~京視点~
「そういえば、今から行くとこ…なんだっけ?」
「紅魔館か?どうしたんだ?」
「いや、どんな場所かなと思って…」
「行ってみりゃ分かるぜ!」
「いやまあ、そりゃそうだろうけど…なんか不気味な感じがしてきてさ…」
「…そうか?私はしょっちゅう通ってるから、そんな心配はないかもだぜ!」
「へ、へぇ…」
さらに霧が深くなって、いよいよ目の前の魔理沙以外が見えなくなってきて、パーカーを着る僕も少し肌寒い。それなのに、魔理沙ときたら薄着で半袖の魔女格好なのに全然震えない。これはキャリアの差というものか…
いや、こういう雰囲気には慣れてるのか?多分ここしか知らない魔理沙も、こういう雰囲気にはには慣れてるものか?
まあ、あんなでかいレーザーを平気で誰かに向けるほどの器は持ってるみたいだけどね。あんまり褒め言葉とは言えないが…
「…って、うお!なんだあれ!?」
「へへ、驚いただろう!ここが紅魔館だ!」
…これは…なんていうか…
「…立派な門…だね。」
「なんだそっちか、もっということあるだろう?」
そんなこと言われたって、あまりにも高い煉瓦壁とその真ん中に設置された頑丈そうな鉄の扉に視界を遮られ、その紅魔館に目が掛かるのは無理な話。その守りにも威嚇されるが、これといった特別なことはなさそうだ。
…一人、ボツんと門の前に立つ、誰かを除いて。
…さて、どういったものか。ここまで僕は、幻想郷の住民に五人会ってきた。その中で時に印象的に残ったのは、あの妖精たちの羽根や、ルーミアの異常な食欲でもない。霊夢と魔理沙の、個性的な服装だ。ただ、霊夢は巫女、魔理沙は一応魔法使いだし、仕事服だと脳内整理して納得した。
それが、どういったものか。
見たことないわけでもない。緑色のあの、脚のところに切り目にある、いわゆるチャイナドレス。その下に履く白いズボンと、黒いブーツ。そして特に変なのは、星型のクリップをつけたベレー帽だと思われる帽子。
その帽子と頭が少し下がってることで顔は見えなくても、その変な組み合わせの服装にちょっと意表を突かれた。
「誰なんだ、あの人?」なんでヒソヒソしてるんだ、僕たち。
「門番だ。中国と呼んでる。」
絶対嘘だろそれ。
「いつもあんな格好なのか、その…中国さん、って。」
「まあ、会うときはいつも寝てるぜ。」
「あ、いや、そっちじゃ…って、それ門番としていいのか?」
「私としては結構ありがたいけどな…」
「…魔理沙。お前何を…」
「まあ、今回は状況が違うし、一応起こしとくぜ!」
…案内人を間違えたかな。なんか変な誤解に巻き込まれなきゃいいけど…
と、思いながら、すごすと付いてった…
「おい、中国。起きるんだぜ。」
「…」
「おーい!中国!今日は別のようで来たんだ!こういうときこそ起きてくれ!」
「…」
「…おい、そろそろ起きてくれよ、冗談抜きで…」
「…すー…」
「…刺すよ!」
「うわわわぁ、寝てません、昼寝なんかしてま…あれ?」
…魔理沙、その掛け声はどうかと思うぞ。その掛け声で爆睡がぶっ飛ぶのもおかしいぞ…
「ま、魔理沙さん!」
「よっ!久しぶりだぜ!元気か…」
「魔理沙さんから聞かれても困ります…また、パチュリーさんのとこですか…?」
「おう、そだな!せっかくだし、そういうことにしとけ!」
「はぁ…ちょっとまって…」
そういって美鈴は、後ろの巨大な門の中を少しこじ開け、覗き込む。「ちょっと、誰か来てくれない?」
「はいはい~!どうしたの、美鈴?」
ここから誰だかよく見えないが、可愛らしい声が聞こえた。あ、それと本名は「めいりん」、か。…それで中国?それでもなんかひどい…
「パチュリー様に伝言です。魔理沙さんと…あ、どちらさまでしたっけ?」
「あ、僕は…」
「外来人だぜ!」
「外来人一人が遊びに来たと。許可の有り無しを確認できませんですか?」
「え~、魔理沙さんがですか~?」
「超ありえない~!この前、ぶっ飛ばしに来たのに~?」
「美鈴さんだって、いつもやられてばかりじゃないですか!いいんですか、そんな簡単に泥棒入れちゃっても!」
「それを確かめるために、まずはパチュリー様から確認を取りたいんです。お願いできますか?」
「は、はい…明日は雪かな…?」
美鈴は苦笑しながら門を閉め、振り向くと…
「…何してるんですか…えっと…」
「京でいいよ。なぁに、もうちょっと霧雨さんのことが分かったからね。霧雨さんにもうちょっと詳しい話を、じっくりと吐いてもらいたいものだからねぇ…霧雨さん?」
「…とりあえず、手、肩から放して。凄く痛いぜ。身も心も視線も。」
「い、いえ、気にすることは…常連の泥棒でも、一応お客ですからね。週に二、三回はここを突破されますが。」
「いや、だから、ただ借り…イダダダダダダ!!」
…初めての弾幕を視たときの敬意はどこへ言ったのやら…鯛は鯛でも腐ったものか。
「ところで、まだ自己紹介はまだでしたね。私は
「…そうか。」ちょっと力みすぎたかな。せっかくあったわけだし、魔理沙の肩を放してから、僕は美鈴の手を握り締めた。「さっきも行ったけど、京でいいよ。ついさっきここに来て、滞在することにした。」
