見届け人、来る!   作:ちびっこ

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見届け人の時間・10

 

次の日、何が起きてるかなーと思いながらオレは登校した。クラスの顔ぶれには異変はなかったけど、イリーナ先生の姿がなかった。ふつーに本人から連絡があったみたいで、誰も疑問に思っていないね。あ、昨日のことはみんな流してくれてるよ。

 

授業を受けながら考える。多分オレはイリーナ先生を助けてクビになる未来だったってことだよね。オレが花屋の人に後れをとるとは思えないし。……うーん、わたしがつい手を出しちゃったが正解かな。そういや、今日の放課後は殺せんせーがブラジルに行くのを楽しみにしている日だよね。数日前からうるさかったから盗聴されてるだろうなぁ。

 

とりあえずわたしに我慢する努力してねと声をかける。素直に返事はかえってきたけど、抑えられるものなら苦労はしないよね。

 

「そうだ。イリーナ先生が今日休みだし、オレの先生を連れてこようか?特別授業ってやつ?この教室のことも知ってるし」

 

バッと一斉にみんながこっちを向いたよ。そして、いいの?みたいな反応だよ。

 

「頼んだら来てくれると思うけど、オレからすれば君達がいいの?って感じだよ。特に男の子」

「そんなヤバイのか……?」

「男にはスパルタだもん。まぁオレは見届け人だし、殺せんせーがダメだといえば呼ばないよ」

「ヌルフフフ。かまいません。先生も一度はお会いしたいと思っていました」

 

や、殺せんせーも存在は知ってるよ、前に反応してたし。ただ繋がってないだけで。殺せんせーの反応をみて、みんなが興味津々の顔で頷いた。オレが連絡すれば、ノリの良いリボーンはいいぞと言ってくれたよ。ついでに渚君には驚かせるために容姿は秘密ねと口止めしておく。広げちゃうとリボーンがつまんねーぞって言うだろうから。

 

 

 

「ちゃおッス」

 

……殺せんせー、わかりやす過ぎ。視界に入った瞬間に、ビビって液状化したよ。さっきまでどんな人か楽しみにしてたのに。

 

「え?赤ん坊?僕、どうしたの?」

「ソラに呼ばれてきてやったぞ。おめーら、オレに特別授業してほしいんだってな。1時間だけだが、ビシビシ鍛えてやるから覚悟しろよ」

 

は?と空気が固まって、オレの方を見たから頷いたよ。

 

「オレの先生。超一流の殺し屋だけど、最近は家庭教師の仕事ばっかりだね」

「ああ。リボーンだぞ、よろしくな」

 

あ、名前を言って良かったのね。まぁリボーンだもんな。興味があって覗きに来ていた烏間先生は頭を抱えてたよ。びっくりするような見た目とオレから聞いてたはずなのに、予想の範囲外だったんだと思う。渚君は子どもとは知っていたけど、想像以上に小さかった……と思ってそう。

 

「時間がもったいねーから、早速やるぞ。おめーら、これを訳せ」

 

イリーナ先生が外国語担当だから、リボーンも合わせてくれてるみたい。ただみんながついていけなくて、いったいいつの間に黒板に英文を書いたんだ……とか思ってそうだけど。

 

「そこのお前、答えろ」

「え?俺?」

「おせぇ」

 

男の前原君だったから、流れるように爆弾を投げたよ。殺せんせーはまだテンパってそうだから、オレがメスを投げて導火線を切ってあげた。一瞬でノリの良いみんなの心は一致したよ。この赤ん坊、やべぇ……ってね。

 

「やるな、ソラ」

「やったね、褒められたよ。じゃなくて、爆弾はうるさいからね。……や、お前の銃はオレでも軌道をズラすのは大変じゃん。戦闘訓練は受けてるって言っても、一般人だからね。せめてチョークにしてよ、それならオレも邪魔しないから」

「しょーがねーな」

 

ほんとオレが女で良かった。夜の炎が使えるなら、銃でもいいんだけどさ。それはリボーンもわかってるから手加減してくれるんだろうけど。

 

「ま、待て」

「うるせぇ、これがオレの流儀だ」

「なっ!?」

 

おお!すごい。オレ、初めて見たよ。一般人でリボーンのチョーク攻撃を避けたの。感動したように烏間先生を見てると、リボーンが追撃した。一撃目でギリギリだったから避けれるはずもなく失神したよ、惜しかったね。

 

