忠犬と飼い主~IF~もしもオリ主が相棒世界のあの人の関係者だったら? 作:herz
・相棒側の登場人物達のキャラ崩壊あり。
・オリ主視点
・前編と後編に分かれています。
例のレストランで起こった殺人事件から数日後の、夜中。……俺は秀一と共に、あの事件の事情聴取を受けるために警視庁に来ていた。調書作成のための事情聴取という事で、それなりに時間を取られるのだろう。
念のために俺も秀一も、今日終わらせる必要がある仕事は全て片付けてある。この事情聴取さえ終われば、今日中にやるべき事が全て終わるのだ。……秀一とは、もしも予定より早めに終わったら、久々に2人でどこかに飲みにでも行こうと話していた。
警視庁内にて。俺達はそれぞれ別の部屋で事情聴取を受ける事になった。俺には伊丹刑事が、秀一には芹沢刑事が取調を行う。
……やがて、俺の方は特に問題なく終わった。まだ秀一の方が終わっていないため、伊丹刑事と共にそれが終わるのを待つ事に。
「……あなた方もお忙しいでしょうに、こちらの都合でこんな夜中に事情聴取をさせる事になってしまって、大変申し訳ない……」
「あぁ、いやいや。荒垣さん達もいろいろと忙しいんでしょう。お互い様ですよ。……むしろ、こちらとしては久々にまともな取調を行う事ができて、安心しました」
「……それは、どうゆう事です……?」
「…………ここだけの話ですがね。……今までに何度も、取調中に乱入された事があるんですよ――あなたの、叔父上に」
それを聞いた瞬間。俺は即座に頭を下げた。内心では土下座していた。うちの叔父が本当に申し訳ありませんでした!!
誠心誠意謝罪していたら、逆に伊丹刑事の方が焦ってしまった。頭を上げて欲しいと言われたため、渋々それに従う。
「……私の叔父が大変失礼な事を……!今度叔父と顔を合わせる機会があった時に、よーく、言い聞かせておきますので……!!」
「あ、それは是非お願いします!!」
「はい、お任せください。……それから、叔父が暴走した時に"甥っ子に言い付けますよ!"とでも言ってもらえれば、多少は効果が見られるはずですから……万が一の時はそう言ってみてください」
「ありがとうございます……!万が一の時の切り札としてありがたく使わせていただきます……!!」
伊丹刑事と、がっちりと握手を交わした。
……その後。取調を終えた秀一と合流し、伊丹刑事と芹沢刑事に見送られて警視庁を後にした。……すると、前方に見覚えのある人影が2つ。
秀一を見ると……軽く頷いて了承してくれたので、2つの後ろ姿を目指して駆け寄る。
「――右京さん!冠城巡査!」
「おや?」
「あれ!?荒垣さんに……赤井さん?どうしてここに?」
俺が声を掛けると2人――右京さんと冠城巡査が振り向き、それぞれが驚く。
「例の事件の事情聴取を受けるために、ここに来ていたんです」
「なるほど、そうでしたか……」
「右京さん達はこれからどちらに?」
「僕達の行き付けの店に行くところですよ。……あぁ、そうだ。もし良かったら、君達も一緒に行きませんか?もちろん、何も用事が無ければですが……」
「…………あー……」
叔父の誘いはありがたいし、久々に飲み食いしながらいろいろ話したい。
しかし……先に秀一と2人で飲みに行く約束をしたからな……
そう思って、秀一を見ると……目が合った。秀一は黙ったまま小さく微笑み、"あなたのお好きなように"と伝えてくる。……ごめんな。ありがとう。
「……ありがとうございます。俺達も是非、ご一緒させてください」
―――
――――――
―――――――――
右京さん達の案内で、"花の里"という小料理店にやって来た。……元々、彼から行き付けの店の事はよく聞いていたが……確かに右京さんが好みそうな、良い雰囲気の店だな。
右京さん達に続いて中に入ると、1人の女性がいた。……彼女が月本幸子さんかな?右京さんに聞いていた通り、美人な女将さんだ。
「いらっしゃいませ。……あら?そちらの方々は……?」
「僕がここに誘いました。彼らは、FBIの優秀な捜査官達なんです」
「え、FBI!?今ニュースで話題になっている、あの?」
「えぇ、そうです。……とりあえず、座りましょうか。……あ、冠城君。君、今日はいつもの席を交換してください。君がいつも座っている席を、僕が使いますから」
「えっ?……あぁ、なるほど。分かりました。どうぞどうぞ」
