見届け人、来る!   作:ちびっこ

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見届け人の時間・2

月に一度の全校集会。E組はここで笑い者にされる。オレはというと、この学校の制服を初めて着たから変な感じだなと思ってたぐらいで。ダメツナだった時の記憶と経験もあるからね。まったく気にならないよ。

 

ただわたしがイライラしてるっぽいから、今度からサボることにしよう。つーか、サボってよかったんだね。カルマ君がサボってるって知ってたら絶対来なかったよ。

 

嫌がらせの一つに生徒会の行事の詳細が書いたプリントがE組の分が用意されてないらしい。全部記憶してくださいだってさ。

 

「んーオレが覚えておこうか?」

「えっ?ソラちゃん、覚えれるの!?」

「プリント一枚分ぐらいならいけるよ。慣れだね、こういうのは」

 

カエデちゃんにほへーって顔された。カルマ君を除けば、この子と渚君が次に話してくれる。だから下の名前で呼ぶことにしたんだ。や、ほとんど君って呼んでるけど。……にしても、オレの声が聞こえてたE組以外の生徒は引きつった顔になったね。リボーンの教育レベルのおかしさが際立った瞬間だったよ。まぁ結局殺せんせーがプリントを用意して配ってくれたけど。やらなくていいならオレはやんないよ。

 

無事?に学校集会も終わったけど、ちょっと面倒なことが起きた。渚君が本校の生徒に絡まれてたんだよね。まぁそれだけならいいんだけど、渚君が殺気を出せるようになっちゃったよ。

 

「可愛いもんだけど、大丈夫なの?」

「ニュルフフフ。もちろんです」

「そういうの、オレはオススメしないよ。戻れなくなる子だって居るんだから」

「ええ。わかってます」

 

本当にわかってんのかなぁなんて思いながらオレは旧校舎へと戻った。あ、いっぱいE組の生徒が居たから普通に走ったよ。身体強化してたから速度はおかしかっただろうけど。あと、ちゃんと夜の炎で早着替えしたよ。ヒバリさんが怖いからね。

 

中間テストが近づいてきたってことで、殺せんせーがヤル気を出して勉強を教えてた。オレだけはちょっと違ったけど。

 

「ソラさん、いい加減真面目にやりましょう。あなたがいつも手を抜いてることに、先生は気付いてますよ!」

「うーん、オレが真面目にやると困る子がいるんだよなぁ」

「誰ですか、そんな子は居ません!」

 

や、居るんだよ。オレができちゃうと、リボーンによって並盛にいるオレのハードルがあがるから。

 

「ほどほどにやるよ、ほどほどに」

 

オレだけ分身の数が倍にしてでも、殺せんせーが真面目にやるように迫ってきたけど、オレは適当に流したよ。可哀想にカルマ君は捕まってたけど。だからなのか、巻き込もうとオレにすげー煽ってきた。オレのところだけカオスってクラスのみんな思ってただろうね。全部聞き流したけど。流石に反応がないからカルマ君は途中で飽きて止めたけどね。

 

殺せんせーが丁寧に教えてくれたから、ちゃんと勉強内容は理解はしてたよ。テストでやらないだけ。それがわかってたから殺せんせーは必死だったね。オレがテスト用紙に書かなきゃ意味のないことだから。

 

そして、ついにテストの日をむかえた。本校舎でするから、またもやここの制服に。

 

「あーしつこかった。なんであの人はオレにいい点数取らせたいんだろうね。ほどほどでいいじゃん」

「昨日先生にあれだけ言われたのに、こんなヤル気ないのはソラさんぐらいだよ……」

 

渚君から苦笑いのツッコミを貰ってしまったよ。でもさ、実際オレは第2の刃?って感じなんだもん。未来のオレの経験値だけで多分どこでも生きていけるから、もう第2、第3刃は持ってるんだよね。こんな生活しか出来ないけど。

 

「まぁそれはいいとして、気になるなぁ」

「ん?どうしたの?」

「嫌な予感がするんだよ、ちょっぴりだけど」

「それって前に言ってた直感?」

 

この子、よく覚えてるね。殺せんせーの弱点をメモしてたのは知ってたけどさ。細かいところみるのが得意なんだろうなぁ。

 

「そ。オレこういうの、外したことないんだ」

「えええええ!?」

 

良いリアクションだなーなんて思ってたら、渚君がメモってた。あ、オレのも作ってるんだね。

 

テスト中、コツコツ音を立てて嫌がらせする先生が居たからさ。オレもコツコツして返したの。ああん!?みたいな顔してこっち見たから、にっこり笑ってやったよ。オレの言いたいことがわかったのか、ちゃんとやめてくれたよ。ブルブル青ざめてたけど。何したの!?ってクラスからツッコミの念が届いたよ。カルマ君は普通だったけどね。ただちょっとあの人にだけ殺気送って威圧しただけだよ。可愛いもんだよね。