「とまぁ、ミスったり文句言おうとしたらチョークが飛んでくるから気をつけて。一応女の子には待ってくれる時間が長いし、二撃目もないと思うよ。殺せんせーも後ろの人に当たるのを助ける感じなら怒られないね。まぁ死ぬ気で答えなよ、チョーク攻撃の威力は烏間先生が証明してくれたでしょ。でも失神するだけだから安心安全」

 

安心できるか!!ってツッコミの念が届いた。けど、誰も止めることは出来ず授業は再開された。だってね、リボーンだもん。

 

こうして恐怖の授業が始まり、1時間後に生き残った男子は少数だった。避けたわけじゃなく、間違えなかっただけだけどね。女子はみんな生き残ったよ。男子と比べたら、贔屓がすごかったから。ちなみにそれを見た寺坂君は反射で文句を言っちゃってやられた。威力も強かったよ、オレがちゃんと教えたのに学習しなかったからね。あ、もちろんリボーンは正解した子達にはマフィアへ来ないかと誘ったよ。残念ながら色よい返事はもらえなかったね。……当然だけど。

 

ちなみにオレは正解したけど、投げたメスが返ってきたよ。普通に掴んでポケットに直してるとクラスのみんなにドン引きされた。

 

 

大暴れしたリボーンは今、オレの膝の上でスピーっと眠ってる。もう放課後なんだけど、どうしよっかな。殺せんせーはすぐさまブラジルに逃げたよ。ちなみに烏間先生は見なかったことにして、防衛省の仕事があると校舎から去っていった。殺せんせーの暗殺を引き受けてくれるイメージが湧かなかったんだよ、多分。オレの知り合いって一筋縄では行かない人ばっかりだから。

 

「眠ってる姿は可愛いね」

「そうなんだけど、男が触れようとするなら容赦ないよ。関節決めたり、首をしめあげたり……必ず酷い目にあうね」

「男の僕からすれば恐怖しかないね……」

「や、だから言ったじゃん。男は間違いなく殺せんせーの方がいいって。つっても、オレ以外に女の生徒を持ったことはないんだけど」

 

ダメじゃん……みたいな空気が流れたよ。

 

「殺せんせーの暗殺とか興味ないの?」

「んー、今リボーンが請け負ってる先生の仕事とオレに見届け人を頼んだところは同じ依頼人なんだよ。オレは依頼人と仲悪いからあいつを通してだったけどね。まぁ依頼人がオレに見届け人を頼んだ時点で、リボーンが手を出せばオレにケンカうってることになるんだよ。今回はオレが頼んだから先生をやってくれたの」

「そう。裏の世界にもルールがあるんだ。おかげで僕は安心して暗殺に専念できる」

 

堂々と入ってくるんだとオレは視線を向ける。さっきまで眠っていたはずのリボーンも、しっかりと起きていた。けど、みんなは普通に会話をしていた。そういうもんなんだって感じで。

 

「花屋さんもコイツが怖いんだ」

「マフィア界最強の赤ん坊と言われるぐらいだからね。僕も相手にしたくないな」

「オレは格下の相手はしねーぞ」

「出たよ、リボーン美学……」

 

オレが苦笑いツッコミをしてると漸くみんなは気付いた。花屋の人が教室に入ってきていたことに。

 

「おめーら、まだまだ甘いぞ。見た目に騙されるんじゃねぇ。オレとソラも同じタイプだろ。こういうのが一番厄介なんだ、人を見る目を鍛えろ」

 

養えじゃなくて、鍛えろってところがリボーンだよね。

 

「って、お前は目立ってるから。違和感しかないから」

「おめーはオレが受け持った生徒の中じゃ優秀だからな」

 

また褒められたよとオレは笑う。そしてこれは片割れの方のオレにも褒めてるんだろうなぁ。人を見る目は数少ないオレの取り柄らしいから。……そういえば、あっちのオレは褒められてないかも。オレらのせいで代理戦争の流れが大幅に変わったし。可哀想な、オレ。

 

オレとリボーンが普通に会話しているからか、少しだけクラスのみんなは落ち着いた。もちろん警戒はしているよ。だってオレとリボーンは手が出せないと察してるから。

 

みんなからすれば明らかに格上なのもあって、花屋の人が出す空気にのまれすぎないように、オレとリボーンが茶々を入れながら話を聞く。やっぱイリーナ先生が人質に取られてたよ。オレとリボーンはないよねーと目で会話する。オレも殺すとなったら女の人でも手にかけるよ。けど、そういうことには使いません。つーか、オレもわたしも単純だから、まどろっこしいことなんてせずにすぐ殺す。そういうのは骸が担当。

 

