいいけど、みんなにはかけられないや」

 

「なら?」

 

「やるしかないっしょ!」

 

 

そうして俺たちは時間の許す限り、練習に没頭した。これで心意気も変わったことだろう。あとは本当の自信をつけて毎日練習すれば音楽祭でも通用するはずだ。そこは透子に期待しよう。

 

 

 桐ヶ谷透子のギターの技術が少し上がった気がした……。

 

 

 

☆♪

 

 

 

 

 時は夕暮れ。学校の空き教室で練習している|ツキノモリ(仮)は下校時刻になったら帰る事になっている。やはり部活帰りのこの疲れ加減はいいものだ。

 

俺たちは今日の成長について雑談していた。すると倉田さんは何を考えていたのかやる気を出し始めた。

 

「その、私もっとがんばるね……!」

 

「もう帰りだけど」

 

「そうじゃなくて!私、全然練習についていけてないから、もっとがんばらなくちゃって思って……」

 

「あはは、そんなのミクロンミクロン、気にすんなって」

 

「そうだよ。練習はまだ始まったばっかりなんだから」

 

透子やつくしが励ましている。そういや俺は一回も倉田さんと音楽とか月ノ森とか、腹を割って話した事がないな。外見は俺の初恋の人に似ているが、内面は詳しく知らない。俺も一応、仲間ってことになってるし嫌じゃないなら今度誘ってみよう。

 

「でも、どうしてそんなこと思ったの?」

 

「だって透子ちゃん、もう何個もコード覚えちゃったし。二葉さんは久しぶりに叩いたのにドラム上手だし」

 

「広町さんなんて、もう難しいフレーズまで弾けてるし。迷惑かけないように早く上手くならなくちゃって……」

 

(初心者だと聞いてはいたが、やはり七深はずば抜けた才能を持っているな……)

 

「ま、あたしのセンスは別格だからねー」

 

こいつ……殴りてえ。昼間の頼みは何だったんだ。この可愛さがウザさを生んでいるって意味ですごく殴りたい。

 

「ま、まあ、私もこういうのできちゃう人だから。ちょっぴり本気を出せばあれぐらい余裕で〜……」

 

嘘つけ!つくしはこの前ドラムは持ってきたのにスティック忘れてやがった。こういうのはできちゃう人とは言わない。

 

「そんなこと言って、つーちゃんは秘密の特訓してるんじゃなーい?」

 

「ぎくっ!な、なんのこと!?」

 

「してたんかい」

 

「毎日増えてくその手の絆創膏……広町の目はごまかせないよ〜?」

 

ごまかせなかったようだ。つくしはドヤ顔が崩される瞬間がたまらなく好きだ。今度慌てて自爆するときを録画したい。

 

「む〜、広町さんこそ、秘密の特訓してるんじゃないの?」

 

「え、私?」

 

「ベース始めたばっかりなのにすごい早さで上達してるもん。かなり練習しなくちゃあんなに弾けるはずないよ」

 

 

「えーと、別にしてないんだけど……」

 

おかげで毎日安眠です。夢見は悪いけど。あのアトリエ呪われてるんじゃないのか。

 

嘘です、実は一人でゆっくりしたり、プライベートはしっかりしてるけど開放感のある辺り俺の好みドストライクです。とそこで瑠唯が通りかかる。というかこちらに来ているのか。

 

「? 庭園に誰かいる……もう下校の時間だよね?」

 

「ほら、この前俺を呼んだ八潮瑠唯。……もしかして倉田さんって知らない人は覚えらない人?」

 

「ご、ごめん」

 

「まあ女性版の俺って覚えればいいよ」

 

「なんでもできちゃう人なんだね。すごいなぁ……」

 

「あ、あれ?」

 

 思っていた反応と違う。そこはいやいやどこが堂崎君なの!とツッコんで欲しかった。これじゃあまるで俺が自己顕示欲の強いナルシスト野郎みたいじゃないか!

 

「うわぁ……」

「しゅーくん……」

「何を言ってるの……」

 

めっちゃドン引きされとるーーーー!!!??違います!俺もこんなの予想外です!

 

「あなた達……。……!堂崎さん。貴方がいるなら言っておいて頂戴。最近、騒音がすると生徒会に苦情が来ているわ」

 

「「そ、騒音……!?」」

 

「もしかしてバンドの練習の音……?」

 

「バンドの練習?あれは曲だったの?音楽は調和でしょう。教室から聞こえた音は調和しているとは言えないものだったわ」

 

「ま、まだ練習始めたばっかなんだからしょうがないじゃん!」

 

「それがコンクールでも通用するならみんなそう言うだろうな。それで結果が変わるなら喜んで言ったよ」

 

「そうね。今ここにあるものがすべてよ」

 

「しゅーくん……?」

 

「しゅう!どっちの味方なんだよ!」

 

「お前達の味方として言ってる。まだ比較対象を知らないから現状に満足出来るかもしれない。でもそれは鳥籠の中にいる鳥なんだよ」

 

安全に過ごしてきた鳥はいきなりの嵐にはとても耐えられない。俺はそれでも羽ばたいたバンドを知っている。

 

「教室から聞こえてくるのは音楽とは言えない騒音。迷惑な活動は生徒会の一員として認めることはできないわ」

 

「ま、待って!ちゃんと教室の使用許可は生徒会からもらってるんだから!」

 

さすが俺たちのリーダーだぜ!