改めてみると、どこか変わってるな、美鈴。あと、握手がかなり…強い。
「へぇ…鍛えてるんですか、共さん。」
「へ?」予想外の返事に変な声を出した。どうやら美鈴も同じようなことを考えてたらしい。
「いや、普通の人間と違って、まあまあの筋肉ですし、握力が結構ありますし。もしかして、投げの武道をやってますか?」
…確かに、僕は昔武道はやってた。
「いや、剣道だ。」
「ああ…剣道ですか…」
「へぇ、剣道か!見た目と違って、結構男らしいな、京!」
魔理沙、ちょっとそれは…あ、でも高所恐怖症の件もあるからね。
「で、剣道って何なんだ、京?」
「いや、知らないの?さっきもっともな反応してたのに?」
「…いや、似たようなものなら知ってるけど。剣術。」
…ああ、そういうことか。てことはいるだろうな。剣「術」者が。
「とりあえず剣道だから。なんか誤解を招きそうだから、剣道です。」
「二回も言わなくてもいいんだぜ!」
「でも、剣道か~。やっぱり、いろいろと斬ったりするですか?」
「美鈴、悪いけど本物の刀は触ったこともないんだ。」
「え?でもそれでは…」
「あくまで形を取っただけで、人を殺すためにやってるじゃない…じゃなかったんだ。人の身と心を鍛えるための、いわゆるスポーツなんだ。」通じるかな、これで…
「じゃあ、特訓みたいなものですか?」
「やっぱり特訓も欠かせないもんだぜ!」
…まあ、それでよしとしよう。
「で、もしかして美鈴も…」
「はい!太極拳を!」
…聞いたことないが、凄そうなやつだ。
「これをやれば、気の流れを使っていろんなことが出来るんです!」
「…気って…あの…?」
「えっと、ちょっと…」少し美鈴が腕を出し、力を込めるような
すると、どうだろう。その手のひらの中に、虹色に光る何かが現れたではないか。興味心身に見つめる僕を見て、美鈴は誇らしげな顔を見せた。
「これが…気?」ちょんと触ってみると、まるで水のような、温かい感覚が伝わった。
「はい!いろんな人が持ってるもので、活用すればいろんなことが出来ますよ!」
「たとえば、何を?」
「技を強化する!」
「それは…まあ、想像できるな。」
「あ、あと簡単な治療なら出来ますよ?」
「治療?」
「生命力としてとってもいいのですからね。ほとんど自分にしか使う機会はありませんけど。」
その理由であろう人物は、ふと思い浮かんだように言った。「こうしてみると、魔法と似てるんだぜ…」
「全然違いますよ!魔法、と言うより魔力は道具やら呪文やらで増やせますが、気はそういうわけには行きません!」
「じゃあ、魔力の劣化版え言ってるようなものだぜ。」
「いいえ、己の体を極限まで鍛る!それだけで、どんな古く強い魔法でも…イタ!」
「!美鈴!」叫んではいられなかった。思わず体も硬直した。
だって…今まで以上のなかった美鈴の後頭部に、「ブス」と鈍い音とともに、銀色のナイフがいつの間にか刺さってたから。
「おっと、京、慌てることはないぜ!」
「魔理沙!?いやでもどう視たって…」
「いえ、本当に大丈夫です…」
「いやいや、だってきれいにぶっさされて…あれ?血が…流れてない…」
「だろ?こう見えても中国は妖怪なんだ!こんなものでやられると思わないぜ!」
「それにいつものことですし…別に気にすることは…」
「え?だとしたら、誰が…」
その、次の瞬間。
「美鈴。」
その、小さくとも冷たく鋭い、美しい声で、空気がが凍りついた…気がした。
少なくとも、びくっと反応した美鈴にしてはそうだろう。僕はそれより、美鈴の後ろで、門前に前触れもなく現れた、メイド服の長身の女性が気になった。
「おしゃべりはすんだのかしら?」
「は、はい!咲夜さん!」
咲夜と言う女に振り向き、硬い敬礼を見せる美鈴は、さっきまでの陽気な態度を動揺と緊張感と取り替えられたらしい。
…気持ちは分からなくもない。剣道道場でも、手厳しい先輩に裁かれる(物理)毎日を送ると、どうしても上位に対しての服従の態度を取るようになる。特にさっき見せたようなお仕置き(?)で威嚇する者なら。
「だったら、仕事に戻りなさい。サボる暇があるなら、もっとしゃきっとね。」
「は、はい!」
「後、また寝たら晩飯抜きね。」
「え、またって…もしかして、ばれて…」
「美鈴。」
「は、はい!」
「どいて。白黒に用があるの。」
「は、はい!ただいま!」
…ドンマイ、美鈴。そして、ファイト。
「…とりあえず、パチュリー様から許可は出たわ。」
「お、物分りがいいぜ!」
「ただし、今日は本を盗み出さないのが条件よ。飲み込めなかったら、無論入館は許されない。」
「何だ、相変わらず頑固な…」
「…どうしてもと言うなら、私を倒しなさいな。」…あれ?いつの間にそんなナイフを手にしたんだ?「そこの人間も、ご一緒に、一発やりますか?」
「え、いや、僕は…」
「まあ、仕方ないぜ。今日だけは条件買うぜ、今日だけ!」
「…では、こちらへ。」あれ、ナイフが消えた。どうやって…「なになに程度の能力」なんだ?