花屋の人を逃しちゃったから、みんながオレに視線を向ける。見届け人のオレは手が出せないと首を振ったよ。思うところがあるだろうに、みんなはオレ抜きでどうするんだと相談した。

 

「しょーがねーな。オレもついていってやるぞ」

「え!?」

「ソラは手も口も出せねーが、オレなら口は出せるからな」

 

ホッとみんなが息を吐いたよ。その場にいたリボーンは外部の人間にならないからね。もちろんちゃんとリボーンは釘を刺したよ。アドバイス程度で指揮をとったりは出来ないって。こういうのは信用に関わるからね。それでもみんなからすれば、助かる話だよね。まぁオレに八つ当たりしなかったからリボーンは手を貸すことにしたんだろうね。あとはオレの心配かな。わざとこのタイミングに誘ったって気付いてそうだし。

 

「オレの見たところ、奴の技術は悪くねぇ。だが、オレらの世界じゃ通用しねぇぞ。オメーらはソラがルールを作ったことは知ってんだろ、あいつはその力を知らねーように見えた。オレとソラの前に出るには無防備すぎるからな」

 

それはオレも思った。そりゃヒバリさんもつけてなかったけど、それはオレのことをよく知ってるからであって、持ってはいたでしょ。オレに合わせてこの子達に見せないようにしただけ。オレらのせいでリングのままだしね。隠すのは簡単。

 

「理由はわからねぇが、裏の世界には置いていかれてる。だが、それでもあいつはおめーらにとっては脅威だ。それに連れ去られた奴は女といってもプロだ。ほっといてもいいんだぞ、そういう世界だからな」

「……俺達は裏の世界とかよくわかんないけどさ。助けに行くよ、な?」

 

磯貝君が見渡し問いかけると、全員揃って賛同した。リボーンもみんなが出した答えにニッと笑ったよ。

 

ビッチ先生ごめん!とみんなで声をかけ、花屋の人から買った花束を解いて盗聴器があることを確認した。壊した後に、推理が得意な不破さんが盗聴器を仕込む必要があったってことは最近のE組の情報が知らないじゃないかと推測した。

 

「あ!今わかったよ。ソラちゃん、ヒントを出してくれてたんだね……。ごめん、気付かなかったぁ……」

「や、あれでわかれって無理でしょ」

 

思わず気にする必要はないよとカエデちゃんに伝える。カエデちゃんは自分のことだと思っただろうし。それに見届け人として失格になるわけにはいかないからね。ヒントにもならないレベルだったよ。

 

まぁオレ達の会話にみんなが気になったのか、カエデちゃんは説明してたよ。花屋の人と裏で会話してたって。相手が殺し屋と気付いていたなら意味が全て違うように聞こえるからね。そして「円満な関係」という花言葉の花を選んだ意味も。

 

「僕もその会話を聞いたのに、気付かなかった……」

「渚達はまだいいじゃねぇか……。俺なんて、モテてるとしか思えなくて『魔性の女』とか言っちゃったよ……」

 

あはは……とオレは苦笑いする。みんな、杉野君にそれは酷いというような視線を送っていたよ。それがわかったのか、杉野君はすげーションボリしてた。

 

「ソラが良い女なのは間違いねーけどな」

「え、リボーン。お前どうしたの」

「相変わらず鈍チンだな。オレ達の世界じゃ弱い女だと生き残るのは難しいからな。その点、おめーは余裕でクリアしている。血筋のことを抜いても、おめーには縁談が殺到していたぞ」

「……最悪」

 

リボーンはこういうことには冗談は言わないからね。あと予想はしていたけど、殺到していることを知った。でもまぁオレの機嫌が悪くなるとわかってでも教えたのは、オレのせいでこの子達に被害が来る可能性もあると伝えたかったんだと思う。そしてあえてこの場で言ったのは察しのいい子達も気付くと思ったから。

 

「まっ沖縄であの男が暴れたんだろ。感のいいところは、様子見し始めたから安心しろ」

「……あいつ、本当に何考えてんだろ」

「さぁな」

 

だよね、リボーンもよくわかんないよね。中途半端でXANXUSっぽくない。オレらが3年間は並盛で過ごすって言っても何も反応なかったしさ。ヒバリさんなら良いってこと?でもなぁ、ヒバリさんに挑発された時はブチ切れかけてたよな。挑発の仕方が最悪だったから、オレがヒバリさんにキレてそれは流れたけど。それにバラの花束贈ってくるし。ほんとわかんないなぁとオレはため息を吐いた。

 

 