 

予定通りにオレはほどほどに頑張った。殺せんせーが50位以内に入るのをこのクラスの目標にしてたから、オレもそこはちゃんと頑張ったよ。うん、大丈夫なはず。そりゃ超直感は大丈夫と肯定してくれてるけどさ。こんな使い方したことないから、ちょっと不安なの。何度も言うけど、大丈夫と肯定してくれてるけど。それでもドキドキなの。

 

わたしと一緒に上手くいったかなぁなんてソワソワしてたら、バッチリだった。いえーいと心の中でわたしと一緒に盛り上がる。そんな感じで喜んでたら、落とし穴があった。

 

「んなっ!?範囲違ったの!?」

「気付いてなかったんだ……」

「残念ながら。だからみんなは入れなかったのかぁ。殺せんせーがあれだけ言ってたしさぁ、渚君にも苦笑いのツッコミされちゃったし、実はオレちゃんと狙ったんだよね。一応、オレもE組の生徒だし、クラスの目標は達成しないとダメかなと思ってさ……」

「ソラさん……。そっか、君は僕らのために、あんな嫌がってたのに、真面目にやってくれたんだね……」

「あー……ごめん。ほんとごめん」

 

オレ、真面目にやってないんだよ。謝るのは僕たちの方じゃないの?と視線を向けられて慌てて教える。

 

「や、頑張ったのは確かだよ。うん、難しかったしすげー頑張ったよ。オレ、久しぶりに直感をフル稼働させたもん。……だからほら、50位ちょうど」

「頑張るところ違うよ!?あと君の直感、本当に凄いね!?」

 

渚君がツッコミしてくれて少し空気が良くなったら、カルマ君が殺せんせーを煽って、すぐにいつも通りの空気になったよ。というか、カルマ君はちゃんとやって学年4位に入ったんだ。先生思いの優しい子だねー、なんて他人事のように思っていたら、元気になった殺せんせーはみんなにこれからも教えることに誓ってたけど、オレには真面目にやらせようと更に燃え上がっていた。

 

嫌な予感はこれか!なんてこった。カルマ君にはそうなこともわかんなかったのー?と煽られた。ガーンってなったオレを見て、すげーニヤニヤと笑ってたよ。カルマ君はオレにそれを言うために真面目にやって点数をとったことがわかった瞬間だった。オレより上じゃなきゃ効果薄いもんね。

 

ちなみにあんなにふざけてたオレはクラスで2番目の成績だった。そりゃ殺せんせーもヤル気になるよね。書いたところは全部正解だったし。なんて思いつつも、オレは全力で聞き流した。

 

●●●●●●●●●●

 

 

 

「修学旅行?」

「そう!ソラさんも、同じ班になんない?ほら、茅野もカルマ君も居るよ?」

「あーたしかに。オレが過ごせそうなのはそこの班ぐらいだよね。でも暗殺計画があるみたいだし、オレは殺せんせーについていった方がいいしなぁ。うーん、女子部屋とかでフォローしてくれたら助かるかも」

 

カエデちゃんに視線を向けるといいよーと返事がきた。まぁ家に帰っても良かったんだけどね。ちょっと寝てる時とか気になるから、泊まることにした。

 

「……修学旅行ってことは他の生徒も居るし。また制服、変えなきゃいけないよなぁ」

「その制服って何かあるの?前から聞きたかったんだー」

「うーん、オレは拘りないんだけどね。この制服脱いだらめんどくさくなるんだよ、絶対。バレませんように」

 

空にむかって拝んでたら、カルマ君が写真撮ろうってみんなに声かけてた。ほんと、嫌がらせの達人だな!まぁ写らないけどね。

 

 

 

修学旅行当日。オレはおおーっという感じで駅にいた。

 

「すごいなぁ。新幹線だよ!」

「ソラちゃんが喜ぶところはそこなんだね」

「乗る機会ないんだよねぇ。オレぐらいじゃない、殺せんせーの気持ちがわかるの」

「ふーん、そうなんだね」

 

そうそうとカエデちゃんに返事をする。この子はどう思ってんのかな。なんて考えてたら、イリーナ先生が派手派手な服装で歩いていた。や、暗殺に不向きだよ、その格好は。

 

烏間先生に怒られて、可哀想に着る服がなかったのか寝間着姿だったよ。声をかけて許可をもらったオレは夜の炎で引っ張り出す。あ、もちろんトイレでやったよ。

 

「イリーナ先生」

「……なによ」

 

すげーしょげてるね。オレはちゃんとイリーナ先生って呼んでるから反応してくれたんだろうけど。

 