「京様、でしたわね?」
「え?あ、はい。」…あれ?どこで聞いたんだ、それ?さっきの美鈴との会話中か?
「ようこそ幻想郷へ。最初に訪れる場所がこの紅魔館だということを、光栄に思う事を祈ります。」
…なんで突然上から目線なんだ?服装を見る限り、別に主と言うわけでもない…よな。
その静かな疑問にもちろん返答を返さずに、咲夜は門を、全開させた。
そして、ちょうどよかったタイミングで、その後ろの太陽が地平線まで沈み、空は炎のように赤く燃え上がる。
…もっとも、その空の一時の「赤」も、紅魔館と呼ばれる城の「紅」には比べようがない。
「うわぁ…」
言葉は、ない。と言うか、どういえばいいのか分からない。でも、まあ、努力はするよ。
紅魔館と名乗るだけあって、まず目に入るのがその「紅さ」。何百年もの間使われ続け、今まで念入りの手入れがあるのだっただろうか、まるで歴史の本を血で塗りつぶし、そのままこの地に召喚されたばかりのような、立派な洋館。横幅に広がるその建物は、黒き翼を広げた蝙蝠…いや、いっそのこと悪魔を連想させた。そしてその紅魔館の頂点に立った、うっすら光る時計塔からも、何か渋い何かを感じた。何年もの時を刻んだその顔は、いったいどのような光景を見てきたのだろう…
門に入ってすぐの中庭も、立派なものだった。どこを見ても、あふれる緑や見たこともない花で溢れてる。よく見ると、紅魔館の所々に蔦も生えてたが壁が傷む様子がなく、自然に生えたはずなのにむしろ意思的に「生やされた」感じがあった。
もう、何が何やら…
「では行きましょう。パチュリー様を待たせてはいけません。」
「だってさ。いくぜ京!」
「あ、ああ…」
偉大さから少し立ち直ってから、僕は魔理沙と不思議なメイドとともに紅魔館の中に入った。
…はてさて、この先何が待ち受けてるのかな…?
~美鈴視点~
「…はあぁ、また怒られた…しかも、ただ会話してただけなのに。別に遊んでなかったし。ただ、ちょっと見せびらかしただけだし…
でも、過ぎたものは仕方ない!こうなったら背水の陣です!飯抜きは嫌ですから、本美鈴!門番がんばります!
…京さん、大丈夫かな。…いやいや、さすがに彼の前ではある程度抑えるだろうし、魔理沙さんもいるし、平気です!…たぶん。
…またいろいろと話したいな。…まあ、あんまり動かないし、これと言った話題は…
そうだ!だったら前日、あの大ナマズを懲らしめたときを語りましょう!内容は…まあ、適当でいいです!大体のことを言えばいいんですよ!
ああ、思い出したら体動かしたくなっちゃった!…ちょっとぐらいいいよね?
よし!まずは腕立て二百回!美鈴、行きます!」
個人的に、美鈴は僕の好きなキャラの一人です(嫁まではいかないが)。イメージとしては活発、だが落ち込みやすい。でもその分立ち直りも早く、その繰り返しと言う、単純キャラ。みんなにはたいてい優しく自分には厳しく、特訓も昼寝も欠かさない。どっちも美鈴にとって、無くてはならない存在らしいです。「小娘」っぽいですね。基本いじられ役の一人だけど、知ってしまえば良き友です。
ちなみにタイトルの「天候の如し」は、突然変化する美鈴の態度に関してです。晴れた日が突然大雨になり、それが帰ってやむが今度は元気な暴風が吹き荒れる様に、みんな振り回されることでしょう。