 

花屋の人に指定された場所へとやってきた。イトナ君が偵察としてラジコンヘリを飛ばした感じでは人影はないみたい。オレも人の気配は感じないなぁ。というか、感じなさ過ぎる。イリーナ先生も花屋の人も居ないんじゃないかな。多分リボーンも気付いているけど、それは言えない。リボーンは見届け人のオレよりは肩入れ出来るけど、花屋の人の邪魔は出来ないんだよ。まぁリボーンの性格もあるけどね。やっぱ先生だから、自分で気付けって感じ。

 

それでもみんなが危なっかし過ぎて口を開いたよ。オレもその判断はないと思ったから。

 

「寿美鈴、12時つーのはどこで判断した」

「…………私!?」

 

声をかけられた本人も反応遅くて、オレは苦笑いする。みんなには原さんって呼ばれてるし、母性の塊って感じだから名前で呼ばれるなんて思われてなかっただろうから。サラッと呼べるのがリボーンの凄いところだよ。

 

「ええっと、日付が変わるまでに私達が帰らなければ、何人かの親が学校に連絡すると思う。それならもう死神の言う通りに黙ってる必要はないかなって」

「ふむ。その判断は間違いではねぇ。だが、オレとソラよりは弱いと言っても、おめーらの格上ということを忘れるな。プロであるイリーナをさらったことを考えるなら尚更だぞ。それにおめーらは実戦経験が乏しい」

「そりゃ死神って奴には劣るかもしんねーけど、俺らは殺せんせーの相手を何ヶ月も相手してるんだぜ?」

 

リボーンの忠告の返事を聞いて、オレとリボーンは揃ってため息を吐いたよ。綺麗に揃ったのもあって、みんなもその考えは間違いだと気付いたらしい。

 

「あの教室での実戦経験とふつーの実戦経験を一緒にするんじゃねぇ。ターゲットが暗殺者の存在に気付いても毎日同じ場所に現れるなんてふつーじゃありえねぇ。そんなことする奴は、よっぽど腕に自信があるか、そこに大事なものがあるか、バカな奴ぐれーだな」

 

……ごめん、殺せんせー。一番最後の言葉に当てはめたくなったよ。オレはE組の先生になった理由を知ってるのにさ。

 

「そもそも人質の救出の難易度はふつーの暗殺より高い。オレでも生徒一人で突っ込めと言わなかったぞ」

「あはは。たしかにね。お前無茶振りするけど、無謀なことは言わないよね。さらに人質をとられる可能性もあったから、そっちにもお前は手をまわしてたし」

 

ほんと頭の回転が良い子達だよ。昔話を装ってオレが伝えたいことがわかったみたい。相手は格上でさらに相手が指定した場所なんだよ、上手くいくと考える方が間違ってるんだよ。失敗する前提で動いた方がいい。

 

「律の判断で殺せんせーに事情を話して。私達があの建物に入った瞬間でもいいから」

「それが正解だぞ。あの男は今夜18時までにクラス全員で地図の場所に来いってだけだからな。おめーらがあそこに行った時点で向こうの言い分は守ってる。グダグダと文句言って破るようなくだらねー男ならオレが殺してやるぞ」

「あはは……心強いような、怖いような……だね」

 

カエデちゃんの苦笑いに思わずオレは同意するように頷いた。すると、ソラさんが頷いちゃうの!?みたいな視線をみんなからもらった。えー、オレそんなにリボーンに似てる?

 

「烏間という男にも連絡しとけ。初見で避けれたんだ、腕は悪くねぇ」

「……ちょっと待った。あ、そっちに対してじゃないよ。そっちには口出ししないから」

 

首を傾げてるみんなの反応に苦笑いしつつ、オレはリボーンと向き合う。

 

「お前、ついでに烏間先生の実力を見たいと思ってるんだろうけど、こっちの世界に誘っても無駄だからね。ちょー堅物だもん」

 

オレの言葉でみんなも苦笑いしてたよ。烏間先生は絶対頷かないってわかってるから。

 

「それに烏間先生は防衛省の人間でいいんだよ」

 

オレの顔を見て、そうか……とリボーンは返事をした。オレは気に入ってる人ほど巻き込むのは反対するけど、違うと思ったんだろうね。オレは結構割り切って必要ならスカウトするよ、律さんには声かけてるし。案外、リボーンもオレとオレの違いに戸惑ってるのかもね。

 

 

 