「ほら、私服だから黒ばっかりで悪いけどさ、試してみたら?何着か用意したから。まぁどう考えても胸はしんどいだろうけど、イリーナ先生も見せてもいけるインナーぐらい持ってきてるでしょ。ボタンを止めなかったら着れなくはないと思うんだ。ウエストはそんな変わらない気がするし。まぁこれもちょっと派手だけど、普段とそんな変わらないから烏間先生も許してくれるよ。とりあえず今なんとかなったら、あとは京都で買ったらいいんだから」

「あんた……ほんとに良い子ね。私をイリーナ先生って呼んでくれるし……ご褒美よ」

「それはいらないから」

 

サッと避けたよ。あのクラスでまだ食らってないのはオレだけなんだよね。みんな可哀想。

 

イリーナ先生はもう!と言いながらも、寝間着姿は嫌だったらしく、早々にディープキスは諦めて着替えに行ったよ。

 

「おー、さすがイリーナ先生、サイズ違うのにちゃんと着こなしてるじゃん」

 

みんなに似合うって声をかけられてるけど、全然喜んでないね。褒められたら当然よと言いつつ喜びそうなのに。と思ったらオレの前で止まったよ。まぁどうなったか知りたかったからイリーナ先生の席に座ってたんだけどさ。

 

「……この服、どうしたの」

「ん?なんか変なの、混ざってた?」

「あんたこれいくらしたの!?オーダーメイドじゃない!?生地も最高品質よ!?というか、見せてもらったの、全部!!あまりにも着心地よくて、気付いていたら着てたわよ!!」

 

えええ……。別にそれなら怒る必要ないじゃん。

 

「や、でもイリーナ先生も買えるでしょ?」

「そりゃね、仕事なら買うわよ。あんた私服って言ったじゃない」

「流石にプレゼントは出来ないかな。怒っちゃいそうだし」

「当たり前よ!!というか、あんたが買ったんじゃないの!?」

「オレこれが初仕事だよ。ちょっと前まで野宿生活だったし、貰い物だよ」

「……男ね」

「気になるのそっちなんだ。まぁ……男だね」

 

この場合、準備したルッスーリアなのか、XANXUSなのか悩むところだけどね。なんて話してたらクラスのみんなが盗み聞きしてたよ。や、わかってたけど。というか、殺せんせーもさっきの駅でちゃんと入れたんだね。あと興奮しすぎで息荒いよ。

 

「オレにじゃなくて、それはわたしにだよ。オレが普段着る服は子どもっぽくて嫌らしいよ、わたしが言ってた。あいつは歳上だしねぇ。いやまぁ2人はまだ付き合ってるわけじゃないんだけどさ。わたしはくれるなら貰う主義だし、向こうもそれはわかってるし問題ないよ。というか、あいつにとっちゃ痛くも痒くもない金額」

「ねぇ二重人格だとどうなるの?」

「オレは嫌いじゃないけど好きでもないよ。というか、そういう風には見れない、無理。それは多分あいつも一緒。だからあいつと会ってる時はわたしが出てきて、オレは奥底で静観してるよ。や、よくツッコミしてるけど。あいつが喋んなくてもわたしには話が通じてるんだよ。オレには意味わかんなくてさぁ」

 

あはは……と苦笑いする。聞いていたみんなの方が意味わかんないと思ってそうだけど。状況が特殊だもんね。それでもまだ女の子は興味が勝ったみたい。恋話好きだもんね。

 

「はいはいはーい。何歳、離れてるの?」

「あいつ何歳だったっけ。……10も離れてんの!?」

 

そりゃ未来を知ってあいつも困るわ。すげー納得した。……わたしはわたしで笑ってるし。そこ笑うところなの?オレにはサッパリだね。ちなみにクラスのみんなからは、なんで知らないの?みたいな視線をいただきました。や、オレが覚えておく必要なくね?

 

「お金持ちなんだよね?働いてるの?それとも親が凄いの?」

「一応どっちもかな。まぁ親とは仲悪いから自分で稼いでるよ。……自分で?部下じゃない?いやでも王様みたいなもんだし?あいつがいないと、まとまらないもんな。あいつもたまにちゃんとやるし。うん、たまに……極たまに……。偉そうに座って命令するのが仕事かな!指揮なんてしないけどね!あいつ、単語しか喋んないじゃん!やれって言ったら周りが全部やってくれんの!その周りも問題児ばっか!腕は確かだけど、問題児しか居ないじゃん!一番の問題児はあいつだけど!あの問題児どもは超問題児のあいつしか従わないの!やっぱオレには意味わかんねぇ!服だって周りがあいつに合うように準備しただけじゃん!!あいつ、絶対命令すらしてないよ!?悪くねぇってなに、もうちょっと褒めなよ!?最初以外それすら言わなくなったじゃん!!当然だとか絶対思ってるよ、あいつ!!そりゃあんなワガママ王と比べたら、誰でも坊やになるよ!!わたしはあいつのどこがいいの!?男の趣味、悪すぎだよ!!」