 

「ということは、この申請書を書いたのはあなたね。不備だらけよ。それに誤字脱字が三箇所ある」

 

ふざけんなよリーダー!

 

「おい、二葉……全然しっかりしてねーじゃん」

 

「し、しっかりしてるもん!ちょっと見落としただけでしょ!」

 

「とにかく、教室の使用許可は取り消しね。帰る前に教室にある荷物を片付けて」

 

「「ええっ!?」」

 

は?いやいやそれは困る。こんなんで音楽祭出れませんでしたとかになったら俺に……責任が来る!そしたら俺に普通は訪れない!!!ここはやるしかない。

 

 

「ちょっと待ったぁぁぁ!」

 

「……堂崎さん?」

 

「俺に免じて教室は使わせてくれ!このままじゃ何も掴めない!」

 

「……わかったわ。教室の使用許可の申請書を書き直すだけでいい」

 

「よっしゃあ!」

 

「話は以上よ。堂崎さん、依頼の結果を楽しみにしてるわ」

 

そう言って瑠唯は去っていった。これでまた月ノ森でも活動出来るな。

 

「おいおい、いつの間にあんな信頼されてるんだよ!」

 

「八潮さんがあんな簡単に折れるなんて……柊くん、何者?」

 

「あれが本当のカリスマってやつ……?」

 

「あはは……特になんて事もなく終わって良かったね」

 

 驚きでみんな理解が追いついていないけれど、もう夜になりそうなので帰ることにした。瑠唯の言う依頼。あんな美人に期待されてるんじゃはい失敗しました。なんて言えないな。

 

(今度は自分のためじゃなく。たまには人を助けるために才能を使うのもいいじゃないか。よし、依頼開始(ミッションスタート)!)

 

 

もしここ(月ノ森)が俺の新たな居場所だと言うのなら、ここで理想の青春を過ごすために許嫁の一人ぐらい守ってやろう。

 

 

 

☆♪

 

 倉田さんも、透子もつくしも。みんなと別れて俺と七深の二人だけとなる。

 

「……七深」

 

「ん?どーしたの?しゅーくん」

 

「今日、夕飯の後にアトリエに来て欲しい」

 

「……うん。わかった」

 

俺の声のトーンで真剣だと言うことを察したか、七深は特に深く聞くわけでもなく家に戻った。俺はその七深を見送ってアトリエに帰った。

 

「ただいま」

 

誰かいるわけでもない。心の準備だ。きっとこの話は俺も七深も心の底をえぐる。向き合わなきゃいけない現実に隠してた真実をぶつけ合うのだ。でもそれで友達になれるか……いや、七深次第だ。

 

 

だから俺は……今日。七深を____________惚れさせる。

 

 

「八潮瑠唯から聞いた。広町七深。かつてはその圧倒的な才能で活躍していたらしいな」

 

「いやーそんな昔の話るいるいが覚えてるなんてなー。でも今は違うよ、普通なんだ」

 

「普通?フリをするのがか?それとも月ノ森ではみんな才能を隠すのが普通なのか?」

 

《才能があって気持ち悪い……》

 

「だって……才能なんてあったって、友達なんて出来ないよ……」

 

「……ねえ俺達って同じ絶望を味わってたと思わない?」

 

俺たちはいつも一人だった。近くに人がいなかったわけじゃない。心が孤独だったのだ。誰も本当の意味では理解してくれない。それなら諦めて普通を演じた方がいい。俺たちはきっと役者の才能もあったんじゃないか。俺の場合は人のだけど。

 

 

「でも……私普通じゃないし……」

 

「俺は嫌わない。俺は七深が好きだ」

 

「すきっ!?で、でも私しゅーくんの知ってる広町じゃないんだよ!本当は化け物なんだから!」

 

「お前のどこが化け物なんだ。こんな可愛い化け物がいるかよ」

 

そう言いつつ俺は徐々に七深に距離を詰めていく。七深は珍しく慌てていて俺から逃げられない。

 

「あ、ああああああと!辛いの!好きだし!変でしょ!」

 

「別に変じゃない。俺も好きだし」

 

俺は七深を押し倒した。

 

「〜〜〜ッ!!!?」

 

七深は変な声を出して真っ赤になっている。

 

「俺がお前と同じになってやる。二人なら、普通だ」

 