一応オレもE組の生徒だし、ちゃんと倉庫に入る。ちなみにリボーンはオレが抱いてる。監視カメラで確認したのか、花屋の人に聞かれたからリボーンは言葉のスキをついて納得させた。ちゃんとあの場に居たし、オレは生徒の問題に手を出さねぇ主義だってね。オレも見届け人として来てると宣言したよ。オレの方は最初からわかってたのもあって、あっさりと信用された。

 

「うわぁ。お金かかってるね」

「バカだろ、コイツ」

 

みんなはびっくりしてるけど、オレはリボーンの言葉に爆笑。言うと思ったけど、我慢は出来なかった。アジトにお金かけるのはわかるけど、生徒達を捕まえるのにエレベーターを作るのは無駄って考えだよね。オレとリボーンからすれば、一人一人捕らえるのにリスクってあるの?って感じだもん。

 

岡島君の演技で今は殺さないことがわかって、みんなは牢屋から逃げ出した。リボーンにどうする?と視線を向けたら、オレと一緒に居るだってさ。少し悩んで、オレは牢屋の棒に手をかけ力任せにあけて、花屋の人がいる部屋に行く。一応、元の形に戻しておいたよ。あの子達が通ってしまえば、見届け人が手を貸したことになるからね。ちなみにリボーンは一旦降りたけど、再びオレが抱き上げてる。というか、なんでオレが抱いてるんだろうね。別にいいけどさぁ。

 

「……君にはこの程度の罠じゃ話にならないか」

「アルコバレーノ全員でかかって、やっと掠ったぐれーだからな。オレも自信なくすぞ」

「よく言うよ。その掠ったのをやったのはお前じゃん。オレ、お前を一番警戒してたのにさぁ。こっちが自信なくすっての」

 

はぁとオレとリボーンのため息がまた揃ったよ。こうやってリボーンと話しつつも、オレの意識はイリーナ先生へと向いている。もちろん花屋の人にも警戒してるけどね。……怪我は大したことなさそうかな。

 

「……ああ。そういうことか」

「どうした、ソラ」

「いやさ、昨日ランランとうるさかったのは、花屋の人が律さんを無力化するからだったんだなぁって。モバイル律さんからオレのデータを盗まれないようにしてくれたっぽい」

「性格はまだしも、未だにあいつの腕を超える奴は居ないからな」

 

うんうんとオレは何度か頷く。その腕を良いことに使って欲しいものだよ。まぁオレはわたしのことで手一杯だから、オレとユニに任せるけど。

 

「本当だね!君のデータは盗れそうにないよ!どんな技術なんだろう!」

 

……なんでこの人ワクワクしてるんだろ。一緒に居るのは嫌だなぁと思いながらも、みんなを捕まえに行くから見届けてよと誘われて仕方なく付いていく。

 

うーん、相手は格上って教えたのに別れて行動しちゃったかぁ。まだ全員でかかった方が可能性があったんだけどな。そりゃ戦闘に向いていない子も居るけど、全員の方が勝機はあったと思う。普段だって烏間先生に相手してる時はみんなでやってるのに。渚君がやられたことがスキになっちゃったのもマズイ。つーか、オレが烏間先生と手合わせした時に証明したじゃん。格上相手には一瞬でも目を離しちゃダメだって。殺せんせーを毎日相手しているみんななら、ちゃんと目で追えたはずだよ。

 

「お見事」

「君に褒められるのは嬉しいな!でも君は彼等とクラスメイトなんだろう?」

「そうだけど、オレは見届け人として転校してきたもん」

「うんうん。本当に君はうまく馴染んでるよね。彼等は君に助けを求めなかったのに、信頼は得ている。人の心を掌握するのが本当に上手い」

「あはは。ありがとう」

 

これはオレの心を乱したかったのかな。どうでもいい奴にそんなこと言われてもなんとも思わないよ、オレもわたしも。薄っぺらい雑談をしつつ花屋の人についていくと、みんながやられていた。まだ全員ではないけど、残ってるメンバーを考えると逆転の一手はないね。でもなんでイリーナ先生が花屋の人に手を貸してるんだろう。……それはイリーナ先生の目を見てわかったよ。

 

「マインドコントロール」

「僕は教唆術と呼んでるよ」

「そうなんだ。……随分キツくかけたみたいだね」

「彼女、抵抗してね。僕もつい本気でやっちゃったよ」

 

わたしがイラッとして、つい手を出した理由がわかったよ。今でもイライラしてるもん。不意打ちで無理矢理かけようとしたところを見たなら、我慢出来ないだろうね。リボーンもそれがわかってるからか、オレの顔を見たよ。まだ大丈夫と軽く頷く。