 

はぁはぁと息を整える。思わず力説してしまったよ。マフィアのボスの時の記憶のせいで、良いイメージがなさすぎるんだよ!……オレがあんなボロクソに言ったのに、わたしはすげー楽しそうに笑ってるよ。ガクリとオレは項垂れた。

 

「……うん、カリスマがあるんだよ、あいつには。理解はしてるけど、オレにはその良さはわかんない。わたしには良いみたいだし、問題ないんじゃない?わたしには優し……鬱陶しがらないしさ。わたしの前じゃ、わがまま減るみたいだし。通訳がいるからだけどね!」

「と、とにかく凄い人なんだね!ええっと……それが許されるって会長とかなのかな?でも私達より歳上だけど、まだ若いよね」

「んーっと……大丈夫かな。許されるのは単純に強いから。あいつ、あるマフィアの独立暗殺部隊のボスだもん。このまま付き合ったら、出会った瞬間にぶっ放されたから仕方なく防げば、面白いという評価がもらえたってのが、馴れ初めになるんじゃないかな。……あれ、でもそれを防いだのはオレだもんな。わたしの時もあいつ似たようなことやったし、別にいいのかな?あ、それでいいんじゃない?だって。刺激的な出会いだよね」

 

ついにないと思ったのか、女子も静かになったね。解散、解散っと。……あ、渚君はそれもメモするんだね。まぁいいけど。オレも席に戻ろうっと。

 

「殺せんせー、荷物多すぎない?オレの座る場所なくなってるじゃん」

「にゅやッ。す、すみません!」

「……まぁいいけど、烏間先生の隣に座るから」

 

お邪魔しまーすと許可も取らずに座る。この人もオレと一緒で殺せんせーの監視だからね、よく見える位置に座ってるんだよ。それにこの人、オレに文句言えないしね。

 

「……野宿生活は本当なのか」

「オレはウソつかないってば。誤魔化すことはあるけどね」

「そうか」

「まぁ無理だろうけどさ、せっかく烏間先生と出会う機会が出来たんだし、オレからアドバイス」

 

チラッと見るだけで、視線はすぐに殺せんせーに戻ったよ。この人、真面目すぎ。この車両はE組の生徒だけしか居ないんだから、もうちょい気を抜けばいいのにね。

 

「日本の防衛省はもうちょっと頑張った方がいいよ」

「なに?」

「オレ、9歳ぐらいからずっと日本にいたよ?」

 

バッと振り返ってオレを見たよ。やっぱり海外だと思ってたんだね。

 

「日本から離れた時間なんて、そこからだと合計しても一週間あるかなぁ。だからオレはさ、少なく見積もっても日本で殺し屋を百人は殺してるね」

 

まぁこれは日本だけの問題じゃないだけどさ、と心の中で呟きながらオレは目を閉じる。嫌な予感はしないし、殺せんせーも悪いことしないでしょ。オレの予想通り、初日の殺せんせーは乗り物酔いして大人しくしていた。

 

その日の夜、オレは窓際でぼーっと空を見ていた。カエデちゃん以外、みんな寝てるよ。イリーナ先生が爆睡してるのはどうかと思うけど。

 

「寝ないの?」

「昼寝したからねぇ。君は?」

「あはっ。私はテンションあがっちゃってさ。眠れないんだ」

「オレは起きてても問題ないけど、君はちゃんと寝て英気を養ったほうがいいよ。今日は一日中みんなと一緒にいたし、疲れてるだろうからねぇ」

 

オレの首の後ろをコンコンと叩けば、降参というようにカエデちゃんは大人しく布団に入ったよ。オレが昼寝した理由もちゃんと気付いてるみたいだし、見届け人だから話さないと判断したんだろうね。実際、クラスのみんなには今まで言ってないし。もし誰かに聞かれても大丈夫なようにオレは言葉を選んでたからね。

 

何かあったらと思って起きてたけど、カエデちゃんの精神力だけでオレの出番はなかったよ。

 

●●●●●●●●●●

 

次の日、何事もなかったようにカエデちゃんと話ながら朝食をとって、班行動になったタイミングで別れる。オレは殺せんせーについて行くからね。まぁその時に、ちょっと嫌な予感するから気をつけてとは言ったけど。4班が揃った時に感じたからさ。

 

という訳で、トロッコ列車でオレはおやすみタイムに入る。オレがスヤスヤと寝てたら、すげー嫌な気配がして身体が勝手に動いた。

 