店内のカウンター席に、俺と右京さんを間に挟むようにして並んで座る事になった。俺の隣に秀一。右京さんの隣の角の席に、冠城巡査が座る。
「珍しいですね……右京さんが冠城さんと席を交代するなんて……」
「それはそうですよ、幸子さん。今日は荒垣さんがいますし」
「荒垣さん……?」
おっと。そういえば自己紹介がまだだったな。
「ご挨拶が遅れてしまい、申し訳ありません。FBI捜査官の、荒垣和哉です」
「同じく、赤井秀一と申します」
「月本幸子さん、ですよね?あなたの事は、叔父からよく話を聞いていました。とても美人な女将さんだと……」
「あ、あら……それはありがとうございま、す……?」
首を傾げた女将さんは、恐る恐る俺に問い掛ける。
「……あのぉ……叔父、って……?」
「僕の事ですよ」
「え」
「……叔父の言う通り、私は彼の甥なんです。私の母親が彼の姉でして……母方の叔父、という事になりますね」
「ちなみに先手を打って言っておくと、荒垣さんは今年で38だそうですよ?」
「――――」
…………女将さんは、見事に固まってしまった。頭の理解が追い付かないのだろう。それを見兼ねた右京さんが、彼女に声を掛けて再起動させた。
我に返った彼女は、俺と右京さんを交互に見て目を白黒させる。
「え、えぇぇぇっ!?ほ、本当に右京さんの甥っ子さんなんですか!?それも38!?うそ、全然似てないし見えない!!どう見ても20代半ばか後半ぐらいにしか…って、あ、ごめんなさいっ!!」
「ぶふっ!?」
冠城巡査が噴き出した。多分、全然似てないというところに笑ったのだろう。
「ふ、ははははっ……!!っ、全然、似てないって!バッサリ…、あっはははは!!」
腹を抱えて大爆笑している。……隣から、冷気が発せられた。
「――冠城君……?」
「あ、ハイすみませんでした!!」
即座に笑いを止めて謝った。……上下関係はとっくに決まっているようだ。まぁ、右京さん怒ると怖いからな。
さて。気を取り直して、女将さんにそれぞれ料理や酒――冠城巡査と秀一がワイン、俺と右京さんは日本酒――を注文した。
先に注文した酒が行き渡ったので、俺は右京さんの目の前にある徳利を持つ。
「右京さん。お酌しますよ」
「おや、ありがとうございます」
右京さんが持つお猪口に酒を注ぐ。……何故か、彼は上機嫌だ。
「……君とお酒を飲める日が来るとは……感慨深いです……」
「そんな年寄り臭い事を……」
「実際に、もう年ですからねぇ……」
「なに、あなたならまだまだいけるでしょう」
「……君にそう言われると、不思議とそう思えてきますねぇ……もう少し頑張ってみますよ」
「そうしてください」
会話の途中、秀一の手が俺の前にあった徳利を掴んだため、その意を察してお猪口を持つ。……ちょうどいいところまで注いでくれた後、徳利を置いた秀一に視線を送って礼を伝えた。
その礼代わりに俺も秀一のグラスにワインを注いでやろうとしたが、首を横に振って遠慮してきたので、仕方なく引き下がる。
その後。注文した料理も行き渡り、飲み食いをしながら会話を始める。
「……ほう……冠城巡査は元々法務省にいたんですか」
「えぇ、まぁ……いろいろあって退官して、右京さんがいる特命係に所属する事になりまして」
「所属する事になった、というよりも……無理矢理戻って来た、という表現の方が正しいですねぇ」
「そこまでして戻って来た僕の事を褒めてくれてもいいんですよ?」
「それはあり得ません」
「はっはっは、手厳しい」
……会話に遠慮がないな。どうやら、右京さんはある程度彼の事を信頼しているらしい。
「そうだ、荒垣さん。右京さんに関する面白い話とかがあったら是非!教えて欲しいんですが……何かありませんか?」
「あ、それは私も気になります!」
「…………和哉君。余計な話はしないでください」
「そうですね…………昔、俺にFBIになってもらいたい父と、日本の警察官になってもらいたい叔父の間で、ちょっとした小競り合いがあったらしいんですが……その話でもしますか?」
「何それ超気になります!!」
「ちょっと待ちなさい。君、一体誰からその話を聞いたんですか?」
「お袋からです」
「あの人は……!」
それからも楽しい会話――なお、叔父は冷や汗をかいている――が続いたが、会話の方向性を変えるためか、叔父が別の話題を切り出す。
「ところで、僕としては君達の話も聞きたいのですが。……特に――かの有名な、FBIの