 

出来るだけイリーナ先生を視界に入れないようにして、花屋の人についていく。3班に別れたみたいで、全員が揃った。寺坂君はヤル気満々だったけど、イトナ君の判断で降参を選んだ。悪くねぇ判断だとリボーンが褒めてたよ。素直に喜べない状況だけど、間違ってないことがわかって、ほんの少しホッとしていた。

 

 

 

結局、みんなはもっと頑丈な牢屋に入れられてしまった。や、オレは牢屋の外に居るけどね。だってね、オレがわざわざ入る必要ないし。みんなもそれはわかってるからか、何も言ってこないよ。……うーん、この子達はなんとかなってもイリーナ先生がなぁ。オレじゃ解けないんだよね。

 

「僕の教唆術。君でいうマインドコントロールには何かあるのかな。わずかに君の波長が乱れてるから、気になったんだ」

「……バレてるなら、いいや。悪いけどちょっとコレ出してるよ」

 

クルクルと左手でメスを回してると、花屋の人だけじゃなくて、みんなからも視線が集まったよ。

 

「ソラはその術で一度痛い目にあってんだ。精神安定のために出してるだけだ、警戒する必要はねぇぞ」

「うん。本当に乱れがなくなったよ。でもそれを僕に話してもいいんだ」

「問題ねぇぞ。ソラは同じ手に2度かかるほどバカじゃねぇ。それに痛い目にあったのはもう一人のソラだ。オレが育てたソラはそんな手には引っかからねぇ」

「あはは。オレはリボーンに褒められて嬉しいけど、わたしはスネちゃったよ」

「ソラほど完璧じゃねぇが、もう一人のソラも利用されるぐらいならと、ちゃんと閉じこもったから及第点だ。特殊な力を持つものは、そういう方法を知ってるからな。恐らくそこの女はその方法を知らなかった。それでも抵抗したんだろ、ほとんど意識が残っていないのが証拠だぞ」

 

ただ花屋の人に言われた通りに動くイリーナ先生に思うところがあったんだろうけど、状況を理解してみんなが悔しそうな顔をした。

 

そんな中でも変わらずカルマ君は花屋の人を煽ったよ。モニターに殺せんせーと烏間先生の姿が見えたからさ、あんたは18時までにオレらが来た後のこと何も言ってなかったじゃんって。まぁそこまで煽ることができたのはリボーンが銃をかまえてくれたからだと思うけど。

 

「どういうつもりかな」

「おめーが言ったルールを守って、こいつらは知恵を絞ったんだ。ちったぁ認めろ」

「……うん、そうだね。かなり予定は狂ったけど、問題ないよ」

 

にっこり笑ってるけど、ちょっとイラついてるっぽいね。カルマ君ナイスと思いつつ、オレは花屋の人についていった。

 

 

 

……何しに来たの、殺せんせー。あっさり捕まった殺せんせーを見て、思わずため息が出たよ。みんなの努力が水の泡じゃん。や、牢屋から出る方法があるのはわかってるけどね。イトナ君の時にみせた技とかもあるしさ。つっても、ちょっと余波が酷いからギリギリまで使わないんだろうけど。

 

にしても……詰めが甘いなぁ。モバイル律さんを乗っ取れるなら、水を流すための操作室も先に乗っ取ればいいのに。オレなら殺せんせーに時間を絶対与えないよ。だからまぁこの人にも止める時間が出来るよねと視線を向ける。烏間先生が花屋の人の肩を掴んだ。

 

「なんだい、この手は?日本政府の方針は地球を救うためなら、生徒達の命は重要ではないんだろう?」

 

花屋の人の言葉が信じられなくて、みんな一瞬固まった。

 

「君等は知らなかったのかな。日本政府が新たに出した賞金には君等の命の保証の一文がなかったよ。そうだろう?」

「そうだね、なかったよ」

 

それは事実だからね、オレは肯定したよ。でもね、正直笑うしかないよ。

 

「……何がおかしい」

「あはは。ごめんってば。まっ確かに日本政府が用意したものにサインしちゃったし、殺せんせーが死ぬまでみんなの命の危機があっても見届けなくちゃいけなくなったよ。……オレはね」

 

うわぁ、いい音が鳴ったなぁ。烏間先生、しっかり殴ってやんの。

 

「そりゃさ、命の保証については書いてなかったけど、見捨てろとは書いてなかったじゃん。文字通り受け止めすぎ。日本政府が発表した賞金にはその一文がないことにこの人だって気付いてたよ。だからすげー気を遣ってた、見届けてたオレが一番わかってるよ」