「にゅやッ」

「……ごめん。つい癖で」

「殺せんせー、マジでやったら死んでたんじゃね?」

「オレ達にスキがないことを証明するためにイタズラしかけようとしてさ、返り討ちに合うとか……ダサっ」

「たしかに、ダサいよね」

 

いじめるのやめてあげようよ。恥ずかしそうに縮まってるじゃん。なんて思いつつ、オレはメスを仕舞う。殺気じゃなかったから寸止めで済んで良かったよ。まぁメスだったから殺せなかっただろうけど。や、死ぬ気の炎を纏ってたらわかんないね。うん、本当に危なかった。にしても、咄嗟に動いて狙った場所が首じゃなく、心臓の位置だった。オレはわたしがメスを使うから、基本的に首を斬るんだよ。ってことは、まぁ……そういうことでしょ。

 

次に向かった場所は映画村。すげーわかりやすいところに殺し屋が居たから、なんとなくその殺し屋を狙う位置をとって手でバーンっと撃ってみる。

 

「……もうちょっとマシな殺し屋は居ないの?」

 

暗殺され放題じゃんと思わずツッコミを入れる。まぁ仕方のない部分もあるんだけどね。生徒にも危害を加えそうにないしとオレはお土産を買いに行った。

 

持って帰るのは重いからと全部部屋に飛ばしたオレは移動する。殺せんせーよりこっちかなぁと第4班のところへ。

 

「ギリギリセーフだったかな」

「なんだお前……!?どっから出てきた」

「あっちから走ってきたね」

「そういうことじゃねーよ!?」

 

君が聞いてきたんでしょ、とオレはカルマ君を殴ろうとしていた鉄パイプをギギギっと握りしめる。オレの指の型がつくと、引きつった声をあげた。

 

「ば、化け物!う、動くな!コイツらがどうなってもいいのか!?」

「うわっ、君の相手してるからすげー新鮮」

「……それ、褒めてんのー?」

 

もちろんと軽くカルマ君に返事する。死角からで気付いてなかったから、女のオレが助けちゃったからね。プライドを傷つけちゃったけど、返事はできるぐらいには問題ないみたい。

 

そんな会話をしつつ、オレはパッと鉄パイプから手を離す。人質が居るから大人しくなったと思ったみたいだけど、オレはお前らを気絶させに行くだけだからね?ってことで、お休みになりました。そりゃね、オレが素人なんかに遅れをとるわけないじゃん。そもそもオレを殺せる可能性があるのは生粋の地球人ぐらいしか居ないし。

 

みんなからお礼を聞き流し、オレは鉄パイプを持ってた男の懐をゴソゴソと漁る。唯一言われなかったカルマ君には慣れてるねって言われちゃったよ。

 

「ガキの頃こうやって生活してたからね。今はもうお金くれるからやってないよ。今回はちょっと探った方がいい気がしてね」

「また直感?」

「そ。見覚えはー?」

「わ、私の日程表!なんで!?」

「スラれたか、落としたのを拾ったんじゃない?って思いたかったけど、君は随分前から目をつけられてたっぽいね」

 

ポイっと携帯を放り投げる。おしとやかに見えるけど、神崎さんもこのクラスの一員だからちゃんとキャッチしたよ。写真を見た彼女はポツリと語り出した。まぁわからなくはないかな。中学生とか不安定になりやすい時期だし、名門に通ってても本人に合わなきゃ息苦しいだけだ。遊んで発散することは悪くないしね。

 

「……バカだよね。遊んだ結果得た肩書は『エンドのE組』。もう自分の居場所なんてわからないよ」

 

杉野君は彼女に好意寄せてるっぽいんだけどなぁとオレは視線を向けた。オレは鈍いからちょっと自信なかったんだけど、カルマ君も視線を向けてたから間違いないね。けど、渚君が真っ先に声をかけて、続いてカエデちゃんと奥田さんがフォローに入った。2人で一緒に多分ヘタレって視線に変わったよ、絶対。ちゃんと通じたのか、ションボリしてた。

 

「まっ、落ちてからじゃないと気付けないこともあるしねぇ」

「経験者は語るって?」

「……ふふっ、そうだね。わたしは落ちすぎてどうしようもなくなって、もう一人のわたしを作ったからね。君達が異質に感じるようなあの子の生活で、わたしは息を吐けるようになったし結構楽しんでるよ。あの子に守ってもらって、わたしは居場所が出来たんだ。どこまで落ちるかはその人次第だけど、君が諦めない限り案外悪くない居場所ができるんじゃないかな」

 

ポロッと涙が落ちたところで、オレが表に出てきた。

 