そう言って俺は彼女の背中に片手をまわして軽く固定し、七深の手を掴んだ。俺は彼女と同じになってやれる。俺なら彼女と同じ才能を真似できる。そうだ、もう認めよう。俺は異常な天才だ。

 

「あっ……」

 

「嫌なら解いてくれてもいい」

 

 七深は解こうとはしなかった。それよりもずっと俺の顔を、目を見ていた。俺はずっと七深を見ていた。ずっと見てみたかった本当を顔を。

 

 七深の柔らかい手を掴んでいることで、七深の今まで経験や才能を自分自身に取り入れていく……。

自分の中に更なる変化が起ころうとしている……俺は七深の才能と同じ物を自分の中に吸収した。

 

人の才能でしか輝けない俺は、普通じゃない。

 

「これが普通なの?…-男の子って」

 

「違う。本当は普通なんかじゃない、普通になりたかっただけだ」

 

好きな物に憧れて好きになることの何がおかしいのだろうか。誰がそれを馬鹿にできるのか。

 

「はぁ……はぁ……」

 

「し、しゅーくん?大丈夫?」

 

 汗が止まらない。七深に触れていたからか、七深が艶っぽく見えて仕方ない。

 

「はぁ……ああ、新しく得た才能がまだ馴染んでないんだ、本来俺は長期間かけて人を真似する天才らしいんだが……」

 

 日菜め……あの天才にも色々と苦労させられたぜ。

 

 

「ね、しゅーくん。一緒にお風呂で話そ?」

 

「え、一緒に風呂?」

 

アトリエには本家ほどではないが一般家庭用ぐらいの風呂はある。絵具で汚れた時用に作ったのだろうか。俺は毎日そこを利用させてもらっているが…………何故今?いや女の子に風呂に誘われるっていつだろうがなんで返せばいいかわからない。まあきっと水着を着てくれるのだろう。

 

 

「なんでお互い全裸なんだよ!?」

 

「?しゅーくん、お風呂じゃこれが普通なんだよ?」

 

「ああー!!!前隠せ!見えてる!見ちゃうだろ!タオル持ってこいよ!」

 

「アトリエには予備のタオルがないよ」

 

「い、いやでも!お、俺は浴槽に入ってるから!」

 

「うん」

 

ちゃぽん。

 

「なんで七深も入ってくるんだよ!?」

 

羞恥心がないの!?七深さんは!?

 

 

「ねえ、聞いて私の婚約者さん」

 

「……?」

 

「私、私ね。弦巻さんから話を聞いた時、あなたは私と同じ人だって思ったの。でも本当はそんな事なくて、あなたは私より強くて、もっと凄い人間だった」

 

 

「……親父、か」

 

「私はそのあなたの生い立ちが好きで、見た目も好きで、中身も好きで。そして天才なんだよ。変えようのない、私達の真実。堂崎柊くんと仲良くなりたい。そう思っていたら好きになっちゃった。これって普通だよね」

 

「ああ、普通だ。こんな可愛い許嫁がいるなんて理想の青春ってやつだな」

 

 七深が俺のことを知ってたのはやっぱり親父が話していたからだったのか。全く、段階を飛ばし過ぎだっての。

 

「あー、それでだな。七深、やっぱり高校生で婚約者なんて普通じゃないだろ?」

 

 

俺は説得をし始める。八潮瑠唯の依頼と、親父が勝手に組んだ婚約は別物だ。七深。まずは友達から……。

 

「ううん、これは普通だよ。だって」

 

もうこれは本物の恋なのだから。

 

広町七深は吹っ切れた。そうだ、彼は私の欲しかった全てをくれた。なら私も彼の欲しいもの全てあげようと。そう心に誓ったのであった。

 

「身体洗ってあげるねー」

 

「洗わなくていいーーー!!!!」

 

「あっ…ビクビクしてる……」

 

「してない!」

 

ギューっと後ろから抱きしめられる。

 

「あったかい……あったかいよしゅーくん」

 

広町七深は堂崎柊に魅了されてしまった。

 

「それはお湯ですっ!」

 

もう無理です!男として死んでしまいます!

 

 

☆♪

 

 風呂から上がって数時間後、七深に戻れと何度も伝えたのに、俺の布団で寝やがった。

 

俺は風にあたるために、外で一人に電話をかける。

 

「依頼達成、おやすみ」

 

「ちょっと待って!いきなり何?……依頼達成?夜よ。ご自慢のアトリエにでも呼んだのかしら」

 

「そこまで知ってたんなら瑠唯が行けば良かっただろ」

 

「貴方がいなかったらそうしたかもしれないわね。でも私が行くより貴方が行った方が早い。そう判断しただけよ」

 

「あー……そう。悪い、疲れてるから詳しい話はまた今度でいいか?」

 

「わかった。お疲れ様、終くん」

 

仕方ないので七深と一緒に寝ることにした。とてもいい匂いがしたのは俺だけの秘密にさせてくれ。

 




 即落ち瑠唯さんが好きです
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