~博麗神社~
「…まあ、一応助けてくれて、ありがとうな。」
「どうも。ほっとくと後で面倒くさいだけだし。」
「いや、ゴミ扱いか。「ありがとう」にはべつの返事があるだろ?」
「なんかありがたく思われる感じじゃないわ、今日。なんか与えてやっただけでありがたく思いなさい。」
「…煎餅一枚と薄い緑茶で空腹は征服できないんだが…」むしゃ「異論はないが。」
…うーん、あまり好きになれないな、この女性。
えっと、ここまでのことを振り返ると。太陽ギンギン照らされながら、極めてすごい空腹に苦しまれながらいつの間にかどこかの山を上っていた。階段とその先の赤い鳥居を見たことで幸い人がいるかもしれないと、希望と虚空感(主にお腹)を抱えながらてっぺんまでたどり着いたらいきなり頭部を何か重いもの(本当にあれ御幣か?竹刀並みに効いたが…)で一瞬気絶し、気づいたら神社の前で、煎餅と緑茶と赤白の巫女とお茶をすることに。
…まあ、撲殺以前に餓死から救われたから、まあよしとしよう。
「ところで…きみって誰なんだ?」
「はあ?他人にいきなり名前を聞くわけ?」
「いや、普通はないけど…なんか道に迷ったみたいで。空腹のおまけつきだから、とりあえず…」
「…ん~、まあ、暇だし、まあいっか。」
「いやいや…」
「
「ああ、
「…変な名前ね。」
「お前が言うか。」
はくれい…名前ならともかく、そんな苗字なんて聞いたことがない。
「っとそういえばここってどこだ?このあたりに神社があるなんて聞いてないけど…というか、山自体もなかったはず。」
「
霊夢が、何かを期待する子供の顔で勢いよく賽銭箱を叩く。「くれ。」
「いや、僕お金持ってないんだが…」
「はぁ!?なにそれ、それで生活してきたわけで…」
「いや、まあ…生活費までは稼いでるつもりなんだけどね。」
「…ふーん。変わったやつね。」
「よく言われるよ。で、君はどうなんだ?こんな山奥に…」
「使命みたいなものよ。面倒くさいけど、誰かがやらなきゃってね。」
「…そこを仕事といわない以上、かなりのものだな。」
「よく言われるわ。…」
「…」
「…」
…なんだ。いきなり。すごく黙り込んだな、この人。
それに…なんだ?なんか、変なオーラを感じる。なんだろうか…ま、とりあえずなんか話題を。
「そういえば…ここってどこなんだ?」
「え?」
「いや、山なんか登った覚えないしさ。そもそもこのあたりに神社があるなんて聞いてないし。」
「…ふーん…」
「最後に覚えてるのは…目を瞑ってたことかな…もしかして、これって夢だったりして…」
「…そっか、じゃあ…」
「ん?どうした?」
「あんた、外の世界から来たんだね?」
「…そと…って、都会のこと?」
「いや、そういうことじゃない。説明するのが面倒くさいんだけど…」
(…無性に聞きたくなった)
「…まあ、いいわ。つまり、ここはもうあんたの知らない世界ってことなのよ。」
「…悪い。それ、具体的に…」
「外の世界がどんなのかよく分からないけど…ま、いろいろとここと違うのよ。」
「は、はぁ…」
ズズ…お茶を一啜り。
「…やっぱり夢か?」
「あんたの場合そういってもいいかもね。」
「どういうことだよ…」
「ここは幻想郷。「外の世界」から来たあなたにとって、存在しない世界と等しいのよ。」
「…へ?」煎餅を口につまみながら、僕は、その不思議なオーラの少女の言葉を考えた。
…確かに、集中して感じると、このあたりの空気は何か…おかしい。日本の田舎でも感じたことのない、空気の清らかさ…現代の世界ではとても感じることが出来ない。
そして、何より…
「…るの…聞いてるの?」
「…あえ、あ、ごめん、思いふけってた。」
「…はあ。あんた、自分の状況分かってるの?」
「…少なくとも、人生最大の迷子になったのは、なんとなく…」
「全然違う。迷子はいつか帰ってこれる人!あんた、下手すると帰ってこれなくなる!」
「あ、じゃあ一応帰れるんだな。」
「そうよ。でもそれは…」
「じゃあ、今はいいや。おかわりいいか?」
「…はい?」
コト、っと音を立てておかれたのは僕の空の茶碗。呆然とそれを見る霊夢の視線は、次第に僕の目に向く。
たぶんそれで大体確信はついたと思うが、次の言葉も予想外と言うわけでもなかった。
「あんた、馬鹿なの?馬鹿なの?何言ってるの?」
「いや、いたってまともに言ったが…」
「もう一回言うよ。何言ってるの?言ったでしょ、ここからは出られなくなるって。それに一応言っとくけど、あんたみたいな普通な人間がほっつき歩き回るには何百個もの命が必要なのよ!」
「…ある意味もとの世界と変わらないような…と言うか、基本的に人生サバイバルでしょ…」
「あんた…変わり者ね…」
「どうも、ただの変わった人ですよーだ。」
「…まあ、いいんじゃない?なにやら受け入れがいいほうが、こっちも楽で助かるよ。一応歓迎するけど…とりあえず、あんたの話聞かせてもらえないかしら?ほら、お茶。」
「ああ、どうも。」
注がれたお茶を軽くすすり、一拍おいてから、口を開いた。
「そうだな…さっき言ったと思うんだけど、僕は風林京だ。18歳で、出身は京都だ。」
「誰も聞いてません。それに京都って言われても知らないわよ。」
「だよね…まあ、今はこれといった住まいはないし、関係ないけどね。」
「住まいがない?それって…流浪人、ってこと?」
「まあ、平たく言えば。」
「何それ、私よりひどいじゃない。よほどの悪童だったんじゃないの?」
「いや、決してそういうわけじゃないんだ。話せば長くなるんだけど…」
こうして、僕の、幻想郷と言う新たな地に住まうことになった。
このときは、ただの迷子…もとい、ほとんど何も持たない一人の流浪人として博麗結界を渡ったんだが、思い知らされるのはまだ先だった。
僕がこの楽園に足を踏み入れるのは…「運命」だったのだと。