「……悪いけど殺せんせーにここの処理頼んで。その画像とかあの人なら綺麗に消せるでしょ。後、殺せんせーに丸投げしてごめんって謝っといて。……っ、オレはちょっとこの子が落ち着くところに行ってくるから。落ち着くまで、このままでさっ」

 

一旦止めて、震えるような息をゆっくりと吐き出す。ついでにいつもの癖で袖で拭おうとしたら、神崎さんがハンカチをもって駆け寄ってきた。

 

「ありがとう、洗って返すね。……それと気に病む必要はないよ、あの子の意思で出てきたことだから。君に伝えたかったんだよ。じゃないと、出てこないもん」

 

神崎さんの頭を撫でてから、オレは人気のない場所へと移動し始める。あれでカルマ君にも通じてくれたらいいんだけど。まぁ頭良いしわかるよねっとオレは飛んだ。

 

飛んだ場所はいつもの場所。オレん家の屋根の上で寝転ぶ。家に居たのかリボーンがすぐさま来たよ。

 

「ツナを呼ぶか?」

「や、大丈夫。この涙は彼に見られたくないと思うし、彼に向かう可能性がある。……大丈夫、まだオレだけで抑えられる」

「オレもいるぞ」

 

そう言ってリボーンはオレの横に寝転んだ。オレがわたしに引っ張られて狂わないために。オレはオレの模範をしている分、リボーンが側にいると引っ張られにくいから。……夜の炎は便利だけど、ほんと厄介だよ。抑えるのに必死だ。

 

「悪くない変化だったと思うよ。けど、すげー悲しいんだ。悪くないはずなのに……」

「なら、オレが褒めてやるぞ」

「あはは。お前に褒められると、オレ嬉しくて泣いちゃうよ」

「泣いて喜んでろ」

 

相変わらず女には優しい奴と思いながらも、リボーンに甘えてオレは涙を流し続けた。

 

 

 

無事落ち着いたし、あんまり長く離れるのもなと思ったオレは、再び京都に戻った。まぁ眼を冷やして、化粧で誤魔化してから行ったけど。リボーンに教わった変装スキルが凄いのか、知ってる人以外は気付かなかったよ。知ってる人も目が腫れてることは気付かなかったんじゃないかな。

 

いろいろ吹っ切れたのか、気を遣われたのか、神崎さんに勝負しようとゲームを誘われた。みんな集まるぐらい接戦で、すげー盛り上がったよ。それぐらい神崎さんのゲームスキルやばかった。オレ、結構本気でやったよ?……ごめん、うそ。軽く身体強化して、超直感を使わないと勝てませんでした。結構じゃなくて、ガチでやりました。うーん、リボーンの教育の経験のせいだね!勝負に負けちゃ酷い目にあったもんね。並盛にいるオレに影響が出ないから、ついやっちゃったよ。

 

ゲームも終わり、女子はだべろうと大部屋に移動し始めた。オレは後で行くよと声をかけて、戻ってきてからまだ話してないしと歩き回る。男子も大部屋に移動し始めてるっぽいけど、そこにはまだ行ってない気がするし。超直感を頼りに歩いてると、探してた人物は自動販売機前で見つけたよ。けど、押したボタンにちょっと引いた。レモン煮オレなんてジュースよく選ぶね。オレ絶対選ばないよ、そんなジュース。

 

「……それ、美味しいの?」

「飲む?」

「間接キスはちょっと。めんどくさいことになるんだよ」

 

というか、めんどくさいことが起きたんだよ。あれはもう思い出したくない……。オレと違って、わたしはめっちゃ笑ってるよ。そりゃそっちは良い思い出だもんね。オレは黒歴史だよ。

 

忘れようとオレが切り替えてると自動販売機に小銭を入れてた。その謎のジュースを押される前に声をかける。

 

「普通のオレンジがいいな」

「ん」

 

なんか変な感じがするよ、カルマ君にジュースを奢ってもらうなんて。それもちゃんとオレンジジュースを押してくれたし。まぁわかるけどね。ジュース飲んでるのに小銭いれた時点で、オレも察してリクエストしたもん。

 

そのまま互いに余計なことは言わずに、おやすみと別れたよ。寝て起きたら、いつも通りにしようという暗黙の了解だね。まぁオレは今日も寝ないんだけどね。

 

ジュースを飲みながら女子の大部屋に向かうと、殺せんせーが混ざってた。ここに居てもいいの?とオレが首を傾げてたら、やっぱり不法侵入だったらしい。なんでか知らないけど、男子も混じってみんなで暗殺し始めた。

 

オレはグビグビ飲みながらも、一応見届ける。あんまやり過ぎて床とか抜けたら怖いしね。この宿、ボロいし。まぁその時は殺せんせーが助けるんだろうけど。

 