「……ホー……俺の事を知っているんですか」
「右京さん。一体どこからその情報を……?」
「僕にもいろいろと、つてがありますから」
「シルバーブレット……?何ですか、それ」
疑問を口にした冠城さんの方へ振り返り、彼は口を開く。
「赤井さんの通り名ですよ。狼人間を唯一殺す事ができる銀の弾丸になぞらえているのだとか……FBIの
さらに、今までに数多くの難事件を解決に導いており、FBI捜査官としても一流だそうで……」
「……恐縮です」
「……そして、本人がその実力を鼻にかける事がなく、出世にも興味がないのでは?という話も聞きましたが……その様子を見るに、噂は事実のようですねぇ」
「現場の方が性に合っていますから」
「…………赤井さんはそんなに凄い人だったんですか。知りませんでした」
冠城さんがそう言って、興味津々といった様子で秀一を見る。……秀一はというと、それとは真逆で興味無しといった様子でワインを口にしている。
そこでグラスの中身が空になったので、今度こそ俺が注いでやった。秀一は黙って軽く頭を下げた。礼には及ばない。
すると、俺が気になっていた鯖の味噌煮を、自分の皿から少し分けてくれた。……弟子にそんな事をされては、師匠の面子が保てない。だから、俺も秀一が気にしていた天ぷらを分けてやる。……申し訳なさそうな顔をされた。いいから遠慮せずに食え食え!
「……で、そんな赤井さんが尊敬しているという事は、荒垣さんも相当凄い人だという事ですよね?」
「それは、」
「それはそうですよ。彼は俺の自慢の師匠ですから」
否定しようとしたら、秀一に先手を打たれた。……相変わらず俺が関係しているとレスポンスが早い!
「師匠?……和哉君が、あなたの……?」
「えぇ。……俺に狙撃の技術や、パルクールの技術。事件捜査のいろはやFBIとしての心構えなどを教えてくれたのは、和哉さんです。もちろん、その技術等を磨いたのは俺自身である事は認めますが……それは、和哉さんによる教育という基盤があったからこそです。それがあったから、ここまで磨き上げる事ができたんですよ。
――和哉さんの存在があったから、今の俺はここに存在している」
「は、はぁ……」
「俺は和哉さんの唯一の弟子である事を心の底から誇りに思っています。……それなのに、この人はいつも謙遜するんです。確かに、既に狙撃能力や戦闘能力、捜査能力等は俺の方が上です。それは認めます。しかしそれは俺が和哉さんの背中を追い掛け続けた結果であり、この人が俺の師匠で、俺がその唯一の弟子である事に変わりは無い。一時期は免許皆伝なんて言って俺から離れようとしましたが、そうはいきません。俺にはまだ、和哉さんから学びたい事が山ほどあるんですから」
「そう、ですか」
「和哉さんはまだまだ、俺が会得していない技術を数多く手にしています。それらを全て教えてもらいたいですし、これから先も共に成長していきたいんです。この人の存在は俺にあらゆる刺激を与えてくれます。この人が側にいてくれたら、きっと俺はもっと成長する事ができる。
……だから、それを邪魔する奴は問答無用で抹殺――」
「――
「……
……止めるのが遅過ぎたようだ。右京さんも冠城さんも月本さんも、みんな面を食らっている。……あまり効果は無いだろうが、一度咳払いをしてから取り繕う。
「あー、驚かせてしまって申し訳ない。こいつは酒が入ると饒舌になり、何故か俺を大袈裟に褒める言葉を毎回口にするんです」
いつもは酒が入っていなくても普通に口にするけどな!……つい、秀一を睨んでしまった。
ここは外だぞ外!お前の
「秀一……お前本当に自重してくれよ?頼むから」
「…………すみませんでした。……でも、先ほどまでの言葉は全て本心ですよ」
「はいはい」
「……本当ですからね?」
「分かった分かった」
「本当に分かってますか?」
「分かってるって言ってんだろ。つーかそんなもんはとっくに知ってるんだよ。いちいち言われなくてもな」
それこそ毎日のように聞いてるから、こいつが本気だって事はもう分かってる。
「……今日、君達と警視庁の前で会った時から思っていましたが……君達は本当に仲が良いですねぇ。先ほどから言葉もなく意志疎通をしていて、その仲の良さは窺い知る事ができましたが……師弟というのは、そんなにも仲が深まるものなんですか?」
…………え?