「……今回、暗殺者が生徒に危害を加える可能性に気づかなかったのはオレの責任だ」

 

相変わらず真面目で、みんなもちょっと呆れて笑ってるじゃん。だから日本政府の考えにはちょっと不審があるだろうけど、烏間先生には誰も何も思ってないね。こういう人だから政府と関わる人間で居て欲しいんだよとオレがリボーンに視線を送ると、オレも嫌いじゃねーぞと視線がかえってきたよ。

 

スキをついて花屋の人が操作室へと向かったから、烏間先生は追いかけていった。オレはどうしよっかなぁ。もしもの時のことを考えたら、まだここから離れない方がいいかな。この人数を飛ばすとなると、視界に入ってる方が確実だしね。

 

「ねぇ、リボーン。ビッチ先生にかかってる、マインドコントロールだっけ?それって解けないの?」

「あの野郎をぶっ飛ばして気絶させて解けるかどうかだな。この女が一番望む言葉を言い当てる方が確実だぞ。ただその言葉も効果的な人物からじゃなきゃ意味ねーな。ソラもあの男からの言葉じゃねーと解けなかっただろ?」

「多分そうだろうね。オレだったらお前とか思いつくのは何人かいるけど、わたしは弟やあいつでも無理だったと思う。二人とも好きだろうけど、心の底から愛せることは出来ないだろうから……」

 

リボーンが来るまで一般人として生活できたオレと、ボンゴレを第一に考えるXANXUSにはどう足掻いても不可能だ。

 

「あ、でも殺せんせーは可能性あるかも」

 

え!?みたいな視線が集まったからオレは首を傾げた。

 

「おめーらはまだまだガキだな。恋愛感情だけが愛じゃねぇーぞ」

「……えーと、見た目は赤ん坊だけど、この中で一番の年長者だからね。烏間先生の倍ぐらい生きてると思うし。その、気持ちはわかるけどさ」

 

年寄り扱いするんじゃねぇって視線がきた。オレ、ほんと女でよかった。男だったらボコられてた、間違いない。オレがリボーンにごめんと視線を送ってると、イリーナ先生は花屋の人から指示が来たのか動き出した。どうしようとみんなが慌ててるけど、烏間先生に任せるしかないでしょうと殺せんせーは言った。確かに、一番解ける可能性が高いのは烏間先生だしね。トランシーバーでちゃんと対処法は聞いてただろうし。ただ気になるのは烏間先生に丸投げし過ぎじゃない?それはみんなも思ったのか、ここで何か出来ることがないかと考え始めたよ。相変わらず殺せんせーは誘導がうまいね。

 

三村君が仕掛けてる監視カメラでは正確に見えない場所があると気付いたら後は早かった。まぁカメラは岡島君の方が詳しいから太鼓判を押してもらっていたよ。ただその時に「盗撮するなら高い機材を使わなきゃ」と余計な一言をいったせいで、オレから無言の圧力をかけられて残念な空気になってしまったけど。あれからもうやってませんと潔く頭を下げてたよ。その言葉を信じて、視線を送るのはやめてあげた。

 

みんなの首にかかってる爆弾はイトナ君が解析して殺せんせーが無効化した。正直マインドコントロールじゃなきゃ、こんなミスが起きなかったと思うんだけどね。牢屋の中に使われてない首輪が残ったままとかダメでしょ。というか、残った首輪は一つだけだったしコレってオレの分でしょ。なんつーか、簡単に捕まえられると思っていたのが癪に触る。でもこれで確定したね、技術はそこそこあるけど裏の世界についてはそこまで詳しくないね。イリーナ先生よりは少し詳しい程度でしょ。ロヴロさんは引退してたのもあるけど、イリーナ先生は無関係の人物以外に手を出さないように育ててるから派遣させたと思うし。余計な恨みは買わないって確信があったんだよ、ロヴロさんは。その点、花屋の人は技術の割に大雑把すぎる。

 

や、そもそも日本政府が出した条件をそのまま鵜呑みにした時点で笑うしかないんだけどね。そりゃこのまま成功すれば日本政府が用意した百億は貰えるだろうけど、これから裏の世界で生きていくのは大変だよ。百億もらったからって、そう簡単に引退とか出来るとは思えないし。本当に花屋の人はボンゴレの意向を逆らってどうやって生きていくつもりなんだろ。まぁ同盟は知らないけど、ボンゴレがわざわざ殺しに行ったりはしない範囲だよ。でも殺せんせーを殺して名を挙げると同時に、まともな依頼は来なくなるね。ボンゴレの敵対勢力ぐらいでしょ、声をかけるなんてさ。