そのまま追跡したら、殺せんせーは烏間先生の部屋に逃げ込んだ。もう今日は大人しくしてそうかなと思った時に、殺せんせーの過去の話になった。まぁ烏間先生は野暮と判断して、聞くのをやめたけどね。

 

「ソラさん、そこに居るのはわかってますよ!」

 

あれ?バレちゃってた?と入ると、殺せんせーは一つ横の襖の方を見ていた。オレと烏間先生は思わずジト目になったよ。殺せんせーはカッコつけたかったのかな。一応スキがあったから烏間先生が仕掛けてたよ。残念ながら殺せなかったけどね。

 

「伝言はお聞きしましたから、必要ありませんよ」

「あーうん、そっか……」

 

ちゃんと謝った方がいいかな、とオレが入るタイミングを見計らってたのはわかってたのね。ボリボリと頭をかいて、うん!と気合を入れたオレは座った。立ちながら話すもんじゃないなぁって思って。

 

「あのさ、オレにはもう最高の先生が居るんだ」

「気になりますねぇ」

「すげー驚くと思うよ。殺せんせーの見た目に負けないぐらいの容姿してるし、超ドSのスパルタ教育だし。バイクの乗り方とかなんて、まず一番最初に危険な乗り方をやらせて痛い目に合わせてからじゃないと正しい乗り方教えてくれないんだよ。勉強だってさ、間違うたびに爆弾を爆発させるしさぁ。すげー簡単に撃ってくるし。まぁ……女には優しくするのがモットーだから、オレはやられてないんだけどね」

 

やられた記憶と経験はあるのに、オレはやられてないって、やっぱ変なの。

 

「多分ね、悪魔とか死神なんだよ。けど、あいつに育てられた人は、みんな心の底から感謝するよ、絶対。オレは羽のない天使って例えたぐらいだもん。本人には一度も言ったことないけどね」

「優秀な先生のようですし、言葉にしなくても気付いていらっしゃるでしょう」

「うん、だろうね。そんな凄い先生はオレには居るんだ。だからさ、殺せんせーにはわたしの先生になってほしいんだ」

「初めからそのつもりですよ。君の中にいる彼女も3-Eの生徒ですから」

 

触手で頭を撫でられ、えへへと笑いながらもポツリと落とす。これはわたしを想ってオレが出した涙だ。オレはグイッと勢いよく袖で拭って、次に顔を上げた時にはいつもと変わらないオレになる。泣いたなんて、その瞬間を見たこの人達すら騙せるぐらいに。

 

「オレの先生がさ、わたしのことを裏の世界に無理矢理染められておかしくなった泣き虫の女だって言ったんだ。……だからさ、わたしの先生になるつもりなら、そんな子はこの教室から出さないでね。オレも協力するからさ」

「あなた……いえ、あなた方には申し訳ないと思ってます。偉そうに言いましたが、生徒に守られてる状況ですからね」

 

あー……気付いちゃったのか。いやまぁ遅かれ早かれかな。

 

「えっと、いつ気付いたの?」

「不甲斐ないですが、つい最近です。いつの間にか、先生が知っている時と随分かわっていました」

「んー、半年ぐらい前かなぁ。まだ一年はたってないと思う。ちょっと厄介な力が発見されちゃってさ」

 

マフィアがリングの力に気付いたのはリング争奪戦ぐらいだもんね。そこからはまぁ激動だよね。

 

「待て。どういうことだ」

「オレ、言ったでしょ。殺せんせーは裏をかじってるけど可愛いレベルって。この半年ぐらいで裏の世界はもっと恐ろしいものになったんだよ。そりゃ昔っから一部の人は使えたけどさ、血筋以外で広がることはなかったよ。オレに子どもを産ませようとしたのはそういうのもあんの。けど、今では手軽……でもないけど、使えるようになっちゃった。まぁそれでもオレは狙われちゃうんだけど、嫌なところの血を引いててさ」

 

本当にウソをついてなかったのかって顔されたよ。失礼しちゃうよね。

 

「百億なんてエサをぶら下げるから、裏の世界のトップが動いたよ。今代は穏健派だから、こっちの世界に巻き込まないようにって。……安心しなよ、次の代も穏健派。あいつじゃないよ。にしても、あいつのわがまま王っぷりはやっぱ有名なんだね」

 

あははとオレは笑う。殺せんせーはリアクションに困ったのか、お茶を飲んでるよ。

 

「殺せんせーは裏のトップが動いてもなんとかなると思ってたんでしょ。マッハ20は反則級だし、今代は穏健派。生徒達に危害を加えるような人柄じゃないもんね。そして息子のあいつは生存不明だったし」