「え?……お2人ってそんな事してましたっけ……?」
「してましたよ。警視庁の前で会った時は何やらアイコンタクトで互いの意思を確認していたようですし……ここに来てからも、会話もなく当たり前のように赤井さんが和哉君にお酌をして、和哉君も黙ってそれを受け入れていました。それからつい先ほど、互いの注文した料理をこれまた会話もなく分け合っていて……まさしく、阿吽の呼吸でした。
……おや、どうしました?和哉君」
自身の叔父の言葉を聞き、俺は両手で頭を抱えた。
(――完っ全に、無意識だった……!!)
確かにそんな事をしていたよう、な?……駄目だな。うろ覚えだ。……秀一に自重しろって言ってた俺がそれでどうすんだよ……
「和哉君?」
「あ、あぁ……すみません。ちょっと入りやすそうな穴があったらすぐにでも入りたいという気持ちにさせられただけでして」
「はいぃ?」
「いえ、何でもないです。そっとしておいてください……」
「はぁ……?」
右京さん達は不思議そうにしていたが、秀一は俺の心情を察したようで、俺の肩をポンポンと叩いてきた。同情はいらねぇんだよ、とその手を払ったら今度は頭を撫でてきた。それも払った。
「――調子に乗るんじゃねぇぞ馬鹿弟子」
「おっと、すみません」
口では謝っていても、目が”微笑ましい“と言っている。……この野郎。後で覚えとけよ……!!
「……ふふ。……確かに右京さんの言う通り、とても仲が良いんですね……」
月本さんにまで似たような目で見られた。居たたまれない……だがしかし、逃げるわけにもいかない。
と、いうわけで。
「……あ、そうだ右京さん!伊丹刑事から聞きましたよ?あなたが今までに何度も彼らの取調中に乱入していたと!」
話をすり替える事にした。
「駄目じゃないですか!真面目に仕事をしている彼らの邪魔をしないであげてください!」
「いや、しかし和哉君、」
「いやもしかしも無い!確かにあんたは子供のように好奇心旺盛だし細かいところが気になるのがあんたの悪い癖だという事も知っている。でもな、あんたのその行動に困っている人達がいるって事をいい加減理解してくれ!」
「う、」
「大体なぁ、あんたはきっと自分がどう見られるかなんて気にしてないだろうが――俺とお袋は、嫌なんだよ。俺にとっては大事な叔父で、お袋にとっては大事な弟であるあんたが、周りから腫れ物扱いされてるところなんて――本当は見たくないんだぜ?」
「――――」
「だから、ほんの少しだけでもいいから――俺達のためにも、自分のそうゆう行動を省みてくれよ。右京叔父さん」
思わず、情けない声を出してしまった。……この自由奔放な叔父は俺とお袋をよく心配させる。きっとこの言葉も、効果は少ししかないだろう。……それでも、言わずにはいられなかった。
「…………そう、ですね。――すみませんでした、和哉君。……少し、気を付けてみます」
「ん。ありがとう」
どうやら、少しは心に届いたようだ。今はこれで充分だろう。……ふと、視線を向けると……月本さんと冠城さんが、唖然とした表情で右京さんを凝視していた。……どうかしたのか?
「あの右京さんが素直に反省してる……!?」
「明日は槍でも降るのか!?いや、それどころか天変地異の前触れ……!?」
…………おい、叔父上よ。あんた一体普段はどんな振る舞いをしてるんだ……?