 

オレだってわたしがクソ親父に仕掛けるのは、代理戦争という建前がなかったら許可しなかったのに。ボンゴレが巨大すぎて、ついでに世界を滅ぼすぐらいのノリでやらなきゃ面倒なんだよ。ほんと、さっさと死んでくれないかなぁ。

 

 

オレがクソ親父を呪ってると、あとは菅谷君のペイントの腕があれば何とかなるんじゃない?という空気になっていた。本当になんとかなりそうだねと見ていると、烏間先生がいるところで爆発が起きた。操ったイリーナ先生を足止めとして使って、天井を落としたみたい。

 

「うーん、殺せんせーを殺してくれたら、オレが殺してあげたのになぁ」

 

また物騒なこと言ってる!?みたいな視線をもらった。でもさ、なんかムカつかない?リボーンもオレの意見に同意したのか頷いてるし。殺せんせーはそう簡単に殺されません!みたいな反応をしていた。ごめんってば。

 

烏間先生は無事だったけど、イリーナ先生は瓦礫の下敷きになったらしい。烏間先生はたとえ操られてても一人前のプロだからイリーナ先生の自己責任で、みんなの命を優先すると判断した。もちろんみんなは大反対でさ、助けてあげてと懇願した。それに手はあるしね。

 

「オレからもちょっと良いかな」

 

生徒の要望という範囲にするから見逃してねとリボーンに視線を送れば、それならいいぞと許してくれたよ。

 

「烏間先生はさ、オレにプロとして見届け人をしろっていうじゃん。けど、生徒としても過ごすことも求めてるよね。なら、烏間先生もやってみせてよ。烏間先生の今の肩書きは?防衛省だけなの?」

「……そうだな」

 

E組の先生としても、ちゃんと動けと通じてくれたみたい。イリーナ先生を見捨てたら、先生としての信頼なんか得られないからね。

 

烏間先生がイリーナ先生を助けると判断したことで、みんなは慌てて動き出す。急がないと時間がないもんね。そんな中にカルマ君に手招きされたから近づく。

 

「あんたがここに居ると、俺らの計画が崩れる可能性があるじゃん。見届け人としてはそれってどうなの?」

 

たしかに一理ある。でもそんなことを言うためだけに手招きしてまでオレを呼んだわけじゃないでしょと視線を向けたら、カルマ君はすげー悪い顔をしていた。……提案された内容は見届け人として違反する行動じゃなかったけど、この状況でよくそんなこと考えるねとオレは苦笑いしたよ。

 

「でもオレを雇うのは高いよ?」

「……俺、進路迷ってんだよね。並盛高校とか楽しそうじゃん」

 

はぁとオレは大きなため息が出たよ。すげー呆れたの。

 

「ったく、今回は騙されてあげるよ。覚えときなよ、オレの直感はウソとかも気付くからね」

 

バレたかと舌を出してる姿に苦笑いする。そりゃ楽しそうと思ってるのは事実だろうけど、カルマ君は裏の世界に興味がないのは知ってるからね。並盛高校に行けば、引き返すことは出来ないってカルマ君は気づいてるから候補にすら入れてないでしょ。このクラスで悩むとすれば、殺しの才能があると気付いてしまった渚君ぐらいだね。

 

ひらひらと手を振って、オレは歩き出した。リボーンにいいのか?と視線を向けられたけど、いいよと返す。ああ言ったけど、多分オレがちょっとでも戸惑ったりすれば、その時点でカルマ君は進路の候補の一つに入れたと思う。カルマ君は頭がいいからさ、無事に卒業出来れば二度とオレと会うことはないと察してるからね。もしこれがわたしのための行動なら巻き込んだかもしれないけど、カルマ君はオレのためだったから。オレは十分間に合ってるからいいんだよ。

 

「それに……カルマ君は諦めないでしょ。カルマ君はカルマ君らしく、オレを探しそうな気がするんだよね。そっちの方が彼らしくて、結局選ばないと思うよ」

「そういう奴か。どこまでやれるか、オレも楽しみだぞ」

 

お前も気に入っちゃった?とオレは笑う。どっちかつーとヒバリさんタイプだよね、カルマ君はさ。そりゃ並高に行けば楽にオレを見つけられるけど、素直にその道を進むのはちょっとカルマ君らしくない。今はまだまだだけど、将来に期待しておこうっと。

 




話が続くので明日も更新します。
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