「そうです。狙われるのは先生だけと確信してました。あそこでも先生を殺すことは不可能だと思っていました。他のところが生徒を狙ったとしても、話にならないでしょうとも。しかし、ソラさんあなたが現れた」

「すげー誤算だったでしょ」

「ヌルフフフ。ですが、あの人らしい采配でした」

 

やっとその笑い方に慣れてきたなーなんて、このタイミングで思ったよ。不思議。

 

「まぁそうなんだけどさ。オレは今代もだけど、あそこ全体と仲悪いんだよ。向こうは修復したがってるけどね。無視ってたの。でもオレしか適任が居なくてさ。わざわざあいつのところを通して依頼がきたよ。余程のことが起きたんだなと思って、仕方なく聞いたの。オレもさ、流石にこれはまずいなと思って依頼を受けた感じ」

「待て、さっきからなんの話だ。話が見えない」

「烏間先生、ソラさんは生徒だけでなく、先生を守るためにここに来たのです。もちろんその中に私も含んでいます」

 

ご名答とオレは頷く。まだ烏間先生は混乱してるよね。まぁ裏の世界とか本当に知らない人だろうし。殺せんせーを守るとか意味不明なんだろうね。

 

「今まできた暗殺者はみんな可愛いレベルだよ。イリーナ先生なんて、ちょー可愛いじゃん。あいつが誰かもわかってなさそうだし」

「知っていれば、寝巻きに戻ったでしょう」

 

だよねとオレは笑う。怖くて着ていられないもんね。まぁわからないと確信したから教えたんだけどさ。あいつが誰かわかってしまった殺せんせーからすれば、ドキドキものだったよね。オレの席に荷物を置きっぱなしにするぐらいだから。

 

「まぁあの人が牽制してるから、暗殺の依頼を受けようとするのは可愛らしいレベルになってんだろうね。なかなか引き受けてくれないでしょ?」

「……ああ」

「仕方のないことでもあるんだよ。裏の世界がこの半年で変化しちゃって、境界線が引かれたから。その境界線を無視してくる奴は本当にヤバいからね。もし雇ってしまったら悪いけど、その時はオレが殺すから」

「なに!?」

「彼女は先生の味方をしているわけじゃありませんよ。どちらかといえば、あなた方の味方です」

 

はぁ!?って感じで殺せんせーを見てるよ。

 

「みんな、死んじゃうんだ。みんな、ね」

 

オレの言葉に静まり、烏間先生が鳴らした喉の音が響いた。

 

「んーっと、オレはそっち側の人間だからさ、オレが対処するって話だよ。まぁオレが教室に居たり、殺せんせーの周りをウロウロすることでも牽制になってるから、今んとこ仕掛けては来てないよ」

 

このまま何もなければ一番いいんだよと言葉を続けると、烏間先生はオレが来た本当の意味を理解したらしい。かなり危険な橋を渡ってることもね。

 

「全ては先生の力不足です」

「や、知らなかったみたいだし、仕方ないんじゃない?知ってたら知ってたで、先生になれる可能性は低かっただろうし。それにあの教室、面白いよ?わたしがすげー楽しんでるもん。オレ、学校に通ってたことはあったけど、この子がここまでストレスを感じてないのは初めてだよ」

 

だからオレ、サボりの常連だったもんね。そういう意味では学校でヒバリさんとの追いかけっこするのは良かったよ。わたしも楽しんでたし。や、オレはいい加減諦めてくれてもいいと思ってんだけどさ。どうしてこうなった……。

 

ま、まぁこの教室をわたしが楽しんでるから、最近じゃ過保護のオレはなんも言ってこなくなったよ。ただオレらが裏の世界の住人を殺す気満々とは思ってないだろうけど。ちゃんとオレはスクアーロに聞いて、許可取ってるよ。というか、問題がどこにあるっていう反応だったし。オレもだよねってなった。ボンゴレの意向に逆らってきてんだもん。

 

「殺せんせーは気にせず今まで通りでいいんじゃない?というか、そうして欲しいなぁ」

 

また頭を撫でられちゃった。これは多分わたしにだろうね。良かったねと声をかけると、ちょっと恥ずかしそうな反応が返ってきた。

 

「喜んでるよ、あの子」

 

殺せんせーも嬉しそうな顔してるよ。

 

それで、とオレは烏間先生に視線をむける。殺せんせーも同じタイミングで向いたからビクッとなったよ。

 

「烏間先生はちょっとだけ雇う暗殺者に気をつけて。後、上に報告してもいいけど、探りすぎて殺されないように。オレはちゃんと言ったからね!」

「烏間先生は先生の方で注意しておきますよ」

 

ああ、それなら大丈夫だねとオレは腰を上げる。烏間先生は頬を引きつらせてたけどね。まぁ頑張って。

 

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